千変万化に負けない陰の実力者になりたくて!   作:kaneda,i9

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帝都最速のハンターと拳で語ろう!

 激しい乱戦が繰り広げられる客席1階。シャドウはステージ上の《痩騎士(やせきし)》をじっと睨んでいた。チルドレンが何人も彼に剣を向けるが……そのことごとくを簡単に切り伏せる。

 

「ムゥ……できる」

 

『肉の仮面』を片手に後ずさる《痩騎士》。シャドウの強さに恐れを抱いているかのようだ。決着をつけるべく、シャドウがステージ上に強く意識を向けた……その時だった。白髪のハンターが鬼気迫る表情で、シャドウに襲い掛かったのは。

 

「シャドウガーデンっっ!!」

 

 漆黒の剣と短剣が火花を散らした。すかさずミリアは跳び下がり、シャドウを鋭く睨みつける。強い怒りと殺意のこもった視線に対し、シャドウの表情は一切変わらない。

 

「シャドウガーデン……どうして私を助けた! どうして私の父さんを殺した!」

 

 ミリアの問いかけに対しても、シャドウの表情は変わらない。だだ何も言わず、彼女を正面から見据える。

 

「……黙ってないで何とか言ってよ!」

「我を恨みたければ恨むがいい。だが、ただ問いかけるだけでは、我にその刃が届くことは無い」

 

 鼻を鳴らし口元に笑みを浮かべるシャドウ。その口ぶりは……侮蔑だった。ミリアは再びシャドウに切りかかる。

 

「だったら……教えなさいよ! 何もかも……全部!」

「問いかけるだけでは何も変わらない。貴様が真実を知る事も、その体が治る事も無い」

「っ!? そ、それは……」

 

 シャドウの言葉にミリアは愕然とする。咄嗟に距離をとってしまう。うすうす気づいていた。自分はまだ「悪魔憑き」だと。その事実をハッキリと突きつけられ……同時に、違和感を覚えた。

 

「なんでわかるの? もしかして……アンタなら治せるの? 私の……体を」

「貴様次第だ」

 

 剣を手放し、右手を掲げるシャドウ。その掌から青紫の光が生じた。迸る魔力(マナ)が、球の形に収束していく。彼の問いかけるような視線が、ミリアを惑わせる。

 

「力が欲しいか? 運命を変える力が」

「わた、しは……」

 

 魔力の塊をミリアはじっと見つめる。シャドウガーデンが父の仇……それを言ったのは《ディアボロス教団》の研究者だ。自分の体を弄りまわした連中だ。一方で《シャドウガーデン》のアルファが、自分の体を人間に戻してくれた。どちらを信じればいいのか?

 

(シャドウガーデンを……信じていいの? 彼らは本当に信用できるの?)

 

 迷いながら、震える手をシャドウに向けて伸ばそうとする。

 

「ダメ、ミリア!」

 

 その時、2人の間にティノ・シェイドが割って入った。右拳をシャドウに向けて突くが、彼は後退して躱す。霧散した魔力が、ティノの剣呑な顔を照らした。

 

「大丈夫ですかミリア?」

「ティノさん……私は――」

「安心してください。あなたは私がまも……り……」

 

 シャドウの纏う気配が一変し、ティノは言葉を失う。これまで何度もティノは、死と隣り合わせの試練を乗り越えてきた。恐るべき幻影(ファントム)や魔獣、さらに犯罪者と対峙してきたのだ。だがシャドウの体から放たれる殺気は、比較にならないほど鋭く冷たい。

 全身から冷や汗が噴き出る。視線を受けただけで、心臓が爆発してしまいそうだ。

 

「リィズ・スマートの弟子か」

(か……勝てるわけが無い……)

 

 絶望するティノを見つめ、どこか楽しそうにシャドウは笑う。武器を持たない自然な佇まい、しかし全く隙が無い。

 

「臆病者だとばかり思っていたが……いい覚悟だ」

(今まで見て来たどんな幻影よりも……)

「どうした? 来ないのか?」

(もしかしたら、お姉様よりも……)

 

「……弟子の貴様がそれでは、師匠も大したことは無さそうだな」

 

 ティノの中で何かが切れた。あからさまな挑発……だが恐怖で固まっていた体が、怒りで動き出す。右拳をシャドウの顔面へと叩きこんだ。

 

「私は弱いかもしれない。けど! お姉さまは……強い! お前なんかに負けない!」

「ふっ……見事だ」

 

 しかしティノの拳は、シャドウが掴んで止めていた。余裕の笑みを受かべるシャドウに、ティノは左拳を振るう。しかしそれも掴まれてしまう。

 

(なら……!)

 

 ティノはその場で飛んだ。掴まれた腕を逆に支えにして、折りたたんだ両脚を正面へ伸ばす両脚前蹴り。シャドウの胸を踏みつけるような一撃、だがシャドウは揺るがなかった。その場から1ミリたりとも動いていない。反動で離れたティノは着地し、再び顔を絶望で染める。

 

(効かない……私が何をしても、この男は……!?)

「ティノさん、もうやめて!」

 

 ミリアの悲痛な叫びが、皮肉にもティノの闘志を蘇らせる。拳を握り直し、覚悟の眼差しをシャドウへと向けた。

 

「ミリアは……私が守ります! 大事な、友達だから!」

 

 正面から踏み込み、シャドウに接近。手刀を作り、目を狙って突き出す。それはリィズから教わった急所狙いの一撃。しかし……それが届くことは無かった。

 

「んがっ……ぁっ……!?」

 

 腹部への強い衝撃、内臓を揺るがす鈍い痛み。ティノは膝から崩れ落ちた。お腹を両腕で押さえながら、体を震わせている。

 それは威力より速さを優先した手加減の拳。しかしティノはもはや戦えない。自分が何をされたのかすら理解できていない。

 

「ティノさん!? 大丈夫? しっかりして!」

「ミリア……ごめん、なさい……」

 

 うずくまるティノに駆け寄るミリア。そんな2人を見下ろすシャドウは……視線をステージ上へと戻す。そこにはもう《痩騎士》の姿は無かった。

 それでもシャドウはステージに向かって歩き出す。その背を見て、思わずミリアは叫んでいた。

 

「待って……シャドウガーデン!」

「我が名はシャドウ」

「……え?」

「力が欲しければ我々を追ってくるがいい。世界の果てまでな」

 

 離れていくシャドウを、それ以上呼び止める事は出来なかった。

 

 

 

 シャドウがステージに上がると、震える手で杖を向ける者がいた。ローブを纏う男……《アカシャの塔》の魔導師(マギ)ワイズだ。

 

「く、来るな! 『ウォータースピア』!」

 

 ワイズの周囲に水で出来た槍が同時に何本も生成され、一斉にシャドウへと向かう。しかしシャドウは身じろぎ1つしない。

 

「『氷の風(アイスフロート)』! 『氷槍(アイススピア)』!」

 

 代わりに北バルコニーから凛とした声が響く。漆黒の剣を杖代わりに振るうイプシロンの声だ。するとどうだ? シャドウの手前で水の槍が急停止し、凍り付いていくではないか。

 そして氷の槍は反転し急加速、ワイズの体を貫いた。イプシロンの緻密で正確な魔法は、ワイズの実力をはるかに上回っていたのだ。

 

「アガッ……あの距離で、魔法を……奪う……なんて……」

「凍らせる事で制御を切り離したか。見事だ」

 

 ワイズが倒れるのを見届け、シャドウは北バルコニーのイプシロンへと視線を送る。しかしイプシロンに喜ぶ暇は無かった。視界の隅、南バルコニーから飛び降りる陰に彼女は気づいた。

 

「あれは……!? シャドウ様! 今そちらに行きます!」

 

 

 客席からステージ上へと風が吹く。それはリィズ・スマートの奇襲。常人には視認できない速さを発揮し、左拳でシャドウの顔面を狙う。

 身を反らし躱したシャドウと、リィズの視線が交差する。興奮を隠せず笑うリィズに、シャドウも笑みを返した。勢いのまま通り過ぎリィズは反転、再びシャドウに迫る。

 

「その速さ……デルタ以上か」

「おらぁっ!」

 

 超速の右回し蹴り。それを腕でブロックし、シャドウは無手の構えをとる。剣を構える隙を嫌ったのだろう。そのまま至近距離での殴り合いが始まった。

 リィズの拳は確かに速い。だがシャドウの速さも負けてはいない。勝負は互角か? 違う。シャドウの拳は速いだけでは無く、洗練された技を身に着けていた。

 鋭いショートアッパーがリィズの脳を揺らす。一瞬の、あまりにも大きな隙が生まれる。

 

「ぐっ……あぁっ……!?」

 

 気づけばリィズは首を掴まれていた。高く掲げられ……ステージに足がつかない。締まる首、苦しくなる呼吸……それでも彼女の目には闘志が宿っている。

 リィズが両脚を上げようとした瞬間、シャドウは彼女を突き放した。離すのが一瞬でも遅れていれば、リィズが腕を折ろうとしただろう。

 

「げほっ……ごほっ……テメエ――」

「シャドウ様! ご無事ですか?」

 

 リィズが何か言いかけた時、イプシロンもステージ上に姿を現した。リィズの姿を見て慌ててバルコニーから飛び降りたのだ。リィズに剣を向け、シャドウと挟み撃ちの形を作る。

 ところが……シャドウは残念そうに鼻を鳴らした。

 

「……手を出す必要は無い。もう終わった。そうだろう? リィズ・スマート」

「ちっ、お見通しかよ……」

 

 苛立ちを見せながら、リィズは構えを解いた。殺気は収めたようだが、相変わらずシャドウを鋭く睨んでいる。

 

「テメエがシャドウだな?」

「いかにも……我が名はシャドウ」

「なんでリィズちゃんについてこれるんだよテメエ。というか剣士で魔導師なのに格闘も得意とか……どう鍛えた。ホントに人間?」

 

 リィズの問いかけには何も答えず、シャドウはステージ中央の台座へと近づく。『肉の仮面』が鎮座していた台座に向けて、漆黒の剣を横薙ぎに振るう。

 すると……崩れた台座から、銀色の球体が転がり出て来た。中に隠されていたようだ。赤い宝石が埋め込まれたその球体を手に取って眺め……シャドウはそれをリィズへと放り投げる。

 

「あん? ……なにコレ? 変な感じするけど」

「それって……まさか……!?」

 

 受け取ったリィズは、怪訝な顔で球体を眺めた。だがその一方で、イプシロンは警戒心を露わに身構える。銀色の球体からマナ・マテリアルの流れを感じ取ったようだ。

 彼女の警戒を余所に、シャドウはリィズへと話しかける。

 

「『強欲の瞳』という宝具だ。クライ・アンドリヒに渡すといい」

「……リィズちゃんにパシリさせる気ぃ?」

「先の挨拶はなかなか楽しめた。その礼だ」

「言ってくれるじゃん。次は本気だから」

 

 その言葉を最後に、リィズは瞬時に姿を消す。風のような速さで離れたのだ。するとイプシロンが慌てた様子でシャドウに駆け寄った。

 

「シャドウ様、今のは……《絶影》はなぜ戦うのを止めたのですか?」

「クライは我らの偽物を標的にしている。ならばリィズも本気で我らを狙う事はしない。今のはただの挨拶だ」

「挨拶……ですか?」

「デルタと■■■が、よくやっていただろう?」

「え? はい……?」

 

(デルタが……誰と? ベータだったかしら?)

 

 シャドウの言葉が気になり ――気になったが、どうでもいい事だろう。それより気にかかる事がイプシロンにはあった。

 

「それと、シャドウ様が《絶影》に渡した宝具、あれはマナ・マテリアルを吸収していると感じました。それをなぜ彼女に?」

「あの宝具に対応する鍵がある。それは今、クライの手の中だ」

「っ!? そうだったのですか……あの男の事まで見抜いているなんて……さすがです」

「この場は任せる。ぬかるなよ」

「はっ!」

 

 一礼するイプシロンに背を向け、シャドウはステージ奥へと姿を消した。

 

***

 

 その頃、クライ・アンドリヒはバルコニーの柵のそばで、グラディス伯爵に詰め寄られていた。伯爵の鋭い視線に対して、どうにか愛想笑いを浮かべている。

 

「欲しくも無い宝具の噂を流して、賊をオークションに集め一網打尽にする……我々は貴様の策略にまんまと乗せられたというわけか」

「そんな、僕は何も企んでませんよ。偶然です偶然」

「シャドウガーデンと名乗った賊と、それと戦う別のシャドウガーデン……貴様に聞きたい事は山ほどある。だが何より許せんのは、一般人や商人……戦えない者を巻き込んだ事だ!」

「それこそ偶然です。噂が流れたのも……賊が来たのも……全部偶然です」

 

 身に覚えがない事を問い詰められ、クライは辟易としていた。するとそこにリィズが戻って来る。1階から柵に掴まり、柵の外側から不機嫌そうな顔をひょっこり出した。

 

「クライちゃん! あのシャドウっての、めっちゃ強かった! 悔しいけど……リィズちゃん1人じゃ無理かも」

「あ、おかえりリィズ……そんなにシャドウって強いの?」

「それとぉ……はいコレ、シャドウがクライちゃんにあげるって」

 

 そう言ってクライに『強欲の瞳』を手渡すと、リィズは柵の内側へと体を移した。渡された宝具をクライはまじまじと眺めている。グラディス伯爵も口を止めて宝具を睨んだ。

 

(シャドウ……もしや、天井にいた男の事か? やはり《千変万化》は《シャドウガーデン》と繋がっていたのか)

 

「これは……宝具かな? 赤い宝石が瞳みたいだね」

「『強欲の瞳』って言うんだって。なんだかわかる?」

「強欲の……そうだ。ちょうどシェリーから貰ってたんだ」

 

 クライは懐から十字型のアーティファクトを取り出した。シェリーから預かったそれを『強欲の瞳』に近づける。すると……ピタリと合致した。

 次の瞬間『強欲の瞳』が一瞬だけ強い光を放ち……マナ・マテリアルの吸収がついに止まった。しかしクライは弄るのをやめない。宝具の扱いに自信があるからだ。

 

「ここからさらに……こうだ!」

 

 クライの操作で再び『強欲の瞳』が輝きを放つ。するとどうだ? 十字部分を台座にして、クライの胸元に吸い寄せられ……くっついたではないか。

 

「あれ……外れないな」

「え、大丈夫それ?」

 

 リィズが心配する中……アーティファクトの隠された機能が発動する。『強欲の瞳』が吸収したマナ・マテリアルが、クライの体へと流れ込んでいく。

 クライの体内を駆け巡ったマナ・マテリアルは……留まることなく素通りし、周囲のマナ・マテリアル濃度を急上昇させた。

 

「うっ……なんだ……?」

 

 そばにいたグラディス伯爵は、頭痛と気分の悪さで座り込んでしまう。

 

「え、大丈夫ですかグラディス卿!?」

「触るな! ハンターに心配されるほど……落ちぶれてはおらん!」

 

 心配して駆け寄ったクライを、グラディス伯爵は手で払いのけた。意地と誇りで立ち上がり……ふらつきながら空いた座席に腰を下ろす。

 

 

 異変は他の貴族達にも現れた。うめき声がバルコニーのそこかしこから聞こえてくる。ケガ人の治療にあたっていたシトリーは、状況の変化に眉をひそめた。

 

「これは……マナ・マテリアル酔い?」

 

 マナ・マテリアルの吸収力には個人差がある。肉体の限界を超える量を吸収すると発生する症状……それが「マナ・マテリアル酔い」だ。街中で発生する事は考えられない。

 

(きっとクライさんですね。急いで治療を終わらせないと)

 

 足早にケガ人を探してポーションを渡し、シトリーはクライのもとへと向かう。

 

 

 ちょうどその時、クライの胸元から『強欲の瞳』が外れた。時間をかけて吸収したマナ・マテリアルを、あっという間に使い切ったようだ。するとリィズが違和感の正体を口にする。

 

「……これマナ・マテリアルだよクライちゃん。みんなマナ・マテリアル酔いしてるんだ」

「そうなんだ。言われてみれば……みんなが酔ってた時と似てるね」

 

 感心して頷くクライ、落ちた『強欲の瞳』を拾い上げるリィズ、駆け付けたシトリー。平然としているのは《嘆きの亡霊(ストレンジグリーフ)》の3人だけだ。

 

「クライさん、何があったんですか?」

「『強欲の瞳』って宝具のせいだよ。マナ・マテリアルを集める宝具だったみたいで、弄ってたら放出しちゃったみたいでさ……」

「……その名前、聞いた事があります。どこにあったんですか?」

「ステージの上、シャドウが拾って私にくれたの。クライちゃんにあげるって」

「賊が使っていた、という事ですか」

「ま、待て……! それは――」

 

 3人の会話に驚いて目を見開き、グラディス伯爵が割り込んだ。彼らの話が本当なら……帝国法で最も重い『十罪』の1つに抵触する行為だ。

 

「それはマナ・マテリアルへの干渉ではないか……!?」

「そうですね。なんて恐ろしい賊なんでしょう」

「……うんうん、そうだね。こんな宝具を使うなんて。許してはおけないな」

「マナ・マテリアルを放出した結果、皆さんはマナ・マテリアル酔いを起こしましたが……もし放出しなかった場合、どうなっていたでしょうか?」

「……何が言いたいのだ?」

 

 シトリーの問いかけにグラディス伯爵は真剣な表情を作る。マナ・マテリアル酔いで体調を崩しているはずだが、強い意思を瞳に宿していた。

 その意思に応えるかのように、シトリーは話を続ける。

 

「この宝具はマナ・マテリアルを無限に吸収できるでしょうか? そんなはずありません。きっと限界量があります」

「じゃあ爆発するとか?」

「なんだと……!?」

 

 リィズの思い付きの言葉にグラディス伯爵は息を呑んだ。しかしシトリーは、さらに恐るべき可能性を口にする。

 

「最悪の場合……凝縮されたマナ・マテリアルが、宝物殿を生み出すかもしれませんね」

「ば……馬鹿な……!?」

「街中に宝物殿? それは大変だね」

 

 グラディス伯爵は言葉を失った。帝都に宝物殿が発生する――その言葉が意味する重大性に気づいたのだ。そして気楽に構えているクライを不気味に思ってしまう。

 

「ええ、大変です。この帝都はマナ・マテリアルの地脈の上……【星神殿】の跡地なんです」

「うんうん、そうだね………………ん?」

「【星神殿】ってアークちゃんのご先祖様が攻略した奴だよね?」

「お姉ちゃんの言う通りです。ロダン家の始祖、ソリス・ロダンが神を倒し、その名を挙げた神殿型宝物殿……グラディス卿もご存じでしょう。

 もし帝都に宝物殿が発生すれば……それは【星神殿】の再来になりかねません。きっと新たな神が住み着き、レベル10認定されるでしょうね」

 

 ――強力な宝物殿の跡地に都市を作る。それ自体はよくある話だ。人を集め、住民に地上のマナ・マテリアルを吸収させ、宝物殿の発生を防ぐために。

 だがもし宝物殿が発生すれば、あふれた幻影によって帝都は、いやそれどころか【ゼブルディア帝国】そのものが滅びかねない。500年前【星神殿】によって滅びた【ミドガル王国】のように。

 

「クライさんは『強欲の瞳』を回収するため、賊をおびき寄せた。正解ですか?」

「そう……なのか? 貴様はゼブルディア滅亡の可能性に、気づいていたと言うのか!?」

 

 シトリーとグラディス伯爵、そして周囲の視線を集める中……クライは愛想笑いで答えた。

 

「偶然です」

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