パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第74話 ハイヨーシルバー!

「ハイヨーシルバー!」

 

 零那(れいな)はそう叫びながら、自転車を駆って羽衣(うい)たちのいる部屋に到着した。

 

「待ってたよ、お姉ちゃん! おなかすいたー!」

 

 羽衣(うい)が自転車に跨る零那(れいな)に駆け寄ってくる。

 

「なに、シルバーって……?」

 

 虹子が聞くと、零那(れいな)は答える。

 

「自転車に乗るときはこの掛け声って昔から決まっているのよ!」

 

 それを聞いて真っ黒なニンジャ装束姿のトメは呆れた顔をする。

 

「いや、シルバーの元ネタは馬だろ……ってかなんだそれ……。リヤカー?」

「ふふーん! これ見てよ! 最高でしょ!」

 

 零那(れいな)が自転車からひらりと降りて言った。

 長い黒髪ポニーテールが舞う。

 

「リヤカーというより……檻?」

 

 その大きさは、幅1メートル×長さ1.5メートル×高さ1メートルほど。

 金属製の檻のようなカゴのようなものが付いている。

 その中には荷物がパンパンに積まれていた。

 

「ふふふ……虹子さんのカードで買いました! 在庫があってラッキーだったわ! これ、ただのリヤカーじゃありません! 高級自転車トレーラーって言うのよ! キャンプする人とかが使うみたい! 見て! 特筆すべきはここ!」

 

 零那(れいな)が指さす先には、大きくて頑丈そうな車輪が一つだけ付いている。

 

「ここよ、ここ! なんとコイルスプリングのサスペンション付き! これで多少の段差とか階段も楽々!」

 

「ほえー。お姉ちゃん、これ、いくら?」

「40万円ほどしました!」

「高っ! え、虹子さんのカードで買ったの? いいんですか?」

 

 羽衣(うい)が不安そうに虹子に聞く。

 虹子は何でもないというような顔で、

 

「いや、私も命が掛かっているんだし、40万円ぽっち、全然いいよ。死ぬこと考えたら全財産使ってもいいくらいだよ。あ、お姉さま、自転車もちゃんといいやつにしてるじゃん!」

 

「そう! 超高かった! えーとね……」

 

 零那(れいな)は懐から説明書のようなものを取り出して読み上げる。

 

「フルサスペンションのダウンヒルバイク! タイヤはセミファットでタングステンのスパイク付き! パンクレスのムースタイヤ採用! 変速機は内装式! 放熱板付きの超強力高輝度LEDライト! どうよ!」

 

 羽衣(うい)がさきほどよりもさらに不安そうに聞く。

 

「……いくら……?」

 

 零那(れいな)はちらっと虹子の方を見て、少し言いよどむ。

 

「いいよ、お姉さま、いくらでも。で、いくらだったの?」

「えへへー。250万円……」

 

 それを聞いた途端、羽衣(うい)が「ひえーっ」といって膝から崩れ落ちそうになる。

 トメは冷静な顔で、

 

「ま、ダンジョンを前人未到の地下20階まで踏破しようというんだ。人類の公式記録は地下12階。そのくらいの装備は当然だろう。むしろ人類初の探索に挑むには安いくらいだ。虹子、お金足りるか? 私が半分出すぞ。私だって命が懸かってる」

 

 虹子はサラサラのショートボブをさっとかきあげ、誇るような笑顔で言った。

 

「えへへ、よゆーよゆー! 私がいくら稼いでると思ってるの? トメさんのお金なんかいりませーん! 私レベルのダンジョン配信者になるとね、今年だけで1400万円稼いでいるから! 250万円と40万円、あわせて300万円弱、ぜんぜんよゆー!」

 

 羽衣(うい)が不思議そうな顔で、

 

「あれ、呼び方が山田さんからトメさんに変わってる……」

 

 と呟いた。

 それを聞いて虹子とトメはちょっと気まずそうに目を合わせた。

 聞かなかったような顔でトメが言う。

 

「虹子、税金というものを知っているか? 来年の確定申告どうするんだ」

「大丈夫、経費でしょ!」

「経費にするには配信に必要な物品じゃないとダメだろう」

 

 と、そこに零那(れいな)が割って入った。

 

「配信はするわよ。だから大丈夫」

 

 トメは驚いた顔で眉をひそめた。

 

「配信するのか……? まあ人気コンテンツにはなるだろうが……」

「あのね、トメさん。私、ヤっちゃんのお母さんに頼まれたのよ」

「会えたのか……」

「うん。その話はあとでするわね。で、カメラにはヤッちゃんが写らないけど、私たちには見える。会話もできる。それで、ヤッちゃんの存在を少しでも感じたいんだって。配信すればお母さんにも見えるでしょ? ……あれ、そのヤッちゃんはいないの?」

 

 零那(れいな)はキョロキョロと周りを見渡す。

 どこにもいないようだ。

 

「いつの間にかどっかに行っちゃったよ……。多分、幽霊だから自分の意志じゃないところで現れたり消えたりしているのかも」

 

 羽衣(うい)がそう答える。

 

「それだと、ヤミちゃんの刻印を目印としてラスボスの神様の位置を探るってのも難しくない?」

 

 虹子が言うと、零那(れいな)は自分の首にかけていたペンダントのようなものを外して皆に見せた。

 

「その辺もクリアできるわ! これをお母さんから預かってきたの。これがあればその問題もバッチリ解決!」

 

 

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