パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件 作:羽黒楓
「この子……間違いない……石像なんかじゃない……かすかに魂を感じるわ……」
まるで本物の赤ん坊を抱いたかのように胸が熱くなり、ドクン、と自分の心臓が鳴るのを感じた。
私にも母性本能ってあるのねー、などと思いながら、赤ん坊の顔を覗く。
いかにも生まれたばかりのしわくちゃの顔。
びっくりするほど小さな手と足。
「かわいい……」
思わず声が出た。
この子を復活させるために、
「…………」
彼女は自分の娘を抱いている
「駄目……私の赤ちゃん……連れて行かないで……」
母の愛。
しかしその愛は人を殺した。
ぶかぶかの山伏装束を着ている
わずか15歳で騙され殺され、そしてその遺体を他人の魂の依り代にされるところだった。
「……もう、この赤ちゃんは救えないわ……。このまま、埋葬するしかないわね……」
同じ年同じ月日に産まれた女子。
そんな身体がこの先都合よく手に入るわけがないし、手に入ってよいわけもなかった。
「やだ……私の……赤ちゃん……お願い……」
「駄目よ。この子にはかわいそうだけれど……もうどうにもならない……」
それを眺める
アラフォーとは思えないほどの美貌を誇っていた
人間という者は、すべての希望を絶たれるとこんな表情をするんだ、と
でも、
「裁きは、受けてもらうわ……。さ、みんな。地上に戻るわよ」
★
そこで虹子はパチン、と手を叩いた。
「さあ! というわけで! お姉さま、私たちもお金を稼がなければ生きて行けませーん!」
「ん? 虹子さん、突然なにを言いだしているの?」
「いやだからね、
「だから?」
「だから、配信を再開しまーす! えーと、今ちょうど昼の二時くらいだね。平日だからそんなに視聴者いないかもしれないけど……。とにかく! 広告収入を得なきゃいけません」
「でもドローンは壊れちゃったじゃない」
「もちろん予備がありまーす! もうこのトレーラー、積載量が多くてダラえもんのポケットなみになんでも出てきまーす! みんな、配信始めるよ! いいよね?」
そこにトメが大きな声を出した。
「ちょっと待て! さっきお前化粧直してたの、それか! 待て待て。配信に映るならちょっと待て。お前の化粧道具貸せ!」
「えー? 私のファンデ、高いのに。ってかトメさんって案外女の子なんだね。意外」
「いいから! あ、待て、私の髪、今どうなってる? 毛先が焼けて焦げてる……だれか美容師の免許もっているやついないか?」
「いるわけないでーす。そもそもハサミがありませーん。トメさんの短刀を貸してくれたらそれで切ってあげるよ?」
「くそ! あーバカバカ、もうドローン飛ばしやがって! 待てってば!」
そこに、
「え、お化粧って私もやってみたい! 虹子さん、今度教えてよ!」
「私もメイクしたい……でもゴスロリメイクできるような色はないよね……?」
「はい、地上に帰ったらね!
「待てーー!」
手鏡を見ながらパフで顔をはたいているトメの声も聞かずに、配信は再び始まった。
★
手の中のスマートホン。
それを一心に見つめ、ほとんど寝ることも食べることもせず、虹子のチャンネルを表示しながら、なんども更新をかけている人物がいた。
目の前のテーブルの上には、