転生者の黒歴史による魔改造と四龍の超機人 作:バーニングミニラ
南太平洋のマーケサズ諸島、南アメリカ付近に位置するアイドネウス島。
EOTI機関からの要請に応える事にした俺達DTXチームは中継地点として北米のラングレー基地へと立ち寄っていた。
そこで士官学校時代の恩人であるキョウスケ先輩を始めとしたATXチームのメンバーと対面する事になる。
僅かな時間であったがチーム同士で交流を深めると共に、俺はその間にマリオン・ラドム博士とちょうどラングレー基地に滞在していたジョナサン・カザハラ博士に接触していた。
前世の黒歴史を再現するにしても俺一人では開発のスピードが追いつかない上に、伊豆基地におけるリソースの問題もある。
そんな中で俺はマオ・インダストリーと協力関係を結んだ上で互いに便宜を図っている訳だが、特機に関して言えば些か専門外と言えた。
そこで俺がかねてから協力者として目を付けていたのがテスラ・ライヒ研究所の現所長であるカザハラ博士であり、現行の特機であるグルンガストの開発者だ。
カザハラ博士に協力を依頼するに当たって懸念すべきはEOTI機関とテスラ・ライヒ研究所が切っても切れぬ関係にある事だが、カザハラ博士の息子であるイルム大尉は連邦軍の極東支部に所属しており俺とも親交がある。
カザハラ博士と直接顔を合わせるのは初めてだったがイルム大尉から博士の人となりは聞いており、二人の親子という関係も含めて連邦軍にとって致命的な情報の流出は無いと踏んでいた。
そしてもう一人の協力者として目星を付けていたラドム博士と俺は次期主力量産機の開発という点においてライバル陣営に属している事になる。
それもあって出会って早々に因縁を吹っ掛けられてしまったが、俺の黒歴史における『獣機人』を実現する為にはやはりラドム博士の協力は必要不可欠であった。
獣機人のコンセプトは他ならぬATX計画で開発されたアルトアイゼンとヴァイスリッターを特機として再設計する事であり、その産みの親であるラドム博士の協力なくして真の完成は成りえない。
幸いカザハラ博士だけでなくラドム博士も俺が提供した獣機人の基礎設計となるデータには強く興味を抱いてくれたようで、この分なら今すぐでなくとも遠くない内に本格的な開発へ取り掛かってくれるだろう。
特にヴァイスリッターに関してはゲームにおける強化の芽を摘んでしまった状態にあったので、これから苛烈さを増していくであろう未来に向けて準備しておくに越した事はない。
こうしてラングレー基地では懐かしの再会を果たすと共に、今後の布石も打った俺は更に連邦軍の南米基地へ。
そこから更に伊豆基地からずっと運転してきたチーム自前の輸送機タウゼントフェスラーを使ってアイドネウス島へと上陸する。
タウゼントフェスラーは特機も含めた複数の機動兵器の輸送が可能であるが、あくまで対談を目的とした訪問で兵器を搭載していては下手な刺激を与えかねないと格納庫は空のままだ。
それに当初は伊豆基地からチームの隊員以外にも護衛を随伴させるという話だったが、俺はある理由からこれを拒否。
当然レイカー司令やサカエ中佐はあまり良い顔をしなかったが、最後は俺に一任してくれた辺り普段から信頼関係を築いておくのはやはり大切である。
勿論EOTI機関側はそんな事情を知らないのでまずタウゼントフェスラーの検分が行われ、それが済んでから俺達はアイドネウス島の地へと足を下ろした。
「ようこそ、我がアイドネウス島へ。DTXチームの諸君」
そして俺達を出迎えたのはEOTI機関の総裁であるビアン・ゾルダークその人であった。
まさかトップ自らが俺達を出迎える為に足を運んで来ようとは、これは想像以上に注意を向けられている証かもしれない。
更にビアンの後ろに控えているのは……。
(シュウ・シラカワだけでなくエルザム・V・ブラインシュタインまでいるとは。コロニー統合軍との繋がりを隠す気もないって事か)
スパロボというゲームの中では言わずと知れたシュウに加えてライディースの兄でコロニー統合軍のエースであるエルザム。
エルザムはコロニー統合軍の司令である父のマイヤーの名代としてこの場にいると見て間違いないだろう。
錚々たる顔ぶれを前にして思わず腰が引けるが、俺も覚悟を以って今回の対談に応じた以上はあまり弱気ではいられない。
「連邦軍極東支部所属ヨダカ・アマハ准佐です。本日はお招き頂き光栄です、ビアン博士」
「わざわざ日本から遠路はるばる足を運んでくれた事に感謝する。常々噂を耳にする君とは余計な邪魔が入らぬ場所で腹を割って話してみたかったのだ。それにこうして直接顔を合わせなければ分からぬ事もあるのでな」
そう言って差し出された手を取って俺はビアンと握手を交わす。
それに続いてユヅキやリョウトとも挨拶を交わすビアンの態度は一見すると友好的なものにしか見えないが、その品定めするような視線の奥に隠された真意は何なのか?
「そして危険を顧みず私の呼び掛けに応じた君達の勇気と胆力に敬意を表して、これから何を見聞きしようと絶対にこの場で危害を加えるような真似をしないことを約束しよう」
何の保障もない口約束に過ぎないものの、ビアンの言葉に嘘偽りない事は直感的に分かった。
ビアンの言う通り、実際に対面してみないと理解出来ない事もある。
実直にして剛健、まさに巌のような人物というのが今の俺がビアンに対して抱く印象だ。
だからこそビアンが既に連邦に対して反旗を翻す事を決意しているのだとしたら、その考えを覆す事は難しいかもしれない。
「しかしまずは長旅の疲れを癒すが良かろう。ここにいるエルザムが君達を歓待する為に腕を振るってくれた。せめて食事の間は互いの立場は忘れて純粋に語らいを楽しもうではないか?」
ビアンにそう言われて恭しく頭を下げたエルザムに促されて、俺達はEOTI機関の研究所へと足を踏み入れるのだった。
ゲームの描写だけでなく以前ライから話を聞いていた通り、エルザムが振る舞ってくれた料理は本当に絶品だ。
俺達の年齢を気遣ってか格式ばったコース料理のような物ではなかったものの、色鮮やかに彩られた料理に俺達は舌鼓を打ちながら会話を弾ませる。
そしてその場で初めて耳にしたのはエルザムにもうすぐ娘が生まれるという話だった。
それを聞いた瞬間に不覚にも涙腺が緩みそうになる。
未だ転生者として俺の選択が本当に正しいか悩み続ける日々を送る中、その結果として新たな命が紡がれたという事実。
この先で何が起ころうと、これだけは絶対に否定してはならない俺にとっての勲章のように思えた。
するとそれに端を発してビアンが娘を持つ男親としての苦悩を語り始めたかと思うと、次は俺とリョウトがロボット好きと知って自分が好きなロボットアニメについて熱弁する。
確かに最初からビアン自身がそう宣言していたとはいえ、肩の力が抜ける所か思わずズッコケそうになる有様だった。
そんなビアンの様子にエルザムは苦笑いを浮かべ、シュウは我関せずと言わんばかりに黙々と食事を進めている。
何処か頓珍漢な光景ながらも、間違いなくこの瞬間に満たされる雰囲気は穏やかなものであった。
「ほぅ?では君達が中国で発見したというロボットには自身の意思が宿っているというのか?」
「はい。アンノウンに取り囲まれた私達を救うように白龍機が姿を現した時、確かに私の心に語り掛けて来たんです。『汝、人界の救済を望むや?我が使命は百邪を退け、人界を護ることなり。汝、数限りない百邪との戦いを遂げる意気有りや?汝、救世を望み魂を刃と成すか?』と」
そしてやはりロボット好きのビアンにとって琴線に触れるものがあったのか、話の流れで黒龍機と白龍機が話題となった。
今はユヅキがビアンの質問に答えているが、予め黒龍機と白龍機について尋ねられるような事があれば戦闘時におけるスペックが露見しない程度の話なら漏らしても構わないと伝えてある。
「それで君はその問いに何と答えたのだ?」
「正直に言えば、あの時は生き残る事に必死で白龍機に対してはっきりと応えられた訳じゃありません。それでも今は力を貸してくれる白龍機の搭乗者に相応しくあるよう、軍人として地球を護る為に務めを果たすつもりです」
「……ヨダカ、君はどうなのかね?」
「自分もユヅキと同じです。理不尽に人々の命が失われぬよう軍人の職務を全うするだけです」
そして俺がユヅキの考えに同調するよう答えた瞬間、確かにその場の空気が変わったのを感じた。
「成程。それが君が我々EOTI機関を牽制する為、PTにテスラ・ドライブの搭載を急いた理由か」
「すみません、仰っている意味が……」
「今更白を切る必要もあるまい。我々と内通していたハンス・ヴィーパーを排除したのも君だと調べはついている」
「ハンス・ヴィーパーって情報漏洩で逮捕されたっていう前の戦闘指揮官の?」
「まさか情報を流していた先がEOTI機関だったなんて」
今まで教えていなかった事実を知ってユヅキもリョウトも驚きの声を上げる。
一応はハンスの逮捕に関しては俺が無関係であるよう工作していた筈なのだが、どうやら完璧では無かったらしい。
ハンス以外にも内通者がいる可能性は常に考慮していたものの、想像以上に軍に蔓延る根は深そうだ。
「何よりEOT特別審議会の横槍で量産型ゲシュペンストMk-Ⅱの生産そのものが妨害される中でも、君が独自にマオ・インダストリーと協力してPTにテスラ・ドライブの搭載を促した理由。それは我々が同じテスラ・ドライブを搭載した兵器で連邦に牙を剥くのに対抗する為ではないか?」
こちらが意図した通りの結果とはいえ、遠回しでもビアンにはちゃんと俺の意図が伝わっていたようだ。
そしてビアンがはっきりと連邦に対する敵意を口にした事で否応に緊張が高まる中、しかしそれを言及するよりも先にユヅキが俺の事を問い質した。
「ちょっと待って、ヨダカ!EOT特別審議会がゲシュペンストの生産を妨害してるってどういう事!?」
「そうか、まだチームのメンバーにも全てを話している訳ではなかったか。ならば私の口から連邦の欺瞞を明かしても構わぬな」
「その前に聞かせてください。どうして俺がEOT特別審議会の事まで把握してるとお考えになってるのですか?」
「これはまた奇な事を言う。これだけEOTI機関の事を警戒して対策を練っているような男が、その原因とも言えるEOT特別審議会の実情を掴んでいない訳があるまいに。立場上は将校でもない一介の軍人に過ぎない君が、どうやって連邦の上層部の意向まで把握しているからは分からぬが」
指摘されてみれば全く以ってその通りの理屈を前に、俺はほとほと自分の事が情けなくなる。
様々な知識を有している今世においても、俺は根本的な部分であまり賢くないらしい。
これは他にも色々な面でボロを出している気がするが、取り敢えずその事について考えるのは後にせざるを得なかった。
「私が一番確かめたかったのは君という人間がEOT特別審議会の狼藉を知りながらも、ただそれに追従するだけの暗愚な者かどうかだ。もし君のような力を持つ人間がそうであったなら、いずれ地球そのものに対する癌になりかねないと排除するのも辞さないつもりであった」
「そんな!?さっきは危害を加えるつもりはないって言ってたじゃないですか?」
「私が約束したのはあくまでこの場においてというだけだ。手段を択ばなければ人一人を消すだけなら方法はいくらでもある」
ビアンの言葉を受けて隣に座っていたユヅキが今にも掴み掛からん勢いで立ち上がろうとするが、俺は手でそれを制止する。
そして会話を弾ませている間も変わらなかった俺達を見定めようとするビアンの瞳を俺は真っ直ぐに見据えた。
「だけど今それをわざわざ口にしたという事は、取り敢えずその気は無くなったという認識でよろしいでしょうか?」
「最初に話したように直接顔を合わせなければ相手の事を理解できない事もある。その結果として分かったのは数々の実績に反して、君は良くも悪くも普通の若者という事だ。本音を言えば危険人物としてマークしていたのが拍子抜けするくらいにな」
以前にも同じような人物評を受けた事があった事を思い出す。
そこまで判りやすいタイプかと自問しながらも、自己認識とも一致するのでビアンの人を見る目は確かと言えるかもしれない。
「しかしだからこそ懸命に足掻こうとしているのも良く伝わってくる。その点で言えばEOT特別審議会と同列に扱おうとしたのは失礼に当たるな。謝罪しよう」
そう言ってビアンは椅子に座りながらも、深々と頭を下げた。
そんなビアンを前にして俺だけでなくリョウトとユヅキも困惑の感情を浮かべる。
「少し話が逸れたが、後は端的に話すとしよう。結論から言えばEOT特別審議会を含めた連邦の上層部の一部は、自分達だけの保身を対価に地球を売り飛ばそうとしている。それを知って我々は連邦に反旗を翻すことを決意したのだ。さてそれを知った今、君達は今後どのように身を振るつもりかね?」
そして何の事もなげにビアンはEOTI機関の真相を口にするが、それは軍人としての道を選んだユヅキとリョウトの価値観を根底から覆しかねないものである。
そんな中で最初から真実を知っていた俺は今になってこのビアン・ゾルダークとの対面が、この世界に生きる人間として何か大きな岐路であるように感じ始めているのだった。
来年もボチボチ投稿していく予定です。
では良いお年を。