前回投稿した話ですが、イタチさん視点で見ても面白いんじゃないかなーと思ったので、イタチさん視点も書いてみました。
かっこいい兄さん好きな方は注意。かっこいいイタチさんはいません。(今更
とくに後悔はしていない。(キリッ
オレの名前はうちはイタチ。火の国木の葉隠れの里で、火影様の暗部直轄部隊を束ねている木の葉の忍び、年は21だ。
まあ、そんなことはどうでもいいだろう。
どうせオレは実年齢通りに見られたことはないからし、仕事は仕事、プライベートはプライベートで、今はプライベートの時間だからな。
昔のオレは若く、その辺りの違いが曖昧だったが、一流の忍びたるもの公私の区別を明確につけることはとても大事なことだ。その辺りが未だうちの愚弟はわからないらしく、全く困ったものだ。
なんでも普段のオレのはっちゃけ具合についていけないらしく、昔のように公私通して一貫した態度のオレに戻って欲しいらしい。フッ、まだまだ青いなサスケ。
麒麟児、神童などと色々な呼び名を欲しいままにして育ったオレだが、結局はオレだって一人間だ。孤高の天才だのなんだのいわれようが、個人の力に限界はあり、人間は1人で生きていけるものではない。人間の人という字は互いに互いを支え合う形で作られているのがどうしてなのか何故わからない。
孤高の天才エリートだと?
クールでかっこいい一匹狼?
そんなものただの偶像だ。結局の所オレだって色々な人に支えられ生きている。それに早熟だったオレは昔から特別視されていたから友達も作りにくくて、というか作ろうとしても相手から逃げていったし、アカデミー飛び級なんてことをしてしまったから余計に同世代の友人が少なくて、結果的に孤高の天才像にオレは収まっていただけだというのに、何故そんなことがわからないのか。
お馬鹿だからか? 嗚呼、お馬鹿だからだな。(断言)
いや、サスケはそんなお馬鹿なところが可愛いんだが、それでも孤高の天才だのなんだのに憧れるとか、それは厨二病のはじまりだぞ、サスケ。心なしか服のセンスもそれっぽいし。
オマエは何故かオレを嘆くが、兄さんはお前の将来のほうが心配だ。
まあ、ナルトくんみたいな明るい良い子もついていてくれていることだし、大丈夫……か?
どちらにせよ、オレはオマエの希望を叶えてやることはないけどな。
これも兄の愛だ、許せ、サスケ。
大体昔みたいに周囲の望むうちはイタチ像をプライベートでまで演じていたら、オレのストレスがマッハでヤバイし、父さんより先にオレのほうが老けてしまうじゃないか。
冗談じゃない、いくら老けて見えるとはいえ、オレはまだ華の20代だぞ。
まだ10歳前後だったというのにストレスのあまりほうれい線が浮いてきた時、オレがどれだけショックを受けたかお前にはわからないだろう。いや、わからないに決まっている。何故ならお前は昔からプニプニもち肌で、皺なにそれ? な母さん譲りのツルッとした肌だったからな!
どうやらオマエはオレのほうがお前よりも美男子だと思っている節があるが、オレと違ってほうれい線も浮いてない瑞々しい肌をしているし、世間的にはオマエのほうが正当派の美形だと思うぞ、サスケ。
とはいえ、プライベートでまで願望とかを押し殺したりしなくなったお陰で、ストレスが減ったのか、昔に比べるとオレもほうれい線が大分薄くなってきた……というか父さんと同じくらいになってきた。
それでも完全には消えない辺りやっぱりオレは老け顔なんだろう。
…………気にしてなどいないからな。
とにかく、ストレスとはそれぐらい大敵だということだ。
堪え忍ぶ者が忍びであるとはいえ、時と場合による。
特に今は平和な時勢だ。砂との同盟関係も上手くいっているし、他の忍び里ともそこまで険悪な関係というわけでもなく、ある程度交流がもてている、この調子でいくとオレの望みである世界平和が叶う日も近いな。
昔は友人も、年上かつ同じ一族のシスイくらいしかいなかったオレだが、平和で大きな争いがない現在、他国にも友人が出来た。全く良い時代だ。というわけで、折角仲間が出来たのだ。子供の頃出来なかった分今遊んで何が悪い。ちゃんと与えられた仕事は仕事で済ませている。
それに他国の忍びと交流を持つということは、里同士の交流が増えるようなものなんだ。
異文化歓迎! 人と人は支え合って生きている。それが忍界全部に広がる日も近い。
故にオレが里と里を越える平和組織「暁」に加入したのもその一貫だ。
断じて楽しそうだから、とかそんな私情だけで選んだわけじゃない。
……本当だ。
「~フン、フフ~ン、~ン♪」
ヌリヌリヌリ。
もうすぐ風の国でアカデミー生による木の葉との合同文化祭が行われることになっている。
砂隠れと木の葉隠れの里は昔は戦争もしたものだが、平和条約が結ばれて長く、四代目の尽力もあり、今では1番の盟友となっており、文化交流も盛んな間柄だ。
とくに風影の息子で砂の人柱力である砂の我愛羅と、四代目の息子で、木の葉の人柱力であるうずまきナルトが中忍試験を切欠に友人になって以来、更に結束が強まっている。
それを受けて、今までは中忍試験を合同で行う程度だったのが、去年からアカデミー生規模の文化交流を行うこととなった。
全く、ナルトくんは大した子だ。明るく太陽のような笑顔で周囲を引っ張るその魅力は、オレにはないものだからより好ましい。そうやって明け透けな態度で平和の架け橋を打ち立てる様は、うちの愚弟にも見習わせたいぐらいだ。
周囲の評判はサスケよりナルトのほうがお馬鹿とのことだが、オレにしてみればサスケのほうがナルトくんよりも染まりやすくて純粋で、人の言葉に惑われやすいアホの子だと思う。(だがしかしそこが可愛い)
ナルトくんは馬鹿だと思われやすいが、あれでいて中々頭のまわる察しの良い、いい子だぞ。
どちらにせよ、ナルトとサスケはライバルとして、友として切磋琢磨しているようだから、そのうちあの子の不安定なところも治るんじゃないのか、と兄として期待しているのだがさてどうなるのか。
まあ、それは余談だ。
ともかく、もうすぐ砂との合同文化祭となっており、砂側の実行委員、顧問を努めるのは同じ「暁」仲間であるサソリさんだ。同じくオレも木の葉側の実行委員顧問を務めることになっているのだが、これはまだ愚弟やその仲間達には内緒にしている。
ここに暁メンバーが2人揃うわけだ、ここで何も仕掛けないという選択肢はない。
そこでオレとサソリさんが考えたサプライズにリーダーも乗り気だ。
久々に暁全員が揃う日も近い。これは幻術の中で決めポーズの練習に精が出るというものだ。
当日、何も知らずにアカデミー生を率いてやってくるだろうサスケ達の呆気にとられた顔を想像すれば、サプライズにもやる気が出るというものだ。
クックック。
楽しみだ。
と、そんなことを暁支給品の仲間の証である、青紫色のマニキュアを塗りながら考えている時だった。
「兄さん……!」
と、どこか真剣な切羽詰まったような顔で、弟がオレに話しかけてきたのは。
「? どうした、サスケ」
オレは何故サスケがそんな真剣な目でオレを見ているのかわからず、色々な可能性を脳裏に浮かべる。
明日のおやつのうちはセンベイをオレが全部食べてしまったのがバレたか?
いや、しかしサスケは甘いものが好きでない関係上、そこまで間食をしないからな。まだバレてはいないはずだ。あとで母さんに見つかる前に買い直して元通り戻しておけば問題無い。
それとも、この前勝手にサスケの部屋を掃除して、ついでにエ○本も整理し直してやったことか?
いや、サスケは気付いていないはずだ。気付いていたらとっくに騒いでいた筈。
じゃああれか? 今度サスケら3人が引率として配属される予定の、砂との合同文化祭実行委員顧問にオレがなることがバレたのか?
いや、しかしバレるヘマをした覚えがないな。大体サスケが気付けるとも思えない。
じゃあなんだ……? 何故弟はこんな顔をしている?
……まあ、いいか。
それよりマニキュアを塗るのにも飽きた。
いつもならげぼk……ごほん、友人であり暁のパートナーである干柿鬼鮫にさせるところだが、生憎あいつも10日後に控えた砂との合同文化祭におけるチーム暁でのイベントに向けて、霧隠れの里に帰って決めポーズの練習中の筈だ。見た目は魚人みたいだが、あれでいてアイツは真面目で良識派の鮫……じゃなかった忍びだからな。その辺り抜かりはない。
おかげで自分でこれを塗らないといけないのが面倒臭いが、こういう時こそ弟をたまにはアテにしてみるか。
「丁度良かった。左手にこれをつけてくれないか。どうも自分ではやりにくくてな、先ほどもついはみ出た」
そうオレは声をかけながらマニキュアと左手を弟にズイッと差し出した。
「兄さん!」
けれど相変わらずサスケはオレの挙動が目に止まっていないといわんばかりの態度で、いつの間にか写輪眼の赤を宿した目でオレを見ながら、ガシッと座っているオレの肩を掴み、言った。
「?」
「兄さん早まるな、性転換は、性転換だけはやめとけ!」
……んん?
…………何言ってんだ、この愚弟?
「生まれた体を弄るなんて母さんが泣くぞ」
おい? オレがいつ生まれた体を弄った?
性転換、早まるな、と言ったな。
ええと、認めたくないが、つまりアレか。
「どうしても女になりたいっていうんなら、オレがウスラトンカチのやつに完璧なお色気の術の使い方を聞いてくるから」
誰が女になりたいって?
オレが?
オレは女になりたがっているようにサスケの目には見えたということか?
つまり、サスケの目には……オレがオカマか何かみたいに見えた……と?
つまりオレは今、サスケにオカマ扱いをされている、ということか?
オカマだと?
つまりあれか? オレはサスケの体を狙っているあの変態、大蛇丸と同類扱いを今受けているのか?
あの変態危険物とオレが同じだと、そうサスケ、お前は思っているのか?
そうなのか?
「だから早まるのだけはやめ……ゲブラッ!」
メリッ。
理解した瞬間、オレは弟の額を陥没させる勢いでデコツンを繰り出した。
それに対し、よりにもよって実の兄をTS願望ありの変態扱いしてきた愚弟は、「ぐおおおおお」とか洩らしてのたうち回っているが知ったことか。
これでもオレはこれまでサスケを可愛がってきて、幼少の時はそれこそ良い兄を務めてきた筈だ。
忙しさの合間を縫いながら修行には付き合ったし、くじけて歩けなくなったときには背中におぶり、狩りの仕方だって教えた。年が離れているのもあり、世間の兄より余程オレはサスケに尽くしてきた筈だ。
その尽くしてきた兄にする仕打ちがコレか!?
よりによってサスケに、実弟にオカマ呼ばわりされる……だと。
情けない、兄さんは哀しいぞ、サスケェ!
演技は得意だが、そうでなけりゃ兄さん泣くぞ、泣いちゃうぞ。
「愚かなる弟よ……」
スゥ。
その両目を黒から写輪眼の赤に変えながら、オレは立ち上がり、未だに動揺駄々漏れな愚弟を睨むように見下ろしながら、オレは冷ややかなチャクラと声音を出し、言った。
「どうやら、オマエは最近たるんで頭の中まで平和ボケを抱え始めているらしいな」
弟の額からはタラタラと冷や汗が流れているが、いくらオマエが可愛いからって、今日の兄さんはそんなもので許しません。お前に今必要なのはお仕置きだ。
そうだろう?
ここは教育的指導が必要だとは思わないか?
鍛え直す良いチャンスだ。これも兄の愛だ、受け取るが良い、サスケェ!!
「ぎゃあああああああ!」
やるときは容赦なく、相手の戦意が完全に消え去るまで、それもまた忍びの鉄則。
サスケが動けなくなる時までかかったのは、たった30分だった。
* * *
「はぁ……」
あれから3時間が経った。
サスケはフルボッコにしておいてきたが、終わった今としてはこの胸の中に怒りはどこにもなく、ただ哀しみだけがどこまでも溢れてくる。
(オレは今までサスケに女みたいだと思われていたんだな……)
そう考えるととても哀しい。
服屋のショーウィンドウに写った自分の姿を眺める。
そこに写るのはいつも通り……よりも落ち込んだ自分の姿だ。
男にしては長く量の多い睫に縁取られた切れ長の目に、通った鼻筋と整った唇の形。髪は真ん中わけで肩よりも長い黒髪を赤い紐で1つに結んでいる。自分で言うのもなんだが母親似で、体型の印象も顔立ちも顔の形も髪質まで母と似ているのだが、唯一目の下にあるほうれい線だけが父親譲りで、これがあるからこそ、中性的な印象を打ち消して自分を男に見せているんだということは、なんとなく察してはいる。
(同じ兄弟でも弟のサスケはオレと似た面立ちだろうに、ほうれい線など無くても少年らしく見えるのにな)
やはりあれか、長髪なのが悪いのか。それとも細身なのが悪いのか。
しかし長髪というのなら、初代火影だった千手柱間や、うちはの祖であるうちはマダラだって長髪だったわけだし、忍界では男で長髪なんて別に珍しくないだろ。長髪は女の特権じゃないんだ、そんなのサスケだってわかっているはず。
じゃあ細身だからか。いや、それをいったらサスケも人のこといえる体型していないし、そもそもオレは太らない体質だ。体型に文句をつけられても困る。オビトさんやシスイみたいな体型にオレがなれるわけないだろ。
……じゃあなんで女になりたがっているなんて不名誉な誤解受けたんだ。
兄さん、わからない、わからないよサスケ。
とか考えている時だった。
「イタチ、お前そんな顔してどうしたんだ?」
「シスイ」
と、幼馴染みであり兄貴分の親友、うちはシスイに話しかけられたのは。
シスイは任務帰りらしい、少しだけ汗の臭いをさせながら爽やかな顔でオレを見ている。
ふむ、そうだな。
「シスイ、オマエ今暇か」
「ああ、先ほど報告を終えたところだ。今空いてる」
「ならば、今晩付き合え」
といって、珍しく居酒屋へと向かった。
普段酒は飲まないが、飲みたい気分だった。
そんなオレを察したのだろう。わかったと簡潔に伝えついてくるシスイ。
フッ、やはりオマエは良い奴だな。
持つべきは友だ。サスケも早くそのことに気付けばいいのだが、意地っ張りだから無理なのかもしれないなんてことを思った。
カランッ。早速カウンター席に通された、見れば隣でシスイは慣れた調子でビールとつまみに枝豆、ポテトフライを注文している。
オレもメニューを決め、言った。
「カルーアミルクと、蜂蜜酒と、黒糖梅酒と、スパーリング白ブドウカクテルを頼む!」
「おい、イタチ!?」
普段酒を飲まないオレが4種類も一気に注文したことに驚いたのか、ギョッとした顔でシスイがオレを見る。
フッ……オレをいつまでも子供舌だと思えば大間違いだ。オレとて大人だ、酒を飲むときは飲める。あまり好んで飲まないだけだ。ビールなんてもっての他。あんな苦いものを好んで飲む奴の味覚がどうかしているだけだ。
「つまみもなしに酒をそんなに飲む気か!?」
なんだそんなことか。
「ではすみません、抹茶パフェと豆乳プリンも追加で」
確かに酒ばっかり飲むと肝臓に負担をかけるか。全くシスイは気が利くな。
まだ何か横でシスイはゴチャゴチャ言ってたが、大したことじゃないと聞き流し、オレはカルーアミルクをごくごくと口にするのだった。
2時間後、へべれけになったオレが、シスイ相手に「サスケがオレのことオカマ扱いしてきた~」と泣き喚き、酔っぱらいの泣き上戸化し、ゲロ吐いて出禁になり、自宅まで送り届けられ、散々母さんに雷を落とされることになる未来なんて、知る由も無かった。
終われ