パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第135話 ソフィーナ

 言われて、零那(れいな)はトレーラーの上で拘束されている彩華(あやか)に目をやった。

 彩華(あやか)は絶望の果てに魂が抜けたかのような無表情になっている。

 

「うーん。もう身体はヤッちゃんに返したし、どうしようもないから……どこか、景色のいいところに葬ってあげようかなって。荼毘に付したほうがいいかな?」

 

 それを聞いて、ヒーバーとバーは顔を見合わせた。

 

「ママ、聞いた? 赤ちゃんを焼いて埋めるつもりだって」

「ああ、うむ。心配することなかったな。零那(れいな)のことだから突拍子もないことをやるかと思ってたが……そうか、生き埋めにするか」

「いやママ、荼毘に付すんだから生きたまま焼いてから埋めるつもりだよ」

「そうか……うん、零那(れいな)、強くなったな。それでいい。それでいいんじゃ。神と人間の子など、この世には産まれてはいけない存在じゃ。お前の判断は正しい」

 

 ヒーバーの言葉に、バーもうんうんと頷く。

 

「そうだよそうだよ。よかったよかった。零那(れいな)のことだから自分を犠牲にして赤ちゃんを助けるとか言い出すかと思ったんだよ。だからママと一緒にそれを止めにきたんだ。うん。その赤ん坊を殺す。恐ろしい選択だけど、それができるほど零那(れいな)は強い子になったんだね」

 

 ん? と零那(れいな)は思った。

 なにか含みのある言い方よね?

 

「えっと、ヒーバー、バー、なに言っているの? この子は……魂はあるにしても、肉体は石だし……魂を移す身体はもうないし。私たちの手で仏様、じゃないや、この子の場合はエシュ? だかっていう神様の元へ送ってあげるしかないんじゃないの」

 

 するとヒーバーはふところからキセルを取り出してタバコの葉を詰め始めた。

 

「サ高住だと禁煙での。それが一番つらいんじゃ」

 

 そしてライターでキセルに火をつけると、ふーっと吐き出す。

 

「ああ、うまい。で、その子はどこに埋める? いったん羽黒山に帰って、山の中に埋めてやるか」

 

 そのとき、どこかからか、ぶつぶつと誰かがしゃべっている声が聞こえた。

 彩華(あやか)だった。

 光を失った瞳、表情のない顔。

 

「私の赤ちゃん……かわいそうに……赤ちゃん……ごめんね……ママの頑張りが足りなかったのよお」

 

 それを聞いて、零那(れいな)の胸はズキッと痛んだ。

 彩華(あやか)本人は罪人に違いないと思うけど、赤ちゃんはそうじゃない。

 なにひとつ悪いことをしていない。

 でも、ほかに方法なんてなにもないのだ。

 

「いやあ、零那(れいな)、その子の埋葬は儂たちも手伝うぞ。な、素笛那(ソフィーナ)

 

 するとトメが食いつくように聞いた。

 

「あの、今の素笛那(ソフィーナ)って……」

 

 ヒーバーがバーを指さして言う。

 

「儂が名付けてやったんじゃ。素敵な名前じゃろ?」

「はい、羨ましいです……いいなあ」

 

 山田トメは心底羨ましそうな顔をしている。

 

 トメと素笛那(ソフィーナ)……どっちがよりマシなんだろう、と零那(れいな)は考え込んでしまった。

 

「私も自分の名前気に入ってるんだよ。ママはいい名前をくれたよ。かっこいい。いやあでもよかったよ。零那(れいな)のことだから、秘法を使ってその赤ちゃんを石化から戻すとか言いだすんじゃないかと思って」

「うむ、そうじゃな。あの方法は膨大な霊力を必要とする。あんなことをしたら、零那(れいな)の霊力は底をつき、二度と法術を使えなくなるやもしれぬ。だがそっちの道を選ばなくていがったの」

 

 その瞬間、零那(れいな)は自転車から飛び降り、車椅子のヒーバーの膝に取りすがった。

 

「そんな方法あるの!? あるなら、私、やるわ!」

 

 ヒーバーとバーはしまった、という表情で顔を見合わせた。

 

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