パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第53話 サモン、シモン……

「うん、描けると思う……」

「そう? じゃ、描いてみて。ええと、彩華《あやか》さん……でしたっけ? さっき、そこに幽霊がいたの、見えてました?」

 

 零那(れいな)が聞くと、彩華はにっこり笑った。

 

「見えてたよー。かわいらしい幽霊さんだったねえ」

「あの子、見覚えがありません? 多分、2018年ごろに亡くなった人だと思うんですけど……。あの子、偽の地図を渡されて地下六階に誘導されたみたいなのよ。それって、こないだ虹子さんが遭難しかけたときとそっくりの状況だったから、詳しく調べてみたいんです」

「ふーん……? でも、私は知らない子だったわね……。っていうか、この看板、あなたたちが立てたの?」

 

 零那(れいな)たちが今いるのは地下四階。

 すぐそばには地下6階への階段がある。

 その手前には虹子が立てた看板。

 

【注意! この先地下6階。覚悟のない者は進入禁止! この先には国も救助隊を送れません】

 

 虹子の字で大きく注意書きが記してある。

 彩華(あやか)は腕組みをしてその看板を見る。

 

「あ、この階段地下5階を飛ばして地下6階に続いているんだ……ふーん」

「そうなんです。で、虹子さんが使っていた地図アプリの表示が間違っていたみたいで」

「そもそも、その地図アプリってどこのやつ?」

 

 虹子がパパっとスマホを操作して画面を見せた。

 

「これだよこれこれ」

「あー、アメリカのCUREMAZE(キュアメイズ)社か。大手だね。有料だよねえ?」

「そうそう。会社の探索チームが探索してマッピングして配信してるんだ。彩華さんはもちろん知ってると思うけどさ。探索済みの範囲にもよるけど、地下四階とかだと数十万円かかるんだよ。その上間違っていても免責って条件だけど、地図アプリの中じゃ結構信頼性高いし。で、これ見てみてよ」

 

 虹子が現在地を表示する。

 このあたりの場所は『NO DATA』となっている。

 

「今はこうなってるでしょ? でもね、違うんだよ! あの時は確かに『地下5階へ』って表示が出てた! 間違いない! あのあと、CUREMAZE社に問い合わせてみたけど、ここはまだ未探索だからデータはないはず、って回答だった」

 

 零那(れいな)もその画面をのぞき込む。

 なるほど、たしかに今いる場所のデータは表示されていなかった。

 

「虹子さんの勘違いとか?」

「絶対ない! こっちだって探索は命がけだし! マッピングアプリは命綱だから、この私が見間違うはずない! 絶対にあの時は『地下5階へ』って表示してあった!」

 

 しかし、実際には地下6階へと続く階段だったのだ。

 それで虹子は死にかけているのである。

 

「ってことは、その瞬間、そのアプリがハッキングとかされて改変されてたのかもねえ」

 

 おっとりとした調子で彩華がそう言った。

 虹子はウンウンと大きくうなずく。

 

「きっとそうだよ! で、あのヤミ……幽霊も、おんなじように騙されてここの階段を降りちゃったんだと思う。どこの誰が、なんの目的でそんなことしたのか……」 

 

 その時、今まで黙って鉛筆を走らせていた羽衣(うい)が、

 

「できたー!」

 

 と言ってスケッチブックを見せる。

 今度はカブトムシの裏側ではなかった。

 精緻に描かれた、少女の人物画。

 編み込みのサイドポニーテール、ゴスロリ風の衣装。

 目はクリクリとしていて大きく、まつ毛は長く、唇は薄い。

 そして特徴的な二つならんだ泣きボクロ。

 街角ですれ違ったら振り返って二度見してしまうだろう、と思うほどの美少女だった。

 

「うん、そっくり! さすが羽衣(うい)、わが妹!」

「……そんなでもないよ……」

 

 顔を赤らめてうつむく羽衣(うい)

 うんうん、この子は褒めてあげるとすぐに顔を真っ赤にするところがすっごくかわいい、と零那(れいな)は思った。

 

「へー……うまいもんだねえ。確かに、さっき見た幽霊だ」

 

 彩華も感心したように言う。

 虹子がその絵を受け取り、ドローンのカメラに向けた。

 

「さーみんな! この子、知っている人いない? かなりそっくり! 多分、2018年ごろに行方不明になった子だと思う! ゴスロリ好きで、ぽっぽ焼きを知っていて、多分年齢は高校生くらい! 背はちっちゃい! 150センチくらいかな!」

 

 今、同時接続者は8000人くらいいる。

 中には知っている人がいるかもしれない。

 

〈うーん?〉

〈わからん〉

〈かわいい〉

〈さっきからニジーたちが言ってた幽霊ってこの子か〉

〈まじで超かわいいじゃん〉

〈結婚したい〉

〈付き合いたい〉

〈手の込んだ髪型してるな〉

〈その泣きボクロ。サイドテール。ゴスロリ。私、会ったことあるわ。探索者志望だったはず〉

 

「え、ちょっと待って、君、どこの人? いつの話?」

 

 虹子が驚いた顔をする。

 

〈虹子、私だ。あとでRINEする。たしかサモンだったかシモンだったか、そんな名前の村出身だったはず〉

 

「私だって言われてもわかんないよ! RINE? 私の知り合いなの?」

 

〈そう。いつも虹子の配信見てたよ。今も応援してるから。私、その子の誕生日まで覚えているよ。ニャーニャーニャーの日だ〉

 

「え、まじでわかんないんだけど。怖っ! ニャーニャーニャーの日ってなに? ってかサモンとかシモンとか……私、新潟県人だからわかるけど、それ、守門(すもん)村のことじゃない? 今は合併したけど」

 

 イヤホンをつけていない彩華にはコメント欄のコメントは聞こえていないが、虹子が言ったその村の名前に、彩華がピクッと反応し、少し強い口調で言葉を発した。

 

「待って! その必要はないかも……。私、この子知ってるかもだよお。守門(すもん)で思い出した。すっごい山の中の雪深いところでしょ? なんか思い出してきたよお。そっか、この子……。もしかしたら私が探索の仕方を教えた子たちのうちの一人かも」

 

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