青年が病室に運ばれる。切羽詰まった状況で、その青年には右腕がなく、ひどい火傷だった。
大丈夫ですか!?意識はありますか!?と呼び掛けが廊下に響く
主治医とその助手は青年を運ぶ。その青年、尾河理人は意識を失って、緊急搬送されているといった状況だった。
「クッソ!腕に関しちゃどうしようも…」
止血はしているがこの感じ、死ぬのは時間の問題だと思えた。
「このままやと死ぬぞ!?」
このまま時間が立てば青年の命は危ない。
どうすりゃあ良い?治す手段、治す手段、彼の欠損部位は右腕。あ、一つだけあったわ
「これだけはしたくなかったんやが、だがやるしかない!」
「遺物ギアを用意せい!」
「え…でもアレは倉庫で保管されてますが…誰も扱えない所有者不明のギアと……」
「ええわええわ!オレが責任取るから!はよいってこーい!!」
「は、はいィ〜〜」
助手は手術室を走って出ていった。
「気ぃ強く持ちぃや」
ダダダ!と入ってくる助手、その腕に抱かれていたのは縦長の木箱だった。
「もう戻ってきたんか、早いなぁ」
「ほな、始めるで」
主治医は木箱を開ける、その先にあったのは機械の腕であった、重厚な銀と黒の複雑かつ近未来的な見た目だった。
「一部を切除して、一つ一つ神経と接続させる、元々人体やから、そうすると動かせるようになるねん」
「原理は知らんけどな!!」
ガハハと笑い、
「助手ちゃん、半日単位の長丁場は覚悟したほうがええでぇ〜」
そうして、断面にギアを押し当てる、
メス、とそう言いメスを受け取る、その一瞬のやり取りの内に
「あら?」
「なんでもう繋がってんねん、助手ちゃんなんかした?」
理人の腕はギアと完全に接続されていた。
ヴン、と変な音と起動音、
理人の火傷が時が戻っていくかのように綺麗さっぱりなくなった。
「やっぱし、助手ちゃんなんかしたやろ」
助手は首をブンブンと横に振った。
「……知らない天井だ」
◆
何だここ、ライトが照らして、俺、生き残これたのかな
「……知らない天井だ」
「ウヒャア!?」
「オレの後に隠れててな!助手ちゃん」
「は、はいィ〜」
部屋の端にいるのは白衣の男性と女性、この人たちが助けてくれたのだろうか
ムクリと上半身を起きあげる
「ちょちょ、兄ちゃん、いきなり起き上がったら危ないで!」
男性は理人に目が覚めたばかりだから、と忠告をしている
俺は右手を見る、何だこの手、機械化しているぞ?
手を軽く動かしてみても問題はない。うんと軽くなった気がする。
「えっと、どんな具合です?」
男性が立ち上がり話しかけてくる。心配した具合、お医者様なのだろう。
「問題はない、です。あなた達が治して下さったのでしょうか?」
始めましての人には礼儀正しく、大人たちが教えてくれたことの一つだ。
「ええ、せやけど、治療としてギアを移植させてもらったけど、治したっちゅうか治ったっちゅうか…」
これってギア!?と驚きのあまり思わず声が出てしまう
「ギアに関しても色々イレギュラーなことが起きてるし、せやなぁ、とりあえず休んでもらってから、諸々の話をしようかねぇ」
俺は了承し、病室に運ばれることになる。
◆
その病室の設備はすごかった、俺の知っている病室とは大違いで白く綺麗だった。ここまで綺麗な白、リーヴィズ先生の髪くらいでしか見たことないぞ!
リーヴィズ先生、大丈夫かな。いや、無事なはずだ。きっと出会ってみせる。
でも、もしも死んじゃってたとしたら…皆、どうなっちゃったんだろう
つい、ため息が出る
「…第六基地の話は聞いています」
「あの、さっきの助手さん?」
ふわっとした黒髪、泣きぼくろが特徴的な女性、リーヴィズ程背が低いわけではないが小柄な女の子だった。
「…ここは大日本基地壱号、私は高山鈴、先程の彼は秋川和真」
「は、はぁ、そうなんですか、よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
「…………」
「…………」
気まずいッ、あまりにも気まずいッ!どど、どっど、どうすれば
と頭の中でてんわやんわ
高山さんは手をこちらに伸ばしてきて……
「…えっ」
頭に変な感覚が…彼女は俺の頭を撫でている
さわさわと
「あの、」
さわさわと
「えっと、」
さわさわと
「はい、ありがとうございます」
慈しまれている、と感じた
ピタリと撫でる手が止まった
「……すみません、いきなり触ってしまって…」
「いえ、なんか、こっちこそ」
気、気まずい
い、一体どうすれば…
ドアノックの後、戸が開く
「仲良くやっとるかー?」
特徴のない黒髪が特徴の秋川和真主治医だ。
「お疲れ様です。秋川さん」
「おーおーおー、オレの名前知っとるんか、助手ちゃんが説明してくれたんかな?どっかに違和感はあるかな?」
おお、なんか世界が変わった気がする。ムードメイカーって大事なんだね
「はい、おかげ様でなんとも、まぁ、腕の見た目が変わってびっくり、くらいですかね」
「そこは必要経費として、割り切って欲しいなぁ」
「第六基地に関しては御愁傷様や、ホンマに、残念に思うわ」
「そして、その基地で起きた事について聞きたいことが仰山あるんや」
「だがその前に色々検査させてもらうで」
「えっ検査?なんかされるんですか」
「痛くはないから安心せい、ちなみに拒否権はないで」
そこから連れて行かれたのは良く分からん、よだれを取られたりもした、何に使うんだろそこからもう、なんか、色々された。
そして病室に戻ってきた所であった
コンコンコン、と病室に入って来たのは秋川と金色の機械らしい見た目の人差し指が特徴的な軍服を着た男性
「理人くん、改めて諸々を紹介させてもらいます、まずオレ、生命保護部で医師をやっている秋川和真っちゅうもんや、そして」
軍服の男性が前に出る
「俺は侵略対策部【部長】佐美宗風雅、辛いことを思い返させてしまうがどうか許して欲しい」
「それで、聞きたいことって、秋川さんからも聞きたいことは仰山あるから〜と言われてるので覚悟は出来ています」
俺がそう言えば佐美宗さんは真剣な面持ちで話し始める。
「話が早いのは非常に助かる、私達が聞きたいのは【クラスE指定災害級ジェテリア】”グーラ”についての話だ」
クラスE?指定災害級?よう分からんな?
「良く分からない、と言ったような顔だな?済まない、一から説明しよう」
説明が入る、まとめるとこう
強
E 各国のお上が泡吹いて倒れるレベル 指定災害級とも言う
P 国が死力を尽くして戦う
T 発現者が総出で対等
G 振れ幅が大きく最低でも発現者が出ないと話にならない
M 武装してても余裕で死ねる
K 普通に人を殺せるレベル
B ザコだけど一般人は要注意
b 雑魚♡
弱
「と言った所だな」
「なるほど…」
理解できた!
「それでそのグーラってのは多分アレですよね、あのでっかい、触手がいっぱい生えたあのジェテリア」
脳裏に浮かぶのは赤い空、赤い眼、赤赤赤
「そうだ、指定災害級ジェテリア”グーラ”通称【暴食】。出没したという記録、形跡は無数に残っているが、アレについての交戦記録は我らが基地、基地壱号では一度のみ、交戦したという事実はただ三度だけだ」
「その三度目の交戦が君の友人、リーヴィズ・カンターレとグーラの戦いだ」
「…リーヴィズ」
彼女も怖かったのだろうか…
「課長!質問ええか?」
秋川はバッと手を上げ質問する
「どうぞ」
「グーラはどうしてそんな危険なんや?オレ忘れちったわぁ!」
そのやり取りで意識が内から外に向いた。
「グーラはその巨体と戦闘能力も他のジェテリアとは一線を画す脅威だが、何よりもジェテリア固有の機化電波が桁違いに巨大だ」
そっか、リーヴィズはそんな強大な存在相手に…
ナイーブな気分になっているとまた秋川はバッと手を上げ質問する
「課長!機化電波って何やっけぇ?」
「秋川、お前は知ってるだろう、機化電波は全てのジェテリアが放っている特殊な電波だ。生物、非生物問わずジェテリアに変化する」
「非生物もなのか!?」
え、それじゃあ地面とかが全部ジェテリア化してもおかしくないんじゃ
ガッテン!と手を叩き、ペラペラと話し始める
「せや、全部思い出したわ。非生物の場合、電波を意図的に受信する精密機器とかそういう文明の利器ちゅうもんがよくジェテリア化するんやっけな?」
「尾河くん、後はなにか疑問はあるか」
「そのグーラの機化電波というのがどれくらい強力なのですか?」
風雅はその質問に答える
「グーラの機化電波は生物の場合数秒から数十秒、機械化しずらい非生物であったとしても数分、精密機器だったら瞬きの間にジェテリア化すると思ってもらって良い。出没中の空が赤く染まるのはその電波の強力さ故だ」
うーん、なんかあったかな、疑問…疑問…
「どうして、俺は機械化してないんですか?」
「確かに、なんでや?」
勘が鋭い時と鈍い時の落差が激しい秋川は置いておいて、風雅はハハッと小さく笑い
それこそが一番君に聞きたいことだ――
と言った
何があったか、か、あの日何があったのか、思い返せば黒い感情が湧き出てくる。面倒を見てくれた大人たちの悲鳴が頭の中をリフレインする。ジェテリアが憎い。大好きな人達を機械化されて、あんな姿に変えたグーラが憎い。その感情の中に”何か”があった。
【金色】
あれについてはなにか別の不思議な感覚だった。あの感覚は目の前の”暴食”の存在感よりも強大な感覚がして、何か…された?何を…された?雫が落ちた瞬間、どうなったんだろうか
「…なるほど、詳しく聞いてもいいか?」
どうやら声に出てしまっていたようだ。
俺はその時あったことを隅から隅まで話した。
深夜、ジェテリアが第六基地を襲撃してきて、リーヴィズがそれを防衛していたこと
強い揺れの後、グーラの触手が大量に出てきて、その一つが俺に向かってきたこと
その後、空が赤く染まりグーラが現れたこと
そして、さっき言及した【金色】を見たこと
リーヴィズは囮になり、グーラと戦ったこと、必ず俺達は出会う、と約束したこと
俺が逃げているうちにジェテリアが徘徊していることに気付いたこと
俺はそのうちの一体に見つかり競り合いの末、破壊したこと
もう一体のジェテリアに気付かず気付けば腕が切断されていたこと
そして、倒したジェテリアは知人だと気付いたこと
「なるほどなぁ」
風雅も秋川も俺の話を静かに聞いていた
「……おーう、イッチャン辛いやつやんけ、会えるとええなぁ、その幼馴染」
「あぁ、助かった、貴方が話してくれた事はグーラ討伐の確かな第一歩になる事を約束しよう」
「はい、ありがとうございます」
気付けば俺は涙を流していた
「わわっ!泣かんといてぇ〜、話の腰を折るようで悪いねんけど別のお話もあるんやから〜」
数分後
俺は泣き止み
「…すみません」
「ええんやで、悲しくなったらいくらでもオレの胸に飛び込んできぃーや」
泣いている間に入って来たのだろう看護師の高山は一言
「主治医、彼が胸に飛び込んできたことってありましたっけ?」
「…水刺さんくてもええやん」
風雅は仲良いなぁと思う、それはそれとして
「…私語は慎むように、検査結果が出たのだろう?なら早く見せてあげなさい」
「ハイよ」
そういい秋川は一枚の紙を取り出す。
「これみぃや」
その書類は理人には理解できない色々な書かれてあった紙、特に人体図がよく目立つ
「この結果、人体図の中の赤いところがギアとされる場所や」
説明を聞き驚愕する
「えっ!じゃあ!!」
「せや、オレらも度肝抜かれたでぇ」
なぜならば、その人体図は全身が真っ赤に染まっていた
「お前、全身ギア人間や」
ニンゲンそっくりの、な