ハイスクールD×D 転入生はアランカル   作:見裏世薄袈

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空を駆ける
手を取るように






11.The Dawn

 拳を握りしめる。

 イッセーはロキを睨みながらその苛立ちをぶつけた。

 

 

「よくも、よくも朱乃さんを狙いやがったな……!」

「不満か? 戦いというものは何が起こるかわからないものだぞ? この程度のこと(・・・・・・・)でいちいち感情が不安定になるようでは、未熟も未熟だな」

「ロキ……っ!」

 

 

 ロキの発言に顔をゆがませるリアスたち。情愛の深いグレモリー眷属には今の台詞がひどく耳障りなものに聞こえたのだろう。

 朱乃は傷を負ったバラキエルを抱えるように、その場でロキを睨む。

 その双眸から涙を流しながら。

 

 

「父さまを殺しかけて、そのようなセリフを……!」

「……面倒くさい輩だ。たかが仲間の一人や二人傷ついたところで、お前たちは我を倒せばそれでいいものを。他人を気遣い過ぎてそこの堕天使のように死にかけていては世話ないな」

「……やはり神だな。私たちとは根本的に相容れないようだ」

 

 

 ロキの台詞を受けて、ゼノヴィアはデュランダルを再度構えて突撃する。

 莫大なオーラを惜しむことなく撒き散らし、ロキへ袈裟切りに振るう。

 

ガキィイイン!

 

「ふん、デュランダルか。久々に見たが、このロキにはおもちゃも同然だ」

「だからどうした! 効かないなら効くまで、倒せないなら倒せるまで、私は剣を振るう!」

 

 

 オーラごとロキに跳ね返されても、ゼノヴィアはロキに対してデュランダルを振るうことを止めない。

 彼女の姿を見て、木場も反応する。

 聖魔剣を両手で逆手に持ち替えて地面に突き刺す。

 解放する。

 

 

「そうだよゼノヴィア。僕たちは諦めない……たとえ相手が神だろうと魔物だろうと、僕らは剣士だ! この身朽ち果てようと剣先は絶対に外さない!」

 

ギギギギギギギィン!

 

 地面から無数の剣が咲き乱れる。

 神器を解放した木場はもう1匹の方の子フェンリルの身動きを封じる。

 体のあちこちに木場の造り出した聖魔剣が突き刺さり、子フェンリルは悲鳴を上げる。

 

 

「よく封じた。……あとは俺が燃やし尽くそう!」

「私もお供します!」

 

 

 子フェンリルの動きが止まったのを機に、タンニーンとロスヴァイセがそれぞれの全力の攻撃を放つ。

 隕石に匹敵する劫火に焼かれ、七色の属性の魔法を食らい、子フェンリルはその場に倒れ伏した。

 

 

「ちっ……スコルだけでなくハティまでも……。仲間一人のためにここまで奮闘するか、悪魔共め……!」

「いいではありませんか、美しい絆。羨ましい限りです」

「っ……!」

 

 

 量産型ミドガルズオルムの相手を終えたのか、薄橙がロキの背後を取っていた。ゼノヴィアは薄橙の考えを読み、すぐさまその場から退避する。

 ロキの背に手を向けて言い放つ。

 

 

「貴様、いつの間に……!」

「――散在する獣の骨、尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪」

「なにを、言って……」

「――動けば風、止まれば空」

「いるのだぁああ!」

 

 

 鬼道を詠唱し始めた薄橙に、させてなるものかとロキが動く。

 手に魔法陣を展開してエネルギーをためる。しかし、それは叶わない。

 赤と白が交差した。

 

 

「どこを見ていやがる、ロキ!」

「二天龍を忘れたか?」

「なんっ……ぐあああ!」

 

 

 イッセーが倍加した拳で殴り、ヴァーリが半減させて得た力で以て魔力の砲撃を行う。

 視野に入っていなかった彼らの攻撃をまともに食らい、ロキは薄橙から離されてしまう。

 喚く。

 

 

「おのれ、雑魚風情がこのロキに……!」

「――槍打つ音色が虚城に満ちる」

「!?」

 

 

 否、離されてはいなかった。

 ロキがイッセーとヴァーリの攻撃を食らってその場所から動いても、薄橙はまだ鬼道の詠唱を止めてはいなかった。

 むしろ、今は目の前に。

 

 

「破道の六十三――雷吼炮(らいこうほう)

「ぐっ……がぁあああ!」

「お粗末さま」

 

ビガガガガガガガガガ!

 

 朱乃やバラキエルの使う雷光とは違うものの、その雷は強力の一言。ほぼ零距離からロキはそれをまともに食らってしまった。

 雷を全身に浴び、再び吹っ飛ばされる。父のやられる様を見てフェンリルの意識がグレモリー眷属から一瞬逸れる。

 その一瞬を待っていた者たちがいた。

 

 

「今……目ぇ逸らしたなぁ!」

「黒歌……やりましょう」

「もちろんにゃ!」

 

 

 そう言って彼女が手を挙げると、フェンリルの周囲の空間が歪みだす。と同時に解かれていたグレイプニルが宙に浮く。

 フェンリルがすぐに変化に気づくも、時は既に遅かった。グレイプニルがフェンリルの体にまとわりつき、締め上げる。

 なんとか束縛から逃れようとするが、美猴とアーサーがそれを許さない。

 

 

「逃がさねぇってなぁ!」

「その通りです」

 

ドゴンッ! ズバン!

 

 如意棒でフェンリルの頭部を打ち、コールブランドで四肢を刻む。さらにダメ押しとばかりに薄橙がロキから一転、フェンリルに対し鬼道を使用する。

 

 

「縛道の七十五――五柱鉄貫(ごちゅうてっかん)

「ガウウウッ!」

 

 

 フェンリルの両手両足と頭部に極太の鉄柱が上から落とされる。衝撃に思わずフェンリルは抵抗の動きが鈍った。

 薄橙はさらにその瞬間を狙って新たな鬼道を撃ちこむ。

 

 

「縛道の六十二――百歩欄干(ひゃっぽらんかん)

「……相手が最悪の魔物だからといってもやっぱり容赦にゃいにゃ、薄橙は」

「褒めても出るしかありませんよ?」

「にゃにがっ!?」

 

 

 軽口をたたきながらも、薄橙の鬼道は確実にフェンリルを封殺していた。先程木場が子フェンリルの足場を聖魔剣で固めて動きを封じたのとは規模と質が違い過ぎる。

 ヴァーリが自分のチームのメンバーが計画(・・)を9割がた成功させたのを見て、小さな笑みを浮かべるとともに指示を飛ばす。

 

 

「黒歌、薄橙! 予定のポイントにフェンリルを転送しろ!」

「了解にゃー!」

「委細承知」

 

 

 2人はそう返事すると、黒歌が空間の術、薄橙が鬼道で以て、アーサーと美猴も伴って戦場の採掘地跡から姿を消した。

 事前に知らされていなかった事態にグレモリー眷属と、まさか倒されるのではなく連れていかれるとは想定していなかったロキが反応する。

 

 

「ヴァーリ! あなた一体何を考えてるの!」

「貴様、我が息子をどうするつもりだ!」

「悪いがフェンリルは俺たちのチームがもらう。今後のためにいろいろと必要なのでな」

「……今後のため……だと?」

 

 

 淡々としたヴァーリの返しにイッセーが呟く。ヴァーリはそんなイッセーを意に介することなくロキに向き直る。

 オーラが増大していた。

 

 

「なに、大したことじゃない。そんなことより兵藤一誠、戦いはまだ終わっていないぞ」

「……いろいろと訊きてえことはあるが、後回しだ……まだ共同戦線は生きてるよな?」

「ふっ、目の前の光景が答えだろう?」

 

 

 その言葉にイッセー含め全員がヴァーリの指差す方向に視線を向ける。

 薄橙の鬼道による著しいダメージを負っていても、手札(子供たち)がことごとく破られても、目の前の悪神は戦意を喪失してはいなかった。

 神としての意地と誇りが体を奮い立たせ、自信の思いが力に変換されていた。

 

 

「おのれ。おのれおのれおのれぇえええ! 悪魔の分際で、堕天使の分際で、ドラゴンの分際で、イレギュラーの分際で、この我に……悪神ロキにここまで刃向かうかぁあ!」

「皆、構えて!」

 

 

 瞬間、ロキのオーラが今までとは比べ物にならないほど膨れ上がる……否、もはや爆発であった。

 それはほんの数秒であったものの、地面が沈み、空間が歪み、空が震える。

 咄嗟に木場が聖魔剣をグレモリー眷属の前に一列に咲かせ、壁とする。空中にいたヴァーリ、ロスヴァイセ、タンニーンはそれぞれ結界を張り、イッセーは翼で何とか耐え忍ぶ。

 リーラだけはなぜかその場にただ立っていただけだったが、見るものが見れば薄く霊圧の膜を張っていた。

 

 そして刹那の静寂。

 

 ロキは制御する気が無いのか、今度は滅茶苦茶に魔法陣を展開し攻撃を開始する。

 放たれる魔法に対して、ヴァーリは半減しながら魔力による砲撃を返し、イッセーはとにかく当たりそうなものだけ避けて接近を試みる。それを後押しするようにタンニーンが炎のブレスを放っていく。ロスヴァイセも牽制としてルーン魔法等放つ。

 聖魔剣の壁を消し、木場とゼノヴィアが左右からロキに攻め込み、イリナが正面中距離から光の槍をいくつも投げる。

 

 

「猪口才な!」

「グレモリー眷属騎士(ナイト)、舐めないでもらおうか!」

「私たちも……います!」

「お、お助けしますぅぅぅ!」

 

 

 ロキの気を乱そうと小猫が仙術を当てていき、ギャスパーが蝙蝠を使ってロキの視界を狭め、また神器で魔法陣をいくつか停止させていく。

 しかし、魔法陣は消えては現れを繰り返し、とてもじゃないがきりがない。

 遠距離からはまだ傷が癒えないバラキエルを庇って動けない朱乃の分までリアスが滅びの魔力を次々と撃ちこむ。

 リーラも虚弾を同じく撃ちこむが半分も当たっていない。……少し涙目だった。

 

 

「リーラ、前衛で戦いなさい」

「……はい」

 

 

 ……リアスの指示が的確過ぎてリーラは泣く泣く(本当に泣いていた)援護射撃を諦める。おとなしく蹴替響転(パターダ・ソニード)でロキの懐に潜り込み、木場やゼノヴィアに混ざりながら攻撃する。

 3人の猛攻にロキは思わず距離を取った。

 

 

「雑魚のくせに食らいついてくるな!」

「悪魔なめんなぁ、ロキィイイ!」

 

 

 3人の前衛組を抜けてイッセーが突進する。倍加した拳を存分に振るい、ロキに直にダメージを与えていく。

 我流でありながら実践の中で磨かれてきたそれは、確実に届いていた。目に見えて積み重なっていく。

 ロキがイッセーの猛攻を捌いていると、ヴァーリが上空から彗星のように襲い掛かる。

 

 

「くっ、白龍皇!」

「ロキよ、素直に敗北を認めたらどうだ? もはやお前に勝ち目などないぞ?」

「黙れ、黙れ下等! 不遜極まりない未熟どもが戦いを、我を語るなぁ!」

 

 

 ヴァーリの言葉にロキが激昂する。彼の神としてのプライドに障ったのだろう、再びオーラが噴出する。

 いまだ倒れないロキにリアスたちは疲労の色を見せる。ここまでフェンリルやその子供を相手取ってきたのだから無理もない。……事前にアザゼルから1~2人は死ぬかもしれないという忠告が頭をよぎる。

 ロスヴァイセが叫ぶ。

 

 

「ロキ様! もうおやめください! これ以上は双方無益です!」

「諫言などいらぬ! 我は決して和平など認めん……聖書の連中などと歩み寄る気は毛頭ない!」

「……いくらなんでも強情すぎないですかぁ?」

 

 

 頑ななロキの台詞にリーラが呟く。それを聞いたロキは矛先をリーラに変えた。

 

 

「イレギュラー如きが、貴様もこやつらに同調するか! 訳のわからん力を使いおって……消えてしまえ(・・・・・・)小娘が(・・・)!」

 

 

 魔法を放つ。それをリーラは避けることも抗うこともなく、まともにくらってしまう。さっきまでと違う様子にリアスたちはリーラのもとに駆け寄る。幸い大した怪我ではなかったが、問題はそこではなかった。

 ぐさり、と。

 興奮状態のロキが放った罵倒がリーラのなかに突き刺さったことで、彼女の脳裏にさまざまな人物が浮かび上がり、鮮明になる。

 

――新参者が……。

――たかが小娘が……。

――藍染様にべたべたと……。

――力があるからって調子に乗りやがって……。

 

 頭を抱える。今まで記憶の片隅に封印しておいた記憶が彼女の思考を支配していく。目の前が暗くなっていく。頭を振り払うが効果はなかった。とめどなく増えていくばかりだ。

 ……そしてついに蘇った。あの台詞が。

 

 ――――お前なんて、消えてしまえ! 

 

「あ、う、ぁ…………ああああああああああ!」

 

 

 月に、吠えた。

 

 

 

 

 

 

―○●○―

 

 木場は今まさに進行している眼前の状況が呑み込めなかった。

 彼は自分が騎士であると自覚している。リアス・グレモリーという上級悪魔の眷属で、彼女を降りかかる火の粉から身を挺して守り抜くと誓った騎士であると。

 だからいかなる状況においても冷静に判断し、行動しなければならないと常日頃から頭の中で考えている。

 しかし。

 その考えは様変わりしたリーラを見てどこかに吹き飛んでしまっていた。

 

 

「リーラさん! ねぇ、私の声が聞こえる!?」

「リ、リーラ……一体どうしたというんだ……?」

 

 

 イリナとゼノヴィアが呼びかける。イッセーの話では、彼の家にいるときに彼女との会話の頻度が高かった2人らしい。けれどもその2人の声にもリーラは反応しない。他の面々も声を掛けるが一切の返答がない。

 リーラの目は虚ろで口は半開きになって、罵倒してきた本人のロキをじっと見つめている。さながら幽鬼だ。虚である彼女に幽鬼という表現はおかしいのかもしれないが。

 

 

「はっ、どうしたイレギュラー。たかが暴言にそんな(なり)になるとは。情弱な奴め」

「てめえ、ふざけんなよ……」

 

 

 イッセーがロキの言葉に怒りを表す。出会って長くないとはいえ、イッセーは彼女を仲間と認識している。情愛の深いグレモリー眷属でリアスに次ぎ仲間思いの彼からすれば、朱乃の父親のバラキエルが死にかけたこととリーラが目に見えてその心に傷を負ったことは耐えがたいのだろう。

 

 

「怒ったか、赤龍帝! 二天龍と称されたドラゴンがそこまで沸点が低いとはな!」

「もう喋んじゃねぇぇぇロキィィィィ!」

『JET‼‼』

 

ドゴンッ!

 

 突進の勢いを乗せた右拳がロキの頬を捉え、吹き飛ばす。離れた距離を詰めるようにイッセーも加速(boost)する。

 イッセーの行動にヴァーリやタンニーンも動いた。

 

 

「口が悪いなロキ」

「それが隙になった。……ドラゴンを舐めるからだ」

 

 

 イッセーの攻撃の隙間を埋めるように魔力弾とブレスを放つ。魔法といくらか相殺したが、それらは通った。

 

 

「ガハッ、ハァ……ハァ……。ふん、薄汚いトカゲめ。小癪なっ――」

「――Una persona asustada(   怯える者よ   )

 

 

 ぞわりと。

 呆然と立っていたリーラがふとそう口にしたその瞬間、言いようのない寒気が戦場を駆け巡る。

敵も味方も関係なく全員がリーラを注視する。様子が何も変わっていないのに、目に見えない何かがリーラの全身から溢れ出ている。

 ただタンニーンとヴァーリだけはこの感じに思い当たる節があった。

 ロキが絶大な威力で魔法を放ったとき、相殺しきれずダメージを覚悟したときに感じたそれであると。

 だが、今感じているそれとは本質こそ似ていれど、どこかが違っている。どこかが間違っている。

 

 ――さっきから(・・・・・)頭の中で(・・・・)鳴っている警鐘(・・・・・・・)はなんだ?(・・・・・)

 

Si el miedo, (恐れるならば、) y la caída( 倒れろ )

「がっ……!?」

 

 

 続いて紡がれた言葉にロキが思わず膝をつく。力が抜けたように……ではない。見えない何かに押さえつけられるように、力ずくでそうさせられたようにリアスたちの目には映った。

 イッセーやヴァーリ、薄橙のように強力な攻撃を喰らわせたわけでもなく、ただの言葉でリーラはロキを押さえつけていた。

 数々の戦いを経験してきたタンニーンや戦闘を好むヴァーリですらも、異様と表現せざるを得ない状況だった。

 

 

Si usted sucumbe,(  屈するならば、 ) y de rodillas(  跪け )

「ぐ、ぐぐぐっ…………何だ、この、重圧は……っ!」

「リーラ、さん……? 一体どうしてしまったのですか……?」

 

 

 ついに完全に両手両足とも地につけていなければ体をまともに起こせないほどになってしまったロキ。常人ならば地面に体がめり込んでもおかしくないのだが、さすがは神といったところか。しかしリーラとロキの構図は距離が多少離れているも、誰がどう見ても“主人と奴隷”を想起させた。アーシアが不安げにリーラに語り掛けるもやはり返事はない。

 そんなロキを見やり、リーラはおもむろに手を上げ、人差し指を立てる。すると、薄紫色のオーラが急速に指の先端に収束していく。その様子に朱乃が反応する。

 

 

「あれは……リーラさんの虚閃? でも彼女の虚閃は右眼から撃つはずじゃあ……」

「ですが、感じるオーラはこれまでの戦闘で彼女が使っていたものと酷似しています。……質量は桁違いですが」

 

 

 ロスヴァイセが報告する。確かに、リーラの指先に収束しているそれと普段使う虚閃のそれとは非常に酷似していた。ではなぜ右眼からではなく人差し指からなのか。今のリーラの状態と関係があるのか。その疑問に答えられる者がこの場には……。

 

 

De una sola mano(  道は一つ  ), Ademas de eso dos(  果ては二つ  )

「オーラの質が凄まじいな……。兵藤一誠、鎧を強化しておけ、余波が来るぞ」

「お前にそこまで言わせるのかよ……!」

『白龍皇の言う通りだ、相棒。あの小娘の指先のそれは、お前のドラゴンショットの何倍もの威力があるとみて間違いないだろう』

「ドライグまで……」

Si reganado(  然らば  )……」

『ヴァーリ、迂闊に横槍など入れてくれるなよ。あれほどの質量、暴発などしては敵わん』

「わかっているさ、アルビオン。せいぜい見学するさせてもらうさ」

 

 

 二天龍の警戒する様子に、他の面々も急ぎ衝撃に備えようと結界を張り始める。

 リーラが指先をロキに向けると同時に最後と思われる言葉を発すると同時に霊圧が一気に解放され――――

 

 

Despedida(  さらば  )……!」

「――縛道の九十九、(きん)

 

 

 ――なかった。

 突如空中から出現した黒いベルトがリーラの体を縛り付け、幾つもの鋲が降り注いで地面に縫いとめた。

 さらに。

 

 

六杖光牢(りくじょうこうろう)鎖条鎖縛(さじょうさばく)九曜縛(くようしばり)断空(だんくう)断空(だんくう)断空(だんくう)……白伏(はくふく)っと」

 

 カンッカンッカンッカンッカンッカンッ!

 ジャララララララ!

 ボボボボボボボボボ!

 ダンッ、ダンッ、ダンッ!

 

 光の板が6つ、太い鎖が1本、黒い玉が周囲に8つ、胸に1つ、透明の分厚い壁がその周りに3つ出現した。

 最初の3つの縛道がリーラの行動を阻止し、次の3つが霊圧の暴発を(とど)めた。最後の白伏はリーラの意識を混濁させる作用があったようだ。彼女は特に抵抗なく目を閉じている。また暴発するかと思われた霊圧も嘘のように霧散していた。断空の連発は杞憂に終わった。

 もちろん、

 

 

「ふぅ、こんなところですかね?」

「あ、あなた……」

「どうしました、リアスさんにその他サムシング。そんなに驚いて」

『やり過ぎだろ(よ)!』

「不思議」

 

 

 当の鬼道をこれでもかと情け容赦なく撃ちこんだ薄橙にはツッコミが待っていた。あまりの手際にロキすらもぽかんとしている。

 薄橙自体にはやり過ぎたという考えは持ち合わせてはいないのか、首をひねっている。

 

 

「どうしたんだ、薄橙。黒歌たちとフェンリルを転送させていたんじゃなかったのか?」

「あぁ、ヴァーリ。ちょっとした不安要素がありましたので、戻ってきた次第です。……予想以上に予想が予想を上回ったのであらかじめ予想して参上しました」

「そうか。……彼女のあの状態に心当たりがあったのか?」

「いえ、全く」

「ないのかよっ!」

 

 

 予想がどうのこうの言う薄橙に期待していたのか、イッセーが真逆の返答をした薄橙に叫んだ。

 冷静に返す。

 

 

「ですが、姉上が力を解放しすぎると一帯が消し飛びますし、あれぐらい雁字搦めにしておかないとロキは倒せても、あなたたちも道連れになっていましたよ?」

「それほどの力だったの……」

「もう少し感覚を鍛えたらどうです? でないと姉上がまたこうなったときに対処できませんよ」

「……ええ、肝に銘じておくわ」

 

 

 薄橙の忠告にリアスは不承不承頷いた。

 ヴァーリが視線をロキに向ける。重圧は消えたが、まだ身体の感覚が戻り切っていないようで少しふらついている。それでもなお敵意は収まっていなかったが。

 

 

「よくわからんが、その小娘が眠っている今ならまたとない機会。決着をつけてくれる」

「……いいぜロキ。とっととケリつけてやる」

「俺から行こう、兵藤一誠」

 

 

 そう言うとヴァーリは白い光の軌跡を描きながら、ロキに向かう。イッセーも残った体力と魔力を糧に倍加を始める。薄橙を除くメンバーが再びロキに刃を向けた。

 滅びの力を纏うリアスに朱乃が進言する。

 

 

「部長、ロキには私がとどめを刺しますわ」

「朱乃……? どうしたの、急に」

「皆はもう戦う力はほとんど残っていないでしょう。私なら父さまを介抱していたからまだ余力がありますわ。――それに個人的にロキには一矢報いたいの」

「朱乃……」

 

 

 強い意志を朱乃の目から感じたリアスはその提案を飲んだ。バラキエルはまだアーシアの治療を受けている。その様子を後ろ目に見ながら、朱乃は立ち上がった。

 手には父から受け継いだ雷光を煌めかせて。

 

 

「私はもう否定しない。過去も、今も、未来も。全てを肯定して前に進むわ!」

「全員、サポートにまわって!」

『はいっ!』

 

 

 誓った言葉を体現するように、朱乃は雷光がより高威力になるように力をためる。狙いは目の前、ロキ。

 

 

「イッセー、朱乃に譲渡よ!」

「っ! ……了解です、部長!」

『boostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboost!!!!』

『Transfer!!』

 

カァアアアアアアアアアアアアアアア!

 

 イッセーの譲渡を受けた朱乃が背中に悪魔の翼と堕天使の翼を広げ、オーラを増大させていく。

 ヴァーリと戦っていたロキがその光景を見て警戒心をあらわにする。

 

 

「赤龍帝ぇ! あの雑種悪魔にその力を譲渡したか!」

「朱乃さんは雑種なんかじゃねえ!」

 

ドンッ!

 

 残った魔力でドラゴンショットをロキに放つイッセー。ロキはそれを軽々といなすが、ヴァーリが見逃さない。

 

ドンッ、ドンッ、ドンッ!

 

「悪いが大人しく倒されてもらおう、ロキ。それに…………いろいろと世話になったバラキエルが死にかけて、俺も少しイラついているんでね」

「白、龍皇ぉおお!」

 

 

 魔力弾を放ち、朱乃に攻撃がいかないように牽制する。ロキは苛立つも、二天龍の攻撃の対処で精一杯だった。

 

 

「これで――すべて終わらせますわ!」

 

ビガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!

 

 朱乃の放った雷光は一筋の――否、1本の極太の柱となってロキに降り注ぐ。薄橙の放った雷吼砲とはスケールが違った。あまりの光量に辺り一帯が明るく照らされる。

 ロキは迫るそれに抗おうと魔法陣を展開し魔法を撃ちこんでいく。

 ――威力と勢いが削られてしまう。

 

 

「ふ、はははははははははは! この程度ならば、我は倒れんぞ!」

「懲りないなロキ。俺たちを忘れたか?」

「視野が狭いってなぁ!」

「貴様らっ……!」

 

 

 左右から攻める。朱乃の攻撃に夢中だったロキは、二人が完全に意識の外になっていた。

 防御が間に合わず、まともに食らう。

 

 

「おのれ、悪魔がぁ! まだ負けん、我は負けぬぞぉ!」

「もう負けですよ、悪神。ですよね?」

 

 

 呆れたように薄橙は言い、視線を移す。そこには、

 

 

 

「その通りだ、ロキ。我らが雷光、貫かれて堕ちよ」

「父さま!」

 

 

 

 10枚に及ぶ黒翼を広げ、朱乃の傍に立つバラキエル。手をつなぎ、共にオーラを高めていく。

 その姿は、まごうことなき、親子の姿だった。 

 

 

「朱乃。――まだ私はお前の父親でいられるだろうか?」

「……私が娘である限り、ずっと、ずっと……大切な家族よ」

「ああ、ありがとう……」

「父さま。――これからも私は父さまの娘でいられるでしょうか?」

「……私が父である限り、大事な、大事な……私と朱璃の娘だ」

「はいっ……!」

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!

 

 2人の雷光がロキを包む。激しい光と音で、他のメンバーが状況を直視できない中、バラキエルと朱乃は語り合う。誓い合う。

 これまでの隙間を埋めるように、手を重ね、翼を重ね、心を重ねる。

 過去の事実は変わらない。いかなる手段であっても不変である。しかし、一方通行な時間軸にも救いはある。未来という希望がある。共闘を通じて真に互いの胸の内を明かし、和解した今の2人ならば、きっと幸せな未来を過ごせるだろう。他者からありふれたものに見えたとしても、当人たちにとってはそれが待ち望んだ至上のものなのだから。

 

 

 

 

 ――夜は明けて、来光が戦場を照らす。戦いは、黄昏(ラグナロク)は幕を下ろした。

 死傷者0、負傷者数名。

 戦果ーー神話首脳陣の会談成功。そして、親子の絆。

 






 遅れてすみませんでしたーーー!
 3週間に1度とか言っておきながら一ヶ月開けてすんませんでした。
 兎にも角にもロキ戦終了です。後日談は次話の日常編で書きます。
 と言っても次の更新はサブ作品ですけども!
 短いですが今回はこれにて。

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