パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件 作:羽黒楓
「キャーーーッ!」
「ぎゃーーーッ!」
山伏装束の
「まずい!」
牛に跨っていたトメが、牛の背を蹴って素早くジャンプした。
空中で
一方。
「なんで弟子のつららよりそっちなのぉぉぉ!」
つららはそのまま吹っ飛ばされている。
その目から涙が氷の粒となってポタポタこぼれ、風圧でキラキラ光りながら空中を彩った。
トメに抱かれている
「綺麗……」
と呟く。
その目はしかし、涙の粒などではなく、至近距離にあるトメの顔にくぎ付けになっていた。
「モンスターならなんとかしろ!」
トメが厳しい言葉を吐く。
「もおおおおお! ふんぬぅぅ!!」
空中に放り出されたつららが気合を入れると、つららの白い髪の毛がグングンと伸びていく。
それはまるで戦闘機の翼のような形になっていった。
そして、その翼は揚力を得てふわりと飛んだ。
「「「おお~~~~! 飛んだ~~~~!」」」
すい~~~っと空気の流れに乗ってつららはその場で旋回する。
そして静かに『胴体着陸』した。
「つらら、死んだと思った~~」
ダンジョンの冷たい床に、さらに冷たい身体を横たわらせて、つららはぼそっと呟く。
「つららちゃん、すごいわね! この能力なにかに使えそう!」
「そこな山伏お姉さん……雪女は飛ぶのが仕事じゃないんだよ? 急発進と急ブレーキは事故の元だよ……教習所で習わなかったの……」
「いや私、免許持ってないし。ってかモンスターのくせによく運転のこと知ってるわね」
「人間界についてはいろいろ知ってるよ……カプセルの中でトメお姉さんが見ているテレビを一緒に見てたから……」
それを聞いてトメは目を眇めて言った。
「なんだ、お前、カプセルの中でも意識あったのか……。いや待てよ、すると……」
「トメお姉さんの秘密、つららいっぱい知ってるよ……FANZOで女の子同士がちょっとエッチなことする動画を見ながら変な」
「待てボケそれ以上言うとかき氷にするぞ」
トメに抱かれている
「あのお……女の子に興味あるんですか……? えへへ、そっかあ……」
なにこれ、と
「その話はあとで聞くわ。それよりさ、……なんでこんなところにいるのよ?」
一人はすごくしわくちゃの老婆。
車椅子に乗っている。
もう一人はまあまあしわくちゃの老婆で、その車椅子のハンドルを後ろから握っている。
まあまあしわくちゃがすごくしわくちゃに話しかけた。
「ママ、この子たち無事に帰ってきてくれたね。さすが私の孫娘」
するとすごくしわくちゃが答える。
「んだのー。いがったいがった」
二人が誰かわかった瞬間、
「ヒーバー! バー! 来てくれたの!? 嬉しい!」
そしてまあまあしわくちゃの方に抱き着いた。
「おーおー
「まだ半年もたってないよ」
嬉しそうに老婆の胸に顔を押し付ける
「えーと、お姉さま? もしかしたらこの方……」
「うん、ヒーバーとバー。私たちのひいばあちゃんと、ばあちゃんよ。でもどうして? 山形からわざわざ新潟まで来たの?」
ヒーバーはほっほっほっ、と笑って、
「んだ。やっぱりお前たちのことが心配だったさげの。いなほに乗ってきたなや」
いなほとは秋田から新潟までを結ぶ特急のことである。
ヒーバーはやさしい目でひ孫たちを見ながら言う。
「配信を見ながら来たんぞ。だいたいの話はそこのニジーがペラペラしゃべってくれたからわがてんなんぞ。よくやった。地下二十階なんぞ、若いころの儂でも到達するのが難しかった階層じゃ。
「そんなことないわよ。ヒーバーの作ってくれた梅干しとか軟膏にもすごく助けられたし」
「あとで作り方を教えっぞ。あれ食うと霊力アップするから普段からおかずにして食え」
「えーー……。いや、それはいい」
あのしょっぱすぎてすっぱすぎる梅干しを普段から食べるのはきつい。
ヒーバーはさらに言う。
「紫蘇巻きのつくりかたも教える。あといなごの佃煮」
「虫は食べたくないよー」
蟲使いのカブトムシは地下で乗り捨ててきたが、今回の探索では虫にいいようにされたのでトラウマになってるっぽかった。
「で、私もママと話したんだけど」
バーが言った。
「あんたたち、その石化した赤ん坊、どうするつもりなの?」