パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件 作:羽黒楓
それは、崩れたがれきの上に、ベチャッという音をたてて降り立った。
最初に見たとき、
人間の身体と同じくらいの大きさの、水色のスライム。
なんの霊力も感じない。
だが。
最弱のモンスターであるスライムが、地下20階というこんな深層階にいるものだろうか?
「みんな、気を付けて!」
そして、
そのスライムが、まるで溶け落ちるようにがれきの上に流れていったのだ。
すると、そこに現れたのは。
一人の女性だった。
その女性が、スライムの粘液で自分自身を覆っていたのである。
ウエーブのかかった長い茶髪。
真っ黒な修道服。
その表情はどこまでも穏やかで、優しい。
眉のラインは意志の強さを感じさせるように、濃いストレート。
「うっ……!!!」
直後、すさまじい霊力を感じて
「なんて強大な霊力……! なんで今までこれに気づかなかったの……!?」
「うふふ……」
その女性は笑う。
「このスライムはね、魔法の力をすべて遮断するのよお。だから、これを身に付けている私の魔力もあなたには感知できなかったのよお」
そう言う女性を、
「朱雀院……
「うふふ。そうよお。お久しぶり」
「……やっぱり、あなたが黒幕ってわけ? ヤっちゃんを殺したのはあなた?」
「答えなさいよ! 虹子さんやトメさんに呪いの刻印を彫ったのもあなたね? いったいなんでこんなこと!」
「うふふ」
「ありがとう」
「は?」
「ありがとう、
「なにがよ!?」
つららの作った球体。
それは
そんじょそこらの衝撃や魔法ではビクともしないはずだ。
その球体を幽霊のヤミが、
「私の身体ぁ!」
と言いながら爪でひっかこうとしているが、もちろんそんなことでは球体を壊すことなどできない。というか、霊体のヤミでは球体に対して物理的な力を加えることなどできないのだが。
「うふふふ。想定以上だわあ。本当に、ありがとう。あの子の死体は大切なものなの。それはあなたたちにとっても同じことだと思っていたわあ。その通りだったわね。あの死体を綺麗なままあの幽霊に返してあげたかったんでしょう? だから、死体を操って攻撃させれば、きっとあなたたちは死体を傷つけないよう、そうやって防護魔法をかけてくれると思っていたけど……。まさか、子宮までつくってくれるなんて」
「意味わかんないわよ! 何を言っているの!?」
状況がわからない。
いったい自分が何をさせられていたというのか。
「うふふ。ドローンは撃ち落としたし、もう配信はしてないわよねえ? 私はあなたたちを殺した後、日常生活に戻るから、世間様にこれが知られると困るのよねえ、うふふ。……そうね、
「何言ってんの! なにもわかんないわよ!」
「うふふ。そうよねえ。でも、どうせ殺すなら、あなたにはそれを知ってから死んでもらった方が、私の心もすっきりするわあ。だから、教えてあげる……」
狂気の笑顔だった。
「私が産んだ赤ちゃん……。私がエシュ様と交わり、私のお腹からエシュ様のお子として産まれた、尊い赤ちゃん……。石の姿となってしまった……。産まれたのは、2003年2月22日……」
それを聞いて、幽霊のヤミがハッと顔を
「そう、
「何言ってるのお! やだあ! これ、私なのお! 私の身体ぁ!」
ヤミが絶叫する。
「大丈夫よお。
それを聞いて、
「それで……! 私たちに、
「その通りよお。ついでに子宮付きだなんて。ふふふ、その氷の球体はまさに子宮。いえ、卵かしらねえ? 魂を安全に移し替えた後、その卵を割って我が子が産まれてくるの……。きっと、卵の中で雪女ちゃんの魂も吸収しちゃうかもねえ……ふふふ」
ヤミは殺された。
虹子とトメも死の刻印を彫られた。
それはすべて、
怒りに燃える脳みそを、
心は冷静に。
そして努めて静かに言った。
「なるほどね。それで今までの全容があらかた分かったわ……。でもその作戦、どうしたってうまくいかないわよ」
「なんでそう思うのお?」
「なぜなら! そもそもあなたは私たちを殺せない!