ハイスクールD×D 転入生はアランカル   作:見裏世薄袈

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役者は舞台に、観客は席に
荘厳なる鐘の音は劇場に








9.What are gods of mythology?

――――僕の、……せいで! 姉……は、姉上……!!――――

 

声を、聞いた。

 

――――……があの……! ……へ……けたからっ!――――

 

泣い、ている……?

 

――――……上の……けをっ! ……なかったからっ!――――

 

君は……だれ……?

 

――――姉……っ! ……にっ!――――

 

ちょっと、待って…………! それ以上は…………!

 

 

 

――――*********だっ!!――――

 

 

 

 

 

「ああああああああ!!!」

 

 

今まで出したことないような大きな声を出して、リーラは跳ね起きた。着ているパジャマ(通販)は寝汗で軽く湿っている。

まだ日によっては思い出したかのような夏の暑さが身を焦がす今日日、リーラの目覚めは最悪だった。

頭を押さえる。

 

 

「今の……夢……? 破面(アランカル)の私が……?」

 

 

いまだ焦点の合わない目で、掛け布団を見ながらリーラは呟く。

心を失い、人の魂を喰らい続け、もはや人とはかけ離れた存在である私が今更人と同じように夢を見た?

そんなまさか。

 

 

「ちゃんちゃらおかしいよね……」

「……別にかまわないと思いますよ?」

「ひやぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

変な声が出てしまった。

リーラは真っ赤な顔で、声のした方向を向く。

そこにいたのはあの日リアスたちの前で盛大なカミングアウトをしたかと思いきや勝手に消えていった例の彼―――薄橙がいた。

いつものように薄ら笑いというか、なんと呼べばいいのかわからない笑みを浮かべている。

 

 

「い、いつからそこに……?」

「30分前くらいからですかね」

「うそでしょ!? 探査神経(ペスキス)にはなにもっ……!」

「ええ、嘘です。今来ました。驚きました?」

 

 

そんなことよりうざい。リーラは心の底からそう思った。

とはいえ、今はこの汗でぬれたパジャマ(肉球)を着替えなければと思い、リーラは朱乃と共用で使っている衣装棚に歩を進め……

 

 

「いつまで居るの!」

「着替えが終わるまでですが?」

「真顔で言わないで!」

 

 

何を言っているんだ? とでも言いたげな薄橙の顔。

リーラは声を荒げる。

 

 

「あなた平然と女性の部屋に入ってきて、しかも着替えを見ようだなんて最低すぎるわ!」

「僕にとっては最高です」

「胸に穴開けて死にたいの?」

「我々の業界ではご褒美です、姉上」

「そう。なら受け取りなさい! ()……」

「―――あらあら、ここで何してるのかしら? リーラさん、薄橙さん?」

 

 

部屋がいきなり静かになった。

リーラがぎぎぎ、と首を向けるといつもの微笑みと珍しく憤怒のオーラを浮かべたこの部屋の本来の主である朱乃がドアのところに立っていた。

もちろん手には雷。

 

 

「リーラさん、室内で虚閃は撃たないでくださるかしら?」

「……はい、ごめんなさい……」

「薄橙さん、みだりに男性が女性の部屋に入ってはなりませんよ?」

「またの機会に取っておきます」

「そういう意味ではございませんわ」

 

 

薄橙の辞書に反省の言葉は無いらしい。

一礼をしたあと、彼は同じく鬼道を使い、姿を消した。

 

 

「あの方の心は読めませんね」

「どうせ大したこと考えてないと思うよ」

 

 

窓の外から雀の鳴き声が数度聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―○●○―

 

日は暮れた。

リアスたちグレモリー眷属+イリナ+リーラ、ヴァーリチーム+薄橙、上空に術で姿を隠したタンニーン、戦乙女の鎧姿のロスヴァイセ、会談の仲介役で不在のアザゼル代わりのバラキエル。その彼女らをロキとともにこの会談の場から転移させるためのサポート要員のシトリー眷属。一同が会していた。

 

 

「風が強くて少し寒い……」

「リーラさん大丈夫ですか」

「まあ……。ありがとね、木場くん」

「いえいえ」

 

 

会場となるホテルの屋上。夜になれば温度も下がり、高所ゆえに風も強い。

見た目通りあんまり耐寒性能のない白い死覇装はやはり寒かった。

震えるリーラを見かねた木場が彼女にふわりと、上着を掛ける。

 

 

「これは……?」

「一応防寒で持ってきたものです。僕は結構ですので、リーラさんどうぞ」

「え、でも、悪いよ」

「お気になさらず」

 

 

押し切られる形でリーラはその上着を受け取った。内側に毛皮のついたグレーのパーカーだ。

そのようなやりとりをしているとリアスが時計を見て呟く。

 

 

「時間ね」

「会談が始まったか」

 

 

イッセーの言葉にメンバーの顔が険しくなる。

ロキがついに来るのだ。

 

 

「小細工なしか。恐れ入る」

「豪胆な神様ですね」

 

 

ヴァーリと薄橙がそう言ったとき、空間が歪みはじめ、ロキとフェンリルが姿を現した。正面から堂々とやるつもりらしい。

だが想定の範囲内だ。

 

 

「目標確認、作戦開始」

 

 

バラキエルの合図でソーナたちシトリー眷属が大型転移魔方陣を発動させる。

 

向かった先は遠く離れた、今は荒れ地と化した採石場だ。

転移させられたというのにロキは余裕そうな表情をしている。

リアスが言う。

 

 

「逃げないのね」

「貴様ら相手に逃げる必要などない。抵抗するならば、排除するまで。オーディンの場所に向かうのはそれからでも遅くなかろう?」

 

 

たかが悪魔数名とその他もろもろが集まろうとも大したことはないと哄笑するロキ。

バラキエルが反応する。

 

 

「貴殿は危険な考えにとらわれているな」

「なにを言うか。各神話の協力、和平こそ危険な思想だと気付かぬ愚か者共め」

「……話し合いは不毛だったか」

 

 

致し方なし。

バラキエルは背中に10枚に及ぶ黒き翼を広げ、手に雷光を纏わせ、戦闘態勢に入る。

と同時にイッセー、ヴァーリも禁手(バランスブレイカー)となり、ロキへそれぞれ突貫する。

 

 

「ふはははは! 二天龍が我の前に立ちふさがるか! これはいい、存分に楽しもう!」

「……嫌な人」

「同感です。―――破道の三十三、蒼火墜」

 

 

ドォオオン!

 

薄橙の放った鬼道がロキに命中する。その隙を狙ってイッセーが倍加した拳でロキを殴り飛ばそうと接近する。

 

 

「くらえぇぇぇ!」

『boostboostboostboostboostboostboostboost!』

「その程度!」

 

 

ロキが反応し、防御魔方陣を前方に展開するも、イッセーはお構いなしに拳をぶつけた。

 

バギィィイイイン!

 

「これを破るか!」

「―――よそ見はいただけないな」

「その通り」

 

 

魔方陣が破れた直後、ヴァーリが覚えた北欧の魔術を、薄橙が鬼道をそれぞれ撃ち込んだ。

 

ゴォオオオオオオオン!!

 

膨大なエネルギーゆえ地形が軽く変わる攻撃。ロキはまともに食らう。

しばらくのち煙が晴れて、ロキの姿が確認できた。

だが……

 

「……あれを受けてその程度かよ」

「ふははははは! 面白いではないか! 二天龍にイレギュラーの力! これほど胸が高鳴ることはないぞ!」

「そのまま心臓が止まってしまえばよろしいのですがね?」

「口の悪い奴だな。……ならば、こちらもぼちぼち攻勢に移ろう」

 

 

ロキのダメージは精々服が破けた程度だった。その結果にイッセーは落胆せずにはいられない。

今度はロキが動いた。

 

 

「フェンリルよ! 奴らの喉笛を掻き切ってしまうがいい!!」

「残念だけど……そうはさせないわ!」

「にゃん♪」

 

 

ロキの言葉にフェンリルが歩を進めるが、リアスの合図で黒歌が術を発動、大規模な魔方陣が展開し始める。

そこから出てきたのはフェンリル対策として用意していた魔法の鎖。

 

 

「グレイプニルか。そんなものにむざむざと……」

「かかってもらうから! 無形虚閃(セロ・インタンシブル)…………≪千・尖≫(ミル・カスピーデ)!」

 

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴゥン!!

 

リーラの右目から放たれた虚閃が声とともに勢いよく分裂し、フェンリルにダメージを与えていく。

決定打にならずとも、動きを止めることはできた。

 

ガギギギギギギギィン!

 

その間に他のメンバーがグレイプニルを投げつけ、フェンリルを封じた。

 

 

「フェンリル捕縛完了だ」

 

 

バラキエルが言う。これでロキの戦力の半分を削いだといえるだろう。リアスたちは胸を撫で下ろす。

あとはロキをなんとかすれば……皆の心にその考えがよぎる。

しかし、当のロキは全く焦ってなどいなかった。

むしろほくそ笑んでいる。

 

 

「なにがおかしいんだ? ロキ」

「いやなに。フェンリルを封じればよいと考えてる貴様らの頭が平和すぎてな」

「……なんだと?」

 

 

ヴァーリの質問にロキが答える。その答えにタンニーンが言葉を発した。

 

 

「それはどういう意味だロキ」

「つまりこういう意味だタンニーン。―――いでよ、スコル、ハティ!」

 

 

ロキがローブを翻し、高らかに叫ぶと彼の両側の空間が歪み始める。そこから出てきたのはまるでフェンリルのサイズを二回り小さくしたかのような狼だった。

まさかの登場に一同は驚愕する。

 

 

「なっ……! これはどういうことだ!?」

「フェンリルが2体? いや、あっちも含めて3体?」

「あわわわわっ、wっわっわwdさwだs」

「ギャ-くん落ち津いて」

 

 

ゼノヴィア、イリナが目を疑い、ギャスパーに小猫が声を掛けるが自身も動揺していて変換を間違えている。

ロキがそんな彼女らを見やりながら言う。

 

 

「スペックは多少落ちているが、まごうことなきフェンリルの力をもつ狼だ。十分に神を屠れる」

「おやまあ、子供ですか? 可愛げが皆無ですね」

「ふふふ。なに、楽しめそうじゃないか、薄橙」

「こちらも可愛くない」

 

 

2体を前にして、先程より楽しそうな表情のヴァーリ。戦闘好きはこの状況でも楽しいらしい。薄橙まで呆れている。

ロキが命ずる。

 

 

「さあ、スコル、ハティよ! 父を拘束したものは奴らぞ! 殺すがいい!」

 

オォオオオオオオオオオオオン!!

オオオォオオオオオオオオオオン!!

 

その声に2体は吠える。

2体はそれぞれグレモリー眷属+イリナ+リーラとヴァーリチーム+薄橙に駆けだす。

雲に隠れた夜空の月が姿を見せた。

 

―――満月だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガッ! ゴッ! ギィイイイン!! ドォオオン、ドォオオオオオオン!!!

 

「やべえよ、コイツ! 超つええよ!」

「美猴うっさい! ちゃんと攻撃してるの!?」

「やってるわ、クソッ!」

 

 

黒歌と美猴が言い争う。戦闘中なのだが。

2人を無視して攻撃を続けるヴァーリ、アーサー、薄橙。

 

 

「いやぁ、強いですねぇ」

「そう思うのならもっと力を出さないのか?」

「死にたくないですしねぇ。死神ですけど」

「冗談はやめてください」

「すみません、割と本音です」

 

 

でもまあ、と薄橙は続ける。

 

 

「出し惜しみはしてられないですよね。……少しだけ足止めできます?」

「わかった」

「はやくしてください」

 

 

そう言うとヴァーリとアーサーは子フェンリルへさらに激しく攻撃を仕掛ける。

その隙に薄橙は斬魄刀を体と向き合うように構えて、紡ぐ。

 

 

「―――当たれ、纏砲(てんほう)

 

 

斬魄刀が光に包まれたかと思うと、粒子となって薄橙の右腕に吸い込まれていき、光が収まるころに彼の右腕には、

 

 

「これ現世でなんて言うんでしたっけ? 対空機銃?」

 

 

鈍い輝きを放つ鉄の塊が装着されていた。

それを子フェンリルに向けて構える。

 

 

「ヴァーリ、アーサー。いきますよー」

 

バラララララララララララララララララララララララララララララララ!!

 

轟音とともに一斉に掃射する。

弾丸は核が薄橙の霊圧、その周りを周囲の霊子で固めている。通常の人間の使うそれとはもちろん威力も違っていれば、弾数も薄橙の霊圧に比例するので実質無限に等しい。

 

オオオオオオン!!

 

子フェンリルが苦しげに吠える。

一発一発は致命傷とは程遠いが当人にとってはしつこい攻撃。切れ目のない弾幕に苛立ちを募らせていく。

そして―――その隙を逃すヴァーリたちではなかった。

 

 

「薄橙そのまま頼む。お前達、側面と足元にまわれ」

「了解にゃ~ん」

「任せとけって!」

「やりましょう」

「これで終いですか?」

 

ボォオオオオオ!

 

右から黒歌の仙術が。

 

ガァアアアアアン!

 

左から美猴の如意棒が。

 

ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ!

 

足元からアーサーのコールブランドが。

 

バララララララララララ!

 

正面から薄橙の纏砲が。

 

ドォオオオオオオオオオオオオオン!!

 

そして上空からヴァーリの極大なまでの魔力が襲い掛かった。

彼らの一斉攻撃は通常ならば、倒せないものなどそうそういない。大抵の輩ならこれで終わる。

今も子フェンリルのいた場所からは煙が立ち込めている。

あれだけの攻撃を喰らって、果たして奴はどうなったのか。

答えは至極……単純だった。

 

 

「うっそ!? まだ倒れにゃいの!?」

「おいおい、けっこうマジな一撃だったんだぜ!?」

「神を喰らう狼……その名は息子と言えど簡単には折れませんか」

 

 

子フェンリルは―――所々傷を負い、血を流しながらも―――悠然とそこに立っていた。

 

 

「どうします、ヴァーリ。子供でこれ(・ ・)となると、親の方にあれ(・ ・)を実行するのは厳しいのでは?」

「……いや。俺はまだアレを使ってない。アレならいける。計画(・ ・)は実行だ」

「そうですか……」

 

 

アーサーがヴァーリに問うが、ヴァーリは毅然として答えた。

彼らにはなにか目的があるようだ。

 

 

「俺はロキと戦う。こちらは任せる」

「わかりました。ご武運を」

 

 

イッセーたちと戦うロキにヴァーリはオーラを噴出させて突撃した。

その姿を横目で見やると薄橙は、

 

 

「ヴァーリ、あの男を本気にさせないでくださいね。僕はまだ死にたくないし、あなたもまだ死ぬべき(・ ・ ・ ・)ではない(・ ・ ・ ・)でしょう(・ ・ ・ ・)?」

 

 

そう口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グレモリー眷属たちは焦っていた。

フェンリルを封じたと思っていたところにまさかの子フェンリル。

それなんてクソゲー? wikiに載ってなかったけど?

 

 

「イッセー! あまり無茶はしないで! フォローするわ!」

「っ! すみません、部長!」

 

 

遮二無二突っ込むきらいがあるイッセーを無理させまいと声を飛ばすリアス。

さらに他の眷属へ指示を出す。

 

 

「祐斗は足元を狙って! イリナは後方からそれを援護! ゼノヴィアはうまく攻撃を避けつつ、デュランダルのオーラを高めなさい!」

「僕の聖魔剣を舐めないでもらおうかっ!」

「援護はまかせて!」

騎士(ナイト)の速さだけじゃ厳しい、か、なっ!」

 

 

木場は高速で動き回り、子フェンリルの足に傷を増やしていく。イリナはそれを避けようとする子フェンリルに牽制の意味も含めて光力の槍を投げる。ゼノヴィアも木場と同様に高速で動きつつ、うまく距離を取ろうとする。

 

 

「犬風情め、焼き尽くしてくれる!」

「フルバーストはいかがです!?」

 

ゴォォオオオオオオオオオ!!

ドドドドドドドォオオオン!!

 

タンニーンが隕石に匹敵するといわれたブレスを浴びせ、ロスヴァイセが大量に展開した魔方陣からさまざまな属性の魔法を乱れ撃つ。

 

 

「いい塩梅だ……。だが足りない!」

「なっ……!?」

「まずっ……!」

「ゼノヴィア、イッセー!」

 

ヴウゥゥゥン!

 

子フェンリルに意識を向けていたところを狙って、ロキが手元の魔方陣から巨大なエネルギー弾を発射する。

周りの者もまとめて飲み込まんと迫るそれにリーラが立ちふさがる。

 

 

「リーラさん!? 危ないですよ!」

「私ならいける!」

「ちょっ……!」

 

 

彼女の行動を見て慌てるイリナにリーラは自信満々に返す。

リーラは腰の斬魄刀を抜くとエネルギー弾に対し、一閃。縦に振りぬいた。

 

ゴバァァアアアアアアン!!

 

「えええぇぇぇぇぇぇ!? うそぉぉ!?」

「あれほどの質量の魔法を切り裂いたのですか!? 刀だけで!?」

「……ありえなさすぎです」

「あらあら、激しい……」

 

 

やり方は至極単純。リーラは斬魄刀に霊圧を込め、あとは自身の膂力に任せて振ったのだ。

彼女の霊圧は虚圏(ウェコムンド)でも、バラガンやスタークに次ぎ、ハリベルやウルキオラと並ぶほどの数値を叩き出す。しかし、それほどの量がありながらコントロールが運任せではないかと他の者が疑うほど下手くそであり、なおかつ生来の思い込みの激しさによる被害妄想や精神の弱さゆえに藍染が十刃(エスパーダ)に選ぶことを断念し、不安要素として嘘の任務を言い渡し、事実上追放したのだ。

だから、まともに力を使えばこのぐらいは彼女にとってなんてことはない。

ちなみに今回はたまたま成功した。

 

 

「ほう……? そこの女、我の一撃を剣で切り裂くとはなかなか面白いではないか」

「どうも。といっても、あなたのはスターク様の無限装弾虚閃(セロ・メトラジェッタ)ほどでもなかったけど」

「舐めた口をきく」

「スターク様……?」

 

 

自分の攻撃を防ぎなお大したことはないとのたまうリーラに、ロキは苛立ちを覚える。

アーシアはリーラの言ったスターク様が誰なのかわからないようだがそれは後日話します。

斬魄刀を右手でぶらぶらさせながらロキを見、リーラは言う。

 

 

「リアスさん、私があの変な奴の相手するよ」

「リーラ!? それはいくらなんでも……!」

あの程度の(・ ・ ・ ・ ・)霊圧しかない(・ ・ ・ ・ ・ ・)なら大丈夫だよ」

「あの程度ってあなた……。正気?」

 

 

ロキの力を軽く見てるリーラをリアスはたしなめる。

いくらリーラが自分たちよりも実力があるといっても相手は神だ。文字通り次元が違う。たとえ1柱でも町1つ、国1つを滅ぼすぐらいは神という存在にとってたわいもないこと。それに対しあの程度と言うことは、リーラはこれまでどれほどの実力者と戦い生き延びてきたというのか。

リアスの不安が皆にも伝わる。木場だけはリーラの虚圏時代を本人から多少聞いているのであながち慢心ではなさそうだと思っているが。

 

 

「ふん。このロキに対しそれほどの口をきくならば、いいだろう。直々に我が力で以て屈服させてやろう」

「屈服? 私の前でその言葉を使うなんて、それこそ”どの口がきいてるの”?」

「リ、リーラさん。俺も戦います。ので……挑発はしないでください……」

 

 

イッセーが宥めるように言う。鎧姿でのそれはシュールだった。

 

 

「いくぞ小娘!」

「どうぞぉ?」

 

ドォオオオオオオオ!

ヴウウウウウウウウウン!

 

色鮮やかな魔法と薄紫色の虚閃がぶつかる。

あまりに強大なエネルギー同士のぶつかりに他の皆は手で顔を覆う。タンニーンとイッセーは少しは平気そうだ。

 

 

「兵藤一誠! 今だ!」

「おぉおおおおお!」

「っ!?」

 

 

この隙に、とイッセーが背中のジェットを噴かせてロキの側面へまわりこむ。

手にオーラをためながら。

 

 

「今なら……当たんだろっ!」

「くっ!」

『boostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboostboost‼‼』

『Transfer!!』

「ドラゴン、ショットォ!!」

 

 

ロキの魔法とリーラの虚閃が衝突している間に溜め込んでいた力を一気に解放し、ロキめがけて放つ。

急いで防御魔方陣を展開しようとするが、リーラの虚閃の勢いがそれを許さなかった。

 

ゴバァァアアアアアアアアアアアアン!!!

 

かろうじて身を捻るもイッセーのドラゴンショットは命中した。

赤いオーラの奔流がロキを飲み込む。

数秒の閃光のあと、視界が開けた。

 

 

「くぅぅ……。凄まじい一撃だったわね」

「さすがはイッセーだな。私のデュランダルの一撃とは規模が違う……」

「今代の赤龍帝は歴代でもそれほどでないと聞いていましたが……。認識を改めなければなりませんね……」

 

 

ようやく前を見ることが出来、各々感想を漏らす。

アーシアがイッセーに聞く。

 

 

「あ、あの、彼らはどうなりましたか……?」

「俺の倍加した一撃をモロに食らった。無傷とはいかないさ。…………たぶん」

「イッセー君、それフラg」

「皆! 気を付けろ!」

 

 

イッセーの台詞がまずかったのか、突っ込んだイリナがまずかったのか。

バラキエルが警告する。

ロキのいる場所から次の瞬間、まばゆい光が走る。

 

カァアアアアアアア!!

 

「ひぃいいぃい! なにが起こったんですかぁ!?」

「これほどの光……それにこの周囲の気の乱れ……」

「まだ、終わりそうにないね……」

 

 

木場が呟く。

光が少し弱くなった頃、背後に無数の魔方陣を展開したロキが姿を現す。

 

 

「なっ、あいつ!」

「少し目を離した隙に厄介なことになったようだ」

「ヴァーリ!? いつの間に……」

「さっきから見ていたさ。攻撃しようとしたらそっちの女性が勝手に戦い始めてしまったから、少し見てみたくなってね」

「見てみたくなって、って……。助けに入ってくれよ」

「邪魔するのは無粋かなと感じたまでだ。子供のフェンリルは仲間に任せたからロキは俺が殺ろうとしたのだが」

「字、字が違う」

「……話はすんだか?」

 

 

明らかに怒気を含んだ声でロキは聞く。

オーラの質と言い、背後の魔方陣と言い、なるほどご立腹のようだ。

ローブのあちこちが破れ、場所によっては素肌が覗く。が、無傷でなく痛々しい跡が残っている。イッセーのドラゴンショットは思いのほか効いたのだろうか。

 

 

「……俺の一撃は効いたようだな」

「まあ、そこそこは、な」

「ほう、兵藤一誠の攻撃があれだけの傷を?」

「……勘違いしているようだが、赤龍帝の一撃による負傷はお前たちの見ているであろう流血した左腕ではない」

「なに?」

 

 

ロキの言葉にヴァーリが首を傾げる。

魔方陣の展開が間に合わなかったから、それほどの傷を負ったのではないのか?

しかし実際は違った。

 

 

「この左腕はそこの小娘の一撃をやむなく左腕で防いだ時に負ったもの。赤龍帝の一撃は精々ローブを布きれに戻した程度だ」

「なん……だと……?」

 

 

タンニーンが絶句する。否、この場の誰もが驚く。

タンニーンの目から見ても、あの時のイッセーの一撃はいい一撃だったといえる。冥界で彼を鍛えたときよりも威力もドラゴンの力もだいぶ上がっていると感じていた。日頃の鍛錬の成果だろうと。

それがローブをぼろぼろにするのが精一杯だったのもうなずけなくはない。相手は神だ。着ているローブもそれなりに防御魔法が施されていただろう。

 

だが、リーラ―――彼女はどうだ?

ロキの左腕はいたるところから流血している。指の先から地面に向かって血が少しずつ落ちていってる。誰がどう見ても重傷。

ロキはやむなく防いだ、と言った。

もし彼女の虚閃とやらがイッセーのドラゴンショットと同威力なら手をかざす程度で事足りる。ロキ自身もそう思っていたから「やむなく」左腕でかばった。

それがこの有様だ。

 

タンニーンやバラキエル、ヴァーリ、そして自分が放ったドラゴンショットの威力を知っているイッセー。

彼らはこのとき理解した。理解してしまった。

 

―――リーラは( 彼女  ・ )力の差が(・ ・ ・ ・)別次元だと(・ ・ ・ ・ ・)

 

 

「我がこれほどの傷を負うとは…………フェンリルの反抗期以来だ……」

「(反抗期あったんだ)そんだけ負傷してまだやる気かよ?」

「ふん……貴様らにはわからんだろうな。神話体系のもつ意味を」

「……意味ですって?」

 

 

ロキは重く言葉を発する。

リアスが聞き返し、ロキは続ける。

 

 

「神話とは思い。地域ごとに住まう人間どもが自分たちの力の及ばぬものを信仰し、敬い、畏れ、縋る。それらが永い時を経て形となる。その形が……神だ」

「……形……」

「ここ日本が最も顕著ではないか。万物に神が宿るという思想が」

「八百万の神々か」

「そうだ。世界各地で共通点が見られる。日本ほど範囲は広くないにせよ、本来神というのは自然現象や人間どもの願いといったものから生み出されてきた。海が荒れるのは海の神の怒り。雨が降るのは空の神の悲しみ。戦の勝利は戦の神の加護。そう人間どもが信じてきたからこそ、それらを司る神が誕生した」

「……なにが言いたいんだ?」

 

 

真剣なロキの言葉にイッセーはどういうことかと訊ねる。

ロキは途端に荒げた。

 

 

「なにが言いたいかだと? わからんか! 貴様ら聖書の連中は平然と他の神話勢力の領域に土足で踏み入り、自分たちの神を説いた! 結果、いくつもの神話が、神々が、信仰を失い、歴史の闇へと消えていった! これがどれほど嘆かわしいことか理解すらできんのか!」

「なっ! それは聖書の神や教会のしたことでしょう!? 私たちは悪魔、そんなこと……!」

そんなこと(・ ・ ・ ・ ・)? 先人のせいにして自分たちは関係ないと? ならば悪魔崇拝とやらはどう説明してくれるのだ!? 人間の若者がそれに憑りつかれたおかげで継承されぬ神話もあるやもしれんのだぞ?」

「……っ! それは……」

「我がここにいる理由。オーディンに会談をやめさせようとする理由。どうせお前たちは我が悪神だからとか他の神話勢力が気に入らないからだとでも考えているのだろう? ああ、そうだ。それはほぼ間違いではない。だが、本当に気に入らない、滅ぼしたいと思っているのは日本神話でも仏教でもギリシャ神話でもヒンドゥー教でもない…………」

 

 

……………………。

 

ロキは一拍ためて言い放った。

 

 

「―――古くからの祈りを、先人の願いを、一つ一つの形となった神々を、すべて否定し十字架を立てた…………貴様ら聖書の連中だぁぁ!!」

 

 

ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

ロキのいる空中が歪むほど、下の地面に触れているわけでもないのにクレーターができるほど、極密度にして大質量のオーラがほとばしる。

背後の魔方陣は輝きはじめ、狂ったように模様が回り出す。

叫ぶ。

 

 

「貴様らが聖書を広げるために神はおろか、その地の人間までも信じぬから(・ ・ ・ ・ ・)という理由で殺す始末!」

「……ロキ様……」

「そんな連中が和平を説く? 他の神話が話し合いに応じない? 当たり前だ! それがお前たちの歴史だからだ!」

「……ロキの言うことも一理あるな」

「そんな愚行、見るに堪えん! この我が同じ目に合わせてやる! 刻んでやる、貴様らの歴史を!!」

 

 

憤怒の形相でリアスたちを睨むロキ。

紡いだのは呪文。

これまで無造作に放っていたそれを今度は力―――祈りをこめて放つ。

 

 

ALU ANSUR GIBU (ロキが与える)KEN GEOFU(猛火の贈物)!!」

       (アル  アンサズ)  (ギヴ)       (カノ  ゲーボ)

 

ボォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

 

ルーンなどこの場ではロスヴァイセと覚えたばかりのヴァーリくらいしか意味を理解できないが、イッセーたちはすぐに覚えることが出来た。

……目の前に隕石を彷彿させる炎の塊が迫ってきたのだから。

 

 

「ヴァーリ!」

「あいにく、神格相手だと半減がうまく作用しないんだ」

「くそっ!」

『DivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivide!!』

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

『Transfer!!』

「ドラゴンショットォ!」

「ハァアアアアア!!」

 

 

イッセーとヴァーリが神器(セイクリッド・ギア)の出力を上げ、ロキの魔法に対抗する。

 

 

「くっ……私たちもですわ、部長!」

「そうねっ……皆2人に援護射撃よ!!」

「聖魔剣よ!」

「光、いくわよ!」

「デュランダル……力を貸してくれぇ!」

「な、なんとか止めますぅぅぅぅ!」

「少しでも……仙術で……!」

「フルバーストで!」

「わが雷光を!」

「炎には炎だ!」

「虚閃! ……と虚弾(バラ)散・撒(ウェルヤ・イスパースァ)!」

 

 

なんとか総攻撃でロキの一撃を弱めようとするも、非常かな、ロキの本気の魔法の炎は採石場後を火の海へと変えてしまった。

 

さながらそれは北欧神話に伝わる神々の黄昏(ラグナロク)の最後のように……。





…………。
多ぉぉぉぉい!!

そう思ったのではないでしょうか。
すみません、区切りがわからなかったんです。
ちなみに10925文字。
あ、聞いてない? それはそれは……。


今回の解説です
≪千・尖≫(ミル・カスピーデ)
英雄派構成員との戦いで使用した、ヴヴヴヴヴヴヴ……、って虚閃がわかれてたやつです。こんな名前でした。スペイン語。

・当たれ、纏砲(てんほう)
薄橙君の始解です。右腕の肘から先が機銃になります。イメージとしてはGEのサイレントクライやレイジングロアですかね。刀とはなんだったのか。

・それなんてクソゲー? wikiに載ってなかったけど?
載ってます。スコルとハティについてはWikipediaの北欧神話のページにちゃんと書いてあります。あなた普段イッセーの家の個別PCでニコ動見てるんだからたまにはググりなさい。

・リーラは腰の斬魄刀を抜くとエネルギー弾に対し、一閃。縦に振りぬいた。
まともにやればうちのリーラちゃんはこれくらいできちゃいます、という話。ただし成功率は5割。失敗すると弾け飛びます。リーラちゃん以外が。

・アーシアはリーラの言ったスターク様が誰なのかわからないようだがそれは後日話します。
作者「アーシア、TSU○YAでBLEACH借りてきたから読みなさい」
アーシア「」

・ロキの後半の台詞
賛否両論あるかと思います。彼ならこんなイメージかな、というつもりで書きました。もし、違う考えの方やキリスト教徒の方がいらっしゃったらすみません。反論等甘んじて受けます。

ALU ANSUR GIBU (ロキが与える)KEN GEOFU(猛火の贈物)!!」
       (アル  アンサズ)  (ギヴ)       (カノ  ゲーボ)
オリジナル。実際は全然違うでしょうけどこのお話ではこういう設定で使いました。この一文だけにネットを30分うろつきました。

虚弾(バラ)散・撒(ウェルヤ・イスパースァ)
字の通りです。指先から虚弾をひたすら撃ちます。スペイン語。てか彼女の虚弾は普通のさらに20倍の速さなのでぶっちゃけ他人からだと腕上げてるだけにしか見えない。藍染様もたまに当たる。

今回はこの辺りで。
活動報告で使ってほしい鬼道など募集してますのでよかったらどうぞ。

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