それは、まさしく”修羅”だった。何もない空間から黒い、ただひたすらに黒い闇が溢れ出る。それらの闇はジェテリアどもを飲み込み、その先には残骸しか残ることはなかった
「時間がない。邪魔、しないでもらえるか」
眼帯を外し、眼のギアが露出した葉月朱音はグッと拳を握りしめた
その瞬間闇に飲み込まれたジェテリアは黒い火柱を上げ、跡形も無くなった
葉月は踏み込み、瞬間的に加速する。その速度に反応できたジェテリアは殆どおらず、唯一反応できたのはクラスGのジェテリアのみだった。
まあ、それもすれ違いざまに禍々しい闇を纏った手の平に触れ、次の瞬間、その球状のジェテリアの内部から闇が吹き出てやがて動かなくなる
加速し、モール内のジェテリアを蹂躙しながら葉月朱音が考える
(報告では標的は三階中央の大きな時計だったな、面倒だ、間に合うかもわからない)
深い思案の結果
「…跳ぶか」
彼女の全身が闇に包まれる
葉月朱音:ギア能力【黒い金の目】
彼女の神秘的な美しさを持つ機械の目、ただその美しさに反し扱うのはドロドロとした闇、動力に全く新しい性質を加えるタイプのギア能力
彼女は跳躍する、ただ闇の力を乗せて跳躍するだけ、たったそれだけでモールの天井は貫かれるのだった
この能力の長所、それは圧倒的な破壊力
跳躍し空中にいる彼女に大きな羽と爪を持った三体のジェテリアが襲う
彼女はさらに体に纏う動力の量を増やす、溢れ出る動力は自身を守る鉄壁となりジェテリアの鉤爪を通さない
「力に差がありすぎるのだ」
どれほどの力の差があってもバカ正直に向かってくる
殺意を込めて自身の動力を解放する、解放された動力は純粋なエネルギーの塊、その塊に三体のジェテリアはすり潰された。
着地の際、ついでにジェテリアを踏み潰して、その衝撃波でその周辺にいたジェテリアも吹き飛ばしておく
その場所は三階、百円ショップの中
ジェテリア共は当然襲ってくる、がその結末は言うまでもないだろう
その場にいたジェテリアも破壊し
「もう、壁もブチ抜こうか」
内心、彼女は面倒くさくなってしまった
右目のギアから動力が溢れる、視界に写った任意の対象に微弱な動力(教官比)を纏わせる事ができる。いわゆる魔眼、眼球タイプのギアの次の領域の力
今回の場合、壁に動力を纏わせ、起爆させる、古びたモールの壁は簡単に崩れ去って、道ができる
チクタク、チクタク
時計の秒針が進む音
それを聞いた瞬間、彼女は最高速で走り出す。彼女の眼にはひときわ大きな部屋のある古時計、その古時計が壁の中で大きく根を張っているのが分かった
クラスGジェテリア【時計】
空間が歪み始める
想定より少し早いな…
その歪みは私に向かっていたのだ
私の動きは遅くなる、大体十分の一程度、やはり時間の流れをどうこうする系の能力か
だから、何だというのか、その時計は私の視界に写っている
「すでに詰んでいるのだ、お前は」
能力発動【闇爆破】
時計のジェテリアは暗闇に飲まれる、やがて動力はエネルギーに変化し、そのエネルギーによってすり潰された
「あーあー、ナビ、聞こえるか、要警戒クラスG時計を撃破、要警戒クラスG時計を撃破」
『了解いたしました!あっ、葉月さん、一つ報告が…』
「どうした?」
私は改めて眼帯を着けながら話を促す
『尾河理人との通信が途切れました、インカムが破壊されたようです』
「そうか」
(尾河理人…アイツは完全に狙いをつけられたな)
「私は残りの残党を始末してから行く、私からは以上だ」
通信を切る
「さて、あの時計、面倒なものを置き土産を置いてったものだ」
クラスG弱が五体、その五体全てが屈強な図体をしていて、戦闘に特化したジェテリアである事が分かった。さしづめこのモール内でも屈指の力を持つ時計のジェテリアが創り出した護衛なのだろう
対して私はあの時計に私自身の時間の流れを遅らされた
肩を数回回し自身にかけられた時間鈍化の程度を見る
「大体三分の一と言ったところか」
喉を無理やり動力強化を使って報告してたのを忘れていた
無駄に疲れるからな、コレ
「さぁ〜て、さっさと、」
死 ね よ
襲ってきたクラスGの拳を掴んで握りつぶす、力を入れる速度が遅くなっているだけで上限値そのものは変わらない、ただのハンデ、私の勝利は変わることはない
◆
side新島タケル
なんかとんでもない化物がスゲー速度でジェテリアを打っ飛ばしていったんですけど?やっぱりあの教官化物だよ、人間業か?アレ。佐美宗部長と同じ気配を感じるんです、流石は侵略対策課の副部長だ。
「わたし達もああいうのに追いつけるようにならなきゃね」
並走している雪城がそう言う
「前向きだなぁ、僕等はまだまだ雛鳥だし、あの領域は時間がかかるぞ」
「そういう貴方も結構前向きじゃない」
「…だな」
並走していれば三つの分かれ道、直進方向にはジェテリアの残骸の山、おそらく葉月副部長が進んだ跡だろう、なので直進方向はは良いとして、右か左か
「二手に別れるぞ」
「…だね」
雪場も直進方向の惨状を察したのだろう、そんなコンマ数秒の沈黙だった
僕は右、雪城は左の道を進んだ
『葉月朱音が要警戒ジェテリア【時計】を撃破しました』
はっっっや、怪物かよ
高くてクラスMのジェテリアを破壊しながら、しばらく進めばもう二階に続くエスカレーター、そこを守るように強そうな、屈強な図体のジャテリアがいる
「思ったよりもすぐ一回は掃討が終わりそうだが、クラスG、では無いよな」
門番のジェテリアはどこか、こうクラスG特有の威圧感が足りない
僕は物陰に隠れながら、先制攻撃の準備をする
バレットパンチを発動、弾丸のような小さな拳を生成し、それを僅かな動き射出する。装填数は四発、これが僕の限界
ゴーストハンドほど自由自在ではないが、それでも僕の拳はある程度動きに融通が効く、だからこそ俺は物陰から遮蔽物の合間を縫う、スーパーショットが可能なのだ
指をクイと動かしバレットパンチを放つ、その極小の拳はターゲット、門番ジェテリアの頭部にヒットした
ほんの僅か、仰け反って、次の瞬間、遮蔽物にしていた自販機を吹き飛ばして間合いを詰められる
なんとか動力爆破で身体を強化、それと同時にビックフィストを発動して攻撃を受け止める。近距離パワー系、なら!
俺はバックステップ、ビックフィストと力の競り合い、拮抗状態を破壊するバレットパンチを側頭部にぶち込む
さっきの不意打ち時点で仰け反ってたなら、不意打ちでも最低限の仕事はしてくれるハズ、
「バレットパンチ!」
極小の拳がまた、側頭部にヒットする、たったそれだけで力の均衡は崩れ去り、それと同時に左手のギアを地面に叩きつける
その動きとリンクしたビックフィストがジェテリアを地面に押さえつける
僕の拳は爆破させる事ができる
僕はビックフィスト内の動力を解放し爆発を引き起こす、それの威力はすごいものだった
まあ原理は拳内に圧縮された動力が一気に外部に拡散することによる衝撃波なのだが
「よっしゃあ!決まったぁ!」
その爆発によってジェテリアの機体は大きく損傷した、軽い攻撃であろうと崩れておかしくなさそうだ。だがまだ動いており、戦う機能も残っていた
ジェテリアが威圧するように叫ぶ、そして僕は前へ踏み込む
ジェテリアは大きく重たい右腕を振り下ろして攻撃してきた
「逸らせ!ゴーストハンド!」
その命令に従い、振り下ろされる右腕を横から殴り、次の瞬間、爆破
ビックフィストほどの威力ではないが、俺でも十分
動力爆破で全力で強化した左ストレートをジェテリアの横腹にぶち込む
その拳の威力は損傷したジェテリアを粉砕するには十分な威力をもっていた
「クラスM強といったところかなぁ」
僕も強くなったもんだな、と感慨に浸っていると
『クラスGの反応、検出しました、背後3mです!!』
ナビちゃんの声、それは決して無視できない報告だった
「は?何処だって?」
レーザーが背後から僕の脇腹を貫く、次の瞬間、気分の悪くなるクラスG特有の威圧感が僕を襲った
俺は目を見開き、反応することが出来なかった、気配を潜めていたのか…!
振り向く、そこには一台の自動販売機があった、先程、俺が遮蔽物にしていた青い自販機
その自販機は背面からレーザーキャノンを展開し、放ち、熱を放出していた
あそこまで近づいても気付けなかった…!しかも、放つ時の熱も感じ取れなかった…!
ジジという音とともに自販機が展開し大量の重火器が姿を表す
「自販機の内部は武装たっぷりってか?」
標準線が僕を照らす
「ざけんなよ、マジで」
そう吐き捨てた
たった一体のジェテリアが放ったとは思えないような弾幕が放たれる
「ギャァァァ!!!」
僕は悲鳴を上げながらも弾幕を避けながら、物陰を探す
「ビックフィスト!持ちこたえろよ!!」
最大限大きくした半透明の手が僕を守る盾となる
なんとかちょうどいい遮蔽物を見つけ飛び込む
「はぁ、はぁ、」
息も絶え絶え、安息の地にたどり着きバレットパンチを装填、セブンフィスト発動の準備もする。
だがその安息の地もものの十秒ほどで崩壊した
「ぎゃあ!?」
レーザーが安息の地を貫通する、自販機のジェテリアが初手に放ってきたものと同じもののようだ
どうする、どうやって突破する…?
「ビックフィスト!」
ビックフィストを飛ばし、様子見
すると自販機のジェテリアは武装を一度内部にしまったのだ
「武装解除…?」
背面から翼のように展開される砲台、そこからジュースの缶のような弾が発射される
それらはビックフィストに飛来し、爆発
「おいおいおい、ロケランかよ」
当然、ビックフィストが耐えられるわけもなく、消えてなくなる
「いや、」
隙あり、だ
「バレットパンチ、全弾発射」
たったの四発の拳の弾丸だった
今、弾を装填しているハズ、だったら!
僕の放った弾丸がジェテリアの砲台の内部へと入る
そしてそれらを起爆すれば
ドン!
自販機から大きな爆発音、
「効いてる、しかしまぁ、アイツ動けねぇのか?」
ならチマチマとこれを繰り返せば勝てる
そう思ったのもつかの間、ジェテリアは大きく武装を展開、側面、上の面、そして正面から展開された武装は歪であった。
僕は疑問に感じた、しかしその疑問も最悪な形で解決する
歪な部品は一つに繋がり、一門の巨大なキャノン砲となる、そしてチャージが始まる
なんつーエネルギー、食らったらひとたまりもない!
「だが、事前に準備していたかいがあったぜ」
「セブンフィスト」
7つの拳を展開する。狙うは最大火力の同時・インパクト
最大限動力を込める、相手より早く、それでいて相手を破壊できるような威力を込めて
互いに込められた動力がどんどん高まっていくのが分かる
ここだ!
「同時・インパクト」
7つの拳が一点を攻撃する
その時、僕は見た
奴は組み上げられた武装が再び開き、チャージされた動力が膜を形作る
いわゆるバリア、膨大な攻撃のためのエネルギーが防御に回される
それは鉄壁の防御
「は?」
しまっ、
僕に出来た大きな隙、自販機全体が変形する
それは人型に、ライフルにサーベル、ミサイルの発射機構の翼を持つ
人型のジェテリアへと変化した
「人型ロボットって奴かよッ」
どうする…!このままじゃ…!
◆
side尾河理人
「動力爆破…!」
黄色のオーラを纏い、身体を強化する、前は無かった俺の手札
それを見ても、彼女、虚飾の子と呼ばれるジェテリア、シラネは余裕を崩さない
「前よりも少し強くなったそうですね…ですが、このまま貴方に強くなられると困るのです、全力で潰させていただきますわ」
「お前も、リーヴィズの情報を吐け、そしたら楽にスクラップにしてやるよ」
俺はシラネに向かって突進する、対するシラネはフフッ、と笑って
「良いでしょう、一度、軽く舞ってからで、よろしいですか?」
そう言いながら、文字通り、舞うように突進を回避した、そして俺に軽くタッチする
俺の体に根強く生えた一輪の青いバラ、そして根を張り体中にバラが咲く
前と同じ発火…!
ボウ、と青い炎によって俺は火だるまとなった
「ドラァ!」
俺の拳がシラネの顔にヒットする
シラネはその衝撃で軽く仰け反った
「私の炎を受けながら、無理やり攻撃してきましたか目まぐるしい成長、流石は【ソノコ】といった所」
「あんまナメてると、足元掬われるぞ」
動力爆破は一旦解除、オンオフちゃんと切り替えないと無駄に疲労することになるからな
バラの根が地面から生え、俺を貫こうをする。俺はバックステップで回避しながら着地のタイミングで動力爆破を起動、加速しシラネとの距離を詰め、ハイキックを放つ
その蹴りはいつの間にか生成された木の杖で防がれた
動力爆破を解除し、距離を取る
「で?さっさと吐けよ、大切な幼馴染との約束なんだ…これに関しては俺、短気だぜ」
「まぁ、良いでしょう、貴方に教えます」
その情報は衝撃的なものだった
「リーヴィズ・カンターレ、彼女は」
―暴食に対して【傷跡】を残し、生き永らえました――