パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件 作:羽黒楓
それからも断続的にモンスターが襲ってくる。
だが、どんなモンスターであろうと、
あっという間に焼き尽くしていく。
「すごーい! 私も探索者の真似事してたことあったけど、お姉さんたち凄すぎ! 強すぎだよ!」
ヤミが荷台の上でキャッキャッと喜んでいる。
「そうでしょ? ヤミちゃん、私のお姉ちゃんは強いんだよ!」
「
「え、そ、そう……?」
顔を真っ赤にして照れる
「うん! だって法螺貝吹くの、すごく上手! 吹奏楽部みたい!」
「あ、ああ、うん、まあね……」
実際、
〈いやまじですごいぞこいつら〉
〈ほんとにこのまま地下20階まで行っちゃいそうだな〉
〈同時接続者数3万人www 平日の昼間だぞ今〉
〈投げ銭できないのが残念〉
〈無茶な探索に追い込まないように探索者に投げ銭はできないシステムになってるからな〉
「でもさ、虹子さん。これって広告収入はもらえるのよね?」
虹子も大声で返す。
「もちろん! チャリンチャリンだよ! みんな見ている配信画面の下の方にバナー出てるから!」
「どのくらいもらえるかなあ?」
「同時接続者3万人……私もそんな行ったことないからわかんないけど! たぶんいっぱいもらえる!」
「やる気出てきたわ! 新装かい……じゃない、
自転車とトレーラーは階段を降りていく。
〈あ、またトメがトリックを決めた〉
〈キックボードでついていってるから会話に参加できないしな。そのくらいしか存在感アピールできないんだろ〉
「うるさい!」
トメが怒鳴る。
〈おお、もう地下7階を越えた〉
〈地下8階!? こんなことってある? 今までの人類の記録が地下12階だろ?〉
〈excellent!〉
〈っていうか、地下8階でも上の階層とつくりは似てるんだな〉
「まあそうね。代わり映えのない景色みたいだけど、ちょっとずつ広くなってるのよ」
「広くなってる?」
虹子が聞く。
「うん、そう。出てくる妖怪は格段に強くなってくるんだけど、そのサイズもでかくなってくるのよ! それに合わせて通路や部屋のサイズも大きくなってくるの。見て、この天井なんか高さ10メートルはあるわよ」
「言われてみればそうだね。なんか遠近感がおかしくなってくるよ。自転車じゃなかったら、踏破するのにマジで何か月もかかりそう」
さらに進んでいく。
ダンジョンというくらいだから、迷宮のつくりになっている。
……のだが、
地下8階ともなると、2平方キロメートルはあるというのに、行き止まりの道を選ぶことがまったくなかった。
「不思議と道を間違えることが少ないのよねー。天性の勘ってやつかしら? 子供のころから洞窟探検遊びをやってたからかも。分かれ道でもなぜかはずれを引かないのよねー」
「魚群は外すくせに?」
「虹子さん、うっさい!」
そのときだった。
いや、違う。
あまりの巨大さで近くにいると思っただけで、実際は200メートル先に、そいつはいた。
身長は5メートルもあるだろうか。
類人猿にも見えるくらい、全身毛むくじゃらの男だった。
太い腕と足。
顔は長く伸びた黒いひげに覆われていて、赤く燃えるような瞳でこちら睨みつけている。
手には鉄のような素材でできている棒を持っていた。
その棒から鎖が伸びていて、先の方に鉄球がついている。
〈なんだあれ〉
〈初めてみた〉
〈ジャイアント族か!?〉
〈いや、一度だけ記録にある。出会った探索者はSSS級のパーティだったけど、物理攻撃も攻撃魔法もほとんど効かなくて、結局目くらましの魔法でなんとか逃げおおせたらしい〉
その巨人に近づいてから
「あいつはそれなりに強いわ。私もそろそろ本気を出すわよ。
「やだ」
「へ? なんで?」
「私もヤミちゃんにいいとこ見せたい!」
「はあ!?」
そんな
「
さらに続けて叫ぶ。
「天に満つるは
すると
五芒星は光の線でできていて、青く眩しいほどの明るさを放っていた。
「くらえっ! ウルトラスーパーグランドクロスぅ~~~~……セーーーーーーーマーーーーーーーン!!!!」
「アバルマドラガ!」
巨人はなにか言語のような声を出し、持っていた鉄の棒を振り回した。その先の鉄球で
しかし。
そのまま鉄球は五芒星に真っ二つにされた。
「ガ……!」
赤い目を見開く巨人、だがなすすべもなく、その頭部に五芒星が直撃する。
その瞬間、五芒星は爆発するかのように色とりどりの小さな星となって散らばった。
巨人の頭部はキラキラとした光に包まれる。
「ガァァァァ!」
巨人の頭部は真っ赤に燃え始め、そこから星が飛び散る。
まるで巨大な線香花火のようだった。
バチバチと火花がはじけるような音が響く。
〈すげ、なんだこれ〉
〈ういちゃんかっこいい!〉
〈そりゃ妹ちゃんだってSSS級だもんな〉
虹子もトメもヤミも、その光景を驚きの表情で見ている。
しばらくすると飛び散る火花も少なくなり、やがて消えた。
残されたのは、頭部を真っ黒に焼け焦がされた巨人の身体。
それは、ゆっくりと仰向けに倒れる。
ズゥン、と地響きが鳴った。
「ヤミちゃん、どう? 私だってやれるでしょ?」
「うわー! すごいやばいマジパない!
「えへへへ……」
頬を上気させて満足げにニカッと笑う
どうしても友達にいいところを見せたかったらしい。
「グランドクロスって陰陽師の術でも
トメが冷静な声で言うが、ヤミは
「いいじゃん、技の名前はかっこいいのが一番だよ!」
「……まあ、いいけど。
「えへへ。仲良くなった子にはいいとこ見せたいもん」
腰に手をやって胸を張る
だけど、その足はフラフラになってしまっている。
「いやーちょっと霊力を多めに使っちゃった……。次はお姉ちゃんお願いね」
「まったくもう、あんたって子は……。わがまま言わないいい子だと思ってたのに……」
そのとき。
『それ』に最初に気づいたのは、トメだった。
「おい、巨人の向こうにも何かいるぞ」
その声に全員がそちらを向く。
そして、
「
「うん!」
疲労のためか少し足がもつれながらも、今度こそ
ほかのメンバーも急いで戦闘態勢をとる。
パーティ全員を、緊張感が包む。
それも無理はない。
そこにいたのは、黒い修道服に身を包んだ一人の女性だったのだ。