パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件 作:羽黒楓
ドッドッドッ。
四頭の黒毛牛が自転車を引いている。
その自転車をさらに
そのスピードは時速40キロは出ているだろう。
「全速力じゃなくて助かるよ……」
虹子が呟く。
その通り、これでもかなり速度を抑えて進んでいるのだ。
なにしろ、今いるのは地下19階。
人類史上だれも足を踏み入れたことのない深層階。
空気中に含まれるマナの濃度は、
あまりにスピードを出しすぎると、どんなアクシデントに見舞われるかもしれない。
だから、かなり慎重に進んでいるのだ。
「さーんげさんげ!」
黒髪のポニーテールをなびかせながら、
すると、それに呼応するかのように
「ろっこんしょーじょー!」
「さーんげさんげっ!」
「ろっこんしょーじょー!」
自転車トレーラーの荷台につかまりながら、虹子がトメに聞いた。
「なにこれ?」
「これは私も知っている。というか、お前が山伏と一緒に配信するとか言ってたから少し調べた」
「えーなにー、トメさん私の配信チェックしてたのー? 私のファンじゃん!」
「いや、ライバルとしてだな」
「いいからいいから。えへへ。で、これなんの意味があるの?」
「山伏が山に登るときにこの文言を唱えるんだ。
「へー! トメさんすごーい!」
「というか、山伏女とコンビを組んでいるんだから、お前も少しは興味を持っておけ」
「はーい。で、それを唱えるとどうなるの?」
すると、祈りの言葉をいったん止め、
「この呪文をきちんと念じながら唱えるとね、霊力と身体能力が研ぎ澄まされてくるんだよ。これからラスボス戦だからね。万全の態勢で臨まないとだよ」
「なるほど! バフ魔法ってことね。私も一緒に唱えようかな」
「うん、それがいいよ! みんなで唱えながら行こう!」
四頭の牛が引く女山伏が漕ぐ自転車。
自転車トレーラーに乗っているヤミとつらら、それにトレーラーにつかまっている
虹子とトメを救いたい
自らが助かりたい、そしてこの『修学旅行』を最後までやり遂げたい、そう思っている虹子とトメ。
自分が死んでいることにまだ気が付かず、とにかく地上に帰還して家族に会いたいヤミ。
あまりなにも考えていないつらら。あえて言うならば、『もしかき氷にされるのならメロン味がいいな、でもそれはいやだからやっぱり人間は殺さないようにしよう』と思っていた。
それぞれがそれぞれの思いを込めながら、大きな声で祈りの言葉を叫ぶ。
「さーんげさんげ!」
「「「「「ろっこんしょーじょー!」」」」」
「さーんげさんげっ!」
「「「「「ろっこんしょーじょー!」」」」」
浄化の呪文が響き渡る中、
ついに、地下20階にたどりつこうとしていた。
★
「こ、これは……」
セーコは驚きのあまり、
乾ききり、しわがれた死体であるセーコの肌にはまったく似合わないピンク色のドレスのスカートを、セーコはぎゅっと握った。
その姿はあまりにも異形なものであった。
人間の身体をこのように変えてしまうなど、精霊の力でもなければ不可能だろう。
自らの娘を救うため。
そんな
セーコはその場にひざまずいた。
「さすがです、奥様……。これなら、あの山伏女も殺せるでしょう……」
「そうね、私もついにエシュ様の眷属と認められたのかもしれないわあ……。エシュ様も、ご自分のお子を救いたいのでしょう。でも――」
「でも?」
「あの山伏、今の私でさえ倒せるかわからない――。あれは規格外の強さよお……。人間をやめているレベルだわ……」
「しかし、今の
「いいえ。念には念を入れた方がいいわあ……」
そして、