沈んだこころを、怪物と   作:シリアス至上主義

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一応処女作になりますので温かい目で見てもらえるとありがたいです。

※この作品は若干(当社比)SFが混じっております


黎明、笑えなくなったあなたへ
少女にとっての希望


「朝...」

 

カーテンを開けると、そこには今日の訪れを祝福するような春の陽射し。

 

「支度、しなきゃ」

 

私の憂鬱をよそにピロンッという軽快な音が鳴った。

 

『ごめん!今日は一緒に行けなさそう!気を付けて登校してね!』

 

焼き終わったトーストを口に咥えながら返信する。いつも思うことは同じ。春が、嫌い。

 

「...」

 

この気持ちだけは、どんな時も変わらなかった。

 

「いきたく、ない...」

 

 

『お、僕かっこいい模型だねぇ』

 

『でしょ!あの春蘭の模型だもん!』

 

学校への登校中、そんな声が聞こえた。そして春蘭───その名前は嫌いだ。地球を救った英雄的な超兵器として扱われているけど、私にとっては家族の命を奪ったに等しい存在だから。

 

「春...」

 

春は嫌い。世界(人々)にとってめでたい季節だとしても、私は違う。辛い事、苦しい事、悲しい事、すべて思い出してしまう。

 

「春なんて、消えてしまえばいいのに」

 

何度目になるだろうか、こんな事を考えるのは。何度目だろうか、この季節は。私はどれだけ繰り返せばいいのだろうか。

 

「そんなに空を見上げて、危ないですよ?」

 

直後、自分とは違う声が後ろから聞こえた。振り返ると、そこには黒に紫のメッシュが入った、私と同じ年ぐらいの、まるで宇宙(そら)のような、深い青の瞳を持つ女性が、こちらに微笑んでいた。

 

「大丈夫です。ちゃんと、前は見えているから」

 

「それならよかったです。てっきりXでもいたのかと」

 

その言葉を聞いて思考が解き放たれた。思い出してしまった。怪物と、それと対峙する超兵器(怪物)を。

 

「っ!あなたには関係ない、関わらないで」

 

「あら、気に触れましたか?それならすみませんね」

 

そしてその人から逃げるように歩くスピードを速くして、その場を立ち去る。

 

『そんなに急がないでくださいね』

 

そんな声が、聞こえたような気がした。

 

 

「おはよー!ごめん心桜!大丈夫だった?登校中に変なやつに絡まれなかった!?」

 

「おはよう恋白ちゃん。その、過保護すぎない...?」

 

「過保護じゃないの!だって、心桜って急に転んだり電柱にぶつかったりするじゃん!」

 

急に転ぶ───か。最近は隠せなくなってきたのかな。

 

「それ言われたら何も言い返せないや...」

 

何回かそれで車に轢かれそうになったり、海に落ちそうになったところを助けてもらっちゃったから、本当に言い返せないなぁ。

 

「あ、恋白またやってるー!」

 

「だってだって!心桜ってばこの前は車に轢かれそうにもなったんだよ?当たり前でしょ!」

 

「え、マジで?長春さんめっちゃないじゃ───

 

私のこころはあの日からずっと、深い深い終わりの見えない星の海(そら)に沈んで壊れたまま、上らない。

 

「そら?」

 

まるで、宇宙のような深い青の瞳...なぜあの人の姿が浮かんだろう?あんなに失礼なことを言ってきた人なのに。

 

心桜、心桜?こさく!」

 

「え?あ...な、なんでもないよ」

 

「ほんとに?なんかあったらちゃんといってn「HR始めんぞー」ごめん心桜、また後でね!」

 

「うん。今日は寝ないようにね」

 

...私のこころは、宇宙の様に冷たく、暗い。こころ(私の世界)の外側の春の日差しは暖かいのに。桜色(哀しみ)に満たされた、空虚で、終わりのないどうしようもない日々。

 

「誰か、私を...」

 

そうして時間が過ぎて、後悔だけが大きくなっていくんだ。

 

 

「待ってよ心桜!」

 

ドタドタと走りながら、恋白ちゃんが私の名前を呼びながら走ってきた。

 

「どうしたの...?」

 

「先に行っちゃうなんてひどいよ!それにどうしたのって!」

 

「だって、恋白ちゃん今日はバスケの代理でしょ?」

 

恋白ちゃんは人助け好きだ。頼まれたことは自分のできる範囲ならなんでもやろうとする。まさに、太陽...ちょっと抜けてるところがあるけど。

 

「あぁ!そうじゃん!心桜ぅ...」

 

「終わるまで待ってるから、いってらっしゃい」

 

絶対待っててね!と言いながら、恋白ちゃんは走って体育館の方へ向かっていった。

 

「どうしようかな」

 

特にやることもないし、図書館で本でも───

 

『~~~』

 

「今のは...?」

 

感じた。あの宇宙のような気配を。

 

『そんなに急がないでくださいね』

 

「はぁ、はぁ、はぁ...」

 

気づけば私は、海辺のふ頭にまで走っていた。

 

「私、何してるんだろう」

 

上履きで、こんなに必死に走って、汗だくになって。今日の私はおかしい。もう限界が近いのかもしれない。

 

「帰ろう。恋白ちゃんに迷惑かけちゃう」

 

この時間帯なら、もう部活は終わってる頃だろう。絶対に待つって約束したからには守らないと。

 

「っ!?」

 

海から水柱が立って体に何かが巻き付いた感覚がしたと思ったら、私の身体は空に浮き始めた。

 

「ミツケタ...!ツイニミツケタ!」

 

上を見上げると、そこには黒い触手を何本も束ねたような見た目の怪物がいた。

 

「アア、オイシソウダ...!」

 

私の事を捕まえたまま宇宙(星の海)へと上っていく(沈んでいく)。それは、逆らえなくて圧倒的な存在。

 

「そうか。わたしはここで死ねるんだ」

 

渇望した、待望した、やっと現れた。そう思ったのに、思っていたのに、そんな私の期待は裏切られた。

 

「え...?」

 

次の瞬間では、私は地上に降り立っていた。

 

「そんなに空を見上げて、だから危ないと言ったのに」

 

黒に紫のメッシュが入った、私と同じ年ぐらいの、まるで宇宙(そら)のような、深い青の瞳を持つあのひとに抱えられて。

 

「ヨコセ...ソレハワタシノモノダ!」

 

「...はぁ。シアエガ如きがしゃしゃり出てきて。滑稽ですね」

 

「ダマレハスター!オマエハイツモジャマスル!」

 

シアエガ?ハスター?...なんでその名前を?もう、忘れられたはずじゃ...

 

「本当に、この子にはエセリアルが引き寄せられますね」

 

エセリアル...?

 

「この子は、私のものです♪」

 

グシャッ、表すとするなら、この効果音が最適だろう。あまりに強大で、一方的で、凄惨。水柱が立っていて見えなかったけれど、唯一飛び散って海に溶け込んでいく赤黒い液体だけは見えた。

 

『&#”’&#$)”’#’!』

 

『”’##’’!”’&#%%!』

 

しばらくすると、私の目の前にまた水柱が立って、そこからあのひとが出てきた。

 

「あなたは...?」

 

「私の名前は依。あなたのエーテルは他と比べて段違いに多くて、濃い」

 

私のエーテルが...多くて濃い?

 

「そうですね───あなたのエーテルを、貰いに来ました」

 

「エーテルを...?」

 

「あなたを殺しにきたんです♪」

 

満面の笑みでこちらに微笑んで依という怪物(ひと)世界(他の人)からすれば、それはとても残酷で、恐怖の対象かもしれない。でも、私は...私は...!

 

「私を...殺してくれるの...?」

 

その言葉に、希望を感じたんだ。




原案では心桜も恋白と同じように天真爛漫にしようと思っていたんですが...今のほうが絶望感大きそうなので変更しました。
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