転生者の黒歴史による魔改造と四龍の超機人   作:バーニングミニラ

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STAGE 03 目覚める念

(どうしてこうなった?)

 

 誰に呟く訳でもないが、ヒュッケバインMk-Ⅱを目の前にして俺は思わず心の中で溜息を漏らしていた。

 ヒュッケバインMk-Ⅱの実働テスト開始となった今日、当初の予定通りリョウトがテストパイロットとして搭乗している。

 それに加えてその隣には量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ・タイプTTが並び立っていた。

 そしてタイプTTに乗り込むのは伊豆基地に来たばかりのリュウセイだ。

 

 しかしいくら能力を見込んでのスカウトだったとはいえ、昨日の今日で実際にPTに搭乗するのは明らかに異常な事態である。

 勿論これは言うまでもなくイングラムの策略によるものだった。

 昨日のブリーフィングで発せられたイングラムの鶴の一声。

 現時点におけるリュウセイの能力を確かめるという名目で、実働テストの形式は模擬戦へと変更。

 更に何故かリョウトとリュウセイの相手を同時に俺が務める事になってしまった。

 

『互いに戦わせた所で所詮は模擬戦。特にリョウトでは本気でリュウセイを追い詰めるような真似は出来ん。だから明日の模擬戦ではお前が二人の力を限界まで引き出して見せろ』

 

 恐らくイングラムは俺が肩代わりする事になったメギロートの襲撃に代わって、リュウセイそれにリョウトを追い込む事で力を発揮するような状況を再現したいのだろう。

 しかしそれは憎まれ役に徹しろという命令と同義であり、だったら自分でやれと本当なら言いたい所だ。

 このようにイングラムは何処かナチュラルに他人を利用するきらいがあり、特にそういった性格を隠す様子もない。

 それがゴッツォの枷による影響なのかどうかは定かでないが、いずれにせよ今回のように巻き込まれた方は堪ったものでなかった。

 

 ただイングラムに下手な刺激を与えないに越した事はないが、かといって別に全て言いなりになる必要がある訳でも無い。

 これから起こるであろう戦いを無事に切り抜ける為には、やはり仲間との信頼関係は重要な要素の一つだ。

 転生者というイレギュラーな存在故に全てを明かす事は出来なくとも、可能な限り俺は自分が持つ情報を隠し立てしない方針を取っている。

 今日の模擬戦についてもチームの一員であるリョウトには事前に激しくなる事は伝えてあるし、俺達が持つ念動力やヒュッケバインMk-Ⅱと量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ・タイプTTに搭載されたT-LINKシステムに関しても特に情報を秘匿するような事はしていなかった。

 

 念動力──サイコキネシスやテレキネシスとも呼ばれる対象に触れる事なく意思の力だけで物理的干渉を与える能力。

 その素質を持つ者が念動力者と呼ばれリョウトやリュウセイ、それに俺とユヅキに加えてSRXチームのメンバーであるアヤ・コバヤシもその一人だった。

 尤も人の身だけではそこまで大それた力が使える訳では無く、現時点で念動力の力を発揮するにはある媒介が必要となる。

 それがT-LINKシステムであり念動力を機体に伝わらせる事で制御系の向上を促す他、一部の武装にも念動力を使った機能が応用されていた。

 

 そしてその念動力を強く引き出す為に手っ取り早い方法が肉体的にも精神的にも負荷を与える事であり、イングラムの目論見はそこにあるという事だ。

 事情を知ってるリョウトはまだしも恐らくイングラムから何も聞かされていないリュウセイには少し酷かもしれないが、いきなり実戦に駆り出されるよりはマシだと思って貰う他ないだろう。

 いずれにせよ地球にこれから何度も訪れるであろう危機を乗り越えられるだけの強さは絶対に必要となるのだから。

 特別な力を持つ二人を鍛える側に回るという事に何処かむず痒さを感じながらも、今はまだ先達として出来る事をしようと俺も心を鬼にして操縦桿を握る。

 

『指揮車より各機へ。模擬戦闘訓練を開始する』

 

 2vs1という数的不利に加えて、模擬戦の舞台となるのは殆ど遮蔽物もない平野。

 開始場所こそ互いに距離を取っているものの、この条件では程なくして搦め手も何もないガチンコ勝負になるのは請け合いだ。

 しかしPTの操縦に関して一日の長があるとはいえ、リョウトが搭乗するのは現時点における最新鋭機であるヒュッケバインMk-Ⅱ.

 対して俺がこの模擬戦で搭乗するのは黒龍機ではなく、リュウセイと同じ量産型ゲシュペンストMk-ⅡタイプTTだ。

 

 現在DTXチームでは黒龍機と白龍機それにヒュッケバインMk-Ⅱの他に、2機の人型機動兵器を所有している。

 その内の1機がこの量産型ゲシュペンストMk-ⅡタイプTTの4号機であり、カラーリングが灰色となってる以外はリュウセイが搭乗する2号機と基本的なスペックは変わらない。

 ただし基本的にこの4号機は隊員全員が念動力者であるDTXチームの予備機という扱いであるものの、それと同時に表向きは俺が生み出した事になっている新技術の試験運用機としての役割も兼ねていた。

 

 当たり前の話だがゲームの強化パーツのように一手間で既存の兵器に新たな機能を追加できる訳はなく、今の4号機は外付けのユニットによるテスラ・ドライブの可動テストの最中である。

 既にテスラ・ドライブの生産ラインはマオ・インダストリーで確保されているので、このテストが終われば配備中の量産型ゲシュペンストMk-Ⅱにも順次テスラ・ドライブが装着される予定になっていた。

 そしてテスラ・ドライブを搭載しているという点では確実に2号機を上回っているものの、それでもヒュッケバインMk-Ⅱも合わせた2機が相手となると心許ないと言うのが正直な所だ。

 

(かといって今の時点で俺の『力』を晒すのは得策とは思えないし、どうしたもんか?)

 

 イングラムのやり方の是非は別として、リュウセイに早くから戦いの厳しさを体感させておくのは俺も賛成だった。

 それなのにこの模擬戦で俺が無様に負けるような事があれば、リュウセイを悪い方向で調子に乗らせてしまうかもしれない。

 いくら模擬戦とはいえ今後の事を踏まえると、やはり今ここでリュウセイ達に負ける訳にはいかなかった。

 

(整備班には後で謝るとして、ここは『アレ』を使うとするか)

 

 取り合えずの戦略を定めた俺は二人を迎え撃つ準備を進めると、間もなくしてタイプTT2号機とヒュッケバインMk-Ⅱを視界に捉えた。

 2号機がフォワードで飛行が可能なMk-Ⅱが援護するべく後方に続く。

 リョウトとリュウセイの性格を考えれば想定通りの布陣だ。

 そしてあちらもこちらの機影を捉えるや否や、2号機は「M950マシンガン」による銃撃を伴いながら真っ直ぐ俺に向かって突進してきた。

 

『ダメだ、リュウセイ君!!何か様子がおかしい!?』

 

 流石にリョウトは俺が何か仕掛けているのに気付いたようだ。

 テスラ・ドライブを搭載しながらも敢えて俺は4号機を飛行させぬまま、リュウセイが攻撃が可能な距離を保ちながら後退する。

 その先でリュウセイを待ち構えていたのは……。

 

『な、何だ!?機体が動かねぇっ!?』

 

 「スタンマイン」──EMS対策が施されている機動兵器でさえも操作系に誤作動を生じさせる程に強力な電磁パルスを生じさせる設置型の罠。

 既に幾つかフラグをへし折っているとはいえ、敵を鹵獲する必要が生じた時に備えて開発を進めている特殊武器の試作品だ。

 言ってしまえばゲームではビルトビルガー・タイプLに装備されていた「スタンショック」を模しており、これで一定時間は相手の行動を封じる事が出来る。

 

『リュウセイくん!!』

 

「おっと、やらせないぜ」

 

 すかさずリョウトがリュウセイの助けに入ろうとするが、俺もまた「M950マシンガン」でそれを牽制した。

 如何にリョウトが天性の操縦センスを持っていようと、今日が初めてとなるテスラ・ドライブの試運転。

 操縦そのものに問題はなくとも未だ十分な性能を発揮しているとは言い難いヒュッケバインMk-Ⅱを、俺が駆るタイプTT4号機の銃口は確実に捉え続ける。

 それに応じてG・ウォールが発生しヒュッケバインMk-Ⅱそのものにダメージを通す事は叶わないものの、問題はその度にエネルギーがどんどん消費されていく事だ。

 この模擬戦の本来の目的はあくまで実働データを収集する事にあり、このままエネルギー切れを起こすような事があれば元も子もない。

 それを理解するリョウトが立ち直しを図らんと距離を置いた隙に、俺は身動きが出来ないタイプTT2号機の四肢を実体剣の「コールドメタルナイフ」で斬りつけた。

 

『わ、罠を使うなんて汚ねぇぞ!!』

 

「そもそもそっちが圧倒的に有利な条件なんだ。多少の策を講じるのは当たり前だろ?」

 

 ダメ押しするように俺は機体バランスを失った2号機を地面に叩き伏せると、更に俺はコックピットのある胴体部を4号機で踏み付けジリジリと圧力を掛け続ける。

 誰がどう見ても完全な悪役ムーブに加えて、恐怖の色が混じったリュウセイの呻き声は俺の良心に呵責を生んだ。

 それでも所詮は模擬戦で心が折れてしまうようでは話にならない。

 どんな形でも良いからリュウセイがここから一矢報いてくれる事を期待する俺に対して、リュウセイに並ぶもう一人の強念者が襲い掛かる。

 

「T-LINKシステムによるチャクラム・シューターの挙動は問題無さそうだ」

 

 ヒュッケバインMk-Ⅱの左腕に内蔵されているユニットから、有線式の小型チャクラムを射出する武装「チャクラム・シューター」。

 発射後のチャクラムからは回転ノコギリのような刃が出現し、本体と接続しているワイヤーを併用する事で敵機の動きを封じて切断する事を目的とした武器だ。

 そしてこの「チャクラム・シューター」はT-LINKシステムとも連動しており、念動力者が使用すれば有線の範疇にとらわれない複雑な軌道でチャクラムをコントロールする事も可能となる。

 俺の意識を撹乱させる為にチャクラムを縦横無尽に操るリョウトは少なくとも表向きのT-LINKシステムを既に使いこなしつつある。

 

(その点じゃ武器の方がリョウトの力に付いていけてないのが正解か。どんなにヒュッケバインMk-Ⅱが高性能でもあくまで量産試作機というのが足を引っ張ってるな)

 

 リョウトの力を十分に発揮するにはやはり「ファングスラッシャー」あるいは「サーバント」を早く実用化する必要がある。

 しかしそれに関して深く考えるのは後の話だ。

 T-LINKシステムに対応した誘導兵器として「チャクラム・シューター」が持つ弱点、それは……。

 

「有線式である以上はワイヤーの先に必ず本体がいる。だったらチャクラムの動きに惑わされる必要はない!いけ「T-LINKリッパー」!!」

 

 タイプTTの背部コンテナに搭載された手裏剣を模した「T-LINKリッパー」もまたT-LINKシステムによる遠隔操作が可能な武器だ。

 ただし有線式の「チャクラム・シューター」と違って状況によっては武器そのものが紛失してしまうという難点を抱える一方で、より自由な動きと複数の操作が同時に可能という利点もある。

 T-LINKシステムと連動してはいるが本来の「チャクラム・シューター」はパイロットを選ばない汎用武器であり、誘導兵器として見た場合においては「T-LINKリッパー」に分が有ると言えるだろう。

 

 俺が放った2基の「T-LINKリッパー」は「チャクラム・シューター」を迎撃すると同時に、G・ウォールに阻まれながらもヒュッケバインMk-Ⅱの装甲を切り裂いた。

 勿論直接コックピットを狙ったりはしないが、模擬戦とはいえ初めて命に届き得る攻撃を受けてリョウトの動きが僅かに鈍る。

 その隙を突いて俺は「チャクラム・シューター」に接続されたワイヤーを切断し無力化すると、再び「M950マシンガン」による牽制を開始。

 ヒュッケバインMk-Ⅱが距離を詰め切れぬ中、その間も俺はリュウセイが乗るタイプTT2号機への圧力を緩める事は無かった。

 

(リョウトに関してはもう少し攻撃に積極的なら結果も変わっただろうが、今まで基本的にシミュレーターの戦闘訓練しかしてなかった事を考えれば寧ろ上出来と言って良いだろう。リュウセイはそもそもやり方に無理があった以上、このまま続ける意味はないか)

 

 一応は模擬戦の裁量は俺に一任されている。

 まだリュウセイの力が確認出来ていない現状にイングラムは不服が残るだろうが、事がそう全て上手く運ぶとは限らない。

 しかし俺が模擬戦の終了を宣言しようとしたその時だった。

 

『このまま何も出来ないまま終わって堪るかっ!!』

 

 ビリビリと肌で感じる程に強いリュウセイの念。

 それに呼応するようにタイプTT2号機の背部パッチが開き、射出された「T-LINKリッパー」が迫り来る。

 最後の最後に土壇場で力を発揮するとは、世界の命運を握る「サイコドライバー」の資質を有する者としての力の表れなのかもしれない。

 

「……それでも今日はここまでだ」

 

 残念ながら今の時点ではタイプTT2号機が放った「T-LINKリッパー」はリュウセイの強い念に反応したに過ぎないだろう。

 その証拠に「T-LINKリッパー」は敵と定めた俺にただ真っ直ぐに向かってくるだけで芸も何もない。

 俺はその全てを「コールドメタルナイフ」で切り落とすと、今度こそ今日の模擬戦の幕は閉じるのだった。




量産型ゲシュペンストMk-II・タイプTT(フライトユニット装備)
   分類:ディメンション・パーソナルトルーパー
      ゲシュペンストシリーズ
   動力:Dエクストラクター
  基本OS:TC-OS
  補助MMI:T-LINKシステム
 浮揚機関:テスラ・ドライブ
   開発:マオ・インダストリー
特殊能力
Dエクストラクター
・気力130以上で攻撃力と装甲値に補正
EN回復
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