パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第129話 マリアージュ

 素っ裸の深夜(みや)はバスタオルを胸に抱くようにしてガタガタ震えている。

 

「寒い寒い寒い寒い! ななななににににここここれれれれ」

 

 歯の根も合っていないとはこのことで、ガチガチと音を立てながら歯を鳴らし、全身を震わせている。

 唇は真っ青で、生き返ったのにその顔色だって真っ青だ。

 

「あー……そっか、直前までつららちゃんに冷やされてたもんね……」

 

 零那(れいな)はそう言いながらつららに視線を送る。

 そのつららはと言えば。

 

「熱い熱い熱い溶け溶け溶け溶け溶けるぅぅぅぅ~~~~~~」

 

 こっちは逆に溶けかけていた。

 それはそうだ。

 さっきまで大日如来の太陽光がこの辺りを照らしていたのだ。

 雪女が真夏の陽光に直撃されたらただですむわけがなかったのである。

 そもそも、一介の妖怪にすぎないつららが、大日如来の光で消滅しなかったのが奇跡のようなものだった。

 

「寒い寒い寒い」

「熱い熱い熱い」

 

 寒がる深夜(みや)と熱がるつらら。

 

 と、その時だった。

 

「やった……やった……お姉ちゃん、やったね……」

 

 か細い声で羽衣(うい)がそう言ったかと思うと、あぐらをかいたままふらっと横に倒れた。

 

「えへへ……お姉ちゃんの霊力についていくのでやっとだったよ……でもヤミちゃん生き返って……よかっ……た……」

 

 そしてそのまま意識を失ってしまった。

 

「あれ? えっとえっとえっと……どうすればいいのかしら……?」

 

 その場には今にも死にそうな三人がいた。

 それだけではない。

 

「私の……娘……身体が……そんな……」

 

 拘束されている彩華(あやか)も、生き返った深夜(みや)を呆然とした表情で見つめていたが、

 

「うぅぅ……もう……全部……おわったわあ……」

 

 と呟いた直後に、その黒目がぐるんと上を向いた。そしてそのまま、血走った白目をむき出しにして意識を失ってしまった。

 

「えっとえっとえっと……」

 

 零那(れいな)零那(れいな)で全力で霊力を放出していた。

 羽衣(うい)と同じように意識を失わなかったのはさすがといえたが、だからといっていつもの判断力はもう残っていない。

 もはや考える余裕なんかなかった。

 うつろな瞳で、深夜(みや)羽衣(うい)、つららと彩華(あやか)を順繰りに見ていることしかできない。

 

「ちょっとちょっとちょっと! えー? どうしようどうしよう」

 

 虹子が慌てた声を出す。

 そして自転車のトレーラーに駆け寄ると、その荷物を漁り始めた。

 

「えーとなんかないかな? 軟膏はもう使っちゃったし……あ! 梅干しあった! えーとえーと、誰から上げればいいかな? えーとえーとマリアージュしなきゃ! マリアージュ!」

 

 トメも一緒にトレーラーを漁る。

 

「そうだな。マリアージュしなきゃな。梅干しにはやはり白いご飯だろう。いや、焼酎のお湯割りに梅干しってのもマリアージュだよな……って虹子、それを言うならトリアージだろう」

「ノリツッコミする余裕あるならトメさんもなんかないか探して!」

「探してるよ。まあ治療する順番としてはヤミ、妹山伏、つららで、最後に彩華(あやか)だな」

 

 そこにつららが抗議の声を上げる。

 

「えええ? トメお姉さん、ひどくない? 多分今一番死にそうなの、つららなんだけど……」

 

 トメがつららをちらっと見ると、つららはいつかのようにドロドロと溶け始めていて、かろうじて表情がわかる程度になっていた。

 その足元には溶けた氷がみずたまりを作っている。

 

「……かわいい弟子だがお前はモンスターだからな……。まあ一粒だけ食ってろ」

 

 壺から取り出した梅干しをつららの方に放り投げるトメ。

 つららはそれを犬のようにパクッと口で受け止めて、

 

「しゅっぱーーーーい!」

 

 と叫んだ。

 

「トメさんはつららちゃんに甘いなあ! まずはヤミちゃんだってば!」

 

 虹子は梅干しの入った壺ごと抱えて深夜(みや)のもとへと走る。

 

「ほら、ヤミちゃん、これを食べて!」

 

 虹子が梅干しを深夜(みや)の口の中に押し込んだ。

 なにしろ一流の巫女だった零那(れいな)の曾祖母が漬けた梅干しである。

 霊力満点、さらには酸味も満点、塩気も満点だった。

 

 深夜(みや)の顔は一瞬にしてしわだらけになった。

 

「むぎゅううううううう~~~!」

 

 あまりのすっぱさに深夜(みや)の目から涙がビュッと飛び出る。

 そこに、毛布を抱えてトメがやってきた。

 

「よし、体温で温めるぞ。虹子の体温で」

「へ? 私?」

「そうだ、お前ら、くっつけくっつけ。あ、その前に虹子、一枚上着脱げ」

「待って待って待って」

「待たない。このままじゃ幽霊女……じゃない、元幽霊女が低体温症で死ぬぞ! 命には代えられないだろ、おとなしくしろ!」

 

 トメは虹子から上着をひっぺがす。

 その下に着ていたシャツまで脱がした。

 

「待って冗談でしょ、トメさんがやれば……」

「私よりお前の方が脂肪あるから向いているんだ」

「ししししし失礼な!」

「私は腹筋がバキバキに割れてるからな。お前はどうせぷにぷにおなかだろ」

「しししししししししし失礼な! 女性らしいって言いなさいよ!」

「いいから!」

 

 トメは上半身ブラだけの虹子を無理やり裸の深夜(みや)におしつけ、毛布を使って二人の身体をぐるぐる巻きにしはじめた。

 

 

「ひゃ! ヤミちゃん、身体冷たい! うわっ! 立ってらんない!」

 

 ぐるぐる巻きにされた虹子と深夜(みや)は、そのまま床に倒れこんだ。

 

「ひぃぃ! 冷たーい!」

 

 叫ぶ虹子、

 

「熱、熱、熱がほしい……」

 

 その虹子に肌をスリスリする深夜(みや)

 

「ふう……これでよし、と。配信していなくてよかったぞ。確実に一発バンだな、この光景は。次は妹山伏だが……」

 

 トメは額の汗を拭いながら羽衣(うい)の方を見た。

 

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