パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第140話 エピローグ 大団円①

 数か月後。

 少女は、国道沿いにあるコンビニの前に立っていた。

 濃い紺色のセーラー服。

 学生カバンを両手で持って、キョロキョロと辺りを見回している。

 ふわふわの長い髪の毛と、セーラー服の白いリボンが、四月の風に吹かれて軽く揺れていた。

 彼女は目当ての人を見つけると、

 

「あ、いたいた! こっちこっち!」

 

 と大きく手を振った。

 やってきたのは、同じセーラー服を着た黒髪ストレートの少女。

 スカートは短く、風に舞って太ももが危ういところまで見えている。

 整った顔立ち、目の下には二つ並んだ泣きボクロ。

 彼女はトトト、と小走りに走ってくる。

 

羽衣(うい)、お待たせ!」

「私も今来たところだよ、深夜(みや)!」

 

 羽衣(うい)深夜(みや)はお互いの姿を見て、ふふふ、と笑う。

 

深夜(みや)、なんか清楚な女子高生じゃん。ゴスロリで来るんじゃないかとドキドキしてたよ」

「まさか! 登校初日からそんなファンキーなことしないよ! それに、校則も厳しいらしいし」

「でもすっごいかわいいよ! ゴスやめてこっちの路線で行けば?」

「ゴスはやめないよ。ゴスは私の生きざま」

「でもゴスのときと今とのギャップがすごくてなんかいつもより美人に見える……不思議」

「不思議じゃないよ! 私は美少女なんだから!」

 

 羽衣(うい)は16歳。

 深夜(みや)はと言えば、戸籍上ではもう20代半ばになっているのだが、自分の体感では16歳だ。

 とくに深夜(みや)に関してはいろいろな手続きが必要だったが、結局国に認められて16歳として生きていくことになった。

 

「でも二人同時に高校に入学できてよかったよ」

 

 羽衣(うい)が言うと、深夜(みや)もにっこり笑って言う。

 

「そうだね! ……同級生の友だち、なんかみんな大人になっちゃってるし……。独りぼっちで高校生やるの、やだったけど、羽衣(うい)と一緒なら心強いよ」

「うん、私もだよ! 16歳で高校一年生だとみんなより一年遅れちゃってるけど……。でも、お姉ちゃんが人並みの高校生活送らせてあげたいって。楽しみ! 最初から友だちもいるしね!」

 

 羽衣(うい)に微笑みかけられた深夜(みや)は、うんうん、と頷いて、

 

「そうそう、私たち、友だちなんだから! ……だから、前から何回も言ってるけど、羽衣(うい)も今度一緒にゴスしない?」

深夜(みや)いっつもそれ言うよね。でも、なんか最近、ちょっとだけならゴス衣装着てみたいような気はしてきた……深夜(みや)があんまり勧めるんだもん」

「でしょでしょでしょ! 今度私のうちに来てよ、ゴス衣装いっぱいあるからそれ着てTAKTOKに投稿して有名になろうよ!」

「うーん、有名にはすでになってるし……。投稿するのは深夜(みや)だけでいいよ、私は着るだけでいい?」

「しょうがないなあ! 羽衣(うい)にぴったりのがあるから、絶対これ着てもらおうってのがあるの!」

 

 二人は並んで高校に向かう。

 これから、改めて女子高生としての生活を始めるのだ。

 羽衣(うい)深夜(みや)も、未来が輝かしすぎてまぶしく感じるほどの希望を胸に抱いて、春の朝を歩いて行った。

 

 

     ★

     ★

 

 

「こんにちレインボー!」

 

 虹子がドローンのカメラに向かって挨拶をする。

 ここは新潟市中央区のやすらぎ堤ダンジョン、地下一階。

 今日もまた、ダンジョン配信をしているのだ。

 

〈こんにちレインボー!〉

〈こんにちレインボー!〉

〈待ってた!〉

〈相変わらず見た目だけは美人〉

 

 コメント欄がすぐに返事をしてくる。

 しかし、一人で配信しているわけではない。

 

「こんにちララー!」

 

 虹子の隣で、白い着物を着た十歳ほどの少女が叫ぶ。

 

「つららもいるララー!」

「あんた、なにその語尾」

「いや、つららもキャラ立てようと思ってるんだよ? ニジーの配信盛り上げようとしてあげてるんだララー」

「狙いすぎて寒い」

「雪女の隣にいて寒くないわけじゃないじゃんララー」

 

〈こんにちララ〉

〈かわいい〉

〈かわいいララ〉

〈けっこんしたい〉

〈夏限定でお付き合いしたい。冬になったら離婚しよう〉

〈幼女と結婚できるなら俺は凍死してもかまわない〉

〈その語尾かわいいよ〉

 

 虹子は呆れた表情を見せて、

 

「私のリスナーってなんでこう変態ばっかなの……。で、もちろん今日もこの方が一緒です! はい挨拶どうぞー!」

 

 カメラが少し離れた場所を映す。

 

 そこには黒づくめの装束を着た、ショートボブの女性がいた。

 背中には大きな掃除機を背負い、両手に長い掃除機ノズルを持っている。

 

「……幻影の掃除人(ファントムスイーパー)だ」

 

 静かに彼女は言った。

 それを聞いてつららがすかさず言う。

 

「あれー? あのねあのね、トメお姉さん、さっきの打ち合わせと違わない? ほら、打ち合わせ通りにやろうよララー」

「やだ」

 

 カメラの後ろから、虹子がスケッチブックをめくってトメに見せた。

 

 そこには、『こんにちやまだー!』と書いてある。

 

「馬鹿か! 私は幻影の掃除人(ファントムスイーパー)だ!」

「いやあ、それ、あまりにも中二病すぎてどうかと思うんだよ」

「『こんにちやまだ』よりはましだバカ!」

 

〈あいかわらずだな〉

〈で、今日はなにするの?〉

〈今日は探索するのか〉

 

「探索もするけど、その前に腹ごしらえしたいと思いまーす! なんで、もうウービーでご飯を注文してまーす! えっとね、ビッグモックセットとニンジャバーガーセット、あとはチーズバーガーセット! あと十分くらいで届くんじゃないかなー」

 

〈ダンジョンの中まで配達してくれるウービー配達員って今いないじゃん〉

〈山伏の人、霊力全部失ったんでしょ?〉

 

 虹子はそれを聞いてニヤリと笑った。

 

「ふふーん、その辺も含めてみなさんにお知らせがあるんでーす」

 

 

 

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