パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件 作:羽黒楓
「も、もうだめだ~~~~」
危険レベル4のモンスター、ケルベロスを前にして、虹子は涙声で
「ちょっと、あんまりくっつかないでください。錫杖《しゃくじょう》がとれないです」
すると、錫杖《しゃくじょう》は零那《れいな》の眼の前でまっすぐ宙に浮いた。
〈なんだこれ〉
〈魔法の杖か?〉
〈こんな魔法の杖見たことない〉
〈いや、山伏が山に入るときに使う金属製の杖だ〉
ケルベロスは態勢を低くして今にも襲いかかってきそうだ。
それを気にもとめず、
そしてその指で空を横に切る。
「臨!」
すると
今度は縦方向に空中を切る。
「兵!」
またも光の線が現れ、空中に十字が描かれる。
さらに続ける
横、縦、横、縦と空中に線を描き続ける。
「闘! 者! 皆! 陣! 烈! 在! 前!」
縦に四本、横に五本。
四縦五横《しじゅうごおう》と呼ばれる、格子状の呪《まじな》い。
それが、光り輝きながら
それに反応してか、ケルベロスがついに床を蹴って
「
その瞬間、パァン! という音が響き渡り、光の格子が錫杖を包み込む。
「オン マユラ キランデイ ソワカ!」
杖の頭から光の玉が現れた。
「クーちゃん、おいで!」
それは光り輝く孔雀だった。
「クーちゃん、あいつ食べちゃって!」
さらに
「ガウガウ!!」
ケルベロスは抉るように地面を蹴って急旋回し、ほぼ直角に曲がってその攻撃を避けようとする。
だが。
光の孔雀は、ケルベロスを逃がしはしなかった。
まるで予知していたかのようにケルベロスの動きを読んで先回りする。
3つの首をもつ地獄の番犬。
そのスピードはありとあらゆるモンスターの中でもトップクラスと言われる。
光の孔雀はそれを遥かに凌駕する高速でケルベロスに追いついたのだ。
そしてその聖なる鳥はケルベロスの三つの首のうちのひとつに噛みつく。
ブチリとケルベロスの首がちぎれた。
切り口からは血のかわりに、ピンク色に輝く光があふれる。
切り落とされた首がゴロッと床に転がったかと思うと、やはりピンク色の光に包まれ、やがて消えた。
「キャウン!」
残った二つのケルベロスの首は、ぶざまな鳴き声を出す。
恐慌をきたしたのか、
しかし。
「追いかけて!」
次の瞬間、ケルベロスの体は、パシュンッ! という音とともに、爆発を思わせる閃光を放ち、そしてその光はやがて空気に溶けるように消え去った。
魔なるもの、毒となるものすべてを浄化するのが孔雀の力なのである。
「よし、もういいよ、ありがとう!」
「クーちゃん、ありがとね!」
「ニャオーーッ!」
と孔雀独特の甲高い鳴き声をひとつあげると、そのまま光の粒に分解され、空気に溶けるように消え去った。
浄化——というより消滅させられたケルベロスは、血の一滴も残していない。
「ふー。ワンちゃんは好きなんだけど……。あの子は逃がすと何度でも襲ってくるほどやんちゃだから仕方がないわ」
虹子はその光景をただただ呆気にとられて眺めていた。
「嘘でしょ……。危険レベル4のモンスターなんだよ」
〈嘘だろ瞬殺だった〉
〈危険レベル4って人類には討伐不可能って言われてるんだぞ!?〉
〈これAI生成のフェイク動画じゃないの〉
〈マジかよ、この山伏女なにものだ!?〉
〈待って、民間の探索者データベースにも記載がないぞ〉
〈いや、ある。未成年だから名前も顔写真もないけど、探索者タイプが修験者で登録されてる特SSS級とSSS級の女性が一人ずついるはずだ〉
〈いやいやいやただのサンプルでしょあれ〉
〈それ、サイト運営者のいたずらだって噂もあったはず〉
〈修験者って
〈まじで存在したのか〉
〈未成年なの?〉
〈あ、今データベースが更新された。名前:三日月
〈実在したんか〉
〈俺、まじでいたずら説を信じてた〉
〈やべー。今俺、歴史的瞬間を目撃しちゃった〉
〈特SSSってすごいの?〉
〈日本にはSS級が一人いるだけ〉
〈ちなみにSSS級だなんて世界に数人だからな〉
〈特SSS級は世界に三人いるぞ〉
〈でもその三人って過去の人で追贈だから、現役はゼロなはず〉
〈ってことは世界で唯一の特SSS級? なんで今まで知られてなかったんだ?〉
〈そりゃ未成年だったからかも〉
〈今未成年の情報って原則非公開だからな〉
「じゃ、ほどほどに飛ばしますね。早くパチンコ打ちたいから」