パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第122話 救済

 彩華(あやか)の姿は、まさに神々しい、という言葉がぴったりだった。

 零那(れいな)羽衣(うい)を見つめるその瞳は、いつしか深い輝きをたたえはじめていて、先ほどまで見せていたネガティブな感情を読み取ることができなくなってきていた。

 むしろ、そこに垣間見えるのは、やさしさですらあった。

 

 彩華(あやか)が身にまとっているのは黒い修道服。その袖は巨大化した腕でビリビリに破けている。

 背中から大きな白い翼が生え、宙に浮いていた。

 三又の矛と盾を構え、長いウエーブのかかった茶色の髪がなびいている。

 そして、彩華(あやか)の頭上には大きな天使の輪。

 その姿を見て、零那(れいな)の背すじがブルッと震えた。

 美しさと恐ろしさを同居させた、そんな圧倒的な存在感があった。

 

「赤ちゃん……私の赤ちゃん……今、助けてあげる……」

 

 彩華(あやか)が右手の矛を振り上げる。

 すかさず羽衣(うい)が九字をきった。

 

(りん)(ぴょう)(とう)(しゃ)(かい)(じん)(れつ)(ざい)(ぜん)! ドーマン!!」

 

 零那(れいな)羽衣(うい)の目の前に格子でできた障壁が出現する。

 

「あなたたちも……天国へ送ってあげるわあ……」

 

 三又の矛を振り下ろす彩華(あやか)

 その先から空気を切り裂きながらまばゆい光線が発射された。

 バリバリバリッ! という、鼓膜を破るかのような轟音。

 それは羽衣(うい)の作り出した障壁に激突する。

 ものすごい衝撃が辺りに満ちた。

 床は揺れ、壁や天井からパラパラと小さな石片がおちてくる。

 

 羽衣(うい)の防護障壁はなんとかその攻撃に耐えたが、彩華(あやか)の発した光線と一緒に消え去ってしまう。

 

「今度はこっちから行くよ! セーマン!」

 

 羽衣(うい)が叫び、錫杖(しゃくじょう)を振るう。

 錫杖から直径数メートルはある巨大な五芒星が無数に発射される。

 

「ふふふ……神の盾の前では無力……」

 

 彩華(あやか)が左手に持っていた白い盾を五芒星に向けて掲げた。

 ドスドスドスッ! と五芒星が盾に突き刺さる。

 しかし、それまでで、盾を破壊することもできずに、そのまま五芒星は空気の中へと溶けるように消えて行った。

 

 零那(れいな)は落ち着いてその攻防を見ていた。

 羽衣(うい)の全力攻撃をあっさり受けきるなんてすごいわね、と思った。

 ちらりと後方を見ると、虹子やトメがハナエを撃破したところだ。

 氷でできた球体はまだ無事で、それを霊体のヤミがひっかいている。

 

「ねえ、彩華(あやか)さん」

 

 零那(れいな)は落ち着いた、しかし大きくはっきりした声で彩華(あやか)に話しかけた。

 

「なにかしらあ?」

「もう、やめない?」

「なにを言っているのお? 死ぬのが怖くなったのかしら? 大丈夫よ、死は救済よお。あなたの命はエシュ様の……そして私のかわいい娘のために使われる……。人類のための犠牲になるのですもの、きっとあなたは天国に行けるわあ」 

 

「あなたの赤ちゃん……今、どこにいるの?」

 

「んん? 教えるわけないでしょお?」

 

「私は山伏よ」

 

 零那(れいな)は言った。

 

「そして、あなたは……神様にかなり同化してるけど……人間だわ」

 

「それがなにか?」

 

「山伏は妖怪を退治する……でも、人間を殺しはしない……。私が本気を出しちゃったらきっとあなたは死ぬ。私は人殺しをしたくないのよ」

 

 自分と他人を救う。

 そのために修験道はある。

 決して、人を殺すためにあるわけではない。

 でも、今の彩華(あやか)相手に、零那(れいな)は手加減なんてする余裕がなさそうだった。

 だから、零那(れいな)は必死の声で言った。

 

「私にはわからないけど……赤ちゃんを救う方法もあるかもしれない。それに……ヤッちゃんの身体に他人の魂を移すなんて、できるわけがないわ」

 

「できるわ! エシュ様のお力を借り、あなたたちの魂の力を使えば……!」

 

「いいえ! だって、あの身体はまだヤッちゃんのものだもの! 聞いて!」

 

「誰が敵の話を聞くってのよお? あの身体の霊的な所有権は私にあるのよお! 一度身体から離れた幽霊はもはやあの身体とは関係のない存在! それに、あなたはなにか勘違いしているようねえ……。私の赤ちゃんの魂をあの身体に移植するのに使う力は……あなたたちの魂の力だけじゃないわ……」

 

「は? どういうことよ」

 

「決まっているわあ! 私の! 私自身の魂の力も! あの子のために全部使うのよお!」

 

 彩華(あやか)がそう叫んだ瞬間だった。

 

 零那(れいな)の視界が白い光に包まれる。

 今まで感じたことのないほどの強大な霊力を全身に感じた。

 

「私自身も我が子に魂を捧げる! そして人類に……そして私にも……救いが訪れるのよお!!!!」

 

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