「見て、花冠出来たよ!あげる」
少年は美しい髪の少女の頭にスイートピーの花冠をのせた
「フフ、ありがとう。」
「きっとコレはお前を守ってくれるだろう!!」
そう笑顔で青年が言えば少女は不思議そうな顔をして疑問を口にする
「リヒトは?リヒトは守ってくれないの?」
少年はポカンとした顔をしたがすぐに反応する
「俺も守るよ!」
「でもぉ」
「でも?」
「私のほうが何倍も強いし年上だよ?」
えぇ〜、と少年は悲しそうにすれば気を利かせて少女は
「互いに、支え合って生きていきましょ?」
そう笑ったのだった
◆
青い空、錆びかけた金属の建物群、朝から聞こえる子供達の声
ここは【日本第六基地】
そこの簡素なベッドの上で青年は目覚める。
「ふ、ふわぁ〜、なんだか懐かしい夢を見たな」
軽い欠伸とともにぐんと伸びをした青年
紺色の髪の青年の名は『尾河理人』17歳
朝起きた理人はまず共同水場で顔を洗い、生活に必要な水を汲んできた
「個人の家でも水道水が使えるようになれば便利なんだけどなぁ」
しゃあないものはしゃあないか、と割り切る
今の時代、17歳を子供として扱っている場合ではなかった。
理人は働く者の中で最も若い、故に多くの仕事を任された。将来、大人になった多くの子供に仕事を教えるためだ。
昔は良かったらしい、同年代それどころか20代前半となっても働かずに済んだそうだ。
「そんな世界、想像できないなぁ」
「まーた感傷に浸ってそうね」
「あ、リーヴィズ、リーヴィズ先生じゃないか」
そこにいたのは綺麗な長い白髪と碧眼の小さい少女、白と黒のワンピースが特徴的な少女であった。
「俺に用があんのかよ?リーヴィズ先生」
「なぜって暇だからよ」
この少女、リーヴィズ・カンターレ。アイスライド人で19歳。この小学生みたいな見た目で19歳である。
見た目イジリをすると怒られるぞ!
「リーヴィズ先生は崩壊前の世界を知ってるんだろ?どんな世界だったんだ」
そうワクワクしながら聞いてみる
「そんな聞かれても知らないわ。わたしだって1歳とか2歳とかで何があったかだとか覚えてないもの」
18年前、突如現れた侵略者ジェテリアが世界を侵攻した。人々は此処のような小さな基地を建築し生きてきた。俺はジェテリアのこともその対抗策のことも知らない。聞いても大人たちは教えてくれなかった。第六基地の大人たちはジェテリアのことをひどく恐れていて、それらのことを話すことすら怖がっている。
ただ大人たちは「今生きてる人たち、皆に感謝して生きるのよ」と答えていた。答えてくれないことに不満を抱きはしたが、その言葉は俺の心に深く刺さっていると思う
リーヴィズは世界的に見てもすごい人みたい。俺からすれば幼馴染そのものだが、リーヴィズは世界で初めてぎあ?を発現した者らしい
いつもどこかに出掛けていて、たまに戻ってきたと思ったら子供たちに勉強を教えているリーヴィズ。折角だし色々聞いてみようかな、と思った。
「な、先生ジェテリアってのはなんなんだ?先生は初めてのぎあ?のうんたらなのって本当か?」
「俺は生まれてからジェテリアを見たことがないから、なんか伝説上の存在みたいな幻の生き物みたいな印象なんだよ、本当に存在するのか?」
「ちょちょちょ、多い多い、質問は一つずつ!」
「ごめん、少し興奮してた」
「ったく、朝から元気ね、全部聞き取れたから答えるけど、その前にジェテリアとは関わらないほうがいいの、関わるだけ無駄、何処かで見かけても逃げなさい、近づくことは許さないわ。」
そう前置きを話し、質問に答え始める
「まずジェテリアは実在するわ。機械仕掛けでなんだかゴチャゴチャした生物?生物なのか機械なのかは判断がつかないわ」
「これは又聞きだけど18年前、何処からとも無くジェテリアが現れた。そして奴らは崩壊前の世界各地の都市部を主に侵略した。おびただしい数のジェテリアは多くの生物を絶滅へと追いやった。人類も数を減らしてもう千万人も残ってないみたい。知ってる?人類って崩壊前は80億人くらいいたのよ?一つの都市に視界いっぱいの頭が痛くなるくらいの人間がいたみたい」
「マジで!?」
リーヴィズ先生の簡易授業を聞いていたら、いつの間にか自室である。共同水場は近場なので話しながら歩いていればすぐ到着するものである。
そのまま流れで自室へと二人で入っていく
「追い詰められた人類は土壇場で覚醒した」
リーヴィズの艶のある白髪が揺れ動く
その瞬間、後ろの大根が輪切りとなった。
「それがこういった【ギア】と呼ばれるものよ」
「それが…ギア」
髪を撫でるリーヴィズ
「ギアっていうのはジェテリアとの接触によって発現する。肉体の機械化現象よ、わたしが別に世界で最初のってわけじゃないでしょう、最初期に発現した一人ではあるわ」
「わたしの場合は髪の毛ね」
「ギアを発現した者たちを発現者とも呼ぶわ」
「はえー、もうなんだか良くわからないな」
「あなたはこのままここでのんびり暮らすのが良いわ。わたしたちに任せておいて、危険なんてものに縁もゆかりもあってほしくないもの」
「でもお前が心配だよ?俺は、いちおう、ただ一人の同年代だし…」
本当に心配だ、幼馴染で、昔はずっと一緒だったんだ
「一応わたしとっても強いんだからね!!いい!?あなたに降りかかる火の粉は全部全部振り払ってあげる、あなたがいくらジェテリアに興味津々であっても、ジェテリアのジェの字も見させてあげない!だから、まぁ、安心して眠ると良いわ」
言うだけ言ってなんか恥ずかしくなってきたわ!
「そっか」としばらく目を閉じる
「よし、なら俺も、皆の生活を守る改善する立派な人間になろう。後さ…先生が輪切りにした大根、食べるの手伝ってくんない?」
「あーもう!締まらないわね!」
そう二人で笑い合った、良い朝だった
◆
しばらく大根生活かなぁ、と思いながらインフラ整備の仕事をしている俺である。
熊川のおっちゃん、しっかりものの鈴木さん、姉御気質のミサ姐さん
そういった仲間たちと笑い合いながら仕事をする。
今日もお昼ご飯が美味しい
そういえば鈴木さんのお嫁さん、陽夏さんが後もう少しで出産らしい。いつもお世話になっているし、仕事終わりにでも挨拶にでも行こうかな。
その時だった
「春夜〜!お弁当!忘れ物!」
鈴木さんの奥さん、木の葉の簪が特徴的な秋音さんだ。どうやら鈴木さん、お弁当を忘れてしまったみたい
「珍しいっすね、しっかりものの鈴木さんが忘れ物なんて」
俺がそう呟けばおっちゃんも姉御も同意の意を示す
「秋音さーん、何ヶ月目ですぅ?名前とか決めてあるんですかぁ?」
「もう十ヶ月目!名前はぁ、うーん、性別を調べる術とか無いからー、もっと先になると思うけどぉー、ヒナタとかかなぁ」
「男の子なら陽に太で、女の子なら陽に向かうにしようって春夜くんと話してたの」
「いいですね!」
鈴木さんの子供かぁ、きっとかわいいんだろうな、その時になったら優しくぎゅって抱きしめてやる。
人の幸せエネルギーに触れる幸せな気持ちになれる、良いお昼時だった
◆
日没が一日の終わりを告げる。
夜はとても危ない、とても暗いからだ。いい子にして寝た方が気持ちのいい朝を迎えられる。
というわけで、おやすみなさい
ジ
真っ先に感じたのは[熱]だった。熱く、嫌な臭い
すぐに飛び起きる。外は暗く、異様にうるさい。いやなよかん
「…一体何が」
キィィィンと甲高いカッターのような音。次の瞬間、部屋の壁から丸いカッターが飛び出してきた。
「うわぁああ!?」
一体一体何が!!!一歩、二歩、三歩と部屋の中を後退する。その先にあった窓にぱっと視線を移す。
赤い眼だ
数十の赤い眼、眼光がカァっと網膜を刺激し、人々の悲鳴が耳を劈く。
それらは怪物だ。機械仕掛けでガチャガチャと音がする。耳を澄ませばカサカサと全方位から音が聞こえる。背筋が凍る、人間味のない音だ。
「ジェテリア」
ジェテリアが来たんだ、襲ってきた。今も俺の部屋の戸を突き破らんとしている。
怖い怖い怖い怖い怖い!!
ギュイン、丸ノコの音、部屋の空いた穴から赤い眼が……死ぬ!殺される…頭が痛い…
ジ、ジジ
部屋の戸が開く、その先に…
「無事!?」
「リ……リーヴィ…ズ??」
美しい白髪が特徴的なリーヴィズ・カンターレがいた。
「安心しなさい!あなたを襲っていた個体はもう倒したわ」
彼女の傍らには串刺しになったジェテリアの姿があった。
「なぁ、夢、じゃないよな、ここ…第六基地だよな」
「そうよ、狙いを定められた」
「ジェテリアにはなるべく近づかないように…その場に居ておくこと、もしジェテリアが襲ってきたらすぐ逃げる。それが一番よ」
「あぁ!わかった!」
既にリーヴィズは消えていて何処からか破壊音が聞こえる
窓の先を見つめる、さっきの無数の赤い眼、それは一つ、また一つと消えていく
こう見ると彼女はなんだか遠い所に行ってしまったような気がする。俺は、俺達は守られる側の人間だって分からされた。
今も俺が見えるところでジェテリアを串刺しにしている。それをしているのがすべて彼女の髪の毛だというのが信じられない。
ゴォーン、と地面が激しく揺れ動いた。何か、巨大な何かが蠢いている。
「一体…!何が起きて…!」
『今すぐ外に出て!!早く!!!』
その声はキンと響いた、揺れは未だ続く、それどころか強まっていく
「このままじゃ倒壊しちまうんじゃねぇか!?」
自室を飛び出す、逃げろ、生きるために
揺れがピークに達した時、ソレは現れる
俺の約10m先、巨大なそれはもう巨大なドリルが地面をを突き破って出てきた。
ナイフ、釘、ノコギリ、トンカチ、ベンチ、スパナ、ドライバーなどが巨大化したような、そんな物が地面を突き破る、それらは黒く太いケーブルのようなもので繋がれた、いわば触手のようなものだった。
「は?」
ドリルは俺の方を向く、俺は目を閉じる
それらは一瞬にして建造物を蹂躙し基地は倒壊した
次、目を開いた時、痛みはなかった。
なぜ?
「はぁ、はぁ、はぁ、無事?」
「リーヴィズ、先生」
リーヴィズの美しかった髪はボサボサになり、ちぎれていた。
「…髪が」
「問題、ないわ、慣れてるもの」
髪は少しずつ修復されていた
気付けば、空は血のような赤色に染まる、その世界にそれらの主がいた
それはイモムシや蛇を彷彿とさせる姿だった。全身にジェテリア特有の赤い眼がある。節々に触手、その触手の先にはドリルのようなもの、ナイフのようなもの、そういった[凶器]がついている。大きな頭部、その頭部にある大きな口、その口の中心にはひときわ大きな赤い眼がこちらを見つめ、見る者を畏怖させる。
「ここまでの存在…!逃げなさい…!生きたかったら、走るのよ!!」
歯車の回る音が空間を揺らす
◆
俺は【ソレ】を見た。忽然と輝く【金色】その金色は俺の全身を渡る、何だこの感覚は、絶望と違う…別の感覚……遥か、遠くの存在。頭の中で雫が落ちる音がした
◆
「ハァ…!ハァ…!」
一体、何が…!
「わたしが囮になるから…早く、わたしを無駄にしないで」
「お前は…お前は大丈夫なのかよ!!」
「誰に言ってるのよ、わたしは伝説の発現者集団、【星断ちの狩人】のメンバーよ?生きてあなたに会いに行くから、死ぬんじゃないわよ!」
「俺からも探しに行くから!!これ、約束な!」
「うん!約束よ!」
その言葉を背に後方にダッシュする。気分が悪い、だが当然だ。
焼け焦げ、崩れ去り、今じゃ見る影もない第六基地
故郷が壊され怒りに震える。だがそれを出すべきではない。今は報いろ、リーヴィズの思いに
ジェテリアがたくさんいる、こう見ると個性があるんだな…背がでかい奴、人みたいな髪の毛の奴、群れてる奴まで、異様に腹がデカいやつも
腹部が大きいジェテリアがこちらを向いた
「え?」
腹部の大きいのジェテリアが飛びかかってくる。幸い、見つかったのはその一体だけのようだ。一体でも良くはないけどねっ
「クソ、邪魔するな!」
エネルギーの刃を持った振り回すジェテリア
まるで妊婦のようなジェテリア
攻撃はなんとか回避できてる。
生きるために戦わなくちゃならねぇ!
「うわあああああ!!」
殴る、殴る殴る殴る!ここまで何かを殴ったのは生まれて初めてだ…
ジェテリアも暴れる、半分馬乗りになった状態、口から熱線が放たれる、
熱い、痛い、苦しい、だが殴るのはやめない、ずっとずっと殴り続けた
ずっと、
ずっと、
ずっと、
ずっと、
「はぁ、はぁ、はぁ」
ジェテリアは動きを止めた
そして俺は気付く、倒したジェテリアの頭部、そこには見慣れた木の葉の簪のあった。
ゾッとする
もしかして、闊歩していたジェテリア達は皆、人、だったのか?
みんなジェテリアになってしまった、とでも言うのだろうか?
涙が込上げてくる、今までのみんなの思い出がフラッシュバックする
ごめん。鈴木さん、あなたの奥さん、殺しちゃった
気付けば赤い空は真っ黒の、いつも通りの深夜になっていた。だがおれは前に進み続ける。安全な場所まで、一歩、二歩と
俺の耳元を熱線が通過する
ズシャ、ぼとり
右腕が落ちた音だった
「おい、うそだろ?」
「ヒナタか?お前」
それは赤子程度のサイズのジェテリア、頭部がビームを打つところとなっていて、腕と足が合計で六本あった。
熱線によって腕が焼き切られたことを認識した頃には俺は倒れていた
赤子の鳴き声に近い、甲高い音が響く
それと同時にカサカサとこちらに向かってくる気がする。次は頭か……だが、もう意識は……
俺は朝に見た夢を走馬灯のように思い返す
◆
「見て、花冠出来たよ!あげる」
少年は美しい髪の少女の頭にスイートピーの花冠をのせた
「フフ、ありがとう。」
「きっとコレはお前を守ってくれるだろう!!」
そう笑顔で青年が言えば少女は不思議そうな顔をして疑問を口にする
「リヒトは?リヒトは守ってくれないの?」
少年はポカンとした顔をしたがすぐに反応する
「俺も守るよ!」
「でもぉ」
「でも?」
「私のほうが何倍も強いし年上だよ?」
えぇ〜、と少年は悲しそうにすれば気を利かせて少女は
「互いに、支え合って生きていきましょ?」
そう笑ったのだった
◆
子供の頃の昔のリーヴィズとのやり取り
本当に、俺は脆い
ただ、約束したから
この、怪物が蔓延るこの世界で…俺は…再び出会う、リーヴィスとの約束を果たす為に
意識が朦朧とする、絶対に、死ぬもんか、
突如
ダァン!!!と、発砲音
なん、だ?
「生存者発見、若い男性、右腕欠損、全身に火傷、脈は有る」
「本部に運びましょうか?」
「あぁ、頼む、ターゲットは?」
「すでに失踪しました…」
「くっそ、逃げられたか、本部に戻ったらどんなことをしても良い、彼を蘇生させろ」
俺は…助かる、のか?
そう思って、プツンと、意識が落ちた。