パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第137話 配達完了

 ガスバーナーの上に網が置かれていた。

 さらにその上にはハンバーガーが並んでいる。

 

「うーん、これ賞味期限大丈夫かな?」

 

 不安そうに呟く虹子。

 

「大丈夫でしょ。保冷バッグの中で冷蔵してたし。保冷剤代わりにつららちゃんの髪の先を入れといたし」

 

 零那(れいな)が火加減を見ながら言った。

 

「あんまり強火にするなよ。焦げない程度に炙るんだ」

 

 さっきからトメが細かく火加減に注文をつけている。

 

「わかってるわよ。……あ、これもういいかな。じゃあ最初に注文主さんから食べるといいわ。これで配達完了ね」

 

 零那(れいな)は、ほどよく焼きあがったハンバーガーを彩華(あやか)に渡した。

 

 彩華(あやか)の拘束はほどかれている。

 とは言っても足だけは縛られているのだが。

 にっこりと笑ってハンバーガーを差し出す零那(れいな)の顔を、彩華(あやか)は疑うような表情で見ている。

 

「ほらほら。これ、彩華(あやか)さんが注文したハンバーガーだから。ま、みんなで食べましょう」

「本当に……赤ちゃんを復活させてくれるの……?」

「もちろん。その前にみんなの霊力をある程度回復させなきゃね。それにはまず食べなきゃでしょ」

 

 ハンバーガーを受け取ろうとする彩華(あやか)の横から、ヒーバーが手を出してきた。

 そしてハンバーガーを零那(れいな)の手から奪い取る。

 

「あ! ヒーバー、なにするの?」

「霊力を復活させんなんろ? んだばこれも挟んで食え」

 

 ヒーバーはタッパーのフタを開く。

 その中にはイナゴの佃煮がみっしりと入っていた。

 

「うげえ……」

 

 顔をしかめる羽衣(うい)

 ヒーバーはハンバーガーの中にぐいぐいとイナゴの佃煮を詰め込んでいく。

 

「儂が丹精込めて作った特別製の佃煮だんよ。これ食うとな、霊力がみなぎるんじゃ。ほら食え食え」

 

 イナゴの佃煮バーガーを渡された彩華(あやか)は、躊躇なくそれにかぶりついた。

 

「赤ちゃんのためだもの。なんでも食べるわあ。……んん……。ケチャップと和風の佃煮の味がケンカしてる……」

「いいから食え食え、マクンバの女よ、子供を復活させってあんろ?」

「ええ……食べるわ……」

「よし。じゃあ順番にみんなも食え」

 

 焼きあがったハンバーガーに手を伸ばすヒーバー、その手をパチンと払う羽衣(うい)

 

「ヒーバー、私は虫なんて絶対に食べないからね!」

「なんだ、最近のZ世代はイナゴのおいしさも知らないで」

「一生知らなくてもいいです」

 

 虹子はというと、

 

「これも配信のネタだから私は食べるよ。ひいおばあ様、私にください」

「おお、いい子だな」

「えへへ、お姉さまも食べましょう!」

 

 そう言われても零那(れいな)だって実はイナゴが苦手なので、

 

「いや、私は遠慮しとくわ……。私の分、虹子さんが食べていいわよ。トメさんは?」

「静岡じゃあまり食べないが……実は、けっこう好きなんだ。私は食べるけど、ハンバーガーとは別に食べたいな」

「そうね。ヤッちゃんも食べなよ」

 

 言われて深夜(みや)は、プイッと横を向いた。

 

「南魚沼のあたりに『あぜ道ソフトクリーム』ってのがあって……」

「ん? ヤッちゃん、なんの話?」

「ソフトクリームにね、イナゴの佃煮がたっぷりトッピングしてあるの」

「おいしいの?」

「見た目がすさまじくて倒れるかと思っちゃった。私は食べないよ!」

 

 すると、バーが別のタッパーを開けて深夜(みや)に差しだした。

 

「じゃあこの梅干し食え」

「それもいりません」

「なんじゃZ世代は好き嫌いが多いの。おっぱいでっかくならんぞ」

「あのねあのね、つららも食べたい! その虫おいしそう!」

「妖怪にはもったいないが、まあ余っても仕方がないからお前も食え食え」

 

 そんなこんなで、みなでハンバーガーにかぶりつく。

 

「うぎゃあ! おばあ様、梅干しをハンバーガーに挟むのはやめてください!」

「ピクルスはいらない。虹子、私の分をお前にやる」

「あーあ、アイスクリームもほしくなるなあ」

羽衣(うい)、かき氷なら作れるわよ」

「あのねあのね、つららはデザートじゃないよ?」

 

 そんなこんなでワイワイしながらみなで休息をとったのだった。

 

     ★

 

 

 零那(れいな)羽衣(うい)、虹子とトメ、そして彩華(あやか)が車座になって座っている。

 車座の中央には鍋がおかれ、護摩が焚かれていた。 

 零那(れいな)の後ろにはヒーバーとバーが立っている。

 少し離れたところで深夜(みや)とつららがそれを見ていた。

 石の赤ん坊は零那(れいな)が腕に抱いている。

 赤ん坊の首には深夜(みや)のペンダントがかけられていた。

 

 

 ヒーバーが静かに言う。

 

「皆の霊力を合わせてこの赤子の防護を解く。そして、そこのZ世代の歯を赤子の身体に埋め込む。神と人の子だ。どんな力を持っているかもわからん。この世に厄災をもたらす可能性もある。だから、同時にこの赤子が零那(れいな)と魂のつながりを持つようにする。いいな、マクンバの女」

「ええ、それで赤ちゃんが復活できるならそれでいいわあ……」

「よし、では始めるぞ……」

 

 そして、零那(れいな)は真言を唱え始めた。

 

 子を慈しみ、その健やかな成長を願う、菩薩の真言だった。

 

「オン・カカカビ・サンマエイ・ソワカ!」

 

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