転生者の黒歴史による魔改造と四龍の超機人 作:バーニングミニラ
『しかしスクールやエルピスの時とは違う!もしこの事故が起きなければエアロゲイターだけじゃない、他の異星人からの干渉も早まる可能性が……』
『ならば何故俺にわざわざ相談するような真似をした?』
『それは……』
『協力者を探していた君が俺に接触してきた時から、俺なりに君がどんな人間かずっと観察し続けてきた。その上で敢えて言わせて貰おう。人一人ではとても背負い切れぬ重荷に反して、君の精神は余りに凡庸。しかしだからこそ人としての善性を損なわず、独善に陥る事もないとも言える。今もこうして俺に相談して来たのが、その証だ』
『それは俺がただ臆病だから、自分一人で責任を負うのが怖いだけです』
『それで良いんだ。一人で世界の未来を決める事などあってはならぬのだから。無論君に選ばれたからと言って、俺にもそんな資格がある訳では無い。だが時が常に流れゆく中で、力ある者にしか下せぬ決断が存在するのもまた事実。それなら最後は君自身の心に従うと良い。その結果がどんなものになろうと、せめて俺だけは共犯者として君の味方であることを誓おう』
『……ありがとうございます』
「ヨダカ准佐、少しよろしいですか?」
伊豆基地の工廠に新たに搬入されたばかりの機体を見上げながら少しばかり物思いに耽っていると、背後から声を掛けられる。
振り向いた先にいたのはバーニングPTの全国大会が開催される前より、その優秀なプレイヤーとして先んじて軍にスカウトしていたリョウト・ヒカワだった。
尤も俺がリョウトに目を付けた本当の理由はバーニングPTではなく、前世の記憶でその人物を知っていたからだ。
ゲームにおいてリョウトは人型機動兵器の優れた操縦適正に高い念動力の資質に加え、技術者の才能まで秘めた人物と描かれていた。
実際にこうして一ヶ月ほどの時間を共に過ごす間にリョウトの才能を疑う余地はなくなり、今ではパイロット候補生としてだけでなく主に設計面で俺の開発まで手伝って貰うようになっている。
しかしこの世界では俺が作ったDTXチームにリョウトは所属する事になったが、ゲームの中では少し異なる境遇にあった。
バーニングPTを通じて才能を見出されたのは変わりないが、リョウトを引き抜いたのは連邦軍ではなくディバイン・クルセイダーズ──通称DCという名の軍事組織である。
DCの前身であるEOTI機関はバルマーが意図的に地球の技術的発展を促す為に送り込んだメテオ3の解析を行っており、明らかになった地球外生命体の脅威に対して連邦のスタンスを受け入れなかった事から戦争が起こるというのがゲームの流れであった。
そしてDCという組織が掲げた大義名分の是非は別としてリョウト自身は捨て駒として利用される事になり、後に連邦軍に拾われる事になる。
それならいっそ最初から味方であった方が良いと働き掛けた結果が現状であり、一応は上官と部下という立場であるもののロボット好きという共通の趣味がある事もあって俺とリョウトは良好な関係を築けていると言えるだろう。
更に実を言えば前世から俺はリョウトの乗機となる機体に愛着があったので、少なからず肩入れしてる部分もあるのかもしれない。
「どうした?」
「明日からの実働テストに向けて、この機体──ヒュッケバインMk-Ⅱに関して少し確認しておきたい事があって」
そう言ってリョウトは俺の隣に並ぶと、一緒にヒュッケバインMk-Ⅱを見上げる。
現在連邦軍で正式採用されている量産型ゲシュペンストMk-Ⅱの原型機であるゲシュペンストから性能向上試作機のビルトシュバインを経て、数々の
ヒュッケバインMk-Ⅱはその量産に向けた試作機だ。
ゲームにおいてヒュッケバインは搭載したEOTであるブラックホールエンジンの事故によって起動実験を行った月面の基地諸共消滅しており、EOTの扱いの難しさを証明すると共にバニシング・トルーパーという不名誉なあだ名で呼ばれていた。
しかし様々な葛藤の末に俺が介入した事でヒュッケバインの事故は未然に防がれ、それに伴ってヒュッケバインMk-Ⅱのロールアウトも早まった訳である。
またその件を通じて俺はヒュッケバインの開発元であるマオ・インダストリーと個人的にもコネクションを築けたので、新型機であるヒュッケバインMk-ⅡがDTXチームに回って来たのもそれが理由であった。
「でもパイロットになって間もない僕が新型の実働テストを任されて本当に大丈夫なんでしょうか?」
「俺とユヅキはそれぞれ黒龍機と白龍機があるし、量産型ゲシュペンストMk-Ⅱとテスラドライブのフィッティング調整も急がなくちゃならない。それにヒュッケバインMk-Ⅱを元の設計からブラッシュアップしたレイアウト変更には、お前自身が深く携わっているんだ。逆に俺にはお前以上の適任がいるとは思えないんだけどな?」
ヒュッケバインMk-Ⅱの名を冠しているものの、この世界の機体はゲームと少し仕様が異なっている。
まず第一に動力。
これはヒュッケバインMk-Ⅱに限った話でないが、現行のPTの大半は動力が「Dエクストラクター」に置き換わっていた。
その「Dエクストラクター」こそが軍における俺の立場を確固たるものにした技術であり、チーム名のDimensionの由来でもある。
スーパーロボット大戦OGとは異なるシリーズのスーパーロボット大戦Zの根幹を成す要素である次元力と呼ばれる力。
「Dエクストラクター」はこの次元力を利用した動力源であり、具体的に言えば第2次スーパーロボット大戦Z再世篇に登場した「ディアムド」の動力源を更に改良発展させたものだ。
人の意思によって出力が左右される次元力を動力源として安定させる事で実質的な半永久機関として作動させると共に、従来の性質に従って搭乗するパイロットの意思の強さに応じて機体の強度も向上する。
ゲームのシステムに例えるならEN回復とパイロットの気力に応じて攻撃力と装甲が強化される効果を有すると言った感じか?
ちなみに四龍の超機人の動力源の一つである「リファイン・スフィア」も「Dエクストラクター」と根本となる技術は類似しており、そちらの元ネタは第3次スーパーロボット大戦Z天獄篇に登場した「ゼル・ビレニウム」の「フェイク・スフィア」でより強力な力を有している。
そして「Dエクストラクター」は出力そのものも従来の「核融合ジェネレーター」から既に開発が進んでいた次世代型である「プラズマ・ジェネレーター」に匹敵し、加えて生産コストも割と安上がりで済んだので連邦軍からは非常に重宝される結果となった。
このように俺は主に次元力の研究者として評価されるようになっており、それはタイミングを見計らって再現しようとしている黒歴史を見ても間違いない。
しかし動力の換装だけでは現状の変化には繋がらないと俺が次に着手したのが、「テスラ・ライヒ研究所」に依らない「テスラ・ドライブ」の小型化だ。
重力制御と慣性質量を個別に変動させることが出来る「テスラ・ドライブ」は名前の通りテスラ・ライヒ研究所で開発された技術である。
だが純粋な地球産である第1世代型は大型かつ性能も十分なものとは言えず、EOTの転用により小型化に成功した第2世代型は後にDCの主戦力となるリオンシリーズに搭載される事になる。
それに対して俺は黒歴史によって更にその先の第3世代型までの知識を既に有しており、取り敢えず第2世代型までの技術をリオンへの対抗策とする為に軍へ開示していた。
いくら敵方の技術とはいえ本来の開発者を差し置いて自分の成果のように振る舞う事に後ろめたさが無い訳では無い。
それでも俺がこの件に関しては特に躊躇なく決断出来たのは、前提としてDCに対する嫌悪感が強い事も影響しているだろう。
異星人に対するスタンスとして連邦上層部の一部が無条件降伏するよう秘密裏に計画を進めているのに対し、DCはそれを良しとせず異星人の存在を全人類に公表する事で一致団結して侵略の危機を乗り越える事を主張していた。
その主義そのものは本来なら俺としても異議を唱える余地は無いのだが、問題はそのやり方だ。
人類の意思統一の為に戦争という手段を取った事は元より、DCは過去に悪逆非道な行いを働いた人間を重用するだけでなくその管理もしっかり行き届いているようには見えなかった。
かつてスクールというパイロットの養成機関で身寄りのない子供達を次々と犠牲にしたアードラー・コッホやアギラ・セトメがその一例であり、他にも人格的に問題を抱えた人間が数多くDCに所属している。
それに連邦軍もDCも関係なく本当に地球を守るという大義を持った軍人であっても、人類同士の戦いで命を落としてしまえばそれで終わりだ。
もしそういう人達が生き残っていれば、より良い未来を掴める可能性だってあるかもしれない。
得てしてDCの総帥であるビアン・ゾルダークは地球を守るという大義を掲げる一方で、人類のことは少なからず軽視しているというのが俺の印象だった。
とはいえこれはあくまで全てゲームの中の話で、実際にこれからどういう風に歴史が紡がれるかは俺にも分からない。
しかし残念ながらDCの前身であるEOTI機関には既に何処かきな臭い動きが見られており、ここ最近は歴史の大きな流れを変える事は難しい事を実感させられる事も多くなっていた。
「テスラ・ドライブ」を連邦軍側でいち早く実現させたのも、少しでもDCに対して牽制になることを期待しての事だった。
そしてそんな諸事情もあってヒュッケバインMk-Ⅱはテスラ・ドライブを標準搭載し、その点ではゲームにも登場した改修機であるヒュッケバインMk-Ⅱトロンベや正式採用された量産機である量産型ヒュッケバインMk-Ⅱに近い仕様で完成している。
またリョウトが搭乗する事を最初から考慮していたので念動力者に対応したT-LINKシステムも搭載されており、そちらのデータに関してはSRXチームと共有する事になっていた。
「けど実働データ次第で次期量産機を決めるコンペの結果には間違いなく影響は出るだろう。つまりリョウトはマオ・インダストリーの命運を握ってる訳だ」
「え?」
「ハハっ、責任重大だな」
「笑い事じゃないですよ!変なプレッシャーを掛けるのは止めてください」
何処か戦々恐々とした声音を浮かべるリョウトを揶揄いながらも、実際は余程の事がない限りヒュッケバインMk-Ⅱがコンペで競り負ける事はないだろう。
競合相手となるのはゲシュペンスト・タイプTを改修したゲシュペンストMk-Ⅲもといアルトアイゼンだ。
アルトアイゼンは北米のラングレー基地で推進されるATX計画に基づいて開発された機体で、SRX計画と違って特に今の時点で俺は関わりを持ってはいない。
しかしその全容はゲーム等で知っているので、少なくとも量産試作機というコンセプトにおいては間違いなくヒュッケバインMk-Ⅱに分があると言えた。
(本当はキョウスケ先輩にも俺が開発する機体に乗って貰いたいんだが、流石に伊豆基地で好き勝手に特機の開発を進める訳にはいかないからな)
そしてATX計画そのものとは無関係であるものの、アルトアイゼンのテストパイロットを務めるキョウスケ・ナンブ先輩は俺とユヅキにとっては士官学校時代の先輩で伊豆基地に配属されてからも色々と面倒を見て貰っていた。
しかしゲームではキョウスケ先輩がラングレー基地に転属となる原因となったビルトラプターの事故を防いでも、結局はその辞令が下る運命が覆ることは無かったのである。
それもあって余計に俺はこの世界には何か歴史の強制力のようなものが働いているのではないかと感じるようになっていた。
「良かった、ヒカワ君もヨダカもここにいたのね」
それから暫く明日からの実働テストに向けてリョウトとヒュッケバインMk-Ⅱの最終確認を行っていると、今度はユヅキが工廠に顔を出す。
「二人共仕事中に申し訳ないんだけど、イングラム少佐から呼んでくるよう言われて来たの。今日からSRXチームに加わった新人と顔合わせをするんですって」
「そういや今日からだったか」
その新人は言わずと知れたリュウセイの事である。
ゲームではPTという機密情報に牴触した事を盾にした半ば脅迫のような勧誘だったが、今回はバーニングPTの全国大会で準優勝の成績を納めた事を理由とする至極真っ当なスカウトだ。
ちなみに優勝はやはりテンザン・ナカジマで、テンザンを含めた上位入賞者の数人が行方を眩ませてしまっているのもゲームと変わらない。
本当ならリョウトの時と同じように前もって動ければ良かったのかもしれないが、俺自身が有する権限を踏まえると流石にこれ以上は派手な動きは控えるべきだと判断せざる得なかった。
そしてこの後の展開はまたもや俺の予想とは異なる方向へ進んでいくことになるのだった。
ヒュッケバインMk-II・タイプDE
分類:ディメンション・パーソナルトルーパー
ヒュッケバインシリーズ
動力:Dエクストラクター
基本OS:TC-OS
補助システム:グラビコン・システム
補助MMI:T-LINKシステム
浮揚機関:テスラ・ドライブ
開発:マオ・インダストリー
パイロット:リョウト・ヒカワ
特殊能力
Gウォール
Dエクストラクター
・気力130以上で攻撃力と装甲値に補正
EN回復