パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第24話 配信映えする牛

〈特SSS級のお手並み拝見〉

〈でも地下一階だとスライムとかしか出ないよ〉

〈ほんと美人だなあ。れいなちゃん宝塚の男役やれるよ〉

〈れいなちゃんほんと綺麗〉

〈妹ちゃんはザ・美少女って感じ〉

〈妹ちゃん、すっごいかわいいよね! お人形さんみたい〉

〈すげーすげーニジーと日本一の探索者のコラボか、贅沢すぎ〉

〈美人姉妹だなあ〉

〈女優かモデルやったほうがいいよ〉

 

 次々に読み上げられるコメントたち。

 今のところ、みんな褒めてくれるコメントばっかりだ。

 零那(れいな)も美人とか言われちゃって素直に嬉しい。

 ひひひうふふ、自分の顔に少しは自信持っちゃうよ?

 ちらりと羽衣(うい)を見ると、羽衣(うい)もコメントに褒められて照れているのだろう、無表情を装ってはいるが、そのほっぺたはずっと赤くなりっぱなしだ。

 

「ちょっとちょっとあんたたち、お姉さまを褒めるのはいいけど、私はぁ? この配信に来てるってことはそもそもあんたたち、私のファンでしょうが」

 

〈まあニジーはな……〉

〈ニジーも美人だけど中身がな〉

〈ガサツだもんな〉

〈残念美人だよな〉

〈正統派美人ってわけでもないよね〉

 

「……なんなのあんたたち……」

 

〈そういやニジー、いつもの荷物と別に木の板みたいなのを背負ってるけどそれなに?〉

 

「ふふふ、それはあとのお楽しみ。っていうのはね、これが今日の目的でさ、あ、でも今話しちゃおうかな。ええとね……あ! モンスターが来た! 群れで来たよ!」

 

 ダンジョンの通路の奥から、なにか大きな物体が飛んでくる。

 全長二メートルはあろうかという、巨大なコウモリだった。

 真っ赤な目、大きな牙。

 しかも口からは炎を吐くモンスターである。

 地下一階で出会うモンスターとしては、おそらく一番強い。

 それが、三匹。

 

「ギシャァァァッ」

 

 と恐ろしい鳴き声を上げてこちらへと飛んでくる。

 しかし零那(れいな)にしてみればなんてことない妖怪である。

 虹子だってS級探索者だから、地下一階のモンスター相手に動じはしない。

 ドローンのカメラを意識しているのだろう、自分の立ち位置を微妙に変えながら言った。

 

「さあみなさん、ゲストの零那(れいな)さんにやっつけてもらいましょう! さ、お姉さま、派手にやっつけて、派手に! 配信が盛り上がるように!」

 

 言われて、零那(れいな)は困ってしまう。

 

「うーん、派手に、かあ。コウモリちゃんなんて法螺貝でいいんだけど……」

「それもいいけど、配信映えするやつでお願い!」

「じゃあ、お札使うわよ。火を吹く妖怪相手にはこれが一番」

 

 零那(れいな)が懐から出したのは、一枚の紙切れだった。

 それには墨で黒い牛の絵が描かれている。

 さらには梵字の宝印と月羽(つきはね)神社の朱印が押してある。

 それを見て、羽衣(うい)が、

 

「あ、もったいない……」

 

 と呟いた。

 

「まあいいじゃない、派手だし。じゃあ、行くわよ!」

 

 零那(れいな)はそう言って、カードを配るディーラーのようにそのお(ふだ)をピッと投げると、お札はスーッと数メートル飛び、そこでバチバチバチ! と火花を発した。

 そして火花の中から巨体の牛が姿を現した。

 筋肉モリモリ、長いツノを持ったたくましい黒い牛だった。

 

〈なんだこれ〉

〈牛を召喚した〉

〈牛ってなんだよ〉

〈こないだは孔雀を呼び出していたし、サモナーっぽいな〉

〈牛ってジャイアントバットに勝てるんか〉

 

 コメントを聞いて、零那(れいな)が言う。

 

「昔、江戸時代、庄内藩の江戸屋敷で大火事が起こったの。そのとき、燃え盛る炎を牛が背中を擦り付けて消したと言うわ。それ以来、牛は信仰の対象となり、その積み重なった信仰は力となったのよ。……さあ、モーちゃん、あのコウモリちゃんをやっつけて!」

 

「モーーッ!」

 

 黒い牛がジャイアントバットに向かって突進する。

 

「キィアアアア!」

 

 ジャイアントバットも炎を吹きながら牛に襲いかかる。

 と、そのとき牛が大きくジャンプした。

 その勢いはすさまじいものだった。

 まるで、火山の火口から噴き出る火山弾を思わせるスピードと重量感。

 さらに。

 牛は身体をひねって後ろ向きになると、その広い背中でジャイアントバットに向かってボディアタックをかます。

 

〈飛んだー!!〉

〈牛が飛んだ〉

〈ヒップアタックかよwww〉

〈そんなのあり!?〉

 

 巨体を叩きつけられたジャイアントバットはなすすべなく全身の骨を砕かれて床に墜落する。

 牛は一度着地し、残っている二匹のジャイアントバットを睨んつつ前足で地面をガツガツと蹴る。

 

「コォォォォッ」

 

 ジャイアントバットが炎を吹く。

 その炎はダンジョンの通路内に広がるほど巨大だったが、

 

「フガァァ!」

 

 牛が首を激しくふると、そのツノが巻き起こす勢いが炎をすべて消火してしまった。

 そして牛がもう一度飛び上がる。

 今度はそのまま突っ込み、牛のツノがジャイアントバットの頭部を貫いた。

 

 その間にも最後の一匹は牛の横をすり抜け、後方にいた零那(れいな)たちに襲いかかろうとするが。

 

 零那(れいな)は持っていた錫杖(しゃくじょう)を前方に投げるとそれは宙に浮いて自立する。

 

「オン マユラ キランデイ ソワカ!」

 

 零那(れいな)がそう叫んだ瞬間、錫杖(しゃくじょう)の頭部分に取り付けられている金具からまばゆいほどの光線がジャイアントバットに向けて発射された。

 頭部に光線が命中する。

 

 ジュウッ!

 

 ジャイアントバットは、頭部が蒸発してそのまま床に落ちていった。

 

〈すげえ〉

〈見たことない魔法だ〉

〈っていうか牛の目が怖い〉

〈強いな〉

 

「すごいすごい! さすがお姉さまだね! みなさん見ましたか、これが特SSS級の力です!」

 

 虹子がカメラに向かって話す。

 

「お姉ちゃんやりすぎ……オーバーキルだよ……コウモリちゃんなんてもっと軽く追っ払えるでしょ」

 

 羽衣(うい)が呆れたように言う。

 

「いやあ、ほら最初の一戦だし。ちょっと派手にやろうかなーって。あはは」

「お姉ちゃん、お(ふだ)は持ってきている分だけだから、節約して使ってよね。アパートには朱印持ってきてないんだから、新しく作れないんだよ」

「わ、わかってるわよ、今だけよ、これからはなるべく使わないようにするから」

 

〈でも地下一階の敵じゃな〉

〈もっと強いのと戦ってほしい〉

〈あと妹ちゃんの力も見たい〉

〈同意! 妹ちゃんも戦って!〉

 

 それを聞いて、羽衣(うい)は上ずった声を出した。

 

「い、いや、私は上がり症だから……なんかみんなに見られてると思うと……ちょっと、なんか……」

 

〈恥ずかしがる妹ちゃんもかわいい〉

〈でも強いんでしょ? この三人なら地下五階以上潜れそう〉

〈今日はどこまで潜るつもり?〉

 

 コメントを聞いて、虹子が答えた。

 

「今日はねー、一応目的があるんだよ。ふふふ、だから地下五階まで行く予定!」

 

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