千変万化に負けない陰の実力者になりたくて! 作:kaneda,i9
「貴方の考えはわかりましたアレクシア様。しかし力になる事は出来ません」
「どうしても、ですか?」
「どうしてもです」
《
ミドガル家はソリス・ロダンの代からロダン家と関りがあり、その縁でアレクシアはアークに懇意にしてもらっていた。帝都を訪れ約2カ月――ようやく会えた彼に、アレクシアは助力を頼んだのだが……
「ミドガル家からの正式な依頼なら考えましたが、貴方の個人的な頼みには力を貸せません。しかも相手は侯爵家……他の貴族が黙っていないでしょう。それはロダンの決まりに反します」
「『権力から離れる事』……でしたね」
ハンターの一門として高名なロダン家は、他のハンターよりも貴族からの関心が高い。貴族間の軋轢に心労を重ねたソリス・ロダンは戒めの家訓を残し、それが今のロダン家の繁栄の一助となっている。それを堂々と言われてしまえば、アレクシアに反論する材料は無かった。
押し黙ってしまったアレクシアに、アークは諭すように問いかける。
「ところでアレクシア様、アイリス様にこの話は? 私よりまず家族に相談すべきでしょう」
「……余計なお世話です」
機嫌を損ねアレクシアは口を尖らせた。アイリスとはアレクシアの姉、アイリス・ミドガルの事である。一流の剣技を持つアイリスは『武帝祭』での優勝経験もあり、今は新任の団長として帝国第3騎士団に籍を置いている。そんな姉と比べられて育ってきたアレクシアは、いつしか姉が嫌いになっていた。
不貞腐れるアレクシアを見て、アークは口元を緩めるが……そんな彼に声がかかる。
「アークさん、そろそろ……」
「ああ、すぐ行く」
アークにはやるべきことがあった。彼が率いるパーティ《
「アーク、貴方はやはりトレジャーハンターなのですね。貴族よりも宝物殿を優先する」
「アレクシア様、どうしてもハンターの力が借りたいなら……」
そこでアークは気づいた。アレクシアの後方……帰ってきたクランマスターに。
「彼に話してみてください。私が口添えすれば快く引き受けてくれるでしょう」
(クライ、たまには私の頼みを聞いてくれてもいいだろ?)
***
【マギズテイル】を後にした僕達は、クライの案内で彼のお気に入りの喫茶店(《足跡》クランハウスの近く)に3人で向かっていた。それで《足跡》クランハウスの前を通ろうとした時、ハンターらしき金髪イケメンと、アレクシアに遭遇したんだ。
「彼……?」
「紹介しましょう。彼はクライ・アンドリヒ。千変万化の二つ名を持つ、
「あの男が千変万化……」
アレクシアは値踏みするようにクライを睨みつけてる。僕は目立たないように何も言わず下がり、クライの方は愛想笑いを浮かべてるけど……
「ますたぁをあんな目で見るなんて……!」
ティノが急に怒りだし、すごい目でアレクシアを睨みだした。今にもアレクシアに跳びかかってしまいそうだ。けど……クライも金髪イケメンも気にせず話を続けている。
「クライ、彼女はアレクシア・ミドガル。ミドガル家のご令嬢だ。私の代わりに彼女の話を聞いてくれないか?」
「代わりに? どこか行くの?」
「これから
「違うって、偶然だよ偶然。花見の会場がたまたま宝物殿になっただけだよ」
「ははっ、わかってるよ。それじゃあ後は任せた。メンバー募集までには戻るよ」
クライに冗談を言って、金髪イケメンは馬車へと向かった。彼の言った【
【
……ところで、今の話に気になるところがある。前に僕が聞いた噂『千変万化は宝物殿を生み出した』って話と一致するんだ。クライの言う通りなら、実際は宝物殿発生の瞬間に居合わせたって事になるけど……え、どんな偶然?
僕が困惑していると、アレクシアが咳ばらいを挟んで話を切り出した。
「……アークが言ったとおりです。まずは私の話を聞いてくれませんか?」
「えーっ……でもアークの頼みだしな……」
愛想笑いを浮かべるアレクシアに対して、クライは眉をひそめて頭をかいている……聞きたくないと言わんばかりに。相手が貴族でもマイペースだね。
クライはしばらく考え込んでいたけど……結論が出たみたいだ。大きく頷いてアレクシアに向き直った。
「わかりました、話を聞きましょう。ついて来てください」
「? ……ええ、わかりました」
そう言ってクライはアレクシアに対しても案内を始めた。方向はさっきまでと同じ……僕達が行く予定だった喫茶店に向かっているのだろう。ティノもクライについていってる。
……さて、僕はどうしようか。「話の邪魔になるから」って言って帰ってもよさそうだけど……高レベルハンターと貴族のお嬢様からの依頼、これは陰の実力者として介入すべき大きなイベントに発展するかも! 僕もこっそり話を聞く事にしよう。