転生者の黒歴史による魔改造と四龍の超機人 作:バーニングミニラ
伊豆基地は極東方面地区の中心拠点となっており、相応に規模も大きい。
それは生活拠点も同様で独身用の寮だけでなく、家族を持つ隊員に向けに用意されたマンションタイプや戸建ての居住スペースも存在している。
そして俺はある理由からその中でも戸建てかつ部屋数も多い有り体に言えばそれなりに豪華な造りをした住宅に引っ越す事になった。
改めて言うまでもないが独身どころか恋人も居ない身の俺が一人で住むという訳ではなく、今日から新たに同居人が加わる事になったのである。
「ここが俺達の新しい家かぁ。ねぇねぇ、入っても良い?」
「あぁ。男子の部屋は一階、女子達は上の階だ。取り合えず持ってきた荷物は運びこんじまってくれ」
「はーい」
和気藹々と新たな家に雪崩れ込んでいく子供達の後ろ姿を見て、取り敢えず何事もなく移動を終えられた事に俺は安心して肩の力を抜く。
それにDTXチームを立ち上げてからは子供達と直接顔を合わせる機会も減ってしまい定期報告による現状把握が主となってしまっていたのだが、道中の様子を見ていた限り今は健やかな時間を過ごせていた事に間違いはないようだ。
俺の新たな同居人、それはかつてあの悪名高きスクールに囚われていた子供達だった。
かつて連邦軍に存在していたパーソナルトルーパーパイロットの養成機関──スクール。
元々スクールは戦闘機や戦車からPTへの機種転換に当たって設立された真っ当な組織であったが、アードラー・コッホやアギラ・セトメらが参加するようになると形相が一変。
身寄りのない少年少女たちを世界各地からかき集めて、最初からPTに最適化したパイロットを「製造」するための組織へと変貌していった。
それは非人道的な人体実験も含まれており、数多くの子供が犠牲になったというのがゲームで語られたスクールという組織の概要だ。
俺は前世の知識によって早くからそのスクールに介入し、ギリアムの協力もあって組織の解体に成功している。
しかしやはり運命の強制力のようなものが働いているのか、殆どの子供達が引き取られていく中で素性の確認が取れぬまま取り残されてしまう子供達がいた。
オウカ・ナギサ、アラド・バランガ、ぜオラ・シュバイツァー、そしてラトゥーニ・スゥボータ。
元はと言えばゲームにも登場したこの4人の存在があったからこそ俺はスクールの解体に踏み切ったようなものであり、当然そのまま4人を放っておくという選択肢はあり得なかった。
流石にゲームと違い何の関わりもないジャーダとガーネットにいきなり託す訳にもいかない。
そこで俺は4人の後見人として庇護下に置くと同時に、戦いとは無縁の生活を送らせる為にユヅキの両親に預かって貰っていたのである。
子供達の様子を見ていれば叔母さんと叔父さんが惜しみない優しさを注いでくれていたのは疑いようがなく、ミハヤの事も含めて色々と二人に頼ってばかりの俺は本当に頭が上がらない。
だがその生活も一旦終わりにしなければならない事に、俺は少しばかり心苦しさを感じていた。
ギリアムから齎された一報、それはアードラーとアギラが脱獄し行方を眩ませたという事であった。
犠牲者こそ確認されていないとはいえ、俺はスクールの悪事を完全に防げた訳ではない。
事実アラド達を救い出せたのは人体実験で過去の記憶を失ってしまった後であり、どうせ碌な過去じゃないと全員が口を合わせて気遣ってくれているものの、やはり自分の至らなさは歯痒くもある。
それでも悔やんでばかりいても仕方ないと強いて得られたものを挙げるとすれば、スクールが行っていた人体実験の確たる証拠が掴めた事だ。
ゲームではアードラーもアギラもスクールが解散した後にDCへ逃げ遂せていたが、そんな非道な行いをした輩をみすみす見逃す道理はない。
それに加えてこの二人をDCに合流させない事で防げる悲劇もある筈だと、アードラーとアギラはスクールの解体と共にお縄につく事になったのだった。
それが突然こんな事態が起こった事に、俺は幾ばくかの不安を感じずにはいられない。
驚くべきことにアードラーとアギラは何の痕跡も残さぬまま、忽然と牢内から姿を消してしまったという事だった。
外部から何者かの関与があったのは間違いないが、それが一体誰なのか?
普通に考えればEOTI機関のスパイなのだろうが、いくら何でも手際が良すぎるように思える。
(それに今更ビアンがあの二人を必要とするとも思えないんだよな)
別に直接対面した事でビアンの人となりに絆されたという訳ではなく、俺が抱いたのは単純に何故このタイミングなのかという疑問。
俺やイングラムが粉を掛けたリュウセイやリョウト以外にバーニングPTの上位入賞者が行方を眩ませたのはアードラーが居なくともEOTI機関がアドバンスチルドレンに目を付けていた証明であり、アギラにしても数年に渡って牢屋の中で停滞していた人間の研究を今になって必要とする理由が些か弱いよう思えた。
その疑念自体がこじ付けに過ぎないかもしれないが、俺の勘が何か警鐘を鳴らしているように感じられるのだ。
かといって何の手掛かりもない現状では答えも見つかる筈がなく、とにかく今は不測の事態が起こってもすぐに対応できるよう準備を進めておく他ない。
スクールの子供達を呼び寄せたのもその一環であり、アギラが何か仕掛けて来ても俺の手の届く範囲で保護する為だった。
ゲームと違いスクールの数少ない生き残りという訳ではないので改めて狙われる可能性は低い気もするが、用心しておくに越した事はないだろう。
しかしそれに当たって俺のプランには全く該当しない事態が起こってしまっていた。
「ちゃんと支援して貰ってるからお金の心配は要らないって叔父さんも叔母さんも言ってたけど、こんな家まで用意できるなんて。お兄ちゃんって、もしかして本当にお金持ちなの?」
「まぁ、それなりに稼ぎは有る方だな」
「ふぅん」
アラド、ゼオラ、ラトゥーニがそそくさと家の中に入っていく中、一人だけ玄関前で新居を見上げる少女の名前はミハヤ・アマハ。
何と妹のミハヤまでアラド達に便乗して、一緒にこの家で暮らす事になってしまったのだ。
かつて俺は危険が及ばないようにと一時的に家族とも距離を取っていたが、それは俺と同じく両親を亡くして傷心のミハヤを一人取り残すという独善的な行為であった。
士官学校で再会したユヅキに少し洒落にならない勢いでマジギレされてからは普通に連絡を入れるようになったものの、当然ミハヤからの心証は最悪であり最近になって漸くマトモに会話が出来るようになったくらいだ。
つまるところ俺はミハヤに全く頭が上がらない状態であり、今や親友と呼べる間柄になったゼオラやラトゥーニと引き離す事が出来なかった訳である。
前はやり方を間違ったとはいえ俺にとってミハヤが一番大切な存在である事に変わりはなく、正直この流れも何かのフラグのような気がして胸騒ぎが収まらない。
しかし結局は兄としてミハヤに迫り来る脅威は全て排除しなければならず、それなら状況に応じて最善を尽くす事に変わりはなかった。
そう考えばアラド達の事も含めて近くに居た方が出来る事も多いと思考を切り替えつつも、更に困った事がもう一つ……。
「どうして、ユヅキまでいるんだよ?」
何故かミハヤの隣には自分の荷物を纏めて運んできたユヅキの姿があった。
「だって女の子達もいるのに、アナタ一人で面倒見られる訳ないでしょ?それにアナタは研究やら何やらで基地に籠りっぱなしになる事も多いし、サポートがあるに越した事はないと思うけど?」
「そりゃ確かにそうだが。明日からはオウカも来るし、お前までそんなに気を回さなくてくれて大丈夫だぞ」
「それが一番の問題なんじゃない!」
「は?」
「と、とにかく、私の分も部屋は余ってるんでしょ!?私にとってもミハは妹同然だし、あの子達の力にもなってあげたいって思ってる!それに何か文句があるのかしら?」
「あ、ありません」
やたらと圧が強いものの実際ミハヤは俺以上にユヅキの事を実の姉のように慕っているし、生来の面倒見の良さもあってかスクールの子供達の方もユヅキに良く懐いていた。
それも踏まえれば共同生活をするに当たって特に問題がある訳ではないのだが、単純にこの男女比だと肩身が狭くなる気がしてならない。
更に隣で会話を聞いていたミハヤからは何やら呆れているようなジト目を向けられてしまう。
取り敢えずこの新生活が前途多難なものにならない事を祈りつつ、俺も皆の後に続くのだった。
翌日、俺達DTXチームは新たなメンバーを加える事になった。
「本日付けでDTXチームに配属となりました、オウカ・ナギサです。どうかご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします」
オウカはスクールの被害者の中で身寄りが見つからなかった最後の一人であり、アラド達より少し年上のオウカは進学先として俺の母校でもある軍学校に進学していた。
ゲームにおけるオウカの最期を知る身としては絶対に戦いに関わらせまいと当然その選択に強く反対したものの、どうしても軍人として働く俺の力になりたいと頑なに譲らなかったのだ。
別に神でも何でもない俺にオウカの強い意志を変える事は出来ず、結局は俺の方が折れる事になってしまった。
そしてスクールでの訓練時間は決して長くは無かった筈だが、軍学校でのオウカの成績は優秀そのものだ。
俺が在籍したいた頃と違って今のカリキュラムにはPTの操縦訓練も含まれており、その評価は完全に群を抜いたオールA。
流石ゲームでは数少ない天才の特殊技能を有していただけの事はある。
パイロットの技量に留まらず座学も好成績を修めていたオウカは結果として飛び級扱いとなり、士官学校には進学せずに軍に志願していた。
しかしいくらオウカの意思を尊重した結果とは言え、俺がオウカの未来を憂う思いに変わりはない。
ならばせめて例えオウカが危機に陥るような事があろうと俺の力で助けられるよう、ユヅキの時と同じくDTXチームに配属されるよう働きかけたのだった。
ちなみにオウカの入隊と引っ越しのタイミングが重なったのは全くの偶然であり、その点に関してだけは都合が良かったとも言える。
「ヨダカお兄様、改めてチームの一員に選出してくれて有難うございました。これでユヅキお姉様だけに任せる事なく、私もすぐ側でお兄様に尽くす事が出来ます」
「尽くすってオウカ、アナタねぇ……」
「まぁ言葉尻は兎も角、オウカにはここで十分に実力を発揮してくれる事を期待してる。リョウトにとっては初めの後輩にもなるから、色々と気に掛けてやってくれ」
「はい」
リョウトには予めオウカの境遇は伝えてある。
仮にも軍隊で今の呼ばれ方は少し変に思われるかもしれないが、オウカを含めたスクールの子供達から向けられる多少の依存心を受け止める度量くらいはあるつもりだ。
それにユヅキも普段から俺の事は階級に関係なく呼び捨てだし、あくまで個人間のやり取りに関してだが伊豆基地も軍隊としては割と空気は緩い気がした。
「それじゃあ新しいメンバーも加わった事だし、改めて今後の方針を確認しておくぞ。俺達DTXチームが試作機というよりは新技術の兵器転用試験小隊という立ち位置は変わらない。だがユヅキとリョウトには今更言うまでもないが、異星人に限らずここ最近は地球の情勢はきな臭い兆候が見られる」
俺の言葉にユヅキとリョウトは表情を険しくする。
一応は俺の方針に従ってくれてはいるものの、ビアンから聞かされた話はまだ二人の心で燻っている筈だ。
俺の目論見通りに連邦の上層部に変わる兆しが見られれば良いが、そうでない時は改めて二人の意思を確認する必要があるだろう。
「それに当たって今後は本格的に小隊として戦闘シミュレーションも取り入れていく予定だ。まず初めにコンペを無事に終えたヒュッケバインMk-Ⅱをよりリョウトに合わせてチューニングし、武装も新規に追加する事になる」
「前に説明して貰った『サーバント・ギア』ですね?」
念動フィールド発生装置を備えた遠隔誘導兵器『サーバント・ギア』。
『ASアレグリアス』の『サーバント』を本来の仕様通りに念動力によって操作すると共に、念動フィールドの発生も可能な攻防一体の武装として俺は再設計していた。
更に念動フィールドは『ズィーガリオン』と同様に攻撃に転嫁する事も可能であり、実家が空手道場を営み格闘戦を得意とするリョウトのモーションパタンに『サーバント』本体が追従。
打撃に合わせて念動フィールドを発生させる事で四肢やマニュピレータへの負荷を軽減すると共に、攻撃の威力も大幅に増幅する事が可能となっている。
本来は俺の黒歴史におけるMk-Ⅲの更にその発展形である機体の為の武装だったが、それを前倒しする形で俺は開発したのだった。
「そしてオウカには俺が新しく開発した『アシュグリフィン』に乗って貰う。扱いは難しい機体だが、お前ならきっと乗りこなせる筈だ」
「お兄様の期待に必ず応えてご覧に見せます」
かつてキョウスケ先輩の事故が起きる前に欠陥を克服させた『ビルトラプター』。
『アシュグリフィン』は表向きその発展形として開発した可変機だが、その実情は『アシュクリーフ』の可変機能を保持したまま『アシュセイヴァー』の武装を搭載した機体となっている。
それに加えて『ビルトラプター』の本来の発展形である『ビルトラプター・シュピーゲル』と同じくテスラ・ドライヴを搭載する事でPT形態でも飛行が可能で、言わばその三体の相の子といった仕様に仕上がった。
また俺の構想にあるDFRシリーズのプロトタイプとしても想定しており、いずれは更なる機能を搭載する予定だ。
こうして確実に俺達DTXチームは力を増していく中で、それから程なくして連邦では大きな政変が起きる事になる。
しかしそれでも歴史の大きな流れを改変する事は簡単に成し遂げられぬ事を、俺は痛感させられる事になるのだった。