パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第119話 特SSS級?

 零那(れいな)たちの後方、氷の球体を挟んだ位置。

 そこで虹子とトメはハナエと対峙していた。

 ハナエの放つ霊力の鋭さは虹子でもわかる。

 虹子は小銃のストックを肩にあて、セーフティを外して狙いを定める。

 トメはその場で飛び跳ねて十メートルほどの高さがある天井に貼り付いた。

 まるで天井にさかさまに『立って』いるような体勢で、片手にハンディクリーナー、もう片手に短剣を握り、中腰になってハナエを睨む。

 さすがニンジャ、と虹子は思った。

 

「ふひひひゃひゃ、お前らごとき、この儂なら瞬殺じゃよ……。すぐにお前らを殺し、そしてあの山伏も殺す……」

 

 皺に覆われたハナエの表情は、それでも笑っているのだとわかった。

 すぐに、虹子は異変に気付いた。

 白い衣服を身にまとっている老婆の顔は、深い皺で覆われている。

 さきほどのやりとりから察するに、140歳にもなろうかという老婆なのだから、当然といえば当然なのだが。

 しかし。

 その質感が、大きな違和感を虹子に与えた。

 ――人間の皮膚って、こんなだっけ?

 干からびた泥のような質感。

 おかしい。

 いくら老いているとはいえ、生きている人間ならば、こんな異様な雰囲気をまとわないはずだ。

 虹子は言った。

 

「おばあさん……あなた……もう、死んでいるよね?」

 

 それを聞いて、ハナエは一瞬びっくりした顔を見せ、そして大きく口を開けて笑い声をあげた。

 

「ひゃひゃひゃひゃ! よく気づいたのお。ただのザコというわけではないようじゃの。その通りじゃ。儂はもう20年も前に死んでおる……。人間が140歳まで生きられるわけがなかろ?」

「……120歳まで生きたって話もあんまし聞いたことないけどね」

「ひゃひゃ! 儂の寿命は120が限界じゃったわ。彩華(あやか)が悲しんでくれてのお。手厚く埋葬されたもんよ……」

 

 虹子は照準をハナエに合わせたまま、目をすがめた。

 

「なるほどね。そして、地中から這い出してきた……。あなたたちの信仰だと、土葬が基本だもんね。復活の日に備えなきゃいけないから、死体を焼くことはしない……」

「その通り。そして、儂の死体は土からも拒まれた。この大地は、この儂を受け入れ、安寧の眠りを与えることもしなかった。つまり、儂はコルポ・セコとして、動く死体としてこの世によみがえったのじゃ……」

「土にまで拒否されるなんて、よっぽどの悪人なのね」

「逆じゃ。この薄汚れた時代、欲望のために人を食いものにする奴らが跋扈する世界……。そんな現代の地球では、儂という清らかな存在を受け入れることができなかったのじゃ。この世界は間違っておる。それを正してくださるのは、彩華(あやか)が産んだエシュさまのお子だけじゃ……」

 

 さすがの虹子も、人間に銃口を向けるのは少し気が引けていたが、ゾンビみたいなものというのならばもう迷わない。

 

「じゃあ今度こそ大地に帰してあげるよ! 私の()()()()でね!」

 

 虹子は引き金を引いた。

 タタタン、という三点バースト乾いた音とともに、弾丸が発射される。

 弾丸は虹色の軌跡を描きながらハナエの眉間を正確に撃ち抜こうとした 、その瞬間。

 

 弾丸が、はじけ飛んだ。

 それも、発射された三発とも、である。

 

「な……!?」

 

「ひひひ、ひゃひゃ。老いた上に死人である儂にはもはや強大な魔力は使えん……だがな。スピードと精密さに関してはまだまだおぬしらザコのはるか上をいっておるぞ……。ひゃひゃ。お前らはエシュ様への供物となるのだ。即死はさせぬ。おぬしら悪魔にとらわれた人間は、痛みと苦しみを通してでしか魂が浄化されぬ……。エシュ様に捧げるために……おぬしらをなぶり殺しにしてやるぞ……」

 

 虹子は再び引き金を引く。

 だがその弾丸はすぐに『なにか』に撃ち落とされ、空中で弾け散った。

 

「一体なにが……」

 

「今度は儂の番じゃ……」

 

 ハナエがそう言った次の瞬間、虹子は左肩に鋭い痛みを感じた。

 次は右の腿。

 脳を直撃するような痛みとともに、虹子の太ももからビュッ! と少量の血が噴き出る。

 

「な、なにこれ……」

「ひゃひゃ、これはな……っと、見えてるわい!」

 

 老婆が素早く振り返り、残像すら残さずに素早く何かを空中に投擲した。

 

「グッ!」

 

 うめき声とともに、何もなかったはずの空間から何かが床にドサッと落ちてきた。

 魔力で自身を透明化させ、ハナエの背後から襲おうとしていたトメだった。

 

「ひゃひゃ! 本当にザコじゃのお……。これからおぬしらに77回ずつ痛みと苦しみを与えるが……お前らを痛めつけるのが何なのかすら見えてないようじゃの。教えてやろう。これじゃ」

 

 老婆が指先になにかをつまんで虹子に見せた。

 それは、針だった。

 細い注射針のようなものではない。

 例えていえば、畳に刺して使うような、畳針ほどの大きさの針だった。

 

「こいつをの、こうして……」

 

 その動きは虹子の目で捉えることはできなかった。

 針はすでにハナエの手にはなく、そして――。

 虹子の右手から、血が噴き出す。

 手の甲に針が突き刺さっているのだ。

 

「ひゃひゃ! 儂のこの針のスピード、おぬしらには見えぬじゃろう。心配するでない、すぐには臓器や太い血管は狙わんよ。76本の針を突き刺し、77本目に心臓を貫く。それで生贄の完成じゃ。ひゃひゃひゃ!」

 

 

     ★

 

 

 針の攻撃が虹子とトメを襲っているとき。

 零那(れいな)羽衣(うい)の目の前で、彩華(あやか)が三叉の槍を振りかぶっていた。

 

「婆様と違って私は今が全盛期! エシュ様のお力を得て、私は最強の聖女となったのよお! 特SSS級! 泣き叫びながら死ぬといいわ! 我が子の産声のためにねえ!!」

 

 それを聞いて羽衣(うい)がニコリと笑った。

 

「特SSS級? お姉ちゃんが!? あはは!」

 

 

 

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