パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第50話 引きずり出す

 零那(れいな)は倒れている羽衣(うい)に駆け寄る。

 血の気の失せた顔、でもしっかり呼吸はしている。

 さすが私の妹ね、と零那(れいな)は思った。

 あの攻撃を食らっても気を失っているだけでどこもケガをしていないわ。

 

 羽衣(うい)の口の端から頭を覗かせていたゲジゲジは、すでに口の中に引っ込んでいる。

 

「クーちゃん!」

 

 零那(れいな)は自分の孔雀を呼び寄せる。

 羽衣(うい)が呼び出したアルフスはすでに消え去っている。

 

「にゃおー!」

 

 クーは鳴き声を上げながら零那(れいな)の頭の上に止まった。

 

「オン マユラ キランデイ ソワカ! クーちゃん、羽衣(うい)の口の中からあの虫を引きずり出して!」

 

「にゃお!」

 

 クーは一度大きく羽ばたきすると、ピンク色の粒子を空気中に撒きながらふわっと浮き上がる。

 

 零那(れいな)羽衣(うい)を仰向けにさせると、顎をもってクイッとあげた。

 薄いピンク色の唇が目に入る。

 口を開けさせる。

 白い歯が見えた。

 

「クーちゃん!」

「にゃおーーー!」

 

 羽衣(うい)の口の中にクーが飛び込んでいく。

 クーの姿はすっかり羽衣(うい)の体内に入った。

 

「ウグッ! グァッ! ガァッ!」

 

 羽衣(うい)が喉の奥から唸り声をあげながら四肢をばたつかせる。

 

「虹子さん! 足! 羽衣(うい)の足を押さえて!」

 

 零那(れいな)と虹子、二人係で羽衣(うい)の身体を押さえつけた。

 

「グウゥゥッ! グゥゥッ!」

 

 羽衣(うい)の口からはクーの発したピンク色の光が粒子となってあふれている。

 

「ニャオ! ニャオー!」

 

 クーがそのクチバシにゲジゲジを挟んで、羽衣(うい)の口から頭だけ出した。

 だが、ゲジゲジに抵抗されてそれ以上出てこられないようだった。

 

「オン マユラ キランデイ ソワカ! 羽衣(うい)! 耐えて!」

 

 零那(れいな)は真言を唱えると、羽衣(うい)の両腕を自分の両手で押さえつけたまま、孔雀が頭を覗かせている羽衣(うい)の唇に自分の唇を合わせた。

 そして、歯を使わずに唇だけで孔雀の頭をゲジゲジごとしっかり挟み込むと、

 

「むーーーーーー!」

 

 と、思いっきり頭をのけぞらせる。

 ズルズルッ! とクーの身体が羽衣(うい)の口から抜き出される。

 

「ミャオ!」

 

 孔雀の身体が床に叩きつけられた。

 そのクチバシから、全長30センチほどのゲジゲジが離れ、床を這って零那(れいな)から逃れようとするが、

 

「ソワタヤ ウンタラタ カンマン!!」

 

 不動明王の真言とともに零那(れいな)がゲジゲジに向けて指差すと、人差し指から赤い炎がゴウッ! と噴き出てゲジゲジを包み込んだ。

 

「ギシャァ!」

 

 ゲジゲジは燃えさかる炎になすすべなく、黒い炭となる。

 

「はあ、はあ、はあ……」

 

 肩で大きく息をする零那(れいな)

 息を整えるための時間も惜しくて、

 

羽衣(うい)羽衣(うい)! 大丈夫?」

 

 ペチペチと妹の頬を叩く。

 しばらくそうしていると、

 

「う……うーん……」

 

 ようやく羽衣(うい)が目を覚ました。

 

「ふーー……。よかった。無事だったようね」

「お姉ちゃん……あの……私……?」

「蟲使いの蟲に操られていたわよ。それか、幻覚を見せられていたか。羽衣(うい)、覚えてる?」

「……なんか、すっごい強いカマキリと闘って……」

「幻覚の方かな。私をカマキリだと思ってたのね」

「嘘……私が……妖怪に……?」

 

 羽衣(うい)はしばらく呆然としていた表情をしていたが、倒れているトメやまだ壁に背中を貼り付かせているヤミ、それに近くにいる零那(れいな)や虹子を見て、やっとのことで事態を把握したのか、

 

「そんな……私が……? お姉ちゃんたちを攻撃したの……? 妖怪にいいように操られて……? 嘘でしょ……?」

 

 そして唇を震わせながら、その大きな目からポロポロと涙をこぼし始めた。

 

「そんな……私が……お姉ちゃん、ごめんなさい……ごめん……虹子さんも、ヤミちゃんも……ごめん……」

「まあいいわよ、無事だったんだし。でも、羽衣(うい)に幻覚を見せるなんて、とんでもない妖怪ね……。こんな地下四階にいていいやつじゃないわよ。多分、蟲使いの蟲だったと思う。本体はもっと地下深くにいるんだと思うわ。やっつけに行こうかしら」

 

 と、そこに虹子が口を挟んできた。

 

「そんなすごい奴、私たちの手には負えないと思うからお姉さまに任せたいところだけど……。それより、この子はどうする?」

 

 虹子の視線の先には、零那(れいな)の掌底で失神しているトメの姿があった。

 

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