パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第120話 とっっっっても長い時間

 羽衣(うい)の余裕のある笑い声に、彩華(あやか)はピクリと眉を動かした。

 

「なにがおかしいのかしらあ? 殺されるのが怖すぎて頭がおかしくなっちゃったあ?」

 

「違うよ。お姉ちゃんを特SSS級だって思い込んでいることに笑ってるんだよ。そして私のこともSSS級だと思ってるんでしょ?」

 

 白い山伏(やまぶし)装束、ふわふわの髪の毛の上に頭襟《ときん》と呼ばれる黒くてちっちゃい帽子をのせている羽衣(うい)は、恐怖などみじんも感じさせない笑顔だ。

 

「はあ? どういうことお?」

 

 三又の矛と白く輝く盾を構え、彩華(あやか)羽衣(うい)に問う。

 

「お姉ちゃんが特SSS級、私がSSS級に認定されたのは……もう、二年も前の話だよ? あれからも私たちは修行を続けた……。彩華(あやか)さんみたいなおばさんには分からないかもしれないけどね、私たち十代の女の子にとって二年ってのはとっっっっても長い時間なの。二年前の私たちだと思ってると……瞬殺されるよ、おばさん!!」

 

 そこに零那(れいな)がたしなめた。

 

羽衣(うい)、女性に向かっておばさんとかあんまり言っちゃダメ。トメさんが気にしちゃうでしょ!」

 

 零那(れいな)がちらっとトメの方を見ると、トメは十字ガードした腕に針の攻撃をくらって血を噴き出していた。

 

「おばさんどころかばあさんにやられそうなんだがな!」

 

 さけぶトメ。

 そこに零那(れいな)が声をかけた。

 

「トメさん、それに虹子さん! 作戦通りやっちゃっていいわよ! 気にしないで! 私たちの被甲護身(ひこうごしん)は完璧だから!」

「…………その被甲護身(ひこうごしん)とやら、私たちはかけてもらってないぞ!」

「あれ、そうだっけ?」

 

 そういえばそうだった、と零那(れいな)は反省した。

 最終決戦前の準備をもっとちゃんとしておけばよかったわね……。

 

「まあいいわ! 虹子さん、トメさん! やっちゃって!」

 

 

     ★

 

 

 トメはハナエの針攻撃を避けようと、一流ニンジャのスピードで素早く飛び跳ねる。

 壁に飛びつき、その壁を蹴って今度は天井に貼り付き、さらに天井を蹴って飛ぶ。

 常人であれば、その動きを目で追うなど不可能なほどの速度であった。

 しかし。

 

「ひゃひゃひゃ! すべて見えておるわ!」

 

 だがハナエのスピードはトメのそれを上回る。

 トメの動きに合わせ、両手に持った針を投げ続ける。

 その針は偏差射撃を必要としないほど鋭く飛んでいき、トメの腕や足に突き刺さっていった。

 

「くそっ!」

 

 トメは痛みに耐えながらも、飛び跳ね続ける。

 もう何十本の針を受けただろうか?

 このままでは77本目の針で心臓を貫かれるのも時間の問題だと思った。

 虹子が針を突き刺された痛みで顔を歪めながらも、小銃でハナエを狙い打つ。

 しかし、ハナエはその弾丸もすべて針で撃ち落としている。

 

「ばあさん、とんでもない強さだ……」:

 

 S級探索者であるトメと虹子の二人掛かりでもまったく太刀打ちできない。

 

 コルポ・セコとなり果てた今でもSS級以上の実力はありそうだった。

 いや、すでにモンスターなのだから危険レベルで呼称するのが妥当か?

 いやいや、そんなことを考えている場合じゃないぞ。

 

「くそっ! 作戦か! なるべくやりたくなかったんだがな! 虹子! そこに隠れろ!」

 

 トメは飛び跳ねながら叫ぶ。

 虹子が氷の球体の陰に隠れた。

 トメもなんとか球体までたどり着き、その陰に身を隠した。

 トメと虹子、それにヤミが直径二メートル近い球体に身を寄せ合う。

 

「ひょひょ! 大平(おおだいら)深夜(みや)の身体を傷つけるわけにはいかぬが……。氷を砕くくらいならよかろうて!」

 

 ハナエが針を放つ。

 しかし、その針は球体に刺さることすらなく、カキン! カキン! と金属音をたててはじき返された。

 

「ふん、山伏(やまぶし)女の防護魔法がかけられているんだ、そんなものじゃこれは壊せないぞ」

「っていうか私の身体! なんでみんな私の身体に隠れるのー!?」

 

 抗議するヤミに、トメは努めて優しい声をだして言った。

 

「しかし、今ここにあるものでこの氷の塊以上に固いものなんてないんだ……。大丈夫だ。もう一回言うぞ。ここにあるものでこの氷の塊が一番固い。山伏姉妹が防護魔法を二重にかけているんだからな。……だから、悪く思うなよ。虹子、やるぞ!」

 

 血が噴き出す自分の肩を抑えながら、虹子がコクン、と頷いた。

 

「うん、お姉さまの作戦だもんね!」

 

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