side.Non
昨日の星徒会室で起こった騒ぎの翌日の休日昼のこと。
クロトの住むアパートの一室に、のどかなチャイム音が響いていた。
リノ「あら、宅配かなにかかしら?クロト、なにか頼んだ?」
クロト「いや、何も頼んでないはずだけど・・・」
リノ「じゃあお客さんかしら?ちょっと出てくるわね」
お昼ごはんも終わり、いつも通りの家族団欒の時間が流れていたが、チャイム音を聞いたリノが玄関に向かっていく。
リノ「はーい・・・あら?あはよう、数日ぶりね!入ってきていいわよ」
クロト「・・・?」
そして扉から顔を覗かせたリノがそう言いつつ、扉を開ける音が聞こえてくると、クロトは首をひねりつつお茶を啜るが、すぐにその理由はわかった。
ヴィーナス「お邪魔するわね!おはようクロト!」
クロト「ごほっ、ごほっ!ヴィーナス!?」
突然玄関からひょこっと顔を見せたヴィーナスを見たクロトが思わずむせる。
クロト「ど、どうしたんだ突然・・・?」
ヴィーナス「ちょっと用があってね、今大丈夫だったかしら?」
リノ「大丈夫よー。ところで、用って何かしら?」
玄関から少し遅れて戻ってきたリノがダイニングチェアに座りつつ聞くと、ヴィーナスも空いていた椅子に座りつつすぐに答える。
ヴィーナス「実はリノさんと話したいことがあるの!」
リノ「あら、クロトじゃなくて私と?」
ヴィーナス「そうなの!ちょっと2人で話したいことがあってね!」
リノ「あ、もしかしてこの前ネビュラに来てくれた時の話かしら?あのときはごめんなさいね」
クロト(なんでヴィーナスは当たり前のようにネビュラに行ってるんだ・・・?あれ、あそこってそんな気軽に行っていいところだっけ・・・まぁ、いっか、ヴィーナスだしな・・・)
クロトがお茶を飲み直してる間に話が進んでいくが、突然ヴィーナスがクロトに向き直る。
ヴィーナス「と、いうわけでクロト!リノさんとちょーっと2人で話したいんだけど、いいかしら?」
クロト「え、急に?」
リノ「あ、そうだわ!そういうことならついでに、ママの代わりにこれを買ってきてもらってもいいかしら?」
クロト「えぇ・・・まぁいいけど・・・じゃあ、行ってくる」
リノ「ありがとう、よろしくね〜」
そんなこんなでクロトは買い物メモを渡され、軽く準備をしてから出発する。
クロト(・・・昨日は帰ったら星徒会室が混沌としてたからなぁ。今日はなにも起こらなきゃいいんだけど・・・)
・・・そんな思いを胸に抱えながら。
一方、追い出されたクロトを見守ったリノがヴィーナスに向き直る。
リノ「さて、ヴィーナスちゃん。私に用って一体どうしたの?」
ヴィーナス「実はこんなことがあってね・・・!」
そんな風にヴィーナスが昨日の星徒会室と、2日前のカフェテリアでの一件を話すと、リノが目を輝かせる。
リノ「ほほー、そんなことになってたなんて・・・うちの息子も中々隅に置けないわね」
ヴィーナス「そ・こ・で!ヘレナちゃんに頼んで文字通りのクロトの城を作ってもらったの!で、そこに一回クロトに住んでみて欲しいんだけど・・・どうかしら?」
リノ「あー、なるほどねー・・・」
ヴィーナスの話を興味津々に聞いていたリノだったが、ヴィーナスの一言で少しだけ表情が曇り、顎に手を当てて考え込む。
ヴィーナス「・・・ちょっと、まずかったかしら?」
リノ「あぁいや、そういうわけじゃ・・・なくも、ないんだけどね」
リノ(そういう理由で息子が出ていくのは、嬉しいような、なんとも言えないような、それでも寂しいような・・・でも、なんでこんなに無性にモヤモヤするのかしら・・・いや、やっぱりあの時の夢から・・・)
ヴィーナス「・・・?リノさん?」
リノ「あっ、ご、ごめんね。ちょっと待ってくれる?」
リノが少し考え込んだ後に、一瞬頬が赤みかかるのを見たヴィーナスが首をひねるが、深呼吸してからリノが一口お茶を飲むと、もう一度口を開く。
リノ「そうね・・・妙に女の子に囲まれてる割には春が来ないなーって思ってた頃だし、あの子の環境を変えてみるのも、ありなのかしら」
ヴィーナス「じゃあ・・・!」
リノ「いいわよ、どれくらいの期間になるかわからないけど、クロトのこと、お願いするわね」
ヴィーナス「やったー!ありがとうリノさん!それじゃあ、どうしようかしら・・・」
リノが許可を出すと、ヴィーナスは文字通り全身で喜びを表現しつつ、頭と口ではクロトを連れて行ったあとにどうするかの計画を立て始める。
リノ(あの子も、ある意味で独り立ち・・・になるのかしら?だいぶと違うような気もするけど・・・少し、寂しくなるなぁ)
ヴィーナス「あ、勿論だけどリノさんも来ても大丈夫よ!魔王のハーレムはいつでも新規メンバー受付中よ!・・・それに、クロトも近くにリノさんがいた方がいいと思うわ!」
リノ「・・・ヴィーナスちゃん」
ヴィーナス「そうと決まれば、明日また来るわ!その時にクロトを連れて行くわね!じゃ、ヘレナちゃんにも伝えてくるから、私はここでお暇するわ!ありがとうリノさん!」
ヴィーナスはそう言うと、タタタタッ!と音が聞こえそうな勢いで走って行ってしまう。1人残されたリノは少々呆気に取られたあとに、クスッと笑った後にお茶に一口口をつける。
リノ「ふふっ、嵐みたいに行っちゃったわね。それにしても、クロトのハーレムねぇ・・・」
ぱっと聞いただけ・・・いや、実態も現代的な常識て考えたらどうなのと思うべきものではあるだろうが・・・
リノ「ま、あの子が幸せになれるなら、それもありかしら。それに、ヴィーナスちゃんと九条家なら、できちゃいそうよね〜。もし、セドナが聞いたりしたらどう思うのかしら?ふふっ、すごく苦い顔をしそうね〜」
一方その頃ネビュラ・・・
セドナ「・・・は?魔王のハーレム?」
カヤ「はい・・・そんなことを、前言われた。リーリア、口元緩んでた」
リーリア「ちょぉ!?そういう余計なことは・・・そういうカヤちゃんだって・・・」
カヤ「う、うるさい!」
セドナ「はぁ・・・頭が痛い・・・なぜ九条ヴィーナスはこういつもめちゃくちゃを・・・あの時に行ったのはあとアイリーンとイニシュ・・・余計な影響が・・・ないわけもないか・・・はぁー」
リノ「ま、考えすぎかしら。じゃあ、久々に私が餞別に赤飯でも炊いちゃおうかしら!」
そんなどこか楽しげな独り言を呟きつつ、リノはキッチンに向かうのだった。