マゼランと行く0083   作:明田川

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感想欄がデラーズにキレてる…さもありなん…
大きな修正がない限り、朝6時更新です。


ゲルググと連邦と

「戦争が終わったのは良いこと、なんだが…」

 

「海賊への対応が終わりましたが、また別の航路で遭遇報告です」

 

「どうしてこんなにも残党が多い、何処から湧いて出て来るんだ奴らは!」

 

「地上よりはマシらしいですよ」

 

「嘘つけェ!地上の奴らは巡洋艦で突っ込んで来ないだろう!」

 

 一年戦争で名を馳せたサラミス級巡洋艦ナガノの艦長は、旧ジオン公国周辺の治安維持に奔走していた。暗礁宙域に逃げ込んだ残党軍も見つけられておらず、亡命者を受け入れたと思われるアクシズに至っては遠過ぎる。

 

「同じスペースノイドを襲って恥ずかしくないのか奴らは」

 

「死傷者も少なくない数が出ています、今以上の対策が必要かと」

 

「護衛にサラミスとジムがついていてこの結果か、ジオンのMSはやはり脅威だな…」

 

 戦力の再編中である地球連邦軍は大戦中に作ったジム達でどうにかやりくりしていたが、粗悪品も大いに混ざったそれでは有利に立ち回ることは出来なかった。ビームライフルの量産にも時間がかかっており、補給品としてやって来た主力火器は実弾に先祖返りしていた。

 

「戦後の人材不足は致命的だな、ここまでこき使われるとは思わなかった」

 

「今や要塞司令、私もその補佐です。優秀な裏方、特に事務に強い人材が欲しいところですね」

 

 肩書ばかりが大きくなって困ると艦長改め要塞司令は汗を拭うが、副官はプレッシャーというものをあまり気にしないのか、昔と変わらず働いていた。

 過去の部下達もある程度はこの要塞へ配属されていたが、戦争が終結したことで別の道を歩んだり、この要塞での勤務を断るものも多く居た。

 

「再編と復興計画、更には商船護衛やら観艦式やらで手が空いてないそうだ」

 

「頼れるのは戦中からの部下だけですか」

 

「他所から引っこ抜くと恨まれるからな、暫くは我慢する他ない」

 

 ここア・バオア・クーは連邦軍が接収してからというもの宇宙艦隊の拠点として整備されたが、急増品のMSと艦艇の整備にてんやわんやだ。

 更には海賊との交戦もあり損傷する兵器も多い、MSを整備出来る元ジオン公国の組織も解体や買収で動けず、今は民間用に改修されたオッゴを作ることを許されている程度だ。

 

「ここまで仕事が多いと前みたく動けん、これでも艦長兼要塞の司令官なんだがな」

 

「要塞司令兼艦長ですよ。使える戦力が少ないのに仕事は減りませんからね、艦長まで動くとなると末期である、と言う意見には同意しますが」

 

「戦争は終わった筈なのに、前より追い込まれてないか…?」

 

 この巨大要塞は史実において少し後に誕生するティターンズに接収される前はどうなっていたのか曖昧なのだが、様々な戦力を運用可能なほどに再整備されたのは接収後らしい。となると彼は誰も手を付けていなかった程に損傷した要塞に放り込まれ、曲がりなりにも一拠点として成立するほどに整備し直したということだろうか。

 

「ですが戦力に関しては朗報がありますよ」

 

「本当か、遂にマトモに動くジムがダース単位で…」

 

「ゲルググの生産ラインが動くかもしれません」

 

「使えるかァ!」

 

 『ザビ家が悪かったね、悪は解体したから地球連邦の下で頑張って復興しようね…』という方便を言えるくらいの段階にやっと入ったのだ、建前を守るためにもジオンのMSを表立って運用するには抵抗がある。

 

「だが粗悪品を騙し騙し使うより…いやパイロットがそれを許す筈無いしな……」

 

「再武装をどうにか許してもらうしかないですよね、自衛くらいしてもらわないと困ります」

 

「だがな、簡単にそれが出来るとは限らん」

 

「信用無いですね」

 

「連邦憎し、ジオン憎しで動いてる奴らがまだどれだけ居ると思ってる。双方のためにも刺激は加えられない、今は段階を踏む必要がある」

 

 彼の新たな乗艦も神出鬼没のジオン残党に対抗すべく改修…の準備中だ、既存艦艇でネックとなるMS運用能力をどうにか付与しようと技術者達が頑張ってくれている。多忙を極めるため、その改修が行えるのはしばらく先のことになりそうだが。

 しかしせっかくのゲルググを寝かせておくというのも勿体無い話だろう、どうにかして使えるならば使うべきだ。

 

「…だが目下の問題をどうにかするためには、ゲルググの活用方法を考えるべきか」

 

「どの部隊に配備しますか?」

 

「まあ待て。ゲルググを運用できるだけの下地があって、操縦出来るパイロットを用意出来て、更には裏切る心配が他より少なそうな部隊を探そう」

 

「そんな都合のいい部隊が居るわけ…」

 

 悩む二人だったが、艦長の部屋に直通という珍しい回線から通信が入ったことで空気が一変する。即座に受話器を取った艦長だったが、その相手が分かるなり胸を撫で下ろした。色々あって船団を任せている女性であり、腕は確かだ。

 

『悪いね要塞司令、ちょいと賊が五月蝿くて遅れた』

 

「シー…いや、エフェメラ艦長!ご苦労だった!」

 

『まだ名前に慣れてないのかい、しっかりしておくれよ』

 

 通信と同時に港へと入港した輸送船団はそれなりの規模があり、護衛にサラミスが何隻も随伴していた。MS以外にはザクマシンガン等、作業用とは言い張れない装備をしたオッゴも張り付いており、出来る限りの戦力で守り通したということがよく分かる。

 

『ご注文の水、空気、食料は兎も角…本命の高価な各種器材のご到着だよ。全く、骨の折れる仕事だった』

 

「書類と荷物は担当者に預けて暫し休んでくれ。この航路を任せられる人間は貴重だからな、無論手当は弾んでおく」

 

 連邦軍の軍需物資ともなればジオンの残党が躍起になって襲って来る、この基地の復旧が遅れている原因の一つだ。航路の死傷率が高ければ船員も寄り付かないため、彼女のような人材は貴重と言える。

 

「彼女ってさ、元々ジオンのMS部隊の出だよな」

 

「ええ、そうですが…まさか!」

 

「自衛できるとなればサラミス数隻と随伴のジムが浮く、信用出来るしあの部隊で試してみるか」

 

「ですが、彼女はコロニー落としに関与した人物ですよ」

 

「だからだよ、昔と同じ気質を抱えたままの残党軍に寝返るなんて考えたくもないだろうさ」

 

 シーマからエフェメラへと名を改めた彼女は、戦後に艦長率いる艦隊が捕虜にした元ジオン軍人である。コロニー落としに際して毒ガスを使用し、コロニー内の人間を皆殺しにした戦争犯罪の実行者だ。

 

「裏は取れているし、責任を取るために階級が上の人間が居る」

 

 戦後に掻き集めた資料には、彼女へ責任を押し付ける形に改竄された箇所があった。本人と部隊員から得た各種証言や、船に残っていた作戦記録も後押しし、証人保護の名目で新たな身分を用意して今に至る。

 

「残党を片端から捕まえれば、エフェメラ艦長の上司…戦争犯罪の真相にも近付くさ」

 

 過去の罪を償うためだろうか、それとも復讐のためだろうか。責任を一方的に被せられた彼女らは、残党軍狩りに精を出す即応艦隊に協力する道を選んだ。新たな人生を始めるために給与が良い仕事を選んだともとれるが、なんにせよ巡り巡って戦友となっていることに違いはない。

 

 ちなみにこの要塞で働くことになって以降、要塞の長たる彼は地球にある両親の墓参りには行けていない。戦後の混乱から復帰した艦長の故郷から発表された死傷者リストは凄惨極まるものだったが、彼はそれを誰にも話すことなくシュレッダーにかけていた。

 

ーーー

ーー

 

 ア・バオア・クーは今日も元気に復旧中だ。連邦軍から軍再編の間仕事を丸投げされている要塞司令も、机に齧り付いて執務中である。だがそんな業務の合間を抜い、あるMSの製造ラインの視察に赴いていた。製造を担当していた技術者をどうにか説得して呼び込み、資材も搬入されたことで息を吹き返したのだ。

 

「ゲルググの海兵隊仕様機?」

 

「蛮用に耐えるために標準仕様と比べて簡略化、空間戦闘に重きを置いた性能に調整したものです」

 

 発見されたゲルググの製造ラインだが、所謂普通のゲルググを作るためのものではなかったらしい。あまりに種類が多い旧ジオン軍の機体について、連邦軍は詳細に把握しているわけではない。詳しく聞いているあたり、要塞司令もこの機体は記憶にないらしい。

 

「整備性が高いなら言うことないな、航続距離は?」

 

「それも伸びています、総合的な推力は減っているようですが」

 

「その程度であれば言うこと無しだな」

 

 このゲルググに問題があるとすれば統合整備計画以前の機体であるため、後期の機体とは規格が合わないらしい。その規格の差があるからこそ生産ラインがそのまま残っていたのだろうか、色々と幸運が重なったのだろう。

 

「丁度実機があったのも助かりましたね、一体何処から?」

 

「…あー、拿捕した艦隊に配備されていてな」

 

 旧シーマ艦隊にて運用されていたゲルググも、この海兵隊仕様機だった。エフェメラ艦隊になってからはMSでの武装を認可出来なかったため、オッゴやボールなどのモビルポッドに置き換えている。

 そしてパイロットを失ったゲルググ達は倉庫におさめられていたが、今回の製造ライン再始動にあたり、何機かは貴重な資料として解体され、調査に使われている。再稼働が早かったのも、このおかげだろう。

 

「もしや、この機体に乗った経験のあるパイロットもこの要塞にまだ在籍していると?」

 

「している、テストが必要か」

 

「戦争末期の素材は質が低下していましたから、今供給されてくる物と比べると差が大きいです。当時の設計のまま作った場合、どうなるかは…」

 

 技術者達はシミュレーションや各種強度計算では大丈夫だったが、いざ実戦となると想定していなかった不良が見つかる可能性は否めないと語る。確かに入念な試験は必要だろう、MSというのは巨大かつ、動く部位が非常に多いのだ。

 

「完成したゲルググ…なんだったか」

 

「海兵隊仕様、ゲルググマリーネです」

 

「そうそれだ、その機体が完成したら真っ白に塗ってくれ。こちらのMS隊と模擬戦をして不良とやらがないか洗い出す、これでどうだろうか」

 

「それが良いかと。経験者であれば、以前との差で気付けることもあるでしょうし…調整を進めておきます」

 

 こうして、白く塗られたゲルググが連邦軍の戦列に加わった。表向きは鹵獲機とされつつも、要塞内の生産ラインは次世代への入れ替えまで稼働し続けることになる。

 これを機にア・バオア・クーでは、旧ジオン軍のMSを使った模擬戦が頻繁に行われ、練度の維持と向上に役立てられた。白いゲルググがジムと戦う姿は、要塞内で度々話題になっていたことを、ここに記しておく。




色々やってるみたいです。
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