異世界転生失敗弱者、三千年の果てに神を斬る。   作:USK1210

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神降臨

── ついに千年後

 

四人は、まだ戦っていた。

何万、何億という戦いを経て、もはや言葉すら要らない。

刃の交錯だけで意思が通じる。

その姿は、まるで神々の演舞だ。

 

アスラは戦いの合間、ふと遠くを見た。

 

「……そろそろ、持って帰る財宝でも探すか。」

 

最近は少し金欠だった。

異世界の物価は馬鹿にならない。

彼は苦笑しながら魔力を薄く解放し、周囲に流す。

もしや何か、珍しい魔道具でも反応するかもしれない。

 

──その時。

 

「ん?何だこの波動は……普通じゃない!!」

 

空間の奥、歪んだ光の中に“何か”があった。

アスラは駆け出す。

風が裂け、光が踊る。

そして、そこにあったのは──一本の剣。

 

漆黒の刃。

刃身から溢れるのは、破壊衝動そのもの。

持つ者を喰らい尽くすような、禍々しい気配。

アスラは眉をひそめながらも、その柄を掴んだ。

 

「これは……ただの剣じゃないな。」

 

戻ると、ゼロたちが集まってきた。

 

「なあ、みんな。この剣、どう思う?ゼロ、試し斬りしてみてよ。」

 

ジークが一歩前に出る。

静かに剣を観察し、低く呟いた。

 

「ふむ……昔、見たことがある。確か──魔神の剣だったか。」

 

「え?それって……もしかして魔剣ノクスのことか?」

 

アスラが驚愕する。

 

「そのような名だった気がする。遥か昔のことだ。記憶が曖昧だ。」

 

ジークは相変わらず淡々としていた。

 

ゼロが無言で剣を握っる。

瞬間、空気が震える。

柄から冷気のようなものが滲み出し、ゼロの腕を駆け上がる。

次の瞬間──柄から十本の針が飛び出した!

 

「ぐっ……!」

 

針はゼロの魔力を容赦なく吸い上げた。

千年の修行で膨大に膨れ上がった魔力さえも、渦を巻くように喰われていく。

骨の髄まで力を奪われる感覚――常人なら即死だ。

 

「……舐めるなよ」

 

ゼロの目が細まり、青白い光が瞳孔の奥で弾ける。

 

「なら、これでも喰らえッ!」

 

叫びと同時に、龍魔力が爆発する。

轟音と共に、青白い閃光がゼロの全身を包み、地面が波打つ。

空間が軋み、雷鳴のような魔力音が空気を裂いた。

 

「……持っていけるもんなら、持っていってみろッ!」

 

彼の腕から迸る龍の気流が剣へと流れ込み、周囲の風が逆巻く。

 

重力すら歪むような圧力。

ゼロの筋肉が悲鳴を上げ、足元の岩が砕け散る。

 

限界まで流し込んだその瞬間、剣が呻いた。

刃が軋み、金属が悲鳴を上げるような音を立てる。

そして――変化が始まる。

 

黒鉄の刃に漆黒の鱗が浮かび上がり、

龍の紋が脈動するように光を放つ。

 

「吠えろ……《魔剣ノクス》!」

 

咆哮が剣から迸る。

それはまるで本物の龍が目覚めるような音だった。

 

「この剣……変化したぞ?大丈夫か、これ……!」

 

ゼロは試しに宙に浮かぶ城へと斬撃を放つ。

空を裂く閃光。

一瞬後、城が音もなく真っ二つに割れ落ちた。

 

「すげえ!斬れ味が良すぎて、斬った気がしない!」

 

ゼロは歓喜の声を上げると、その剣は、魔神の剣に龍魔力を融合させた“神秘の剣”── 龍魔剣ノクスとなっていた。

 

「これ、我に貰えないだろうか?お礼はするぞ!」

 

ゼロは宝物のように剣を抱える。

アスラは笑顔で肩を叩いた。

 

「もちろんだ!元々、魔剣ノクスはお前のために用意しようとしてた物だ!思う存分使ってやれ!!」

 

その瞬間、ゼロの瞳に宿った光は、千年を越えてなお、燃え続ける闘志の証だった。

 

――――

 

四人は帰る支度を済ませると、順番に外へと足を踏み出した。

最初に出たのはアスラだった。彼は立ち止まり、夜空の星の位置を確かめる。

 

正確ではないが、二、三日しか経っていない様子だった。長い時間の感覚を忘れかけていた体には、この短さが妙に新鮮に感じられた。

 

他のメンバーも、白い光の線の中からひとり、またひとりと姿を現す。ゼロ、ルア、そしてジーク。彼らが全員外に出揃うと、四人は一斉に深呼吸をした。

 

「やっぱりこっちの方が空気が気持ちがいい」

 

アスラは目を細め、胸いっぱいに空気を吸い込む。その表情には、長く閉じ込められていた心の解放感が浮かんでいた。

 

「うむ!風が心地よい。帰ってきたんだな」

 

ゼロも肩の力を抜き、柔らかく空を仰ぐ。その姿は、普段の鋭い顔立ちとは異なる、穏やかさを含んでいた。

 

「気持ちいいねー!匂いも風も最高だよ!」

 

ルアは元気いっぱいに手を広げ、風に吹かれる髪を楽しむ。長い旅路の疲れも感じさせない、明るさと生命力が溢れていた。

 

「……」

 

ジークは無言だ。

 

千年の歳月を経ても、彼の口は固く閉ざされている。しかし、グレートヘルムの中のその目は少しだけ柔らかく光り、仲間との帰還を静かに受け入れていた。

 

四人は転移魔法を用いて、自分たちの家へと戻る。扉を開けると、家は確かに存在しており、やはり外に出てから数日しか経っていない様子だった。

 

家の中はいつも通りの温もりに満ちていた。数日間、彼らはゆったりと休息を取り、酒や料理を楽しむ。

 

つかの間の平和に、四人の心も少しずつ解けていく。千年という長い時間を共に過ごしたジークも、ようやく仲間という概念を受け入れ、時折笑顔を浮かべるようになった。

 

――――

 

数日後──

 

突如、空が暗く染まる。鳥の鳴き声も消え、世界全体が静寂に包まれる。すると、天から低く、しかし絶対的な威圧を伴った声が響き渡った。

 

「黒き仮面の者よ……汝の行いは余に過ぎた。天の裁きを免れることはできぬ。三日後、西の地にて、汝を裁く神、ここに現れん。覚悟せよ、己が死を。覚悟せよ、永遠に続く絶望を。」

 

声が途切れると、空は元の青に戻った。まるで何事もなかったかのように。しかし四人の心には、言葉の重さが深く刻まれていた。

 

「ついに来たな、力がみなぎってくるようだ」

 

アスラの目が光を帯び、剣の柄を握る手に力が込められる。胸中の高揚と覚悟が、冷たい空気と混ざり合う。

 

「うむ、叩きつぶしてやる」

 

ゼロは静かに頷き、鋭い眼差しを空へと向けた。その顔には険しさと決意がにじむ。

 

「神も傲慢になったものだな」

 

ジークはいつもの棒読み口調で言う。しかしその声の奥には、戦意が確実に宿っていた。

 

「私も死ぬ気で頑張った!出来ないことは、ない!」

 

ルアは腕を振り上げ、風に髪をなびかせながら笑みを見せる。普段の元気さはそのままに、決意が乗った力強さが伝わる。

 

――――

 

四人は最後の作戦会議を行い、念入りに確認を重ねていた。

長き訓練の果て、ついに“神との最終決戦”に挑む刻が来たのだ。

 

アスラはトールの担当。

 

雷を帯びた最強の戦鎚《ミョルニル》は、一度振るえば嵐を呼び、投げれば相手を粉砕し、必ず手元へと戻ってくる――まさに雷神の象徴たる神器。

 

ジークはシヴァを討つ。

 

破壊と再生を司る神。その手には三叉戟《トリシューラ》と神弓《ピナーカ》。さらに額の“第三の目”からは、世界を焼き尽くす炎の光線を放つ。

 

ゼロは戦神マルスと対峙する。

 

戦槌《ブラッドハンマー》を主武器とし、振るうたびに衝撃波を生み、地面を裂き、あらゆる敵を粉砕する。まさに戦場そのものが彼の領域であった。

 

ルアは後衛にまわり、禁術で仲間を援護する。

アスラの提案で、ルアの剣技は封印され、魔法防御と支援に特化する作戦に変更された。

 

「みんな!俺のために戦ってくれること、深く感謝をする。一人一殺だ。俺たちなら出来る!千年の訓練を思い出せ。億の戦いを超えてきた俺たちは――神をも凌ぐ!」

 

アスラの声に、三人は力強く頷いた。

その瞬間、静かな闘志が四人の間に満ちていく。

 

そして、各々が準備に入った。

 

アスラはルアを呼び寄せ、ひとつの杖を差し出した。

 

「時空間にあった杖なんだけど、他の杖とは全く違うから持って帰って来ちゃった」

 

ルアが両手でその杖を受け取ると、瞬間、杖の内部から凄まじい魔力の奔流が溢れ出した。

まるで古代の息吹そのものが目を覚ましたかのようだ。

 

「……すごい……この杖……中に生きてるみたい」

 

ルアは自身の魔力を杖に流し込んだ。すると杖の魔力が応えるように震え、彼女の力と絡み合い、一体化していく感覚があった。

 

「これはいいかも!杖自体の魔力が凄いから、かなり役に立つと思うよ!アスラ、ありがとね!」

 

アスラは微笑み、静かに頷いた。

その杖が“古代の杖”と呼ばれる存在であることを、まだ誰も知らない。

 

──三日後、朝。

 

四人は西の平原に立っていた。

氷のような冷気が漂い、風が砂を巻き上げる。地平線の果てまで、敵の影ひとつない静寂が続く。

 

アスラは黒のライトアーマーを身に纏い、絶剣《アルティマ》を腰に差し、黒いマントを翻す。

 

ゼロは深い黒の服をゆったりと着こなし、背には龍魔剣《ノクス》が鈍く輝いている。

 

ジークは神話級のライトアーマーを装備していた。煤で黒く汚れ、傷だらけだが、それが彼の戦歴そのものを物語っていた。顔は古く、穴の空いたグレートヘルムに覆われ、神剣バルムンクを腰に差す。

 

ルアは龍神剣《ドラグノア》を封印し、杖を握りしめていた。

 

「うん!やっぱりこの杖いい感じだよ。可愛いし!魔法を使った際の魔力消費量も必ず減るはず!」

 

四人はすでに戦闘体制に入っていた。

それぞれが己の神を討つ覚悟を胸に、沈黙の中で気配を研ぎ澄ます。

 

──そして数時間後。

 

空が突然、眩い光を帯び始めた。

空気が揺れ、風が止まり、重力そのものが歪むような感覚が走る。

 

光が爆ぜ、三つの巨大な魔法陣が天空に浮かび上がった。

その紋様は古代神語。理解することすら許されない、異界の言葉だった。

 

三つの陣が同時に輝きを増し、そこから三体の神が降臨する。

 

トール。

マルス。

そしてシヴァ。

 

三体の神々は、それぞれ異なる輝きを纏いながら地上に降り立った。

その身から放たれる圧倒的な力は、神聖力とも魔力とも異なる“原初の力”――まるで宇宙そのものの怒りのようだった。

 

大地が震え、空が悲鳴を上げる。

人が立ち入るべき領域ではない。

 

「人間ごときが神に逆らいおって、神罰だ。全てを破壊するぞ」

 

シヴァが三叉戟《トリシューラ》を地に突き刺すと、大地が黒く裂け、炎が噴き上がった。

 

「巨人族と戦って勝った俺からすれば、人間なんてただの小人だ」

 

トールが槌《ミョルニル》を握り、雷鳴が轟く。天が割れ、稲光が平原を焼く。

 

「お前らみたいなやつから天界を守るために俺がいる。残念だったな、俺の相手はかわいそうな奴だ」

 

マルスはブラッドハンマーを掲げ、戦士のように静かに悲しみを湛えた瞳で語った。

 

ルアが両手を広げ、静かに詠唱を始めた。

空気が暴れ、三つの魔法陣が足元に展開される。

 

第五階梯魔法──

──身体強化《フィジカルブースト》、速度上昇《アクセルドライブ》、心眼《マインズアイ》

 

瞬間、三人の体が光に包まれた。

筋肉が熱を帯び、視界が冴えわたる。時間の流れすらゆるむような感覚。

 

ルアの魔力が糸のように三人へと結びつき、それぞれの鼓動を高めていく。

 

それぞれ、ゆっくりと歩を進めた。

空気が張り詰める。

呼吸さえも音となるほどの静寂――。

 

四人と三柱の神。

七つの運命が、いま交わろうとしていた。

 

――――

 

まず最初に始まったのはゼロとマルスだった。

 

ゼロは右手に龍魔剣ノクスを構え、左手の爪を真刃に変え、まるで疾風の如く斬り裂く。

 

鋭い風切り音が戦場を駆け抜け、砂塵が舞う。

しかし、寸前でマルスは身をくねらせ、全ての攻撃を軽々と避ける。

 

二撃、三撃と続けるが、ゼロの連続攻撃は全て空を切るだけだった。

 

ゼロの瞳が険しく光る。手に握る剣に、魔力と生命力を注ぎ込み、速度をさらに上げる。

その瞬間、ゼロはマルスの頭上に跳躍した──

 

── 天灼焔《テラブレス》

 

龍の咆哮と共に、灼熱の炎が空間を引き裂き、マルス目掛けて襲いかかる。

しかし、マルスはその炎をものともしなかった。炎の中でも動きに一切の鈍さはなく、全身から金色の神力が輝く。

 

「え?これで普通に動けるのか!?炎耐性がかなり高そうだな……」

 

ゼロは僅かに息を吐く。炎の壁を突き破ろうと剣を振るうが、マルスは無傷のまま炎の中からブラッドハンマーを振り上げた。

 

ゼロは鋭く踏み込み、軽く身を翻すと、マルスの振るう槌を右手の柄ごと斬りつける。

しかし、その攻撃も強靭な肉体により弾かれる。

 

「ふっ……まだまだだな」

 

ゼロは冷静に龍魔剣ノクスを静かに抜き放った。

前に出ると同時に速度を限界まで加速させ、マルスの胴を斬り抜いた。

 

寸でのところでマルスは避け切れず、腰に浅い一撃が走る。

 

マルスの顔が怒りに染まり、青白い光が目の奥で燃え上がった。

彼は武器を槌から大剣に変え、体内に金の神力を取り込む。

そして、天へと跳躍し、大剣を振りかぶって降り下ろす。

 

「受けてたってやるよ、神様!」

 

ゼロは龍魔剣ノクスを振り上げ、真紅の軌跡を描きながら大剣に対抗する。

剣と剣がぶつかるたびに、轟音と衝撃が戦場を揺らす。

 

「互角か?まずは悪くない……」

 

ゼロは剣に全ての力を込め、押し込む。

しかし、次第に力を返され、ギリギリまで押し込まれた瞬間──胸に浅い切り傷が入る。血が戦場の砂を赤く染めた。

 

「人間はもろいな」

 

マルスは冷たく笑う。

 

「我をなめておるな。まああいい、神が最高位だった時代はもう終わっておる、代わりに我が上に行ってやってもよいぞ」

 

ゼロは微笑み、冷静な声で答えた。

 

「……構わん。それなら受けて立つまでだ」

 

マルスも微笑んだ。

 

戦場の空気は二人の間で緊張に張り詰め、手に握る武器の重みと熱気が、互いの生命力を伝えるかのように震えていた。

 

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