部屋の隅の1つの灯りに
愛は有限と教えられたの
「やっと、終わったな」
イッセーは禁手化を解くと大きく息をついた。横では同じようにリーラも息をついている。
「お疲れ様です、皆さん」
「あぁ、アーシアの神器は癒されるなぁ」
「ありがとうございます、イッセーさん」
アーシアからの回復の光を受けて、イッセーは目を細めながらリラックスしていた。
その近くでは、
「リーラさんお疲れ様です。近くの自販機でお茶買ってきましたよ。よろしかったらどうぞ」
「あ、ありがとう、木場くん……。わざわざごめんね?」
「いえいえ、今の戦いで一番活躍していたのはリーラさんですから当然のことですよ」
「そんな……。木場くんもかっこよかったよ。…………敵を切るところとか(ボソ」
「はい?」
「ううん、なんでもないよ、なんでも!」
「?……そうですか……」
廃工場の入り口近くにあった自販機で買ったジャストサイズの清涼飲料水を木場がリーラに渡していた。木場の騎士としての振る舞いに慣れていないのか、リーラは彼との会話の中で終始赤面しっぱなしだった。
それもそのはず、彼女がかつていた虚圏ではこのような振る舞いをするものは皆無といってもいいくらいであり、唯一藍染だけは似たような振る舞いを彼女に対してしていたのだが、リーラにとってそれはあくまで主従の関係でしかなく、木場のような対等な立場でされたことに対して彼女の心はかつてないほど動揺していたのだ。
ちなみにその様子を見ていたイッセーはやはりイケメンは敵だと改めて認識し直していた。一応彼もリアスをはじめとした眷属の女性陣の心を掴んでいるのだが、それに気づくのはまだ先のお話。
「リアス部長。捕えた英雄派はここに置けばいいのか?」
「ええ、そこに置いておいて頂戴。ギャスパー! 彼らの意識を奪いなさい」
「は、はいぃぃ! ……意識よ~意識よ~眠れ~」
ゼノヴィアが担いできた英雄派構成員たちをリアスの指示通りひとつの場所にまとめると、ギャスパーが吸血鬼の能力を使って彼らの意識を奪う。
「部長。転送の準備ができましたわ」
「わかったわ。では転送しましょう」
朱乃の声にリアスは魔方陣を操作し、意識を奪い、拘束した英雄派構成員たちを冥界へと転送する。これで彼女たちの仕事は完了だ。しかしどこか浮かない表情をしている。
それを見たリーラは言う。
「ねぇ、リアスさん。なんでそんな顔をしているの? 戦いは私たちの勝ちで終わったじゃない」
「ええ、確かに私たちは彼らに勝ち、そしてなにか情報を得られるようにと冥界へ転送しているわ」
「じゃあなんでそんな顔? 私が好き勝手に虚閃とか虚弾撃っちゃったから?」
「そうではないの。問題は彼らを転送してもほとんど情報が得られてないってことよ」
そうなのだ。
事実リアスたちが今まで倒してきた英雄派構成員たちは彼女らに敗れ、冥界に送られると途端にその記憶を失っているのだ。どうやら神器にそのようにプログラムされているらしく、復元も不可能で得られる情報も全くといっていいほどない。
リアスの説明を聞いて、リーラは得心したように話す。
「そういうことなのねぇ……まぁ、どうしようもないわぁ、そんなことされちゃあね……」
「リーラさんの言う通りですね。……しかし、ここ最近厄介になってきましたね」
「ん? それはどういうことだよ木場」
木場の意見にイッセーが疑問を呈す。
「刺客の神器がだんだんとテクニックとかサポートタイプ寄りになってきたと感じてね。ほら、最初はパワーやウィザードタイプが大半だったじゃないか」
「確かに言われてみればそうですわね。もしやこちらに対し対策を立てているのかしら?」
同調する朱乃。イッセーは先程の戦いを振り返ってみて改めて感じた。
―――あの影使いはまさにそうではないか? と。
「アザゼル先生が言っていました。神器には未知の部分が多いと」
「それは私も思った。皆のもそうだけど、あいつらのもなかなか変な能力だなって」
リーラの一言に神器持ち組は若干心にダメージを負った。彼女からしてみれば斬魄刀の固有能力のように感じるのかもしれない。
「ねぇ、一言いいかしら」
「どうした、イリナ」
「最近の神器所有者ってなんだか変だと思わない?」
「それはどういう意味だ?」
イリナの発言にゼノヴィアは頭に?マークを浮かべた。
「だってさ、普通私たちを倒そうとするなら2,3回小手調べをしたら4回目、あるいは5回目辺りで勝負をしてくると思うの。でもそんなことはなかった。……今まで通りに送り込んでくるだけだった」
「つまりなにが言いたいの?」
「もしかしたら、神器所有者で神器の実験をしてるんじゃないかなって……」
「まさか……そんなことをして何になるというんだ」
イリナ、ゼノヴィアの発言に皆は黙り込んでしまった。自分たちを攻略するならまだしも、ただ神器所有者を敵地に送り込んでいるだけというのは不自然といえる。
と、小猫が口を開いた。
「……劇的な変化」
彼女の発言にリアスたちはどよめく。
「そんな……! まさか英雄派は私たちに神器所有者をぶつけて、禁手に至らせようとしているの!?」
「無茶苦茶な……! そう簡単にできるものじゃねえだろうよ!」
「でもイッセー君。最後のあの影使いと炎使いの様子は……そうじゃないかい?」
「……!?」
木場の一言に思い返してみれば、イッセーは確かに感じていた。あの2人が消えていくときに自身に悪寒が走ったことを。
―――あれがそうだって言うのか……?
イッセーは真剣に考え込む。
その一方で、話についていけていないリーラ。
「ね、ねぇ。さっきから話している内容が1ミクロンも理解できないんだけど……誰か教えてぇ……」
「「「あっ……(察し)」」」
………………。
……………………。
沈黙が流れる。リアスとその眷属は今更ながらに思い出した。
―――そういえば説明はなにもしていなかったなぁ……。と
「と、とにかく。私たちでもこれだけ意見が出るのだからあちらでもいろいろと意見が出るでしょう。今日は帰ってゆっくり休みましょう」
「あ、え、教えてくれないの……?」
「……帰ってからね」
「……」
結局、リーラへの説明はイッセーの家で行われることになった。
―○●○―
イッセーの家、リアスの部屋にて。
「……というものなのよ、神器って。理解できたかしら?」
「うーん、なんとなくは理解できたと思う……。私たちの斬魄刀みたいなものってことね」
「逆にその斬魄刀というものが理解できないのだけれど……」
この場にいるのはリアス、朱乃、アーシア、ゼノヴィア、イリナの5人。イッセーと小猫はイッセーの部屋にて仙術の治療中である。
戦闘から帰ってきた彼女らは、まずリーラにこの世界の情報を教えることにした。リーラの知る世界と彼女らの知る世界とでは大きな差があるため、なかなか苦労はしたが。
「しかし、驚きだな。死んだ者が、その……虚とやらになったりするなど……」
「そうだわ! 天国がないなんて信じられない!」
「死神というのも私たちの知るそれとは違うようね」
「うふふ、とても興味がありますわ」
「一体どんな方なんでしょう、その藍染様というのは」
三者三様、否、五者五様それぞれ反応をする彼女ら。リーラの話にとても知的好奇心が刺激されたようだ。
「私からすればあなたたちのこの世界のほうがよほど
「あら、そちらにはないのかしら?」
「ないと思う。
「でもあなたの話を聞いて思ったのだけれど……」
リアスは少し言いにくそうにしている。リーラはなんのことかと首を傾げている。リアスは言うべきかどうか迷ったが、思い切って言った。
「あなたって…………物語でいうところの…………敵側……よね」
……………。
ズガァァァァァン!
リーラの心に巨大な雷が落ちた気がした。そこにゼノヴィアとイリナがさらに追い打ちをかける。
「確かに敵側だな。その藍染というのはどう考えても反逆者じゃないか。君は尸魂界から独立したのだと言っていたが」
「そうよ! 破面だって彼の部下じゃない。彼の計画に加担している」
「う、う、あぅぅ……」
リーラは泣きそうだった。いや、もう泣いていた。その涙はどこかナイアガラの滝を連想させる。
「そ、そんなことないですぅ! 藍染様は偉大なんですぅ!」
「しかし、君から聞いた藍染の計画は確実に人間たちにとって甚大な被害をもたらすぞ。それでもか?」
「それでもですぅ! そもそも私たち虚からすれば人間なんてご飯ですぅ!」
お忘れかもしれないがリーラは食事のために黒腔を開けたらこの世界に迷い込んでしまったのだ。
「ご飯という割には、部室で食べたクッキーでお腹いっぱいでしたよね」
「私の入れたお茶もとてもおいしいといって下さいましたわね」
「はうあ!」
さらなるアーシアと朱乃の追撃に完全にとどめを刺されたリーラ。崩れ落ちて灰になっている。どうやら完全に図星だったようだ。
もはや屍同然となった彼女を置いて、ゼノヴィアとイリナは先程の戦闘における感想を互いに言っていた。
「だが、リーラの……虚閃、だったか? あれは凄まじかった。あそこまで精密に操ることができるとはな」
「
「
「銃みたいだったわ。音速を超えているんじゃないかしら?」
もちろん、2人の会話はリーラに届くことはなかった。
「さて、だいたい説明はできたかしらね。そろそろイッセーの仙術治療も終わったでしょう。私たちはイッセーのところに戻るわ。あとは彼女を……なんで屍のようになってるかは知らないけど……朱乃の部屋で休ませてあげなさい」
「うふふ、わかったわ、リアス。……行きますわよ、リーラさん」
「(藍染様は偉大だもん。私を拾ってくれたもん。
「あらあら、うふふ。真っ白に。……なんだかイジメたくなってきましたわ」
「……やめておきなさい、朱乃。……アーシア、行くわよ」
「はい、リアス姉さま」
こうしてリーラは朱乃の部屋で今日は休むことになった。
……彼女は寝る前にふと強烈な殺気をイッセーの部屋から感じた気がしたが、自分には関係ないかと無視しておいた。