マゼランと行く0083   作:明田川

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「サラミスと行く一年戦争」の続きです。
毎日投稿です、今回はエピローグ含め11話!


艦長再び

 一年戦争は終わりを告げたが、勝者である地球連邦に得るものなど無かった。混乱が収まりきらぬ中で戦後の復興に勤しむ人々は多く居たが、仮初ではあるとはいえ平和というものと相容れぬ人々は少なくない。

 

「また海賊か、機銃座に付け!」

 

「増速だ、速度を目一杯上げろ」

 

「やってます!」

 

 問題となったのは投降に従わなかった旧ジオン軍の敗残兵達であり、コロニー間の輸送船を襲っては生きていくのに不可欠な物資を奪っていた。

 このような海賊行為に連邦軍は護衛艦隊を編成して対抗したが、多くの船と人員を失った彼らが全ての航路を守り切れる訳も無かった。

 

「護衛のサラミスは何やってんだ、張り付かれるぞ…」

 

「ムサイと砲撃戦おっぱじめたんです、暇ないんですよきっと!」

 

 サラミスから発艦したジムがザクⅡに攻撃するが、手に持った盾で船を庇う必要があるため積極的に攻勢へと転じる事はできない。ザクは応急処置を繰り返しているためか、詳しい型式は分からない有様だ。

 護衛のジムはザク以上の性能があるとは言っても戦時の急造品であり、曲がりなりにも熟練パイロットである海賊達相手には分が悪い。

 

「奴らめ、この物資は復興のための物だってのが分かってるのかよ」

 

「分かってやってるに決まってます、そうでなければ海賊になんてなりませんよ」

 

「このご時世に…戦争は終わっただろうが!」

 

 ジムは果敢にビームスプレーガンで敵を狙うが、距離を詰めたザクが振り抜いた斧は盾を持っていた腕を切り飛ばした。古い機体だとは思えない、同数のジム相手にここまで善戦出来るパイロットが海賊に憂き身を窶すなどあってはならないことだ。

 しかし一際大きな閃光が船を照らし、何事かと背後を見れば護衛のサラミスが火を噴いていた。側面に装備していたミサイルが誘爆したらしく被害は甚大だ、ジムのパイロット達が狼狽えるのが外からでも分かる。

 

「船員まで皆殺しにされては困る、同じスペースノイドとしての情けに期待する他ないか」

 

「降伏して積荷を渡すんですね、ですがそれでは」

 

「分かってる、だがまぁ…時間稼ぎには丁度良いだろ?」

 

 満身創痍のジムを庇うように作業用のオッゴやボールが動き、船員達も外に出て両手を上げる。傍受の危険性がない接触回線にて輸送船側の策を聞いたパイロット達も機体を捨て、船員達の方へと合流し始める。

 

「積荷は好きにしてくれ、殺さないでくれればそれでいい」

 

『…分かった、水と食料はどの船だ』

 

 彼らも無駄に使える燃料も弾もないのだろう。それにMSやオッゴを破壊してしまえば、動力炉が積荷諸共吹き飛ばしてしまう。

 

「103と104に積んである」

 

『…ご苦労、下がっていろ』

 

「徴発のつもりか、海賊共」

 

 回収作業に入ろうとした海賊のMSはその二隻に集まり、格納庫をこじ開けて中の物資を母艦らしいムサイ級に運んでいく。警戒は完全に解いてはいないようで、母艦と船団の距離は開いたままだ。

 

「来ますかね、救援」

 

「来るさ、最短距離ならもうそろそろだと思うんだがな」

 

 連邦軍がサラミス一隻とジム数機という小規模にも程がある護衛を付けたのは戦力の再編中という苦しい事情があってのことであり、それ単体では海賊相手に不利なことも分かっていた。

 

「これは復興のための物資だ、海賊になんてくれてやるくらいなら…」

 

 だからこそ最優先で再編、統合を終えた一部の部隊で即応隊を組織した。彼らは一年戦争を生き抜いたベテランで構成され、MSも新鋭機が目立つ。

 

「まとめて吹っ飛ばしてくれ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 刹那。MSに向けて砲弾が飛来し、武器を持っていた腕を破壊して見せた。しかも輸送船に近い機体は動力炉を避けて当てるという曲芸付きだ。更に漂うデブリの隙間を縫うように放たれたビームがムサイ級の艦橋を直撃し、海賊の部隊はあっという間に母艦を失った。

 

ーー

ーーー

 

 海賊が一瞬にして壊滅した瞬間より少し前に遡ると、そこには迷彩塗装に身を包んだマゼラン級と、それに随伴する連邦軍艦艇の姿があった。艦橋内の照明を落とし、出す光は最小限にしているのを見るに最初から油断した所を撃ち抜くつもりだったことが窺えた。

 

「好き勝手してくれたな、敵の配置はまだか?」

 

「スナイパーが所定の位置に着きました、現在索敵中です」

 

「光学で捉えたらこっちの物だ、船団への被害は最小限に抑えさせてもらおう」

 

 ジムスナイパーⅡは一年戦争中に生産された機体の中ではワンオフ機並みの性能を持つ。デブリに紛れ、頭部の狙撃用センサーを使って敵MSの位置を把握し、更にそれをレーザー通信機にて母艦へと共有する。後世ではEWACと名のつく機体がやる戦術だが、それを艦長は知ってか知らずか採用していた。

 

「スナイパーは母艦を沈めて見せろ、ジムはザクの相手だ」

 

『ご安心を、二発で仕留めます』

 

「…だそうだ、我が艦の出番はないかもな」

 

 マゼラン級はサラミス級を大きく超える火力を持つものの、神出鬼没のゲリラや海賊を相手取るには少々適しているとは言えなかった。だが旗艦としての情報処理能力が優れており、昇進したということもあってか、乗り慣れたサラミス級とは別れているようだ。

 

「サジタリウス小隊、ジェミニ中隊、配置に着いたようです」

 

「犯罪者相手に情けは要らん、攻撃開始だ」

 

「撃ち方始めェ!」

 

 ジェミニ中隊はジムで構成されている。しかしジムとは言うものの、その実態は戦後になって開発された新鋭機であるジムカスタムだ。ゲルググ相手ですら優位に立てるという高性能機で、中隊分の機体を用意するのがそう簡単ではなかった事は言うまでもない。

 艦長が出世したということを踏まえると、それに伴って出来たコネクションでも使ったのだろうか。マゼラン級と同じく迷彩塗装に身を包んだ彼らの動きは、ベテラン独特の洗練された動きを見せる。

 

『輸送船に近い奴が一機、動力炉に当てるなよ!』

 

 放たれた砲弾はコンテナに手を伸ばしたザクの頭部を吹っ飛ばし、武器を構えていた腕をも撃ち抜いた。ムサイ級も艦橋と主砲を撃ち抜かれ、スナイパーの宣言通り二発で沈んで行く。

 

「…護衛のサラミスの損害を確認する、艦載機は?」

 

「船員達と共に居るようです、海賊を片付け次第救助を急ぎましょう」

 

「何もかも足りないというこの時期に、よくも掻き回してくれるものだな」

 

 戦後の復興に何が必要かというと、ズバリ金だ。地球は荒れ果て、コロニーの数も減り、たった一年の戦争で全てが疲弊している。だからこそ経済を立て直すために交易は必須だ、兎に角税収を得なければ先細るばかりなのは目に見えている。

 なので経済活動の邪魔になる海賊に対し、連邦軍は新鋭機と戦艦をぶつけてでも潰そうとしているわけだ。マゼラン級を使わせているのは、広報上の『映え』もあったのかもしれないが。

 

『まっ…待て!降伏する!』

 

『海賊が降伏出来るか、タダの犯罪者が偉そうな口を』

 

『機体を捨てればこの場では殺さないでやる、最寄りのコロニーで裁判を受けろ』

 

 ザクのパイロットに対し、ジムカスタムは冷たくあしらうように話す。ジオン軍の残党は地球でも連邦軍を悩ませているらしい、無駄に高性能なMSで武装しているあたりタチが悪い。

 再三の投降勧告にも応じずに犯罪行為を行い続ける、犯罪者となった彼らが丁重に扱われるかと言われればそんなわけもなく、逮捕された後に裁判所送りだ。

 

「この航路が安全になるのに何年かかることやら、専門の部隊が欲しいところだな」

 

「再編が終わればすぐですよ、観艦式だって近いのですから」

 

「…そうだな、あまり悲観し過ぎても良くないか」

 

 大人しくしているだけならまだマシだが、地球と違って宇宙は過酷だ。彼らは潜伏すらままならなかった口だろう、暗礁宙域に逃げ込んだ連中とどちらがマシなのかは意見が分かれる所だ。

 

「船団をコロニーまで護送する、MS部隊には補給と交代を」

 

 戦後の復興特需で生まれた仮初の平和と好景気は多くの利益を産んだが、その裏で蠢くジオン軍の残党が底知れぬ怨念を抱えているとは、多くの人々が想定してはいなかった。

 

「これからは戦後だ、高級なMSと大きな船を乗り回せるのはいつまでになるか…」

 

「平和になれば過剰戦力ですからね。軍の仕事はコロニーの警備に、後は厄介な海賊と残党の対処くらいですよ」

 

「再編が終わればデスクワークに戻れるかもしれないわけだが、今は沈めた船の船員を救助しなければな」

 

 海賊狩りに精を出す艦長はすっかりと忘れていた。やっとのことで再編を終えた連邦軍艦隊を宇宙の藻屑へと変えた、星の屑作戦という軍人にとって最悪の出来事を。

 

「こちらア・バオア・クー駐留艦隊所属、マゼラン級ナガト。これより要救助者の救助に向かう、抵抗せず降伏されたし。繰り返す…」




お待たせしました。よければ感想とか評価とか、よろしくお願いします。

暫く書いては消してを繰り返していたので、変な箇所などがあればお教え下さると幸いです。
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