4話到達しました。
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茅場晶彦の声を聞いて、少し疑問に思いながら右手の指を二本そろえて下に向かって振る。
そしてでたメインメニューから、アイテム欄を開く。
そして、表示されたリストの一番上に覚えのないものがあった。
「...《手鏡》?」
恐らくこれが茅場晶彦の言っていた、『プレゼント』だろう。
とりあえず、タップしてオブジェクト化する。
手に取ってみるけど、何も起こらない。
覗きこんでも映るのはこの世界の俺の顔だけだ。
首を傾げて横を見ると、クラインも手鏡片手に茫然としている。
キリトも首をかしげて、クラインのほうを見る。
と、突然クラインや周りのアバター、キリトを白い光が包んだ。
と思った瞬間に俺も同じ光に包まれる。
ほんの二、三秒で光は消え、視界が広がる。
どういう事だろう、とクラインやキリトのほうを向く、が、そこにはキリトとクラインに似ている人物がいた。
...正確には、キリトとクラインはいるけど、顔が変わっている。
...まぁ、そう思った理由は、装備が一緒だし、二人とも、髪の色がさっきと一緒だからな。
と、二人の視線が交差して、その後、俺に二人の視線が集まった。
「お前ら...誰?」
キリトだと思う人物が口を開くと、今度はクラインだと思う人物が口を開く。
「おい...誰だよおめえら」
どうやら、
やはり、俺も顔変わってるのかぁ...。
そう思いながら、茅場晶彦のプレゼントの手鏡を覗く。
そこには、現実世界のほうの俺が映っていた。
肩らへんまである黒髪に女性寄りの顔それに、結構色白な肌。
この前、知らないばあさんに『あら、美人姉妹さん』って言われたっけな、あん時の妹の顔が忘れられない 。
かなり、怖かった。
「うぉっ...俺じゃん」
隣で同じく手鏡をみたクライン(?)がのけぞった。
そして俺達は3人で顔を見合わせ、二人が同時に叫んだ。
「お前がクラインか!?」
「おめえがハヤトか!?」
「で、やっぱりお前はキリトか」
まぁ、ある程度予想は付いていたので、そこまで驚かない。
てか、ボイスエフェクトが外れたようで、男性だった声が、現実と同じく、かなり女性寄りの声になっている。
改めてグルっと周りを見ると、さっきまでイケ面と美女だらけだったこの広場は、ゲームショウやらそういうイベントの参加者に鎧兜を着せたような感じの人達がたくさん居た。
恐ろしいことに男女比も大きく変化している。
そういえば、ナーヴギアでキャリブレーションしたっけな...。
ちなみにキャリブレーションというのは、自分の体をあちこち触って、手をどれだけ動かしたら自分の体に触れるか、の基準値を測る作業だ。
そして顔のほうはナーヴギアが頭から顔全体をすっぽり覆っているから顔の造形などが細かく把握できる。
ま、その二つを使って身長、体の造形、顔を出したんだろう。
そしてその意図も、もう明らかだ。
「...現実...」
キリトが呟く。
うん。キリト正解。
「茅場晶彦はさっきそう言ってた。これは現実だと。このポリゴンのアバターと...数値化されたHPは、両方本物の体であり、命なんだと。それを強制的に認識させるために、茅場晶彦は俺たちの現実そのままの顔と体を再現したんだ...」
「で、でもよぉ、キリト...」
がりがりと、頭をかき、クラインは叫んだ。
「なんでだ!? そもそも、なんでこんなこと
「クライン」
そこで話しかける。
「何だよ...」
クラインがこっちを向く。
俺は、それに対して、指先で真上を指差す。
「その答えは、もうすぐ言ってくれると思うぜ」
茅場晶彦は俺の予想を裏切らなかった。
数秒後にまた、アナウンスが再開されたのだ。
『諸君は今、なぜ、と思っただろう。なぜ私は――SAOおよびナーヴギア開発者の茅場晶彦がこんなことをしたのか?これは大規模なテロなのか?身代金目的の誘拐事件なのか?と』
そこで茅場晶彦は一旦言葉を切った。
「私の目的はどちらでもない。それどころか、今の私には一切の目的も理由も持たない。...なぜなら、この状況こそが私にとって最後の目的だからだ。この世界を作り出し、観賞するためにのみ、私は、ナーヴギアを、SAOを作った。そして、今、全ては達成した』
そしてまた一旦言葉を切った。
そして、短い間を置き、続ける。
『...以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る』
その言葉が終わると同時に真紅の巨大なローブ姿が音もなく上昇し、フードの先端から、空を埋めるシステムメッセージに溶け込むように同化していく。そして、そのローブが完全に消えたと同時に、空を赤く染めていたシステムメッセージも消えた。
そして数秒後、やっと、一万ものプレイヤーが反応した。
つまり、圧倒的なボリュームで放たれた多重の音声が、広大な広場をびりびりと振動させたのだ。
「ウソだろ...なんだよこれ、ウソだろ!?」
「ふざけるなよ!出せ!ここから出せよ!!」
「こんなの困る!この後約束があるのよ!!」
「嫌ぁぁ!帰して!帰してよぉぉぉぉ!!」
たった数十分でこんなことになっちゃったから当り前だろう。
自分でも、なんで俺はこんなに冷静でいられるのか不思議なくらいだ。
俺はもう、数か月...あるいは数年間、現実に戻ることはできない。
さらに、この世界で死ねば、本当に死んでしまうのだ。
「クライン、ハヤトちょっと来い」
と、そこでキリトに呼ばれる。
そしてキリトは俺の腕とクラインの腕を強引につかみ、人込みを縫って歩き始めた。
どうやら、集団の外の方にいたようですぐに人込みを抜ける。
そして広場から放射状に広がる幾つもの街路の一つに入り、馬車の影に飛び込んだ。
「クライン。それにハヤト」
キリトが、真剣な目をして呼ぶ。
「いいか。よく聞け、二人とも。俺はすぐにこの町を出て、次の町に向かう」
ちらりと横を見ると、クラインが悪趣味なバンダナの下で、ぎょろりと目を剝いた。
そしてキリトが低く押し殺した声で続ける。
「あいつの言葉が全部本当なら、これからこの世界で生き残っていくためには、ひたすら自分を強化し続けなければならない。MMORPGはプレイヤー間のリソースの奪い合いなんだ。システムが供給する限られた金とアイテムと経験値を、より多く獲得したやつが生き残れる。...恐らく《始まりの町》周辺のモンスターはすぐに刈りつくされるだろう。モンスターのリポップをひたすら待ち続けることになる。今のうちに次の町を拠点にした方がいい。俺は道も危険なポイントも全て知ってるから、レベル1の俺達でも安全にたどり着ける」
キリトにしては長い演説を、クラインは、身動き一つせずに聞き終えた。
そして数秒後、わずかに顔をゆがめる。
「でも...でもよ。前に言ったろ。おりゃ、別のゲームでダチだったやつらと一緒に徹夜で並んで、ソフト買ったんだ。そいつらもログインして、さっきの広場にいるはずだ。俺を待ってるはずなんだ。置いてはいけねえよ...」
「「...」」
キリトが息を詰め、唇を噛んだ。
キリトは頷けないんだろう。
もし、キリトが『よし、全員連れてくぞ』とか言って、連れてっている時に全滅でもしたらキリトに責任がかかりかねない。
それをクラインは読みとったようだ。無精ひげが浮かんだ頬に、強張っていたはいたが、それでも太い笑みを刻み、首をゆっくり振った。
「いや...これ以上おめぇに世話になるわけにはいかねえよな。オレだって、前のゲームじゃギルドの頭はってたんだ。大丈夫、今まで教わったテクで何とかして見せっから。...それに、これが全部、悪趣味なイベントの演出で、すぐにログアウトできるっつう可能性だってあるしな。だから、おめえらは気にしねえで、次の村に行ってくれ」
「...」
キリトが数秒黙りこむ。
俺も、もう心は決まった。
「そっか」
キリトがうなづく。
キリトも決めたようだ。
...なら。
「ここで別れよう」
俺がそう切り出すと、キリトがびっくりした顔でこっちを向く。
「俺も少しよる所が有るから悪りぃけど、キリトは先に行ってくれ」
真剣な顔でキリトにそういう。
と、キリトはわかってくれたようで、溜息を吐き、
「わかったよ。何かあったら二人ともメッセージを飛ばしてくれ。...じゃあ、またな、クライン、ハヤト」
そしてキリトが体を北西...次の町がある方に向けようとする。
「「キリト!!」」
クラインさんと俺が同時に引きとめた。
「死ぬなよ!」
俺は、そう伝えた。
「ああわかった!」
キリト答えると、キリトが手を軽く振り、体を北西に向けた。
と、五歩ほど離れたところでクラインがキリトに声をかけた。
「おい、キリトよ!おめえ、本物は案外かわいい顔してんな!結構好みだぜオレ!」
「キリト! さっきの顔よりはそっちの方が似合ってるぜ!」
と、キリトが歩みを止め、叫び返した。
「クラインもその野武士ヅラのほうが十倍似合ってるぞ!!ハヤトもわざわざ男顔に、なるよりもそっちの女顔の方が似合ってるぞ‼︎」
今なんて言いやがった?あいつ。
と、キリトはそのまま走り去ってしまった。
...クソっ!次会ったときは一発ぶん殴ってやる...!
ま、今はそれより、クラインの方だな。
「クライン」
「は、はい、なんでございましょうか!」
呼びかけた瞬間に直立不動になるクライン。
...一体どうしたんだ。とりあえず気にせずしゃべる。
「とりあえず俺は、キリトとは別ルートで行くからここからは、クラインは、自分のすることをしてくれ。」
「は、はい。そうですかってお前は、どこ行くんだよ?いや、どこえ行くのですか?」
「クライン、敬語使うな!なんかうぜぇ!まあ、次の町にな」
「お、おう。じゃあ、お、俺は仲間を探しに行くとするわ!気いつけろよ!」
そしてなぜか妙にギクシャクしているクラインは、無視して俺は 次の町へ駆け出した。