沈んだこころを、怪物と   作:シリアス至上主義

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宇宙(そら)の月に(2)

私は聞かないといけない。聞きたい。知りたい。知らなければならない。なぜあの怪物は私を殺してくれないのか。

 

「「いただきます」」

 

ダイニングの机に向かい合って、私たちは箸を動かす。

 

「美味しいです。心桜は料理もできるんですね!」

 

「叔母さんがお仕事で帰っちゃったから...仕方なく」

 

それに、私の作る料理なんてお母さんの作るのよりも...

 

「それでもおいしいですよ!おかわりありますか?」

 

そんな思考をしているときに、まるで慰めるようにそんな言葉が飛んできた。

 

「...何のつもり」

 

その言葉を聞いて、私は少し腹が立った。

 

「はい?どうしました?」

 

今日一日中、ずっと思っていた。

 

「あなたは私を殺してくれるって言った。なら...ならなんで...!」

 

「なんで殺してくれないの、ですか?」

 

「...」

 

「どうやら当たりの様ですね」

 

私の心はあの日からずっと宇宙(深淵)に沈んでいた。暗くて、冷たくて。それでも差し込んでくる光もあったけれど、その光は眩しすぎて、熱すぎて。どうしようもなく空虚で、終わりのない日々。

 

そこで、やっと現れたと思った。私でもどうしようもないぐらい強大で、理不尽で、残酷な私を殺せる何か。

 

「...あなたは私を殺すって言った。でも、私に牙を向くどころか舌なめずりさえもしない...教えて。あなたは一体何をするつもりなの?」

 

殺してくれないなら、必要ない。ご飯を作ってあげる必要も、お風呂を貸す必要も、家に泊める必要もない。ましてやエセリアルなら私は...

 

「そうですね。質問に質問で返す用で悪いですが...」

 

「あなたはどうしてそんなに死にたがるんですか?」

 

「...っ」

 

そんなこと...

 

「隠しきれていませんよ。自覚していないかもしれませんが、あなたはずっと言っていますよ。殺して()()()って「関係ない...」」

 

「あなたには関係ないでしょ!」

 

バタンッ

 

「あら、」

 

勢いよく閉じられたドアの風が肌を吹き付ける。

 

「逃げられちゃいましたか」

 

 

「はぁ...はぁ...」

 

少しでも期待した私が悪かった。私の前に、それも私を超える存在が現れて殺してくれるなんて、そんな都合の良い事なんて、考えればわかったのに。

 

「ここって...」

 

気づけば私の足はあの怪物と出会ったあの場所に動いていた。...なぜここに?何を期待している?アレは私を弄んでいる。殺すと言っておきながら、私を殺そうとしない。

 

「帰ってもまだいるだろうし、恋白ちゃんの家に行くのは忍びないし...今日は野宿かな」

 

お金もないし、それしかないだろう。適当にベンチを見つけて、そこで横になって。上を見上げれば...

 

「地球の解放...か」

 

今思い返すだけでも笑えてくる。こんな世界を解放だなんて馬鹿げていると、今も思う。あのとき戦う(生きる)のをやめて、身を焦がす閃光に身を任せていたらどんなに楽だったか。

 

「...お姉ちゃん」

 

あのときの私に残ったすべてだった。でも、それすらも奪われて。そこから必死になって、気づいたら私の周りには桜が咲いていた。

 

「深淵を覗いているとき、深淵もまたこちらを覗いている...」

 

ならば、私を覗いている深淵とは何者なのか。

 

「...私を、受け入れて」

 

「それは、誰に向けた言葉ですか?」

 

「...!」

 

伸ばしていた左腕を慌てて引いて寝ていた体を起こす。

 

「もう、こんなところまで来て何をしているんですか?」

 

「...関係ないって言ったでしょ」

 

「なら、無理矢理関係を作るまでですよ。それに放置していたら自殺しちゃいそうですし」

 

自殺...私は、死にたいだなんて、死にたいって、思ったことなんて...

 

心桜

 

「...?」

 

「少し、歩きましょうか」

 

 

「私は何も知りません」

 

「...」

 

「君の好きなモノも、嫌いなモノも、過去も。わからないことが多すぎます」

 

「...それが、私を殺さないことに何の関係があるの?」

 

関係ない。私がどんなモノが好きでも、どんなモノが嫌いでも、どんな過去があっても、殺してしまえば全部関係なくなる。

 

「ええっ!大ありです!...霊紋によるエーテルの産出量にはその者の精神状態が影響しています。そして、一番多くなるのが幸せを感じているときです!」

 

グイグイ来るな...

 

「私は君を最高の状態で殺したい。そうすることで、私はまた生物としてまた強くなれる」

 

「依さんが私を殺すのはの気分次第ってこと...?」

 

そうだとしたら、それはあまりに酷だ。こんな苦しみを、まだ味わないといけないの?

 

「いえ、それは君次第です」

 

「私、次第...?」

 

「私は、君が幸せになったときに殺す。私に殺されたいなら、幸せに生きる努力をしてください♪」

 

死ぬために、幸せに生きる努力...か。

 

「...皮肉なこと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────△──────────────

 

「11011 0011 11001 0100 000 11101 00 00100...」

 

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