パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第125話 まじヤベーよ

 零那(れいな)の目の前に、縛られている彩華(あやか)がいた。

 縛られている、というよりも、挟まれている、と言った方が正確かもしれない。

 零那(れいな)が霊力で作った二枚の格子で、彩華(あやか)の身体がサンドイッチのように挟まれているのだ。

 腕や足は格子の間で拘束されており、ほとんど身動きがとれない状態にしてあった。

 

 口は塞いでいない。

 だが、彩華(あやか)は何も言葉を発さずに、その血走ったギラギラした目で零那(れいな)をただ睨みつけていた。

 まだ諦めていない顔ね、と零那(れいな)は思った。

 そんな零那(れいな)のもとに、トメが近づいてきた。

 さきほど羽衣(うい)の治癒法術で、針で受けた傷はほとんど治っている。

 ただ、身に着けているニンジャ装束はあちこちに穴が開いている。

 装束は固まって黒く変色した血で汚れていた。

 トメは焼けこげてチリチリになっているショートカットの髪先をいじりながら言う。

 

「どうするんだ? 殺すのか?」

 

 零那(れいな)にしてみれば、それは予想外の問いかけだった。

 そんなつもりは毛頭なかったのだ。

 

「なに言ってるの、トメさん。殺すわけないじゃないの。私をなんだと思ってるのよ。殺人鬼じゃないのよ」

「しかし、そいつはお前を殺そうとしていたぞ? というか、私や虹子もまだ呪いの刻印が消えてないし」

「ああ、そうだったわね。じゃ、まずそれから解消しましょ。呪いの元はあの祭壇よ。祭壇を通り道にして悪い――かどうかはしらないけど、とにかく神様の力がトメさんや虹子さんに流れ込んでいるのよ」

 

 それを聞いて虹子が顔を上げた。

 虹子もハナエの針による攻撃で身体中に穴を開けられていて、今は羽衣(うい)に法術で治療してもらっていた。軟膏は使い切ってしまっていたので、瞬時に回復というわけにはいかない。

 虹子は痛みが強いのか、眉間にシワをよせていて、そのままの表情で言った。

 

「あのさー、私たちをこんな目に合わせたんだから、悪い神様に決まってるでしょ。……あ、いたたた! 羽衣(うい)ちゃん、そこ痛い!」

 

 羽衣(うい)は薬師如来の真言を唱えながら虹子の傷口に手を当てていたのだが、その視線は虹子ではなく、挟まれて拘束されている彩華(あやか)の方を向いていた。

 

「はあ、はあ、はあ……」

 

 羽衣(うい)の頬は赤く染まり、少しばかり息が荒くなっている。

 

羽衣(うい)ちゃん、私の治療に専念してくれないかな……」

「あ、はい、ごめんなさい……」

「……羽衣(うい)ちゃん、縛られている女の人見るとそうなるよね……。ヤミちゃんのときもそうだったし……。もしかしたらまともなフリして私たちの中で一番ヤバい性癖してる?」

「ま、まさか! でもほら、彩華(あやか)さんのお胸が……挟まれて……ぐにゅって……」

「まじヤベーよ……お姉さま、お姉さまの妹さんはモンスターなみにやばい子に育っちゃってるよ……さっきまで自分を殺そうとしていた人が拘束されてるのを見て興奮しちゃってるよ」

「してません!」

「いたた! 緊縛を楽しむのは私を治療してからにしてもらうと嬉しいんだけど……」

 

 零那(れいな)は呆れて羽衣に声をかける。

 

羽衣(うい)、いい加減にしなさい。あんたはまだ16歳なの。パチンコとエッチなことは18歳以上って決まってるのよ」

 

 トメが大きなため息をついた。

 

「そういう問題じゃないぞ……。けっこうガチでヤバいなお前の妹は……。で、私たちに呪いをかけたんだから、悪い神様じゃないのか?」

「うーん、でも神様が向こうから呪いをかけにきたわけじゃなくて、人間が――彩華(あやか)さんが神様の力を利用して呪いをかけたわけで、神様が悪いってわけでもなさそうだし……。とにかく、あの祭壇よ。あそこから霊力の通り道になっているんだから、破壊しちゃうわ。コウオツヘイテイちゃんたち、やっちゃって!」

 

 零那(れいな)が声をかけると、控えていた四頭の牛が「モー!!」と鳴いて祭壇に突進していく。

 体当たりをして祭壇を壊し、蒸留酒の入った素焼きの壺を踏み潰した。

 

 そこでやっと彩華(あやか)が声を上げた。

 

「や、やめて……あそこに赤ちゃんが……」

「コウオツヘイテイちゃん、ストーーーップ!! どこに赤ちゃんがいるって?」

「あの祭壇の……真下に、壺が埋めてあるわ……。それだけは壊さないで……」

「赤ちゃん? さっきもそんなこと言ってわね……いったいなんだってのよ……」

 

 零那(れいな)が困惑してそう言った、その時。

 気を取り直して虹子の手当に集中していた羽衣(うい)が、声を上げた。

 

「お姉ちゃん! 刻印が消えていくよ!」

 

 羽衣(うい)の言う通り、虹子の胸部、鎖骨の下あたりに彫られていた、歪んだ十字架の刻印がだんだんと薄くなっていく。

 

 トメも自分の襟口を引っ張って覗いている。

 

「確かに消えていくな……。あれだけ加持祈祷してもらっても消えなかった刻印だが……。祭壇の壊し方がずいぶん雑だったが、これで私たちは死なずにすむということか?」

 

 零那(れいな)もトメの襟口を覗く。

 

「うん、消えたわね。これで安心よ。あとは……彩華(あやか)さんの赤ちゃんと、あともう一つ……」

 

 零那(れいな)は少し離れたところにいるヤミに視線を向けた。

 ヤミはさすがに氷の球体を壊すのは諦めたらしく、そのそばで不満げな顔をして体育座りをしていた。

 ヤミは唇をへの字にして零那(れいな)たちを見ている。

 

「あのー、で、私は今どうなってるの? 牛さんたちがその祭壇を壊しちゃったら、なんか頭の中のモヤが晴れたっていうか、いろいろ思い出してきたんだけど」

 

 

 

 

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