転生者の黒歴史による魔改造と四龍の超機人   作:バーニングミニラ

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STAGE 08 変えられぬ宿命

 異星人が実在したという衝撃と、連邦の上層部がその事実を公にせぬまま無条件降伏を受け入れようとしたスキャンダル。

 それによって引き起こされた政変は連邦に新たな政権を樹立させた。

 グライエン・グラスマン新大統領。

 ゲームでも「ウィザード」と称される政治家の重鎮として登場していたグライエンは後にクーデターという形で政権を簒奪したのだが、この世界では正式な民意を得て大統領に就任する事になった。

 異星人に対して徹底抗戦を唱えるタカ派のグライエンが大統領に選ばれたのは、やはり前政権のスキャンダルの反動が効いたのだろう。

 その脅威がまだ実感出来ていない現状においては、民衆の意識がそういった方に向かうのも無理らしからぬ事だ。

 

 俺個人としては例え異星人が相手でも出来る事なら戦争は避けたいという思いは変わらないが、相手が簡単に話が通じない侵略者である事を知っている以上はグライエンの方針に異を唱える理由はない。

 実際大統領に就任してからのグライエンの動きは迅速であり、未曾有の危機を前にして軍備拡大の必要性を民衆に向けて宣言。

 EOT特別審議会の横槍で量産型ゲシュペンストMk-Ⅱの時は滞っていたPTの生産も、次期主力機に内定した量産型ヒュッケバインMk-Ⅱに関しては既にマオ・インダストリーでも生産ラインをフル稼働しての量産が始まっている。

 クーデターの件も含めてゲームで描かれていたグライエンは少なからず問題を抱えていた人物だったものの、少なくとも今の時点でグライエンの働きは高く評価するに値するものだと俺は感じていた。

 

(そうなると懸念すべきはニブハルの存在だが、そっちに手を出すのは時期尚早か)

 

 ニブハル・ブラハル大統領補佐官。

 前政権でも補佐官を務めていたニブハルの正体は異星人が送り込んだ言わば地球とのパイプ役である。

 方々の陣営に情報を流す一種の情報屋としても暗躍するニブハルはゾヴォークとバルマーの両方に通じており、いずれにせよ地球にとって害となる存在である事は間違いない。

 ただ既に連邦の中枢にまで潜り込みグライエンも変わらず重用しているニブハルを追い詰めるには、それ相応の証拠が必要になるとギリアムも言っていた。

 それに蛇の道とはいえ異星人とのパイプを完全に断つのも得策とは言えず、未だ全く影も形も見せない更なる黒幕であるアルテウル・シュタインベックの手掛かりを得る為にも今はニブハルに手を出すべきでは無いだろう。

 

 そうこうしている内に時は流れ11月、南極にて遂に地球にとって大きな分岐点になるであろう運命の日がやって来た。

 上からの命令で黒龍機に乗って待機する目前にはスペースノア級万能戦闘母艦壱番艦シロガネが威風堂々と宙に佇んでいる。

 俺が知る歴史通りにこの世界でも今日この場所で異星人との会談が行われようとしているのだ。

 いくら現政権が異星人に対する徹底抗戦派とはいえ、流石に何の交渉も無しに戦端を開くほどグライエンは愚かでない。

 

 ただ違う点があるとすれば表向きシロガネとグランゾンの竣工式として公開されていたゲームとは異なり、最初からグライエン自ら異星人と対談する事が公表されていた。

 少なからず危険が伴うとして一般メディアの立ち入りは禁止されているものの、その様子は連邦政府が責任を持って世界に報じる事が約束されている。

 ここ南極のコーツランド基地が会談場所に選ばれたのも万が一にも戦闘が起こった時に備えてであり、俺達DTXチームだけでなくSRXチームに加えてATXチームまで揃い踏みしていた。

 他にも数多く配備された量産型ヒュッケバインMk-Ⅱを含めて地球の戦力を示威する事も目的の一つで、それが果たして吉と出るから凶と出るか?

 

(大まかな流れこそ変わらなかったとはいえ、歴史そのものは確実に変化している。地球の戦力が本来よりも増強されたこの状況を刈り時と捉えられるかどうか、こればかりは出たとこ勝負になるのは仕方ないか)

 

 俺の予測が正しければ兵器だけでなく地球人そのものを先兵にしようとしているバルマーは恐らく本格的な戦争が勃発していない現状ではまだ活動を開始する事はない筈だ。

 やはり今の時点で警戒すべきはゾヴォーク側であるのは間違いないが、それとは別に不気味なのは未だ沈黙を貫いているEOTI機関だろう。

 かつてビアンは異星人に対して全面降伏しようとしていた連邦の上層部に対して叛意を企てていたものの、グライエンが大統領となり政権の方針が変わった今も協力する姿勢は見せていない。

 俺も詳しい事情を把握している訳では無いがグライエンもEOTI機関が呼びかけに応じないのは前政権への不信感に依るせいだと認識しているのか、連邦軍の戦力も順調に増強されている今は取り敢えず邪魔立てしないのであれば暫くは静観する方針のようであった。

 そしてビアンが何を考えているのか俺も図りかねる中、遂にその瞬間は訪れる。

 

 いつの間にか曇天へと変貌していた南極の空。

 そこに突如として眩い光が射したかと思うと、分厚い雲の壁を突き抜け異形の艦が姿を現す。

 その正体はバルマーの外宇宙戦闘母艦フーレだが、ニブハルの存在を鑑みれば搭乗してるのはゲームと同じくゾヴォークの人間だろう。

 メテオ3を通じて地球にコンタクトを取ってきたバルマーを装って、ゾヴォークは地球が開発した兵器を接収する事を目的としているのだ。

 いずれにせよ会談の結果次第ではまた歴史が変化する事になると俺も今はその行方を注視する他なかったが、その緊張感を引き裂くような警報が突如として響き渡った。

 

『アンノウン接近!0時方向と10時方向より、各10機の反応を確認!』

 

 コーツランド基地の管制から告げられた言葉には明らかに焦りが滲んでいる。

 それと同時に報告があった方角から爆発音が響くと共に、待機していた友軍機のシグナルが次々にロスト。

 もはや何者かの襲撃を受けている事を疑う余地は無いが、いくら何でも気が付くのが遅すぎる。

 しかし異星人との会談に大統領自らが臨んでいるこの状況で、哨戒の仕事が怠慢だったとは考えにくい。

 レーダーがギリギリまで補足出来なかったとなると考えられるのは空間転移、あるいは……。

 

「DTXチームの各機は各隊と協力してシロガネの護衛に当たりつつ、離脱のサポートを!大統領が乗ってるあの艦を落とさせる訳にはいかない!」

 

「了解!」

 

「俺はアンノウンの情報を少しでも入手する為に殿に回る。合流するまでのチームの指揮はユヅキに任せるぞ」

 

「ちょっと待って、それなら私も一緒に!」

 

「あくまで今はシロガネを無事に離脱させる事が最優先だ。知っての通り黒龍機はタフだし、俺も今は無理をするつもりはない。それにほら、見てみろ」

 

 俺達よりも早く真っ先に行動に映ったのはATXチームだ。

 アルトアイゼン、ヴァイスリッター、それに量産型ゲシュペンストMk-ⅡタイプTTがシロガネの方に向かう中、隊長機であるグルンガスト零式だけがアンノウンを撃退すべく突撃していく。

 この異常事態においてATXチームも俺達と同じ決断を下したという事だろう。

 

「何も俺一人で全てを引き受けようって訳じゃないから安心しろ。ちゃんと自分の身を守る為の引き際くらいは見極められるさ」

 

「……わかったわ」

 

「リョウトとオウカもシロガネの護衛を命じたとはいえ、まずは自分の身を守る事を第一優先に考えろ。これは隊長命令だ、良いな?」

 

「わかりました。准佐もお気をつけて」

 

「御武運を、お兄様」

 

 皆の言葉を背に俺は黒龍機を駆って、先行していたグルンガスト零式に肩を並べた。

 予想外の事態ではあるものの、転生者である俺なら取り敢えず敵機の姿さえ確認出来れれば凡そ何が起こってるか察しがつく筈だ。

 そして実際にその姿を目の当たりにして、俺は思わず毒づいた。

 

「結局こうなるのかよ!?ビアン・ゾルダーク!!」

 

 迎撃すべく奮闘していた量産型ヒュッケバインMk-Ⅱを無慈悲に蹴散らして、未だ数を一つも減らす事無く20機の編隊を組む異質な機動兵器。

 4つのカメラアイに二本の反り立つ角、全身に刺々しいディティールを持つ異形の機体は禍々しい雰囲気を醸し出していた。

 俺が知るその機体の名はヴァルシオン。

 ビアン・ゾルダークが地球防衛用に開発した特殊人型機動兵器であり、EOTを解析する事で開発された新技術がふんだんに盛り込まれた「究極ロボ」の異名に恥じぬ力を秘めている。

 

 シリーズによってはラスボスをも務めるその性能は言わずもがな。

 しかしヴァルシオンは確かに地球防衛を目的とした量産を前提としている機体であるものの、まさかこのタイミングでこれだけの数を揃えて来るとは俺にとっても大きな衝撃であった。

 本来なら今の時点でEOTI機関が量産に漕ぎ着けているのは戦闘機のF-32シュヴェールトを発展させたAMのリオンである筈だったのだが、これはその戦力を明らかに超過している。

 リオンが相手ならば問題なく優位に立てていた筈の量産型ヒュッケバインMk-Ⅱも、数の利も活かせぬまま大出力エネルギー砲であるクロスマッシャーによって次々と撃破されてしまっていた。

 

 この結果は俺が歴史を変えてしまった事に依るものなのかと罪悪感が込み上げるが、俺は意識的にそれを振り払う。

 今すべきは確実にシロガネが離脱する時間を稼ぐと共に、犠牲を少しでも減らす事だ。

 幸か不幸か黒龍機とグルンガスト零式の接近に気付いたヴァルシオンの軍団は矛先を量産型ヒュッケバインMk-Ⅱから俺達へと変えた。

 

「ゼンガー少佐。俺がアイツらの注意を引き付けて撹乱させます。その隙を突いて確実に仕留めていってください」

 

「承知」

 

 黒龍機もまた機体サイズだけを見れば特機の分類となるのだろうが、黒龍機の機動力はこれから開発されるであろう『プロジェクトTD』の機体にも劣らない。

 それに対してヴァルシオンは高性能ながらも如何にも特機じみた機体であり、例え数を揃えていようと簡単に捕捉される事はない筈だ。

 ただ今更ながら少し引っ掛かるのはヴァルシオンの機体サイズは量産型となるヴァルシオン改も含めて50m級の筈だが、目の前の機体は明らかにスケールダウンしており30mにも届かない程度の大きさしかなかった。

 スピード重視で量産を成し遂げた結果なのか、しかし俺の憶測が的外れであった事はすぐさま証明される事になる。

 

 それまで隊列を組んたまま量産型ヒュッケバインMk-Ⅱを蹂躙していたヴァルシオンが、ターゲットを黒龍機に移すと同時に一気に散開。

 四方から取り囲むようにヴァルシオンの群が迫り来るが、そのスピードは俺の想像を遥かに超えていた。

 体感では恐らくテスラ・ドライブを搭載した量産型ヒュッケバインMk-Ⅱと同等であり、サイズダウンの理由がコストの問題ではなく機動性を重視した性能へと再設計された事が察せられる。

 またその挙動を見れば歩行出来ない作りのヴァルシオンと違い、内部フレームの機構も人型である利点を活かした動きが可能である事は明白だ。

 すっかりその外観のイメージに思考が引っ張られてしまったが、敵機の正体はヴァルシオンではなくヴァルシオーネの量産型とも言うべき存在だった。

 

「……だがそれでも俺のやるべき事に変わりはない」

 

 黒龍機の自己修復能力と「次元転炉」による「ラプラスウォール」と同等のビーム軽減バリアに物を言わせて、クロスマッシャーを放った量産型ヴァルシオーネ(仮称)の一体に射線ギリギリの最短距離で急接近。

 殲魔轟龍刃の一太刀で斬り伏せる。

 しかしダイレクト・フィードバック・システムとカルケリア・パルス・ティルゲムの連動によってパイロット側に生じる手応えに似た感覚に俺は何か違和感を覚えた。

 

「むっ、これは!?」

 

 そしてゼンガーも隙を突いてブーストナックルを量産型ヴァルシオーネに叩き込むが、見えない障壁に阻まれて威力が相殺されてしまう。

 今の一撃で並の攻撃は通じない事を悟ったのかゼンガーはすぐさまグルンガスト零式本体の身の丈を超えた大剣・零式斬艦刀を構え直した。

 量産型ヴァルシオーネを撃破しつつも、手応えとして残った違和感の正体が今のと同じ障壁によるものだとしたら?

 刀身に纏った念動フィールドによって殲魔轟龍刃がバリアの類を中和して無効化する事は既に実証済みだが、それでも完全に打ち消せない程の障壁としてまず思い付くのは歪曲フィールドだ。

 

 もし量産機レベルの水準で歪曲フィールドを搭載しているとなれば、今の連邦軍の戦力で正面切って戦うには正直なところ状況はかなり悪いと言わざるを得ない。

 そんな中で頭を過ぎるのは人類が生き残る為には大いなる試練が必要というビアンの言葉。

 例え状況が変わろうとそれを有言実行する全くブレないビアンの信条に俺は戦慄を覚えると共に、やはり俺の考えが甘かった事を痛感させられる。

 ビアンに謀反の意がある事を下手に隠し立てせずに最初からEOTI機関を接収するよう働きかけていれば、今この場で犠牲を払う事も無かったのかもしれないのだ。

 

「呆けるな、ヨダカ!次が来るぞ!!」

 

 掠りもしなかった筈がそれでも黒龍機にビームを軽減する能力が有る事を見抜かれたのか、今度は実体剣であるディバイン・アームを抜いて量産型ヴァルシオーネが迫り来る。

 俺はそれをすかさずショルダーキャノンである滅因砲で迎撃するものの、やはり歪曲フィールドと思しきバリアで直撃を阻まれてしまう。

 だが牽制として量産型ヴァルシオーネのスピードを弱められればそれで十分。

 逆にこちらから踏み込んで再び歪曲フィールド諸共、殲魔轟龍刃で量産型ヴァルシオーネを引き裂いた。

 

 グルンガスト零式もまた零式斬艦刀にて1機を叩き潰しており、これで計3体の量産型ヴァルシオーネを撃破。

 黒龍機は兎も角グルンガスト零式にとって苦しい盤面である事に変わりはないが、現状を打破する光明は見えてきた。

 それに今の攻防で他に分かったことがある。

 念動力者としての素質に依るものか俺はパイロットの気配のようなものに敏感であり、それを量産型ヴァルシオーネからは全く感じ取れないのだ。

 元より手加減をする余裕など有りはしなかったが、相手が無人機となれば打てる手もまた変わってくる。

 より多くの命を救う為に俺は次なる一手を打とうとするものの、それよりも先に事態は大きく動く事になった。

 

 周囲に響き渡る轟音。

 俺達が相手をしていた量産型ヴァルシオーネは二部隊あった内の一つであり、残るもう一部隊の標的はフーレであった。

 その事には早々に気付いていたものの、取捨選択の末に俺達は友軍機を助ける事を優先したのだ。

 本来のフーレが誇る火力は単艦でも戦線を維持できる程であるが、やはり鹵獲された艦で扱い切れていないのか反撃も疎らである。

 量産型ヴァルシオーネによる猛撃の果てにフーレは激しい爆発を起こすと共に各所から火の手が上がり、みるみる高度が下がっていく中で遂には完全に撃沈された。

 次に量産型ヴァルシオーネが定める標的次第で、俺達が取るべき行動も変わる。

 

 だが黒龍機の存在を差し引いてもまだ余力があるに拘らず、敵が選択したのは全軍の即時撤退であった。

 Anti Sensor and Rader Suffia Field──ASRS。

 周囲に電磁波を発生させてレーダーの感知を防ぐ高性能ECMで、テスラ・ドライブの加速装置「ブースト・ドライブ」との併用により量産型ヴァルシオーネは全機が瞬く間に戦域を離脱していく。

 最初に接近を感知出来なかったのも間違いなくこのASRSに依るものだろう。

 ゲームでも良く使われていた戦術であるが、こうして実際に目の当たりにすると実用的であることが嫌でも実感させられた。

 いずれにせよ量産型ヴァルシオーネと仮称した機体の存在も含めて、EOTI機関の技術開発が俺が知る歴史と比べて進んでいるのは間違いない。

 その理由が俺が行った牽制への対抗措置として齎されたものなのか、紛れもない天才であるビアンの頭脳をもってすればそれも不可能では無いと思う。

 

 しかしここ最近の出来事を通じて度々湧き上がる疑念。

 それに言い得ぬ不快感を覚える俺に追い打ちを掛けるように、程なくしてビアンの全世界に向けた演説が発信される。

 量産型ヴァルシオーネに蹂躙される量産型ヒュッケバインMk-Ⅱの映像を証拠として、今の連邦軍に地球を護る力は無いとビアンは断言。

 それに伴いディバイン・クルセイダーズの蜂起を宣言し、結局のところ俺はDC戦争を阻止する事が出来なかった。

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