パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第101話 JKのマストアイテム

 その頃。

 零那(れいな)たちは地下20階を目指して走り始めようとしたところだった。

 自転車トレーラーの荷台にはトメとヤミが乗っている。

 トレーラーのカゴに羽衣(うい)が立ったままつかまり立ちしている。

 その反対にはつららもカゴにつかまっていた。

 

「首がまだグラグラしてるよ……。あんまり揺らさないでね?」

 

 つららの言葉に、零那(れいな)はこともなげに言う。

 

「自分でちゃんと抑えてれば大丈夫よ! それより、すぐに虹子さんを助けに行くわよ! このまま地下20階まで突っ切るわ!」

 

 トメは全身に塗りたくられた軟膏をタオルで拭きとりながら、

 

「そうだな。急ごう……。虹子も助けてやってくれ……」

「もちろんよ! 羽衣(うい)、アルフスを呼び戻して! 私もクーちゃんを呼び戻すから!」

 

 そして零那(れいな)がペダルを踏みだそうとしたそのとき。

 

 荷台の上にいたヤミが言った。

 

「でもさ、そんなに急がなくてよくない? なんか余裕あったし」

「余裕ってなによ!? ヤッちゃんはいいから振り落とされないようにしていて!」

「でもさー。虹子さんだっけ。あの人、お化粧しなおしてたし」

「は?」

「いや、だってお化粧違ってたもん。っていうか、さっきまでファンデが汗で浮いてたのに、ちゃんと塗りなおしてたし。おかしいよね?」

「ちょっと待って、もう一回配信見てみる!」

 

 スマホを取り出す零那(れいな)

 

「えーとえーと……」

 

 しかし、零那(れいな)の指は焦りで震えていて、なかなか思い通りにタップできない。

 

「貸せ。私がやる」

 

 スマホを受け取ると、操作し始める。

 

「……配信は終了しているな。もう見れないぞ」

「じゃ、じゃあ羽衣(うい)! もう一度五円玉を!」

 

 零那(れいな)が叫ぶと、羽衣(うい)は懐からさきほど使った糸に括り付けられた五円玉を取り出す。

 

「オン マカ キャロニキャ ソワカ!」

 

 零那(れいな)が十一面観音の真言を唱えると、五円玉はグイーンと下へと引っ張られる。

 

「ここよりずっと下の階層なのは間違いないけど、それがどこかはわかんないよ」

 

 羽衣(うい)がそう言う。

 

「じゃ、じゃあとにかく下層階に向かおう! 床を壊しながら行くわよ! ソワタヤ ウンタラタ カンマン!! 南無(なむ)倶利伽羅龍王(くりからりゅうおう)!」

 

 零那(れいな)の叫びとともに、零那(れいな)が掲げた錫杖(しゃくじょう)から炎が巻き起こった。

 それがダンジョンの床に激突すると、ダンジョンの床があっという間に真っ赤に溶け落ちていく。

 さきほどまで自分を死に追いやろうとしていた溶岩そっくりだったからか、トメはそれを見てぶるっと身体を震わせた。

 

 さらに零那(れいな)が叫ぶ。

 

「あ、そうだ! そこの雪女ちゃん!」

「つららだよ」

「つららちゃん! そこの溶けた石を冷やして! 私たちはあんまり霊力消費したくないから!」

「あー、うん」

 

 つららはうなずくと、大きく息を吸いこみ、赤く煮え立つ床だった場所にフーッと息を吹きかけた。

 それは人間を凍えさせる氷のブレス。

 低温の風が床を瞬時に冷やしていく。

 そこにはなだらかに下層階へと続くスロープができあがっていた。

 

「さあ、行くわよ!」

 

 ペダルを踏んで漕ぎ始める零那(れいな)

 自転車とトレーラーが猛スピードで進み始めた。

 

 とんでもない速度が出始めていたが、ヤミは涼しい顔でトメが荷物の上に置いたスマホを眺めている。

 手を伸ばすが、霊体であるヤミはスマホに触れることができない。

 

「えー。なんでー? ね、トメさん、これ、私見たことない機種だよ。でもyPhoneだよねえ!? 私が知らないyPhoneなんてあるわけないのに……」

 

 実際はヤミが死んだのは2018年である。

 零那(れいな)が使っているのは数世代前の型落ち中古yPhoneであったが、それでも2018年よりあとに発売された機種だった。

 ヤミが知っているわけもない。

 

「お前、そんなにyPhoneに詳しいのか?」

 

 話を合わせるトメ。

 

「そうだよ! JKとしちゃ最新のyPhoneはマストアイテムだし! ちょっと操作してみてよ。ん? ウービーイーツ? これなに?」

「ああ、山伏女の職業だ。食べ物を配達するんだ」

「へー。そんなのあるんだ。ね、タップしてみてよ」

「お前、今100キロ近く出ているのに余裕あるな……。ほら、これでいいか?」

 

 勝手に零那(れいな)のスマホをいじり始めるトメたち。

 

 ウービーイーツのアプリが起動する。

 すると、すぐにピロリロリン! と通知音が鳴った。

 

「ん? 注文が入ったな。私も初めて見たぞ。こうなっているのか……。場所は……ん? おい、山伏女! 止まれ! 止まれ! 止まれっ!!!」

 

 トメの叫び声に、零那(れいな)は慌ててブレーキレバーを引いた。

 自転車トレーラーもガックンと揺れた。

 

「首がとれちゃうぅっ!」

 

 つららが悲鳴を上げる。

 その悲鳴に負けないほどの大声で零那(れいな)がトメに叫んだ。

 

「なによ! 急がないと! ほら、もっと下層階だし!」

「いや、違う! 注文が入ってるぞ!」

「はあ!? なに言ってんの、勝手に人のスマホいじらないでよ! キャンセルしといて!」

「違う違う違う! 見ろ、この座標! ここから下方に60メートル、北へ800メートル、東へ250メートル! これ、虹子が注文したんじゃないか!?」

「でも、罠かもしれないわ……。いえ、でも……。クーちゃんとアルフスの近くね……。あの子たちを向かわせるわ!」

 

 

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