マゼランと行く0083   作:明田川

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この話は一話の予定でしたが…なんと…加筆した都合上……

文字数が倍になりましたので、前後編に分けます。
明日投稿できるかは不透明です、すみません。


解体 前編

「コロニー、間もなく射程に入ります」

 

「射程に入り次第全火力を投射、一つでも多くの迎撃設備を飽和攻撃でもって破壊する。艦隊の全力射撃後はMS部隊による防衛戦力の排除、再利用型核融合弾頭によるコロニー解体を行う!」

 

 即応艦隊という名の下に集まった多数の艦艇が一斉に砲をコロニーへ向け、砲撃の準備を整えた。艦砲の一斉射撃でも破壊は出来るが、点での破壊は巨大すぎる構造物に対して効果が薄い。

 

「奴らはご丁寧にも壮大な御託を並べてくれたが、テロリストが無差別攻撃をしようとしていることに変わりはない。このコロニー落としが実行されて死ぬのは軍人だけではない、落下地点に居た民間人だ。その上残党軍の海賊行為は宇宙で暮らす人々の命と財産を奪ってきた」

 

 圧政を敷く連邦の軍人がどうこう言えた義理はないかもしれない、艦長はそんなことを思いながら通信機のマイクへ語り掛ける。

 

「既に戦争は終わっている。ア・バオア・クーから逃げた奴らに対し、あの時軍人として投降しなかったことを後悔させてやれ。以上」

 

 その言葉が艦隊の全艦に伝わってから少し、砲撃が開始された。マゼラン級ナガトは砲塔を一つ喪失していたが、それ以外は火力を全力発揮可能な状態だった。時代遅れと言われた船はその大火力でもって、コロニーへ張り付くデブリの一つを吹き飛ばす。

 

「高熱源体確認、MSです!」

 

「コロニーから砲撃確認、発射地点の予測出ます!」

 

「第二射、目標敵砲台群、撃て」

 

「主砲、一番、三番、四番、撃て!」

 

 各艦が隠されていた砲台へメガ粒子の奔流を撃ち込むが、ミノフスキー粒子下では命中率は低い。しかし急ごしらえの砲台は、直撃を受けなくとも被害が伝播して沈黙する。

 砲台からの反撃が少なくなった瞬間、艦隊は一斉にミサイルを放つ。強大な破壊力を秘めたそれは迎撃を受けながらも、次々とコロニーへ突き刺さる。

 

「敵MS部隊に未確認MA、速度を緩めずに接近してきます!」

 

「目標はこちらか。マゼラン級は目立つな、サラミスが性に合っていたんだが」

 

「アルビオン所属機が迎撃に当たるとのことです、あれがガンダム三号機…」

 

 ジオンと連邦の化け物同士が一騎打ちをおっぱじめたのを尻目に、双方のMS達が激突する。残党軍の機体達はかつての理想のため、連邦軍の機体達は仮初かもしれない平和を守るため、譲れぬものを胸に武器を向け合った。

 核融合炉の爆発が宇宙を彩り、残党軍は玉砕する勢いで艦隊の旗艦であるマゼラン級ナガトを目指す。直掩のMS達がそれを防ぐが、物量よりも追い込まれたが故の覚悟の強さが厄介だ。窮鼠猫を嚙むと言うが、ここで負ければ一生の恥だ。

 

「右翼MS部隊より入電、敵MSを排除!第六艦隊がそのまま維持するとのことです!」

 

 突破口を開いて見せたのは、旧ジオン軍の艦艇達だった。同じ兵器で残党軍と戦うのはなんとも言えない気持ちかもしれないが、彼らは役目を果たしてくれた。白いゲルググが敵機を下し、ムサイ級が一気に前へと出る。

 

「再利用…ええい、オッゴミサイルを搭載している船を右翼へ向かわせろ。旗艦がこのまま囮を務める、敵は統率を揺るがすために旗艦を狙うだろう」

 

 長ったらしい正式名称を決めたのは誰だ、俺かと悪態を吐きながら艦長は指示を飛ばす。再利用型核融合弾頭、改めオッゴミサイルはコロニーへ向かって狙いを定め、数発が発射された。

 有線型の対戦車・対MSミサイルのようにケーブルを伸ばしながら飛翔した彼らは、内部に人間を搭載しないが故の急加速でもって敵の迎撃を掻い潜る。

 

「第一射命中!先頭のコロニーから、ミラーが分離します!」

 

「第二射、第三射用意急げ。奴らもこちらの狙いに気が付くぞ」

 

「敵MS部隊、右翼側に再展開しています。こちらの射点を潰す気かと」

 

「増速、少し前に出て弾幕を張る。随伴のサラミスにも伝えてくれ」

 

 解体が終わるまで耐えられればいい、それに相手の戦力は多くない。艦の左右に抱えているオッゴミサイルの発射を指示しつつ、ナガトは一歩前へと踏み出した。旗艦が吹き飛ぼうが、他の船が解体作業への指揮を迅速に引き継げるよう、指揮系統は整えてあるのだ。

 

「オッゴミサイル搭載艦の前方へビーム攪乱幕を展開、主砲は射撃を続けろ」

 

 残っていたミサイルを対艦、対空問わず発射する。それらは敵部隊の気を大きく引くことになったが、その隙をジム達が突いて墜とす。デラーズフリートの未確認MA、アクシズが提供したノイエ・ジールは旗艦を潰そうとするも、立ちはだかるデンドロビウムを墜としきれない。

 

「第六射命中、コロニーの栓が抜けます!」

 

「未確認MAにより被害が拡大しています、デンドロビウムが追いすがっていますが…手を出せません!」

 

「そのMAの情報は?」

 

「ビーム兵器を主体とした兵装を有している他、ビーム兵器を受け付けません。恐らくIフィールドジェネレーターを装備しているものと思われます」

 

 実弾兵器であれば攻撃が通るということだが、相手はMAだ。ジムが装備するライフルでは豆鉄砲、バズーカは当てられるかが分からない。

 

「ビグ・ラングへ繋いでくれ」

 

「あの、作業用MAですか」

 

「元は軍用なんだがな、今やそちらの印象の方が強いか」

 

 濃密なミノフスキー粒子が漂う中でレーザー通信を繋ぎ、味方となったMAと連絡を取る。その機体に搭乗していたのはオッゴミサイルの製造に協力してくれていた旧ジオン軍の元技術士官、金髪の青年だった。

 あれから改造して複座にしているのか、コックピットにはもう一人乗員が居るらしい。補給作業や火器管制、機体制御は分担しているようだ。

 

『こちらビグ・ラング、御用でしょうか』

 

「随伴している作業用オッゴに武装を施してほしい、確かオッゴ用のロケット砲があったはずだが」

 

『オッゴまでも投入するおつもりですか、あれは…』

 

「最前線に出すつもりはない、艦隊後方からの支援砲撃だ。武装させたオッゴを指定する座標で待機させ、旗艦へ照準を合わせてくれ。信管の安全装置は、後ほど送る距離に設定を」

 

『お言葉ですが、一体何を!?』

 

「ちょっとした博打だ」

 

ーーー

ーー

 

 デンドロビウムとノイエ・ジールの戦闘が始まってから少し経ったが、双方に有効打はない。デンドロビウムには周囲の僚機からのサポートが、ノイエジールには速射性の高い複数のビーム兵器があり、双方の決定打に至る行動を潰していく。

 

「クソッ!MAってのはこうだから困るぜ!」

 

 ジェミニ中隊のジムカスタムと、他の隊のジム・コマンドが背中を合わせ合って戦っていた。二機は化け物同士の戦いに巻き込まれたデラーズフリートのMSが爆散するのを尻目に、武装の弾倉を替える。

 

「バズーカ持ってこい、奴にはライフルじゃ駄目だ!」

 

「バズーカも弾速が遅くて当たりやしねぇよ。こっちは一発でお陀仏だってのに、奴らと来たらビームをばら撒いてきやがる」

 

 巨大な二機がこの戦場の一角を支配している。どちらかが解き放たれれば、戦況は確実に傾くだろう。だからこそ、全員が死に物狂いで援護している。しかし高い性能を誇るはずのジムカスタムが追従できない大推力を前に、MS部隊は局所的な援護に留まってしまう。

 

「あのクローをどうにかするぞ、延ばされちゃ死角からやられる!」

 

「どうにかするって、どうすんだよ」

 

「Iフィールドでビームを弾くなら、延ばした腕はその範囲外だ。当たりさえすれば、ビームで簡単に落とせるさ!」

 

「だからどうやって当てるんだ!」

 

「サジタリウスにやらせるのさ、二号機を墜とせなかったツケを払ってもらおうぜ」

 

 横槍を入れようとしたザクⅡをライフルで撃墜しつつ、狙撃用のビームライフルを有する機体へ通信を繋ぐ。ジムスナイパーⅡを有する即応艦隊のサジタリウス小隊は、観艦式で試作二号機を墜としきれなかった。結果的に艦隊へ核が直撃することは避けられたものの、彼らにとっては恥といえる結果に終わっていたのだ。

 

「ジェミニ12からサジタリウスへ。敵MAのパイロットは敵機の通信を解析した結果、お前らが撃ち損じたアナベル・ガトーの戦友らしい!手を貸せっての!」

 

「話を聞こうか、俺達に何をさせたい」

 

「あの腕を撃ち抜く、伸びている間にな」

 

 ブースターを限界まで吹かし、数機のMSがノイエ・ジールを狙う。観察した結果、あの機体をパイロットは扱いきれていないかもしれない、ということが仮説として挙がった。現在の戦果を見るに機体を操れているのは事実だが、複数の武装を同時に使う場合が殆ど無いのだ。

 

「ビーム主体の兵装じゃあこっちのデンドロナントカには致命打にならない、だからミサイルやらあの有線アームやらでIフィールドのジェネレーターを狙うはずだ」

 

「敵機の狙う先が分かるなら、まだマシだな」

 

「こっちはワイヤーを抑えてサーベルで斬れないか試すさ、頼むぞ!」

 

 単純に追うだけではまず近付けないため、移動する先を考えて先回りする。この乱戦の中でMAが最大の注意を払っているのは同格のデンドロビウムであり、全てのMSにまでは目が行き届いてはいない。

 

「駄目だ、こっちじゃあないか」

 

「先回りするのも一苦労だ、推進剤が足りるかどうか…!」

 

「来たぞ、来た来た来た!」

 

 二機が交差するように動き、ビーム兵器が飛び交う。そしてそれに紛れるように有線アームが飛んだ。二機はそれが直撃しかねない軌道で味方機へ飛んでいるのを見て、全身から汗が噴き出た。

 

「不味いッ!」

 

 ジムコマンドは咄嗟にバズーカを構え、友軍機へ当たらないことを優先し、狙いが甘いまま放った。それは有線アームに直撃こそしなかったものの、爆発でそれを大きく揺らす。

 

「サジタリウス!」

 

「黙ってろ、狙ってる!」

 

 狙撃用のビームが薙ぐように放たれ、アームと機体を繋ぐワイヤーが切断される。そして別の機体から放たれたものはアームを捉え、デンドロビウムへぶつかる前に爆散させた。

 

「やった、やったぞ!」

 

「敵機も調整が完全じゃあないらしい、直線的な軌道に助けられたな」

 

 初めて武装を失った敵機は周囲のMSを狙おうとしたが、デンドロビウムが放ったバズーカの一発が右肩に直撃する。確実に損傷は増えているが、まだ墜ちる気配はない、そんな時だった。

 即応艦隊が放ち続けていたオッゴミサイルが、一つ目のコロニーを予定通りに解体しきったのだ。三枚のミラー、バラバラに砕けた円柱、基部からえぐり取られたかのように浮かぶ両端部。加速のために取り付けられていた推進器も爆発によって誘爆し、設置されていた砲台もろとも吹き飛んだ。

 

「やったぞ!あの艦長やりやがった!」

 

「こいつはすげぇ…が、ソーラーシステムなら一発って話だろ。ここでバラす理由ってあんのか?」

 

「分かってねえな。一基なら兎も角、内部にまで岩石を溜め込んだコロニー三基分の大質量だぞ、焼き切れずに地球に落ちて見ろ」

 

 中空構造だったコロニーの内部へ、様々なものを詰め込んでいるらしい。一つ目が解体されたことで、内側から大量のデブリや小惑星が解き放たれる。

 一瞬で小さな暗礁宙域と化したのを見て、疑問を呈したパイロットは認識の甘さを痛感した。

 

「大惨事、か」

 

「これ以上はごめんだろ?」

 

「その通りだ」

 

 この状況に焦りを感じたのか、敵機の動きが変わる。今までとは違う、より強烈に旗艦だけを狙い始めたのだ。コロニーが砕け散ったことで、彼らの危機感がそうさせたのだ。

 

「不味い、あのMAに抜かれるぞ!」

 

「止めろーッ!」

 

 この動きに追従しようとしたリックドムの腹にビームサーベルを叩き込むが、ヒートサーベルがジムコマンドの片腕を飛ばす。ジムカスタムは被弾した僚機を援護しつつ、防衛線を突破したMAを見た。

 

『総員退避、旗艦へ盾を向けろ!近接防御を行う!』

 

「盾を持ってる腕は吹っ飛んでるっての!」

 

「俺の裏に隠れろ、旧式さん」

 

「悪いね古くて、いい機体だぜコイツは」

 

 ジム・カスタムの背中に隠れたジム・コマンドだが、彼らのすぐ近くを通り過ぎたのは、大量の金属片だった。大量のそれはMAの装甲を削り取り、動きを鈍らせ、推進器から火を噴かせた。

 

「散弾を自分もろとも浴びせたってのか!?」

 

 作戦はこうだ、オッゴやMSを搔き集め、旗艦後方へ並ばせる。敵の接近に合わせてロケット弾を発射し、弾頭の信管は艦を通り過ぎた瞬間に炸裂するよう設定する。

 これによって大量の金属片をばら撒き、エースでも回避不可能な鉄の嵐でもって、MAの武装を破壊したわけだ。自慢のIフィールドも、複数のビーム砲でもそれからは身を守れない。

 

 無論すぐ近くで砲弾を炸裂させるため、信管の作動距離や弾道が少しズレるだけで、旗艦が損傷する恐れはあった。だが、その程度では艦内にまで損傷は及ばない、何故ならこの船は『戦艦』だからだ。

 

「クソ、止まらねえぞ!」

 

「艦橋に突っ込む…船を道連れにする気だ」

 

 内側に隠していたのか、四本のサブアームが展開された。それらはメガ粒子砲を放つが、推進器が欠けたことによって照準が定まらず、直撃は避けられる。しかしそれでも左舷の砲塔が吹き飛び、いくつかの対空砲が沈黙した。

 だが満身創痍の中、ナガトは戦艦の矜持を見せる。まだ、正面を向いた一番砲塔が生きていたのだ。それは近距離にまで接近したMAを捉え、かつてMSが現れる前までの時代、マゼラン級が宇宙の王者だった理由を示す。主砲は敵MAの下部、集中配置された推進器を吹き飛ばした。

 

 かつてナガトの名を冠した戦艦は、核を受けて沈んだ。しかし再びその名を得たこの船は、艦長となった男の手によって大艦隊への核攻撃を失敗へ終わらせ、最小限の被害へ抑えた。

 そして核を超える被害を生むコロニー落としを防ぐため、こうして矢面に立っているのだ。数奇な運命だと言いたくもなるが、核を受けても一晩耐えた逸話の如く、MAからのビームを受けてなお、この船は沈んでいなかった。

 

 一番砲塔による攻撃によって軌道が上にずれ、艦橋にはサブアームがぶつかる。振り返ってビームを撃とうとしたノイエ・ジールの眼前に広がったのは、デンドロビウムが構えた巨大なビームサーベルだった。

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