パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第130話 元気なのは分かった

 零那(れいな)は、自分の口になにかが押し込まれるのを感じた。

 次の瞬間、飛び上がるようなしょっぱさとすっぱさが全身に満ちる。

 

「うひぃっ! うげ、これヒーバーの梅干しじゃない! 私これ好きじゃないのに……!」

「お前も嫌いなのか」

 

 零那(れいな)の目の前で、トメがため息をついてそう言った。

 

「いやだってこれあんまりにすっぱすぎるもん……。苦手なのよね……」

「まあおかげでお前も正気に戻ったし、いいだろ」

「あ、そうだ、羽衣(うい)は!?」

 

 零那(れいな)羽衣(うい)の方を見る。

 羽衣(うい)はまだ床に横たわったままだった。

 

羽衣(うい)!」

 

 驚いて妹に駆け寄ろうとする零那(れいな)を、トメが止めた。

 

「よせ……邪魔してやるな……」

「なに言ってるのよ! 羽衣(うい)が霊力を使いすぎて……」

「……いや、いま補充しているみたいだぞ」

「ほんとに意味わかんないんだけど」

 

 零那(れいな)羽衣(うい)の顔を覗くと……。

 羽衣(うい)はすでに目を覚ましていた。

 そしてその表情はキラキラと輝いていた。

 羽衣(うい)の視線を追っていくとそこには。

 くっついた状態で毛布でぐるぐる巻きにされている虹子と深夜(みや)の姿。

 

 深夜(みや)は最初から裸だし、虹子もブラしか身に着けていないように見える。

 その二人がくっつきあって、もぞもぞと動いているのだ。

 

「寒い! 私が寒くなってきちゃったよ! そろそろほどいてぇ~」

 

 虹子はそう言っているし、深夜(みや)の方も、

 

「わ、私ももうあったまったから……あの……もういいから、もういいです」

 

 などと言っている。

 そしてそんな二人をうっとりした瞳で見つめる羽衣(うい)

 

「うへへへ……美人二人が……縛り上げられて……困っている顔が……うへへへへへ……」

「………………」

 

 わが妹ながら、どうコメントしたらいいものかわからない。

 

「な? 大丈夫そうだろう? 邪魔してやるな」

 

 トメはそう言うが、零那(れいな)としては複雑だ。

 

「……元気なのは分かったわ、よかった。……でも、姉としては邪魔してやりたいところだけど……教育に悪そう」

 

     ★

 

 一時間後。

 

「わーすごい! 似合ってる! 深夜(みや)ちゃん、かわいい!」

 

 羽衣(うい)がニコニコ顔で深夜(みや)にそう言った。

 言われた深夜(みや)は、

 

「え、そうかなあ? ほんとはゴスがいいんだけど……」

「ゴスも似合ってたけど、深夜(みや)ちゃんこれも似合っているよ!」

 

 深夜(みや)は、トレーラーに積んでいた予備の山伏装束を着ていた。

 身長150センチに満たないチビな羽衣(うい)のものだとつんつるてんになってしまうので、結局零那(れいな)のものを着せることにした。

 だが、女性としては高身長な零那(れいな)の装束である。羽衣(うい)ほどではないが小柄な深夜(みや)にはサイズが合わないようで、少しぶかぶかになっている。

 上衣である篠懸(すずかけ)はひざ丈まであり、それを下衣である括袴(くくりばかま)の中にいれて腰ひもで縛るのだが、どうしても篠懸の布が余ってもこもこしてしまう。

 その上、深夜(みや)のウエストは零那(れいな)よりも細くて、腰ひもで縛るのもすんなりといかずに少し苦労した。

 とは言ってもそのぶかぶかサイズがまだ幼さを残す深夜(みや)にはとても似合っていた。

 零那(れいな)から見ても、今までは深夜(みや)のゴスロリ姿しか見たことがなかったので、山伏(やまぶし)姿がむしろかわいらしく見えて、少しみとれてしまった。

 

「へー。いいじゃんいいじゃん。ヤッちゃん、そのまま山伏の修行する?」

「しないよ!」

「残念」

 

 さきほどまで溶けかかっていたつららも、梅干しの効果のおかげか、今はもうすっかり回復していた。

 

「溶けきらなくてよかったよ。雪女にとって溶けて死ぬのは屈辱なんだよ。つらら、それだったらかき氷の方がまだいいと思うの。でも死ななくてよかった。……あの梅干しはもう二度とごめんだけど」

 

 どうやら、雪女というのは変な矜持を持っているのね、と零那(れいな)は呆れながらそれを聞いていた。

 ちなみに梅干しについては零那(れいな)も同じ意見だった。

 

「さあて、あと一つ、解決しなきゃいけないことがあったわね……」

 

 まだ気絶している彩華(あやか)を横目に見つつ、零那(れいな)は祭壇のあった場所へと行く。

 ダンジョンの床というものは、基本的に硬い石材でできている。

 しかし、その場所だけは柔らかな土になっていた。

 破壊された祭壇の破片――木材の切れ端で、その部分の土を掘っていく。

 カチン、と木片が何かに当たった。

 今度は手で土を慎重に払っていく。

 

「……あった。これかな……」

 

 土に埋められていたのは、素焼きの壺。

 零那(れいな)の腕で一抱えもあるくらいの大きさだ。

 割らないように、ゆっくりと取り出す。

 

 零那(れいな)が壺を取り出す様子を、ほかの四人も囲んでみていた。

 

「そいつの中に彩華(あやか)の子供がはいっているのか?」

 

 トメがそう聞く。

 

「らしいわね。確かに、なんらかの魂は感じるわ……」

 

 壺にはフタがしてあった。

 木製でできたそれを、零那(れいな)はゆっくりと外す。

 すると、壺の中に満ちていたのは青色の粘液だった。

 

「これは、スライムね……。スライムの粘液は霊力を遮断するわ。これで保護していたのね」

 

 零那(れいな)は壺の中に手を突っ込んだ。

 そして、中に安置されていた、()()を取り出した。

 

 それは、石化した人間の赤子だった。

 

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