千変万化に負けない陰の実力者になりたくて!   作:kaneda,i9

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無理矢理パーティ結成を迫られて!?

 宝具店を巡って、クライに会って、貴族と高レベルハンターの交渉を間近で聞いて……昨日は充実した一日だった。アップルパイも美味しかったしね。

 アレクシアの依頼は……ティノって子の言う通り単なるワガママに聞こえた。でもクライは否定しなかったな。交渉自体はクライが主導権を握ってたけど、結局アレクシアを怒らせて決裂。僕もクライとそこで別れた。

 

 依頼の行方とか少し気になるけど、それより僕はやらなければいけない事がある。宝具店に対する宝具鑑定料の用意だ。僕が陰の実力者修行で拾った宝具はそれなりに多い。鑑定料を計算してみたところ、レベル1ハンターの稼ぎだと全然足りない事がわかった。《探索者協会》内の簡易鑑定所なら格安だけど……レベル1ハンターが大量に鑑定を依頼したら目立ってしまう。目立たないようなペースだと部屋が溢れるかもしれない。

 色々考えた僕は――レベルが上がるかがらないかのギリギリを見極めつつ、依頼を積極的に受けて鑑定料を稼ぐ――という作戦を立てた。ハンターになってまだ2カ月……モブがレベル2になるには早すぎる。

 

「そこの貴方、止まりなさい」

 

 どんな依頼がベストか考えながら歩いていると、《探索者協会》の入り口で呼び止められた。昨日聞いた声だ。白銀の髪の女の子が赤い目で僕をじっと見つめている。

 

「アレクシア……さん」

「貴方を待っていました。レベル1ハンターのシド・カゲノーさん」

 

 アレクシアは真顔で近づいてきて、僕の腕を掴んだ。

 

「私とパーティを組んでくれませんか?」

「……なんで?」

 

 なんで気ままなソロハンタールートから逸れているんだ!?

 

***

 

「アンタにやってほしいのはただ1つ、荷物持ちよ」

「……なんで僕なのさ?」

「決まってるでしょ、昨日私の話を聞いてたからよ。あんまり知られたくないの」

 

 貴族の誘いを断って目立つわけにもいかず、そのまま流れで彼女とパーティを組むことになってしまった。受付のクロエは挙動不審な僕を見ても営業スマイルを崩さなかった。さすが《探協》の受付嬢……肝が据わっている。

 

 そんなわけで僕は今、《探協》の建物の裏でアレクシアから話を聞かされている。どうやら素の彼女は口が悪いみたいで、2人きりになった途端に本性を現した。

 

「昨日私は確信したわ。ハンターは当てにならないって。だから自分でもっと調べる事にしたの。アンタはその手伝いよ」

「つまり秘密を知っている僕を共犯にしようと言うわけだ」

「失礼ね。まるで私が犯罪をするみたいじゃない」

「どうだか……ちなみに拒否権は?」

「あると思ってんの? もし逃げたらある事ない事言いふらしてあげる。どうなるかしらね?」

 

 彼女は楽しそうに意地の悪い笑顔を浮かべてる。口だけじゃなくて性格も悪いらしい。彼女が満足するか飽きるまで付き合うしかなさそうだ。

 

「とにかく、アンタをこき使う姿を見せれば牽制になるはずよ。私をパーティに誘おうとする連中やゼノンに対して」

「こき使うのは前提なんだ」

「そうでなきゃ『ワガママ貴族令嬢が気まぐれでハンターやってる』ようには見えないじゃない」

「ワガママなのは演技じゃないと思うけど」

「ゴチャゴチャうるさいわね……その減らず口、これを見てもまだ開けるかしら」

 

 そう言って彼女が取り出したのは1枚の金貨。1万ギール硬貨だ。指で弾かれた金貨は日光を反射して煌めき、地面に転がる。

 

「……僕が金に動かされる人間に見えるんだ?」

「見えるわ」

「その通りだ」

 

 僕の視線は金貨に釘付けだった。中堅ハンターなら簡単に稼げる金貨。宝具を売れば簡単に稼げる金貨。しかし今の僕が求めてやまない大金だ。拾えば彼女から逃げられない。わかっていても手が勝手に金貨へと伸びていく。

 

「いい子ね、ポチ。そ~れ、とってきなさい」

「ワン!」

 

 続けて投げられた2枚目に向かって僕は走った。金貨という餌につられた僕は、彼女に尻尾を振る犬になることにした。

 

***

 

 それから1週間くらい、僕は彼女にこき使われた。

 

「私が宝物殿のこと調べますから、あなたは飲み物をお願いします」

「はいはい」

「はいは一回で結構です」

「はーい」

 

 荷物持ちを始め、飲み物買ってこいとか、肩を揉めとか、いろんな事をやらされた。その様子を見せつけるアレクシアの目論見がうまくいっているのか、彼女をパーティに誘うハンターの数はすっかり激減した。初めは僕をうらやんでいた視線も、今では憐みの目で見るハンターが多い。

 

 その裏でアレクシアはゼノン侯爵についての情報を集めていた。僕を置いて他の貴族を訪ねたり手紙を送ったり。でも成果は芳しくないみたいで……

 

「それで、今日の商会はどうだったの?」

「どうもこうも無いわ。返事は同じ……『彼は素晴らしい侯爵だ』ですって」

 

 帝都を走る路面電車の中、彼女はしかめっ面で露骨に不機嫌な顔を見せた。こういった表情を彼女は人前では出さない。さすが貴族令嬢、猫を被るのがうまい。

 行き先は彼女の住む帝都ミドガル邸の近くだ。窓から差し込む夕日が、一日の終わりを伝えている。そんな街並みを眺めながら、僕は前々から気になっていた事を聞こうと思っていた。

 

「それで明日は宝物殿行くんだっけ?」

「そうよ。でなきゃハンターになった意味が無いもの」

「やっぱり意外だな」

「……意外って何が?」

「例の件とは別に、ハンターになる気があったんだ……って意味だよ」

 

 ゼノンの事を調べるだけならハンターになる必要はないでしょ?――言外にその事を問いかけると彼女は口を尖らせた。顔はずっと不機嫌なままで、考えはよくわからない。

 

「少しね……少し、ハンターに興味があったのよ」

 

 それきり彼女は黙ってしまった。僕から視線を外して、どこか遠い目で外を見ている。駅に到着したのはそのすぐ後だった。

 ホームで彼女と別れ、逆方向の車両を待っている間……ふと思い出した。同じ目をしたアレクシアを見た事を。

 

「……あの目、アークの隣にいた時と同じだったな」

 

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