パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件 作:羽黒楓
住宅街の中の、小ぎれいな家だった。
庭は広くないが、よく手入れされている。
花壇には白とピンク色の百合の花が咲いていた。
家の前の駐車場には少し大きめの黒い車と、パステルブルーの軽自動車。
ちゃんとした家なのね、と
この家に、ヤッちゃん――幽霊少女のヤミが住んでいたのか。
百合の花の前で笑うヤミの姿を想像して、少し胸が痛んだ。
表札を見る。
『大平 和幸 Odaira Kazuyuki
小夜子 Sayoko
深夜 Miya 』
と書いてある。
しばらくして、きちんとお化粧をした四十代くらいの女性が出てきた。
ヤミとそっくりの美人だった。
きっとこの人がヤミの母親――
そっか、お母さんから一文字もらったのか。
「こんにちは。私は三日月
女性――
「はい。お待ちしてました。林野庁の方からさきほどお電話もらって……。どうぞ、あがってください」
通されたのは整頓されたリビング。
あちこちに写真が飾ってある。
みんな女の子の写真だ。
赤ん坊のときから少女時代までの写真が揃っている。
もちろん、ヤミの写真だった。
小学生くらいだろうか、両親に挟まれてピースサインをするヤミの姿。
口元からチラリと見える八重歯がかわいらしい。
ほかにも、中学の制服を着て、おどけた表情をしているヤミ。
花園高校入学式と書いてある看板の前で、制服のスカートをつまんでカーテシーの真似事をしている笑顔のヤミ。
これらの写真を、ご両親はどんな思いで毎日見ているのだろうか。
そう思って、
ソファを勧められて座る。
「コーヒーでいいですか?」
「すみません、夫にも電話を入れたんですが、今日は仕事で金沢に行ってまして……」
「あ、いえ……」
「それで、
期待と不安の入り混じった顔で
その手にはハンカチが握られていた。
「あの!
すぐには答えられない。
でも、ちゃんと伝えなきゃ。
事実だけを。
「生きているかどうかは……正直、わかりません。でも、多分……難しいかもしれません」
実際のところ、
ただ、
ただし、それだって他人に説明できるような証拠があるわけではない。
「……どういう……?」
「私、沼垂ダンジョンの地下で、ヤ……
「じゃあ生きてるんですか!?」
「いえ! ……わかりません。
「霊体……?」
「ええと、幽霊……みたいなものです」
「幽霊……じゃあやっぱり……」
「幽霊……そんな……まだ高校生だったのに……。あの!
「記憶を失っていて、自分の名前もなにもかも忘れてしまっていました」
「じゃあ自分で
母親としては、愛娘が死んだことなどとてもじゃないが受け入れられないだろう。
それが、八年も前に行方不明になった娘だとしてもだ。
ああ、嫌だなあ。
こういうの、いたたまれないわ……。
「これ、見てください。その幽霊を私の妹がスケッチした絵です」
ゴスロリを着ている美少女だ。
目の下には二つ並んだ泣きボクロ。
飾られてある写真と見比べてみても、同一人物に間違いなかった。
「そんな……なんで……ダンジョンなんて行ったの……。
ハンカチで目を押さえながら、
「
「そうだと思います。
「じゃあ殺されたってことですか?」
「私はそう思っています。それで、
それを聞いて、
「かわいそう……かわいそうな……
「失礼ですけど……お母さま、ダンジョンに潜れますか……?」
「いえ、私も夫もダンジョンのマナに耐えられなくて、地下には潜れないようです……。
「それだと、直接の会話は難しいかもしれません。ただ、私は
「ぜひそうしたいです!」
「それなんですけど、私からお願いがあるんです。
解呪のためとはいえ、死者を利用しようというのだ。
気休めかもしれないが、両親から許可はとっておきたかった。
そして、もう一つ。
「さらにお願いがあるんです。
そのあともしばらく泣いていた
「依り代といったら……」
そして、一度リビングから出ていく。
すぐに戻ってきた
それを見て、
全身の肌が粟立つ。
「そんなものがあるなんて……!」