ハイスクールD×D 転入生はアランカル   作:見裏世薄袈

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やはり何も変わりませんね
一緒の昔も、別々の今も







8.Never fade my crime

翌日、イッセーの家の地下の大広間で。

ここに今居るのはアザゼルとバラキエル、おなじみグレモリー眷属とイリナ+破面のリーラ、シトリー眷属、そしてヴァーリチーム+死神の静寂薄橙(しじまはくとう)

ただでさえヴァーリたちがいるのに、ヴァーリ曰く頼りになる戦力、薄橙がリーラと並々ならぬ視線のやりとりをしているため、この場の空気はロキと相対したときとは別の意味で重かった。

 

 

「さて、ヴァーリ。納得のいく説明をしてくれるんだろうな?」

「アザゼル、それは俺に聞くよりも本人たちに聞くのが一番じゃないのか?」

「お前のチームだろ」

「一時的な関係と言ったはずだ」

「…………」

「…………」

「……要するにお前もよくわからないってことだな」

「……否定はしないさ」

「「(ゲシッゲシッゲシッ)」」

「2人とも無言で足を蹴り合うのはやめるにゃ」

 

 

かつての仲間同士で、交わされる会話になんともいえない空気が漂う。片や各勢力に和平を持ちかける平和主義者(パシフィスト)。片や各勢力に喧嘩を売り込む闘争主義者(テロリスト)。その関係が本当なのか2人のやりとりで疑問に思う。

 

 

「あ、あなたがリーラの話に出てきた死神……なのよね?」

「ええ、そこの彼女がどう話したのかは大体想像つきますが、僕は正真正銘死神ですよ。かれこれ100年くらい」

「ひゃくねん!? あなた同年代じゃないんですか!?」

「一言も言ってませんよ」

 

 

平然と答える薄橙にイッセーはすでに頭が混乱しかけている。普通の人なら彼の反応もうなずけよう。薄橙の外見はどこをどう見てもリアスたちと何ら変わらない同世代にしか見えないのだから。それが実は1世紀生きてます、など信じられようか。

 

 

「ちなみにですけどそこの彼女は私よりも年上ですよ」

「(ぷいっ)」

『なにぃ!?』

 

 

視線をリーラに移す薄橙。当のリーラは不満げに頬を膨らませ、そっぽを向く。

 

 

「えええ!? そうだったんですか!?」

「すんごいフレンドリーに話しかけちゃってたんだけど、なんかごめんなさい!」

「……べつに、いいけど」

 

 

うつむき、答える。リーラにとって虚として生きてきた年月など心底どうでもよかった。どうでもよくなかったのは目の前の存在だった。

ジト目で薄橙を見やる。

 

 

「……なんでここにいるんですかぁ」

「それを説明するには一話じゃ足りませんね」

「一話?」

「何でもありません」

 

 

軽いジョークだった。

にこにこと微笑みを浮かべている薄橙にリーラの機嫌はますます悪くなっていってる。その様子をリアスたちははらはらしながら見守っていた。

もしここで彼女が彼に耐えきれず虚閃でも放ってしまえば確実に巻き添えを喰らうのだから。そのときはなんとしてでも彼女を止めなければならない。

余計なことを言ってくれるなよ。リアスたちは心の中で強く思った。

 

 

「まあ、結果だけ言ってしまえばですね。総隊長の極秘の命令で虚圏入りするはずが、なぜかヴァーリたちが”てろ”とやらを行っている場所に飛ばされてしまったのですよ。あの時はガラにもなくかなり焦ってしまいましたね、ははは」

 

「よく言うにゃ。にゃがれ弾が偶然当たったからと言っていきにゃり強力にゃ鬼道とやらを無表情で撃ち込んでくるのはホラーだったにゃ」

「しかもおれっちたちだけじゃなくその場の全員に万遍なくな」

「ヴァーリが咄嗟に魔方陣を展開してなければ危なかったですしね」

「それは申し訳ありませんでした、とか言っておきます。言ってみただけです」

「……全然反省してにゃいにゃ」

 

 

肩を落とした黒歌にその場の全員が同意した。薄橙という人物は木場と似たようなイケメンかと思いきやかなり容赦ない人物らしい。

アザゼルが聞く。

 

 

「それでどういう経緯があって、ヴァーリたちと一緒にいたんだ?」

「当てが他になかった、というのが一番しっくりくるでしょう。彼らは”てろりすと”らしいですが、根本までそれというわけではなさそうですし。道草を食う、寄り道する、駄賃代わりに。そんな感覚で行っている茶番だと感じました」

「言い得て妙だ、薄橙。俺たちはあくまで強者と戦うことが目的だからな。テロなど二の次、三の次だ」

「……対策を講じることがばからしくなってくる理由をどうもありがとう死ね」

「アザゼル、光の槍をしまえ。ここは室内だ。お前が撃ったらシャレにならん」

 

 

バラキエルが濃密な光力を込めた光の槍を投げようとするアザゼルを諌める。もっとも、バラキエル自身も手からバチバチとわずかに雷が出てる時点で強く言えない。

代わりにソーナが今度は尋ねる。

 

 

「あなたはこちら側のことをどこまで理解していますか?」

「概ね把握しているつもりです。それぞれの神話体系があって、連なる神々がいる。三大勢力以外は。そしてその各勢力に対して『禍の団』と呼ばれる者たちがあちこちで戦いを仕掛けている。こんなところですかね」

「ええ、その解釈で大体あっています。では今回のことは?」

「北欧の変態ジジイオーディンが日本の神々との会談をしに来たところ、同じ北欧の神のロキが邪魔をしに来たのでしょう?」

「その通りです」

「いや全然その通りじゃないですから、会長ぉ! 北欧の主神の認識それでいいんですか!?」

 

 

なにかがいつもと違うソーナを前に匙がつっこむ。リアスが親友のまさかの発言に反応する。

 

 

「ソーナ!? 確かにそうかもしれないけれど、ちゃんと彼に教えなきゃ!」

「いいえリアス。あれはその程度の認識で構いません」

あれ(・ ・)!? 仮にも神様に対してそれはどうなの!?」

「……私の胸を見て『あんまり揉みがいがなさそうじゃのう』と抜かす神は私の中では神として認めません(ギロリ)」

「そんな目で私や朱乃の胸を睨んでも困るわ!」

「悪魔とは世間で流布しているイメージと違って愉快な種族なのですね、ヴァーリ」

「俺と彼女らを一緒にしないでもらおうか」

 

 

話がだいぶ逸れてきたので、朱乃が場を仕切る。

 

 

「とりあえず皆さん、話を元に戻しましょうか(バチバチ)」

『すみませんでした』

 

 

閑話休題。

 

 

「それでだ、ヴァーリ。どうして俺たちと協力する気になったんだ?」

「ロキやフェンリルと戦ってみたい……が理由では不満かな?」

「不満だな。大いに不満だ……と言いたいんだが、正直なところお前の戦力は無視できない。各地で起こっているテロのおかげでこの件に人員を割くのは厳しいのが現状だ。他の奴らの見解ではお前が『英雄派』とつながっているんじゃないかと疑ってるが、そんなわけなさそうだしな」

「ああ。彼らとは基本不干渉だからね。それで正しい」

「サーゼクスもお前の申し出を無下には出来ないとかなんとか言ってるしな。本当に甘ちゃんだよ」

「お兄様……はぁ」

 

 

アザゼルの話によれば、魔王であるリアスの兄のサーゼクスは下手に敵対するより、協力し、監視できる関係になった方が賢明だと考えているらしい。さすがに悪魔のトップである魔王の判断ともなればいくらリアスがその身内ともいえど反対の意思を示すことは面だってできない。

同じく姉が魔王であるソーナもリアスと同じく、ヴァーリが今回の件に関わるのを苦々しく思っている。

 

 

「どうせお前のことだから何か企んでいるんだろうさ」

「さぁ? 何のことかな」

「ハァ……。ま、こいつのことはひとまず置いてだ。ロキとフェンリルに対する策だが……これはあいつらに縁あるものに訊くとしよう」

「(置くのか?)……訊くって誰にですか?」

 

イッセーが不思議そうにアザゼルに尋ねる。

 

「――――終末の大龍(スリーピング・ドラゴン )、ミドガルズオルムさ」

 

 

アザゼルはイッセーと横目でヴァーリと匙を見て笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―○●○―

 

「ミドガルズオルムとは?」

「五大龍王の一匹。ヨルムンガンドとも呼ばれる」

「あの眼鏡かけた黒人が笑いながらスタイリッシュに敵とか建物を爆発させていくやつですか?」

「そっちじゃねえよ」

 

 

アザゼルがミドガルズオルムの意識を呼び寄せるということで、イッセーたちを連れてそのための空間へ兵藤家から転移したあと、残されたリアスたちはしばらく、各々くつろいでいた。

いたのだが……

 

 

「ダージリン飲みますか?」

「私ディンブラ派」

「スコーンいかがです?」

「チョコチップクッキーまだかな」

「クラシックでも聴きましょうか」

「今期のアニソンCDいつ出るんだろ」

「先週の金曜ロードショーの『センター・オブ・ジ・アース 神秘の島』は面白かったですね」

「今週は日曜洋画劇場ないんだ……」

 

……………………。

 

「返事が無くて寂しいです」

「屍と虚は死んだ者なのよ」

「あなたたちは全く……」

 

 

予想以上に溝が深い2人のやりとりにかける言葉が見つからなかった。

とはいっても、どうやらリーラが一方的に嫌っているだけで、薄橙のほうはそんなことはお構いなしとばかりにリーラに構っているようだ。うざい。

 

 

「薄橙さん? どうしてそんなにこの子(リーラ)に関わろうとするのかしら? 敵同士なのではなくて?」

「呼び捨てで構いませんよ。……んー、理由、ですか。…………僕だからです」

「それは理由になってないわ」

「言ってみたかったんです。大満足」

「……あなたは人を怒らせるのが好きみたいね……!」

「今この家にいる人は兵藤夫妻とアーサーだけですよ、上級悪魔のリアスさん?」

 

 

リアスの紅髪が溢れ出た魔力によって逆立ち始めてきた。相当ご立腹のようだ。

 

 

「薄橙、極端に彼女らと溝をつくるのは控えてください。これからロキとフェンリルとの戦いを控えているのですよ」

「ついつい口が滑ってしまいまして。ようやっと会えたものですから、気分が高揚してるのでしょう」

 

 

諌めるアーサーにそう答える薄橙。その顔の薄ら笑いは変わらない。

 

 

「”ようやっと会えた”とはどういう意味かしら?」

 

 

訊いたソーナに対して、それを待ち望んでいたかのようにさらに笑うことで応える薄橙。

彼の口から出た言葉はその場の全員を―――ヴァーリチームの面々まで―――驚愕させた。

 

 

 

 

「彼女、リーラ・ルーイッヒは僕、静寂薄橙の『姉』にあたる人物なのですよ」

 

…………………………。

 

『はぁ!?』

 

 

数秒の沈黙のあと、満場一致のリアクションを薄橙(おとうと)はいただき、ありえないものを見た時の視線をリーラ(あね)はもらった。

 

 

「ちょ、ちょっとそれどういう意味なの!?」

「虚と死神という関係ではないのか!?」

「そんなことあるのですか!?」

「み、みんな落ち着いて……」

「あなたは黙ってて!」

「えー……私当事者……」

「騒がしい方たちですね」

『お前のせいだろ(でしょう)!!』

「失敬」

 

 

彼女らの驚きようは全くもって普通の反応である。

そもそも虚とは死んだ人間の魂であり、虚圏に住まうもの。死神とは尸魂界(ソウル・ソサエティ)を護り、そこに住まうもの。出処からして違いがある。

 

現世で死した魂は死神によって魂葬され、尸魂界へと行き着く。魂は循環する。

 

しかしリーラは魂葬されることなく、虚として100年以上過ごし、ついには希少な最上級大虚(ヴァストローデ)にまで上り詰めた存在であり、藍染にスカウトされて破面(アランカル)となった。

そして薄橙は彼女らのような虚を退治し、その魂を(プラス)に戻し、魂葬する死神である。また彼はかの山本元柳斎重國率いる護廷十三隊の一番隊第五席というエリートクラスの実力者。否、エリートである。その地位を担うほどの力があると現実に認められているのだ。……キャラはともかく。

そんな彼・彼女が姉弟? 笑えない冗談である。

 

 

「おかしいじゃない! あなたたちは破面と死神でしょう!? そもそも根本からっ……!」

 

 

それは今説明しました。

 

 

「つまりどういうことなの?」

「それを一から話すとなると、二話必要ですが」

「わけわかんないこと言ってないで!」

「二話って何のことですか?」

「アーシア、それはだな、この小s」

「ゼノヴィア! それ以上はダメよ!」

「まあ、要するにですね……」

「スルー!?」

 

 

ゼノヴィアの言葉を遮ろうとしたイリナの発言を流して薄橙は語りだす。

 

 

「僕と姉上(・ ・)はかつて同じように『人間』だった。『人間』として生き、『人間』として死んだ。死んだあとにそれぞれ違う『存在』となった。そして今に至る。……というわけです。ただ、それだけのこと」

 

 

―――これはあんまり言いたくはなかったことなのですけれどね……。

薄橙は目を閉じ、顔を伏せ、聞こえるか聞こえないかの大きさで呟いた。

先程までの煽っていくスタイルとは違う彼の様子に、リアスたちは思わず黙り込む。最初の時の真面目にふざけていた彼の面影はどこにもない。

 

どうしたというのか。

 

そこにいるのはまるで今の朱乃と同じく、過去の出来事にけじめをつけられないでいる一人の男だった。

 

 

「過去の話です。過ぎて、去っていった、現実。そうです。なんてことはない、誰でも持っているもの。話すほどのものでもない」

「薄橙、さん……?」

「……アーサー、黒歌、美猴。僕たちはもう休みましょう。あなたたちの実力ならそこのリアスさんたちやソーナさんたちのように心構えなど無用。気楽に臨みましょう」

「おいおい、どうしたんだよ薄橙。な~んかテンション下がってるじゃねえか」

「……ふふふ、久しぶりに多くの人と言葉を交わしたので、どうやら思いのほか疲れたようです。尸魂界にいたころはこんなことなかったのですけど。年ですかね? 先に部屋に行っていますよ」

「ま、待つにゃ。あんた鍵持ってにゃいでしょ。ヴァーリが帰ってくるまで……」

「―――縛道の三十四、通空」

 

ブウン。

 

黒歌の台詞を最後まで聞かず、鬼道を使う薄橙。

霊圧を込めた人差し指で空中をなぞると、それが切れ目となって穴が空いた。大きさは人一人がちょうど通れるくらい。その穴の先に見えるのは兵藤家からそう遠くないところにあるヴァーリチームが宿泊する用のホテルの一室。アザゼルが用意したものだ。

薄橙はリーラを一瞥すると、その穴を通り、行ってしまった。

……穴は彼が通った後すぐ消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日になると彼の態度は元通りの煽っていくスタイルに戻っていた。あの時の彼の様子はそのまま決戦当日まで再び表に現れることはなく、リアスたちは気にはなりながらも、深く考えることはしなかった。

しかし、リーラはその時の彼を見て思い出していたことがあった。

なんとなく重なったのだ。

自分を見た時の彼の表情が、昔の彼と。

 

 

 

何十年前だろう。

まだ彼女が中級大虚(アジューカス)で、薄橙が当時席官でもない、普通の死神だったとき。

2人が死んでから初めてまともに向かい合った、言葉を交わしたあのとき。

敵同士のはずなのに、彼が自分を見て発した第一声。

 

 

 

 

 

――――姉上、ごめんなさい! 僕が全部っ(・ ・ ・ ・ ・)悪かったんですっ(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)!!――――

 

 

 

 

リーラには何のことかわからなかったが。

彼は、大粒の涙を流しながら、その場に崩れ落ちて、慟哭した。




新キャラうぜーなと思った方は作者の思惑通りですはい←


さて、最後の回想ですが、2人の過去に何があったのかを詳しく語るのはイッセーが一度死んじゃう話(原作11~12巻)あたりで語る予定です。イッセー無視して。ごめん、今から謝っとくわイッセー。

次回こそはロキとフェンリルとの戦いになる予定です。

今回の後半で薄橙が使っていた鬼道はオリジナル。
今後もいくつかオリ鬼道出てきますが、詠唱はなんも考えてないので全部詠唱破棄で彼に使ってもらいます。
そこそこ強いのも出す予定。よくあるチートものになり過ぎない程度に。

ちなみに今回使った「縛道の三十四、通空」はあらかじめ霊圧を残しておき、その残した場所に本人限定ですぐに移動できるという空間移動的な鬼道です。それだけ。

あ、もし皆さんが考えた鬼道で使ってみて☆というのがあったら是非とも採用したいなーとこれ書いてる時に思い付いたのですがいかがでしょう?

活動報告で募集したいと思います。

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