パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第52話 SS級

「え、だれ?」

 

 顔を見合わせる零那(れいな)羽衣(うい)

 

「ふん、イカレた探索者だ……。しかも、SS級……」

 

 真っ黒な修道着、頭には黒いベールをすっぽり被っていて髪の色はわからない。

 身長は羽衣(うい)と同じくらい。

 零那(れいな)は一応警戒のため、胸に下げている法螺貝を握る。

 

彩華(あやか)さん、ブラジルにいるって言ってたのに……」

 

 虹子が小銃をおろしながら言う。

 どうやら、虹子の知り合いのようだった。

 

「昨日帰ってきたの! 虹子、ダンジョンの中で遭難したって連絡もらったとき、すっごい心配したんだよ!」

 

 言われて虹子は零那(れいな)を手の平で差して、

 

「お姉さまに助けてもらったんだよ」

「見てた見てた! 配信で見てたよ! で、せっかく日本に帰ってきたから、虹子の顔見ようと思って新潟に来たんだけどさ。そしたらなんかトメとケンカしてたみたいだから止めに来たんだよ! トメだけに! ぶわっはっは!」

 

 そして虹子に抱き着く彩華。

 

「ちょ! やめてよ彩華さん!」

「ふふふー! やめない!」

 

 虹子のほっぺたに頬ずりしたあと、今度はトメの方に向き、

 

「こら、トメ! あんたなに虹子とケンカしたの?」

「いや、ケンカというか……」

「仲直りしなさい! ほら、二人とも!」

 

 彩華はそう言ってトメに向かって手を伸ばす。

 と、すぐに顔をしかめた。

 

「う……! 臭い……。トメ、どうしたの、お風呂入りなさいよ」

「私の体臭じゃない!」

「う……ほんとだ、体臭じゃなくて口臭だ……。なんか腐った生ごみみたいな臭いする……」「失礼なことを言うな! これはさっき飲まされた薬のせいで……」

「まーたそんな言い訳言っちゃって! あとで浄化の魔法をかけてあげるよ! でもここまで臭いとなると……トメの本体まで浄化されちゃったりして。ぷぷぷ」

 

 トメも年頃の女性である。

 臭いなどと連呼されて頭にきたのか、顔を真っ赤にして黒髪ツインテールを振り乱し、

 

「ふざけるな! 掃除機で吸ってやるぞ!」

「ぷぷぷ、怒った顔かわいい! 臭いけど!」

「お前いい加減にっ!」

「まあ、いいわ、こっちに来なさい!」

 

 彩華はそう言って白い肌の手でトメの手をギュッと握る。

 そして虹子のところまで引きずるように引っ張って行って、

 

「ほら握手握手!」

 

 むりやり手を握らせる。

 

「えー。いったいなんなの? だれ?」

 

 零那(れいな)が呟くと、トメと握手させられながら虹子が答えた。

 

「この人、国内唯一のSS級探索者の朱雀院彩華(すざくいんあやか)……さんだよ。まあ、あんまりカラミないから知らないんだけど。配信とかもしていないし」

「ええ~? こないだ、虹子がピンチになったときは私に助けてーって泣きついてきたのに? まああの時は私、ブラジルにいたから助けに行けなかったけど」

「うん、そうだけど、地下六階に助けにきてくれそうな人、彩華さんくらいしかいなかったから……。いやほんと、あのときはご心配おかけしてごめんなさい。でも、実際そんなに知ってる仲ではないよね」

 

 それを聞いて零那(れいな)は不思議に思った。

 

「え? でも、なんだか仲よさそうに見えるけど……?」

 

 するとトメがため息交じりに言う。

 

「こいつ、距離感バグってるんだよ……。私もよく知らない……謎のシスター探索者だからな」

 

 零那(れいな)は、握手している二人の間でニコニコの笑顔を見せている彩華を眺める。

 髪色はベールに覆われてわからないが、色素が薄い印象だ。

 肌色は真っ白で、瞳の虹彩も薄いブラウンをしている。

 

「はあ? 虹子さんやトメさんを親し気に呼び捨てにしてたのに? それに、わざわざ虹子さんのために新潟に来たんでしょ?」

 

 零那(れいな)の言葉に、彩華は屈託のない笑顔で、

 

「そうだよ! だって日本に十人しかいないS級だもん! 貴重なS級が死んじゃうかもと思ってドキドキしちゃったよ! そうそう、あなたが特SSS級の零那(れいな)さんね! これからよろしくね!」

 

 そう言って零那(れいな)に手を差し出す。

 修道服からのびるその腕は細くてすべすべの肌。

 ほえー、綺麗な人ね、と思いながら零那(れいな)はその手を握った。

 

「あ、ああ、はい、よろしくお願いします」

 

 彩華の手は柔らかかった。

 修道服に身を包んだ彼女は、優しい微笑みを浮かべる。

 その瞬間だった。

 

「うわっ、静電気!? ビリッときた!」

 

 零那(れいな)はパッと手を離す。

 

 彩華も自分の手の平を眺めて、驚いたような表情。

 

「すごーい。さすが特SSS級……」

 

 なにがすごいのかわからないが、こんなジメジメしたダンジョンの中で静電気なんておこるものだろうか?

 零那(れいな)も自分の手の平を見る。

 でも、これ……。

 静電気とは違う、なんか嫌な感じ……。

 なんだろう?

 零那(れいな)が考え込んでいるあいだにも、彩華は羽衣(うい)とも握手している。

 

「きゃっ! ビリッてきた!」

 

 羽衣(うい)も同じようにパッと手を離していた。

 

「ふーん……」

 

 彩華はまたも驚いた顔。

 

「やるねえ、山伏(やまぶし)……あ、そうそう、もう一人いたような? あれ、いない」

 

 見ると、壁に貼り付いていたはずのヤミの姿が確かにない。

 

「ちっ、逃げたか……」

「だめよ、トメさん。あの子にはもうちょっといろいろ聞きたいんだから。……そういえば、あの子の正体を探るためにここに来たんだったわね。羽衣(うい)、もう一度思い出して、あの子の絵、描ける?」

 

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