パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件 作:羽黒楓
大平家。
リビングの中は
小夜子は何度もスマホを更新していた。
――あれはほんとに
一瞬映った遺体のことを思う。
今はどうなっているのだろう。
『虹子のレインボーチャンネル』
そのトップ画面を更新し続ける。
胸がザワザワと騒ぐ。
その時だった。
トップ画面に、『LIVE』と表示された。
配信が再開されたのだ。
急いでタップする。
映し出されたのは――。
まずは、チャンネル主である虹子の姿。
『こんにちレインボー! みんなのアイドル、虹子だよー! いやー、ごめんねー。ドローンがモンスターに壊されちゃってさー。途中で配信終わっちゃった』
〈おおはじまった〉
〈こんにちレインボー〉
〈モンスターに殺されたかと思ったぞ〉
コメント欄が早くも賑わう。
『えへへ、大丈夫だよ! モンスターは全部お姉さまがやっつけちゃった! 悪者もね!』
〈悪者?〉
〈なんだ、やっぱり黒幕がいたのか?〉
『そう! こいつ! こいつが全部悪いの!』
カメラがトレーラーの上で拘束されている
小夜子は震える指でコメントを打つ。
〈♪ それで、幽霊の、子は、どうなりましたか?〉
『幽霊? 幽霊は消えちゃいましたー! てへへ』
スマホの画面の中で、屈託のない声で笑う虹子。
それを聞いて、小夜子の全身から力が抜けた。
頭が真っ白になって、何も考えられないのに、自然と涙がこぼれてきてしまう。
頬を流れる粒はとても冷たくて、心も身体も凍えさせそうに思えた。
同時に、スマホの中で明るく笑う虹子が憎くも思えてきた。
――人の娘が消えたというのに……この子はなんで笑っていられるんだろう?
『虹子さん、そんな意地悪な言い方……』
小夜子はスマホをテーブルの上に放り投げると、ソファにぐったりともたれかかった。
虹子の朗らかな声だけがリビングに響く。
『そんなわけで! 改めて私たちの愉快な仲間を紹介しまーす! まずはお姉さま! 特SSS級の
カメラが
少し意識しているのか、いつもよりキリッとした顔をしていたが、もちろん小夜子は画面を見る気にもならずに放心していた。
『次に
『いや、それは違うと思うんですけど』
『山伏二号です! いや、実は
『いや基本は
ふわふわパーマの
カメラを向けられると緊張してしまうようで、ほっぺたが赤くなっている。
虹子はさらに続けた。
『そして! 山伏三号! はいこっち向いてー!』
〈ん?〉
〈あれ、それ誰だ?〉
〈最初からはいなかったよな?〉
〈まじで誰だ?〉
山伏装束を身に着けた
『えっと、いったいこれなんですか?』
『配信だよ配信!』
『配信……?』
『そっか、2018年だとまだダンジョン配信は黎明期だもんね。ええとね、ニコ生みたいなやつ』
『え、ニコ生!? これ、今私映ってるんですか? 生放送されてるの!?』
『そーでーす! この子はさっきまで幽霊だったけど生き返りました! ちなみにこんな見た目で私より年上でーす!』
『はあ!? 私まだ15歳なんですけどお!?』
そこに
『ほらヤッちゃん。お母さんも見てるよ。手を振って振って!』
『え~? お母さんも見てるの? ってか私、まだ記憶がちょっとゴチャゴチャしていて……』
スマホから流れてくる女の子の声を聞いて、脱力していた小夜子の身体がビクンッ! と跳ねた。
慌ててスマホを手に取る。
そこに映っていたのは。
編み込みツインテール。
ブカブカの山伏装束。
二つ並んだ特徴的な泣きボクロ。
彼女を見た瞬間に、小夜子の全身はカッと熱くなった。
心臓が壊れるくらい激しく鼓動する。
『えーちょっと待ってよ、生放送なの? 山伏よりゴスがいいのに』
「
小夜子は思わず叫んでいた。
『えー、この子はヤミちゃん……ミヤちゃん? どっちで呼べばいいんだろ』
虹子の問いに、
『月光に照らされ、闇に輝く王女、闇姫……』
『アハハ! ヤミちゃん絶対十年後に後悔するやつー! この子は死んでたんだけど、お姉さまが生き返らせちゃいましたー!』
〈生き返らせた?〉
〈死人を!?〉
〈まじか!〉
〈そんなことまでできるのか〉
〈まじでレイナちゃんヤベーな〉
小夜子は大声で画面に向かって叫び続ける。
「
信じられない。
信じられない。
信じられない。
死んだって。
幽霊になったって。
そう聞いていたのに。
〈♪ 本当に、生きて、いるんですか?〉
小夜子のコメントに、
『間違いなく生きてますよ! ええと、なにが起こったかはですね、えっと』
『お姉さま、それをこれからゆっくり話しながら帰ろうよ! ほらほらお姉さまは自転車こいで!』
『まあ私は口下手なんで、これから虹子さんが説明してくれるようです』
『さて! お次はニンジャのトメさん! こっちもいろいろあって今はショートカットになってます! これはこれでかわいい! んでもってこっちがかき氷のモトです!』
それを聞いて雪女の少女がほっぺたをプクッと膨らませて、
『違うー! かき氷になんかならないもん!』
『あはは、とにかくこれから帰りますねー!』
〈すごい、いろいろ聞きたい〉
〈っていうかモンスターまで一緒じゃないか〉
〈ほんとにいろいろ聞きたい〉
〈虹子、
『先輩! 今度一緒に飲みにいきましょう! 駅前の笑笑で! さあ、みなさん、配信画面に出てくる広告バナーもクリックお願いしますね! 私の飲み代になるんで!』
〈エロ広告しかでないんだが〉
〈
『広告設定じゃないですー! 普段エロ見てる人にはエロ広告が出るんでーす! 先輩、相変わらずお好きですね!』
コメント欄と楽し気に会話している虹子。
小夜子は立ち上がり、急いで身支度を始めた。
沼垂ダンジョンなら、ここから車で三十分もあれば着く。
今小夜子の頬を流れる涙は、さきほどとは違ってとても熱く感じた。