パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第131話 配信再開

「この子……間違いない……石像なんかじゃない……かすかに魂を感じるわ……」

 

 零那(れいな)は石の赤ん坊を胸に抱く。

 まるで本物の赤ん坊を抱いたかのように胸が熱くなり、ドクン、と自分の心臓が鳴るのを感じた。

 私にも母性本能ってあるのねー、などと思いながら、赤ん坊の顔を覗く。

 いかにも生まれたばかりのしわくちゃの顔。

 びっくりするほど小さな手と足。

 

「かわいい……」

 

 思わず声が出た。

 この子を復活させるために、彩華(あやか)は何人もの罪なき人々を殺してきたのだ。

 

「…………」

 

 零那(れいな)はチラッと彩華(あやか)に目をやる。

 彩華(あやか)はちょうど失神から目を覚まそうとしていたところだった。

 彼女は自分の娘を抱いている零那(れいな)を見て呟く。

 

「駄目……私の赤ちゃん……連れて行かないで……」

 

 母の愛。

 しかしその愛は人を殺した。

 ぶかぶかの山伏装束を着ている深夜(みや)が複雑そうな顔で零那(れいな)と赤ん坊を見ている。

 深夜(みや)こそが最大の被害者だろう。

 わずか15歳で騙され殺され、そしてその遺体を他人の魂の依り代にされるところだった。

 

「……もう、この赤ちゃんは救えないわ……。このまま、埋葬するしかないわね……」

 

 同じ年同じ月日に産まれた女子。

 そんな身体がこの先都合よく手に入るわけがないし、手に入ってよいわけもなかった。

 

「やだ……私の……赤ちゃん……お願い……」

 

 彩華(あやか)の声に零那(れいな)は首をゆっくり振った。

 

「駄目よ。この子にはかわいそうだけれど……もうどうにもならない……」

 

 零那(れいな)は赤ん坊を丁寧に壺の中に戻した。

 それを眺める彩華(あやか)の目からは、ぽろぽろと涙の粒がこぼれていた。

 アラフォーとは思えないほどの美貌を誇っていた彩華(あやか)の肌はかさかさに乾燥しているように見えた。髪の毛も艶を失ってパサパサになっている。

 

 彩華(あやか)はうつろな瞳でただただ涙を流していた。

 人間という者は、すべての希望を絶たれるとこんな表情をするんだ、と零那(れいな)は思った。

 でも、彩華(あやか)のしたことは決して許されることではない。

 彩華(あやか)はきっと何人も、何十人も他人を殺してきたのだ。

 

「裁きは、受けてもらうわ……。さ、みんな。地上に戻るわよ」

 

 

     ★

 

 

 彩華(あやか)を自転車のトレーラーに縛り付け、零那(れいな)たちは帰還することにした。

 そこで虹子はパチン、と手を叩いた。

 

「さあ! というわけで! お姉さま、私たちもお金を稼がなければ生きて行けませーん!」

「ん? 虹子さん、突然なにを言いだしているの?」

「いやだからね、羽衣(うい)ちゃんの学費もあるし! ウービーイーツの配達料金、最近渋いみたいじゃん? お姉さまもその稼ぎだけじゃ羽衣(うい)ちゃんの学費なんか稼げないよ!」

「だから?」

「だから、配信を再開しまーす! えーと、今ちょうど昼の二時くらいだね。平日だからそんなに視聴者いないかもしれないけど……。とにかく! 広告収入を得なきゃいけません」

「でもドローンは壊れちゃったじゃない」

「もちろん予備がありまーす! もうこのトレーラー、積載量が多くてダラえもんのポケットなみになんでも出てきまーす! みんな、配信始めるよ! いいよね?」

 

 そこにトメが大きな声を出した。

 

「ちょっと待て! さっきお前化粧直してたの、それか! 待て待て。配信に映るならちょっと待て。お前の化粧道具貸せ!」

「えー? 私のファンデ、高いのに。ってかトメさんって案外女の子なんだね。意外」

「いいから! あ、待て、私の髪、今どうなってる? 毛先が焼けて焦げてる……だれか美容師の免許もっているやついないか?」

「いるわけないでーす。そもそもハサミがありませーん。トメさんの短刀を貸してくれたらそれで切ってあげるよ?」

「くそ! あーバカバカ、もうドローン飛ばしやがって! 待てってば!」

 

 そこに、羽衣(うい)も口を挟んでくる。

 

「え、お化粧って私もやってみたい! 虹子さん、今度教えてよ!」

「私もメイクしたい……でもゴスロリメイクできるような色はないよね……?」

 

 深夜(みや)までそう言ってくる。

 

「はい、地上に帰ったらね! 羽衣(うい)ちゃんとヤミちゃんはそのままでかわいいからOK! 若いって素晴らしい! お姉さまは……ノーメイクでそれだもんね……ヤバいよね……。私もそんな顔に産まれてきたかった人生だったよ……。ま、しょうがないか。じゃー配信始めまーす!!」

「待てーー!」

 

 手鏡を見ながらパフで顔をはたいているトメの声も聞かずに、配信は再び始まった。

 

 

     ★

 

 

 手の中のスマートホン。

 それを一心に見つめ、ほとんど寝ることも食べることもせず、虹子のチャンネルを表示しながら、なんども更新をかけている人物がいた。

 目の前のテーブルの上には、深夜(みや)が笑っている写真。

 深夜(みや)の母親、小夜子だった。

 

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