◆side富澤武幸
俺はいじめの現場に来て開幕、彼女の友達をいじめている連中を見つけ、すぐに
「謝れ」
と殴った
「お前も」
ひたすらに
「寄って集って」
殴る
「恥ずかしくないのか」
泣こうが
「さやかさんに、謝れよ」
殴る
「なぁ?」
己の拳が痛くても殴る、ひたすらに相手が泣こうが殴り続けた
その時の俺は修羅だったと思う、般若のように恐ろしかったそうだ
「ご、ごべんなざい」
加害者は謝る、地に頭を付け、懇願するように俺に謝った
「謝るのは俺じゃない」
被害者は苦しむことしか出来ない、その傷跡は永遠に残る
何を考えているんだ、こんなにもひどいことをしておいて、お前達加害者に一体どんな得があるっていうんだ?
それが最も分からない
◆
俺は怒られた、色んな人にそれはもうこっぴどく
当然のことだった
暴力は何も産まない、深い悲しみの爪痕を残すのみだ
その日、家に帰ってきて、まず抱きしめられた
お父さん、お母さんは学校では怒ってきたけれど、家ではただ、やり方を間違えただけだ。お前は優しい子だ、と諭すように泣かれた。
そんなに泣くなよ、母さん
「俺だって、涙が溢れちまう…」
奥にはジェリーの姿があった
「ジェリー……ごめん」
「あなたは悪くないの、アタシがあなたを頼ってしまったから、私だって責任がある、でもさやかちゃんは感謝してた。きっと学校では先生はアタシ達を冷たくするでしょうけれど、アタシ達はこの先も強く生きてられる」
そう言って、ジェリーはギュッと俺を抱きしめた。
「ありがとう、サシャータ」
「ふふっ、名前、ちゃんと呼んでくれたのね?」
◆
あんな問題を引き起こしたにも関わらず、俺達カップルはクラスから疎まれることはなく、いつも通りの学校生活を送っていた。
そんな日々も終わり、冬休み期間に入る。そこで俺は日々のバイトに明け暮れていた
今は部屋にいるがそんなんだったからか、サシャータに構ってやれず…
ピコン
通知音、内容を見れば
サシャ{構え}
またか、タタタッ、とフリック入力して返信する
武蔵の偽物{愛してるよ}
ピコン
サシャ{足りない}
サシャ{もっと}
プルルル、と電話、ついに電話まで掛けてきたか
『構え!!彼女への愛が足りない!!』
画面の向こうにサシャータがいるのが分かる
「ごめんって、というか、サシャータがこっちに来ればいいじゃん。家お隣じゃないか」
『いや!そっちから来て!』
「はいはい」
こりゃあ大分拗ねてるなぁ
まだ目標の金額までお金は溜まっていない
まぁ、手段と目的を履き違えるな、とも言うしね
そう思いながら彼女の家に出掛けたのだった
◆
ピンポーン!とインターホンを鳴らす
するとすぐにドタドタと足音がする。
玄関の扉が開き、迎えてくれるのはサシャータであった
「遊びに来たぞ」
そう端的に告げれば彼女の目はパァっと輝く
「どうぞ!入って入って!!」
そのまま彼女の部屋に連れてこられる。
「久しぶりのおうちデートってことでしょ!?」
「そうなるな」
そうなるが…いつぶりだ?うーん2〜3週間はデートみたいなことはしていないな。
「今日はトランプでもしましょう!カッたほうが負けて方の言うことを聞くってことで!」
「おい、勝手に…」
「じゃ、真剣衰弱ね?」
勝手に始めんなよ、だがまあ、忖度無し、ボコボコにしてやる
◆
「勝った!勝った勝った!!」
ボコボコにされました。大体二倍の点差で負けた
敗北です…
「じゃ、命令はぁ~」
ニヤニヤと笑うサシャータに背筋が凍る
何されるんだ…俺
彼女の命令は俺の想像とは真反対、実に可愛らしい命令であった
「…24日、クリスマス、一緒にデート、しよ」
俺の硬い表情が思わず崩れる
「ふふっ、最高のプレゼントを用意しよう」
「わーい!」
そう喜ぶ彼女、俺も勝ったら、同じ命令をしようと思っていた、だなんて言えないなぁ、恥ずかしいや
「サシャータ、いつもありがとうな」
彼女はキョトンとする
「なにそれー、なんかショージキで面白」
プププW、と笑う彼女だが、なぜだか嬉しそうに思えたんだ。
◆そして、クリスマスデート当日
息が白く染まる雪が降る冬、寒いな
そう思いながら、集合場所、忠犬ハチ公前へと足を運ぶ、今日は何があるのか、朝から夜まで、楽しもう
小さな紙袋を持った男、俺だ
「ホワイトクリスマス…いい響き」
俺もおかしくなったのかもしれない、楽しみすぎて情緒が壊れたか?
空を見上げる、そこには白い雪が降っていた。それは美しく幸せを纏っていた、だからこそ壊れた時、分かりやすく、心が折れるのだ
ブゥン、と空の彼方から何かが起動したような音が響く
なんだ、耳鳴りか?
なにか不安に思って気の所為だと振り払う
しかし、足を僅かに早めた。この時、もっと速く走っていればよかったのに
彼女の後ろ姿を見つける
「あ、おーい!サシャータ!」
その時
空が赤に染まった、終末を表すような、そんな赤
その色は波のように空から消えた
俺は走った、今日、絶対に成し遂げるべき事があるから
やがて、悲鳴が聞こえたのだ、男か女か、判断もつかず、俺は走った
電線から電気が溢れる音が聞こえる、映画でしか見たことがないような、怪物の姿
それが世界から、地球へのプレゼント
クソッタレが
今の時代の時代を生きる俺/アタシはそう思う。だから今、勝たねばならない、と話を戻すわね
俺は逃げた、その怪物から、怪物の姿をまじまじと見たわけじゃないけど、見たら、泣き叫んで、サシャータどころじゃなくなてしまうから
「サシャータァァァ!!!」
たくさんの人混みの中から伸びる手
それを見た瞬間に掴んだ
彼女の手だと、見た瞬間に分かるから
逃げる人々は次々と雪を赤く染める染料となるか、殺す側になる
「逃げるよ!トム!」
「あぁ!」
絶対に生き残る、銃弾が飛び交う中、俺達は誓うのだ
「あっ…」
他の人の足を踏んでしまって彼女が転んだ
その時に、見た、後ろから迫る、機械の群れ、一体一体が人を殺す凶器を装備し、それらを、振り下ろす
「アグッ…!」
頭が痛い、何かが侵食してくる、そんな感覚、だけど、彼女は絶対に
「……離さない!!」
彼女の右手を掴む、そして走り出す。
気付けば、紙袋を持っていた俺の左手が、機械化していた、それには気付かず、俺は馬鹿だった、とんでもない間抜けだった
感触がおかしかった、彼女の右手、それが俺の知ってる手じゃなくて
見たら、彼女の顔、右手と額、機械化してて、その時、恐怖を感じたんだ
知ってる顔じゃない、ってね
手を離した、自ら、手をぱっ、と
馬鹿野郎、今の俺の一生の悔い
走って、離して、彼女が倒れて、俺はハッとして、再び、近づく
その時のサシャータの顔、絶望に染まってたのを、俺は一生忘れない事だろう
バンッ
銃声、機械の奴らの攻撃
それによって倒れたのは愛しのサシャータ、彼女だった。
「先に逃げて、トム、あなただけでも生き残るの、」
「出来ない、ごめん、離しちまって」
倒れ込む彼女を抱く、機械共はそんな俺達を囲い込む、決して、逃さぬように
「いいの、それよりも、生きて、よ、ねえ」
「出来ない、伝えたいことがあるんだ」
本当はもっと、平和に伝えたかった
「結婚しよう」
「うん」
彼女は即答した、それに一瞬の安堵があって、胸が貫かれたみたい
いやはや、ギャグかなぁ、実際に貫かれていた
俺の胸に背後からナイフが襲った
彼女も同じような、苦痛を受けたであろう、そんな苦しみ、藻掻く、声がする
それも何もかもが、どんな全てがどうでも良く
彼女の掲げられた左手薬指
ただその指だけに意識を向ける、俺は怒りに震える、愛の男、彼女は心優しい、正義の女
慎重に紙袋から取り出した箱を開ける、中には安いが、どんなものよりも価値がある指輪
まず彼女の指に指輪をゆっくり、ゆっくりとはめていった
「ありがとう」
彼女は声を出す、それだけでも辛いだろうに…
そして俺にも、今気がつく、機械化している、その左前腕、ま、いいか
ゆっくり、はめる
「あぁ、俺も」
「「愛してる」」
二人の声が重なり、一人の命が散る。語り部ではない、一人の女が散った
「ああああああああああああ!!!!」
実感して、叫ぶ、俺も先に逝こう
叫ぶ間、空間を横切る一つの人影があった
歩く人影、俺達の空間など、見えていないように歩き、
彼女を踏み台にした
は?今、コイツ何をした?
「っ!コロス!!」
叫びながら、俺は人影に殴り掛かる
その人影はこちらを見る、
たったその瞬間に、俺の意識は落ちた
俺が見たのは目の中にそれぞれ3つの赤い瞳孔を持つ端正な顔立ちの男、浴衣姿で首筋に目のような赤い文様がある男だった
◆
side尾河理人
「そして、次、目が覚めた時、建造途中の基地壱号にいてね、そいて、アタシは色んな人からお話を聞いて知ったの」
『あなたが今生きてるのは機械化部位を移植されたから、その右前腕と心臓、それらはあなたの隣にいた女性のものです』
男の雰囲気になり
「俺は泣いた、そんで、笑った。彼女のハートは俺のもの、なんてな」
「そして、あなたの名前は何ですか?と聞かれたからこう答えた」
俺/アタシはトム・サシャータです―――
「ま、そこから色々あって、女装を初めて、オカマというものになりました。でも決して意味がないわけじゃない、」
「俺が”アタシ”の時、彼女にこの今の世界の光景を捧げているんです、決して、馬鹿にしてはいけませんよ」
そう俺に口元に人差し指をくっつけるサシャータさん
「はい、本当にいい、関係だったんですね」
「ああ、本当に愛しているさ」
俺は心からこの言葉を言うべきかと思った
「結婚、おめでとうございます!」
「えぇ、ありがとう!」
彼女の薬指の指輪がキラン、と陽光を反射し輝く
「長い昔話に付き合ってくれてありがとね、今日も頑張って!幼馴染のためにも、ね?」
なんだか、ロマンチックってこういう事を言うのかな、すごく、辛いお話だった。
一つ、ジェテリアを滅ぼす、決意が強まるのだ、
「はい、じゃ、散歩にでも行ってきますよ!」
俺はそう言い街に出向いていった