空気が凍った気がする
主に医者、秋川和真に対して
もちろん俺に対しても冷ややかな視線が送られている
「じゃ、じゃあ説明するやで?」
「動力っちゅうのはキミら発現者が使える、ギアが保有しているエネルギーのことや」
「このエネルギーを使って、ギアではない、人体部分を強化したりギア固有の力を使ったりすることが出来るんや」
ほえー、めっちゃ大事じゃん
「え?なんでそんな大事なこと教えてくれなかったんです???」
「ホンマにごめんって…てか…葉月さんに佐美宗さん!あんたらにも責任あるからな!?」
「言い訳を聞かせてもらおか!」
医者、ブチギレ
「そんな、一朝一夕で使える様になるものじゃないからな…それに一気に情報与えても困惑するだけだ」
「私の試験に合格した以上、任務を遂行する必要がある。それに動力爆破が使えなくてもコイツは並以上に強い」
と部長、副部長は言い訳をする
まあさ、今俺生きてるし、別に、明日を生きれればそれでいいし…
「ああ、動力爆破っていうのはな…」
葉月の眼帯から光の筋が流れる、その筋は回路のように全身に浮かび上がり、やがて消える
「これのことだ」
なにそれ
「くそかっけぇ」
思わず口に出てしまう言葉、俺は男、こういうのに目がないのだ
「ふっ、悪い気はしない」
はい!と秋川の声と手を叩く音
「注目、尾河くんの為の動力解説その二!」
「動力はどうやって生み出されるかや」
パチパチパチ、と拍手する、俺一人かと思ったが……
手を叩くタケルの姿…
タケルも拍手してる!タケルありがとう!と感謝の目線を送れば、奥歯輝く感じのサムズアップで返される
俺は感激した、本当に永遠の友なのかもしれない
そんなやり取りの中、ほな話始めるで〜と秋川さんが解説を始めた
「まず、これに関してはギア関連のお話にしては珍しく解明されている方や」
「まず、オレ達が食って寝て動く、そういう行動、その一つ一つに発生するエネルギーがちょっと多くなる、この多くなったエネルギーをギアが拝借しとる」
「そして、ギアは動力を生成するんや」
「生成方法などはギアによって全く違う、けど一貫して言えるのは健康的で文化的な生活を送ればより効率的な動力生成ができる」
「ま、医者としてはそんなん無くても健康的で文化的な生活を送ってくれたほうが楽なんやけどな!!」
ガハハと笑う医者
「なるほど」
て、待てよ、全身ギアってことは…
「はいっ!全身ギアの場合どうなるんですか!?」
「理論上、エネルギーのほぼ全てが動力に変換される」
「つまりやっぱり俺って…」
「まあ、ご察しの通り、いままでの発現者とは一線を画す逸材や」
なるほどねぇ、そういう自覚はほとんどないが、実際瀕死から生き返る化物みたいな存在だし、
「ま、今は才能の原石、磨くのはこれからや」
「せいぜい、がんばりや!」
彼は俺の背中をドンドンと叩く
「なら、三人で特訓といきましょう」
雪城の一言、彼女の声は静かだが、聞き取りやすい
「それ良いなぁ!」
タケルの同意の声、シンプルにでかい声
「いいのか?俺のために」
俺、尾河理人の声、普通だ。
「いいんだよ、僕等三人で息ぴったりだから」
「違う、わたしはわたしが強くなるためにが一番強い、尾河くんは二の次」
タケルはニッコリと微笑む
雪城はなんかツンとしてる、だが俺は一緒に強くなること良しとしてくれる彼女に感謝した
「ありがとう」
よっしゃ!じゃあ早速特訓と行きますか!
「「「おー!!」」」
「仲良くやってるとこ悪いが、お前たち三人には休暇も与えられる」
え?と俺達三人の首が声の主、風雅の方に向く
「どうしていきなり、休暇が…?」
タケルの疑問の声
「あぁ、トラウマ手当って言うのが有ってな、クラスT以上、またはそれに比類する判断されたクラスGと出会った時、3日間の休暇と手当が与えられる」
「ジェテリアが怖くて新人に仕事をやめられても困るからな」
「まぁ、ゆっくり休め、自主的に特訓するのもいいが、心を休めるのも怠らぬように、特に尾河、幼馴染の件とか色々あると思うが、お前は基地壱号に来て日が浅い、ある程度環境を知っておくのも今の時代、大事だ」
「はい、ありがとうございます、佐美宗さん」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
各々感謝の言葉に
「良いってことよ、むしろ、言わなかったら上司として俺の評価が落ちる」
と返した
◆
時間は飛んで次の日、俺は与えられたアパートの一室で過ごしている。
ジェテリアによる基地壱号に守られ電波の影響を受けたことがないであろうアパートはピカピカの木造であった
本当に素晴らしい部屋をもらったものである。
そう思いながら外に出る、玄関の花壇に手入れをしている男性を見かける
「おはようございます!」と元気に挨拶
挨拶をしてから気づく、その男性はスカートを履き、ポニーテールの金髪のその奥に綺麗な銀髪。いわゆるオカマだったのだ
「あら、オハヨウ、理人ちゃん、お仕事疲れ様。元気で何よりだわぁ〜」
完全なるオカマだ
「えっと、男の人…ですよね?……いや、女の人?」
なんてデリケートなことを言っているんだこの青年は、思うかもしれないが許して欲しい
なぜならば、この青年、というか今の社会、ジェテリアの脅威、街の復興、人命救出、社会構造構築などなどの社会を構築する問題が山積み、その合間にジェンダー関連の話題を理人のような世界崩壊後に生まれた子供に教えることが出来なかったのである。
「あら、変なことを聞くのね、でも大丈夫、慣れているから、でも、今は女よ。アタシはトム・サシャータ、このアパートの大家をやっているの」
トム・サシャータという女、彼女は両手の前腕がギア化しているのが人目でわかり、左手薬指に指輪をつけているのがわかる
「大家さんだったんですか。ありがとうございます。というかトム・サシャータ?外国の方ですか?」
「ふふ、それには深い訳があるの、聞いてくれる?久しぶりに誰かに話したい気分なの」
「はい、今日は休日なので!」
そう笑顔で返答する
「そう、あれはアタシ、学生の頃」
そして、崩壊当日の厄災の話でもあるわ―――
そうして、長い、長い、昔話に突入するのだ。
◆
sideトム・サシャータ
アタシ…いや俺には幼馴染がいたんだ、まあ崩壊前の世界、18年以上も前の話だがな
サシャータ・ジェリナブー――
彼女が”俺”が”アタシ”になった理由で今も愛している愛しのハニーさ
当時の俺の名前は富澤武幸という名前でまあ、なんだ。やさぐれてたつぅか、今となっちゃ考えられないが、俺と彼女は近いようで遠い不思議な関係だった。
早朝、インターホンが鳴る
「トムー、起きてるんでしょー、学校いくよー」
何だ、いつもいつもうるせぇな、と思いながら俺は玄関にいる客を出迎える
ガチャリ、と玄関を開け一言
「何だよ、ジェリー」
サシャータ・ジェリナブー、美しい金髪の美少女で俺の幼馴染、親の転勤でアメリカから日本に来た女の子、ジェリーとはみんなが呼ぶ彼女の愛称だ。
そして、当時から彼氏、彼女の関係だった
「今日から二学期が始まるのよ?一緒に登校して、わたし達の中の良さを見せる時」
彼女は細い二の腕をフン!とする
「朝から、調子がいいことこの上ないね」
「もっちろん!ここ最近は毎日ね、気分がいいの、なんでかな?」
「頭でも打って脳がバグった?とか」
「ひっどぉーい!これは裁判ね裁判!クラス裁判を行いましょう!!」
クラス裁判、彼女が俺に対する不満をクラスに広め、俺に謝罪を促す儀式……めんどいなぁ
「俺が居るから」
彼女は瞳孔を少し広げ、一瞬の沈黙
「分かってるぅ!珍しい!好き!」
カバっと抱きついてくるジェリー
「そろそろ学校につくから、離れろよ」
俺は彼女に離れることをお願いする
「えぇ〜、無理やり引き剥がしてくれてもいいのよ?」
「するわけ無いだろ、そんな事」
考えられない、そんな事をしたら裁判にかけられる
彼女はまた、キャー、と黄色い悲鳴を上げる
昇降口を通り、廊下を二人で歩く、
「ひゅーひゅー、お熱いねぇ、あぁ火傷しちまうなぁ〜?」
坊主の学生が俺達を冷やかす
「黙れ」
冷やかしに来るな、マジで
3−2のクラス標識を見つけ、入る、ようやくくっつき虫のような彼女は離れ、女子軍に話しかけに行く、あいつ常に話してるな。
「おはよー、トム」
俺の友人がおはようの挨拶をする、俺はそれに対して
「トムって呼ぶな」
トム、それが俺のあだ名のようなもの、最初に呼んだのはジェリーでジェリーにトムと呼ばれて気にならないのだが、彼女以外の奴に呼ばれるとなぜだか嫌な気持ちになる
「はいはい、トッムーなら良いんでしょ」
「うむ、おはよう」
トムに言い方が近くてもトム以外なら気になったりはしないのだ
そうして、朝は終わり、授業の時間が始まるのだ
◆
授業も三分の二が終りを迎える、そしてお昼の時間
昼食は持ってきていない、なぜなら
「はい!お弁当」
ジェリーは俺にお弁当を手渡す、そのお弁当は可愛くデコられていて、いつもながら、手を握りながらお弁当を渡してくるため、多少ドキドキしてしまう
「ああ、いつもありがとう、ジュリー」
「いいんだよ、トム、アタシが好きでしてることだよ、でも」
彼女は含みを持たせた
なんだ、何かあるのか
「今・回・は」
彼女は可愛く、言う
「クラス裁判を行います、被告人のトムくん…はご飯食べてていいから」
「はぁ!?」
「待て待て待て、俺まだ悪いことしてねぇぞ!?」
俺は猛抗議する、不服だ!!と
「みんな、立ってぇー」
俺以外の全員がバッ、と席を立つ、そして今回の罪状を読み上げるのだ
な、なんだよ
『愛しの彼が名前で呼んでくれない!!』
は、はぁ?
思考と同時に声が出る
「な、し、しっかりジェリーって呼んでる、じゃん、か」
「ちっがーう!!」
うがー、と声を張り上げるジェリー
彼女は顔をずいっと近づけ、
「サシャータって、呼んでほしいの」
「唐揚げうま、いつもありがとう」
「っそ、そう良かった」
ニッコリと嬉しそうな顔をする彼女
その後、その後顔をブンブンと横に振り
「りぴーとあふたーみー!サシャータ!!」
『りぴーとあふたーみー!!サシャータ!!!!』
クラス全員の声が響く
「君等こういうときの団結力すごいよな…」
呆れの一言しか出ないね
「でもさ、うーーーん」
「おいおい、トッムー、そんな呼ばないでどうした?」
友が口出す
「いや、違うの、なんだろうね、なんてゆうか…」
感じることを口にする、してしまう
―むず痒い…つぅか…恥ずかしい―――
「〜〜っ!!」
部屋全体から息を呑む音
「もーう!!!トーームゥーー!!!」
今日史上、いや、今年史上最も強い抱き着き
「やめ、やめやめ!やめろぉぉぉ!!!」
弁当は美味しかったです。でも結局その日はサシャータって呼べなかったな
◆
そこから、夏は過ぎ、秋となった、その時からかな
彼女の様子がおかしくなったんだ
隠し事はしない、それが約束、だから聞いてみたんだ
そしたらさ
「いじめられてるの、友達が」
一瞬、彼女がいじめられている訳じゃないと分かって安堵した自分がいた、俺は恥じた、そして怒った
「どうして教えてくれなかった?」
「トムに、迷惑かけられないから…アタシがなんとかするってその子、さやかちゃんに言ったんだけど…やっぱり、怖いよ」
彼女は涙を流しながら語る
「迷惑なんていくらでもかけてくれて良い、俺達は幼馴染だ…一緒に抱き合って、泣き合った、仲じゃないか、俺、なんとかしてくるよ」
「え?う、うん」
彼女が泣いている、自分の不甲斐なさに
俺はいじめが嫌いだ、彼女を泣かせた、人を傷付ける、何も産まないそんな、いじめが嫌いだ
ようやく恋愛のれの字を出せました