パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件 作:羽黒楓
虹子がぶるっと震えて自分の手で自分を抱いた。
「寒い……」
それは、まさに幽霊が現れる前兆だった。
そして。
何もなかったはずの空間が、ジジッと揺れた。
そこにぼんやりとした霧状のものが生まれ、それは人間の形へと変化していく。
手の込んだ編み込みツインテール、整った顔立ち、閉じた目、その目元には二つ並んだ泣きボクロ、そして黒を基調としたゴスロリ衣装。
ヤミはパッと目を開くと、
「キャッ! びっくりした! え、なにここ? ……またあなたたち?」
ヤミは
「あなたたち、私が地上に連れて行ってって何回もお願いしてるのにぜーんぜん聞いてくれないんだもん。もういいよ!」
「いや待って待って! ごめん! 今度こそ、家に帰れるようにするわよ!」
ヤミは少しだけ振り向いて、
「ほんとにぃ?」
信用していないような顔で言う。
〈なんだ? そこに誰かいるのか?〉
〈カメラにはなにも映っていないぞ〉
〈何も見えない。だれと話しているの?〉
〈ニジーには見えてる?〉
コメント欄の質問に虹子は頷いて答える。
「うん、私には見えてる。ゴスロリ着た、中学生くらいの女の子。かわいいよ」
それを聞いてヤミは虹子の方を向いてほっぺたを膨らませた。
「かわいいって言ってくれたのはありがと! でも私は高校生ですー! そんな子供に見える?」
実際、
早生まれの高校一年生なんて、中学生と見分けがつかなくても当たり前だ。
「大丈夫、ヤミちゃん大人っぽいよ! 私より年上に……年上に……年上には、見えないかなあ?」
全然フォローになっていなかった。
「もー! あんた、今いくつ? 何年生? どこ中?」
「えーと、16歳。高校には行ってないけど、高校一年生の年齢だよ」
それを聞いてヤミはパッと表情を明るくした。
「じゃー私とタメじゃん! 同い年同い年! 学年同じ! 名前は?」
「
「
その瞬間、ヤミ以外の四人が互いに目配せを送りあった。
この流れで自分の名前を思い出してくれないかと思ったのだ。
でも、そんなことはなく。
「あれえ? 私の名前……なんだっけ……?」
それを見てから、
「こないだ、ヤミちゃんってことにしたよ」
「ああそうそう! 月光に照らされ、闇に輝く王女! 闇姫とは私のことよ! うーん、
トメが呆れたようにため息を吐く。
「お前ら、どっちも同じようなもんだ。というか、それ若さ自慢か? この中で一番年上なのは私だが、私に対するあてつけか?」
「え、今いくつなのこの人」
ヤミがトメを指さして
「えーと、トメさんは24歳だったはず……」
「トメ! うふふ、それ、名前? でも見た感じは十分ロリっぽいよ、やーいロリババア!」
途端にトメがスティック型掃除機を構えた。
「このガキ……!」
「まあまあまあ」
そこに、コメント欄の読み上げがイヤホンから耳に入ってきた。
〈♪ いるの? そこにいるんですか?〉
「はい、います。間違いないです。写真のまんまですよ」
〈♪ ありがとうございます〉
それで♪付きのコメントは途切れた。
ヤミの……
でも、なるべく楽しい雰囲気を出さなきゃね、と
「で、お姉さんたち、ほんとに私を地上に帰してくれるの?」
「ほんとほんと! その証拠にほら! これ! 覚えてる?」
そのヤミの前に、
直後、ヤミの目が大きく見開かれた。
「え、嘘、それ……。去年、お年玉で作ってもらったやつ……」
「そうそう、これ、あなたのでしょ? ヤッちゃんのお母さんから預かってきたんだよ」